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子爵家を追い出された少年は都会で自由に生きる。 作者:yu-ri
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ケーキを食べ終えお茶を飲み一息つくとジルダに頼んでニコライ神父を呼んでもらった。


呼んでもらっている間に俺は応接室へ通される。俺はソファーに座ってニコライ神父を待つことにする。


30分以上待たされてニコライ神父がやって来た。だが彼は一人で来たのではなくクラリスと60代の老人を伴っていた。


老人は教会の関係者であろう衣服を纏っている。明らかにニコライ神父よりも位は上の方だろう。俺は席を立って相手を迎える。


「シュナイザー様 こちらは私のお爺様です」とクラリスが老人を紹介した。


「クラリスの祖父のフリッツ・フォン・アイゼンナッハだ。 シュナイザー君 今日は良く来てくれた」


老人はそう名乗り右手を出してくる。


「私はシュナイザー・フォン・ローエンハイムです。 出身はローレンシア王国です」


俺はフリッツさんの右手を握り握手をする。だがどうしてこの場にクラリスとフリッツさんがいるのかが分からない。


「ほう。 ローレンシア王国と我が国は友好国だ。 これはよい縁に恵まれた」


フレッツさんは笑顔を絶やさずに俺のことを見てくる。


「ニコライ神父、こんにちは」


「こんにちは。 シュナイザー君」


「立ち話もなんだ。 座ろうではないか」


俺の正面にクラリスとフリッツさんが座り右にあるソファーにニコライさんが掛ける。俺もソファーに腰を下ろす。


「シュナイザー君。 今日もお土産を頂いたそうですね。 有難う御座います」


「いいえ。 みんなが喜ぶ顔が見たいですからついつい甘やかせてしまいます」


「それで今日はどのような用件で来られたのですか?」


まずは、お店に孤児を引き取る話から切り出すことにした。なんせオープンは1週間後だ。急がないと間に合わなくなる。


「以前にお話した私の店で孤児を雇いたいという件について話をしに来ました。 実は店を一週間後にオープンしようと思っているのですが3人ほど人員が足りません。 そこでニコライ神父にここの孤児を紹介してもらえればと伺ったのです」


「ほう。 その歳でお店を開くのですか? シュナイザー君は神に愛されているのですな。 私も助力しよう」


ニコライ神父が答える前にフリッツさんが先に答える。


「フリッツ枢機卿の助力があれば私も協力は惜しみませんよ。 シュナイザー君、フリッツ枢機卿はこの教会のまとめ役でもある。 フリッツ枢機卿が協力すれば大体のことは叶います」


クラリスのお爺さんは枢機卿のようだ。実質この教会のナンバー1の人物だ。しかも名前から分かるように貴族でもある。


エヴァリエ教はユーロシアナ大陸のヒューマンのほとんどの者が信仰している。セルマニア王国の王都にある教会の実質的なトップにいる。フレッツ枢機卿のこの国での発言力は大きいだろう。


クラリスはその枢機卿の孫というのだ。お嬢様として育てられたに違いない。彼女の動きには品のよさを感じる。


「これは失礼しました。 フリッツ枢機卿。 是非、私に協力をお願いします」


「良いですとも。 今年、成人を迎える者の中から3人選んでおくとしよう。 明日にでも連れて行くと良い。 賃金など細かい内容を教えてもらえるかな?」


「はい。 給金は一日4,000(セル)で住み込みで一人一部屋を準備します。 征服もこちらが支給します。 三食の食事もこちらで用意できます。 特に食事には自信があります。 貴族が口にすることが出来ないような食事を従業員は食べることができます。 毎日デザート付です。」


「ほう。 一般の大人日当が7,000(セル)と考えると衣食住が整っていて4,000(セル)とはなかなか魅力的ですな。 そして食事は一般庶民が口に出来ないほど高級なものが出るということですな。 その条件であれば孤児たちも良い生活が出来るでしょう。 ありがたい話です」


「私もどのような料理が出るのか興味があります」


俺はフリッツ枢機卿の助力を得られそうでほっとする。ニコライさんも隣で満足そうな顔をしている。クラリスも話が纏まって嬉しそうにしている。クラリスは主に料理に興味があるようだ。食い意地が張っているだけはある。


「それでは明日、候補者を迎えに来ても良いでしょうか?」


「それは私のほうで手配しておきましょう」


ニコライさんが手配を申し出た。すなおに嬉しく思う。


「有難う御座います。 それでは宜しくお願いします」


俺はこれであるていど話は纏まったと思い肩の力を抜く。これで滞りなく店をオープンする事ができるだろう。


そう思っているとフリッツ枢機卿が突然俺のことについて質問してきた。


「ところでシュナイザー君には婚約者はいるのかな?」


「えっ。 え、ええといませんが」


俺がそう答えるとフレッツは顔をほころばせる。隣のクラリスの頬が若干赤くなったように思える。ここで婚約者の話が何故、出てくるのだろうと俺は疑問に思う。


「私の孫娘のクラリスは聖魔法が得意でしてな。 気立ても良い。 だが、なかなか良縁に恵まれない。 私の可愛い孫だ。 できれば私の納得のいく男に嫁がせたい。 私は元侯爵でしてな、クラリスは侯爵令嬢ということになる。 そのクラリスの婿になる者の家格も考慮しないといけない。 婿選びはなかなか難しい問題なのだ」


どうやらフレッツ枢機卿はクラリスの幸せを純粋に考えているようだ。貴族の結婚とは家と家との結びつきが大事だ。相思相愛で結婚が出来るのはほんの僅かな者たちだけだろう。


ここでクラリスの自慢話をしてくる意図がつかめない。なにを考えているのだろう。


しかも聖魔法を得意としているということは治療魔法が使えるということだ。教会としては手元におきたい人材に違いない。


「そうなのですか? クラリスさんは素敵な女性です。 直ぐに素敵な方が現れるでしょう」


「そうなのだよ。 嫁に欲しいという申し込みが多くて困っている」


多くの貴族から嫁に欲しいと申し込みを受けているようだ。それを断るのは大変だと思う。


確かに俺が一目惚れするほど彼女は美しくスタイルも良い。性格も良さそうだし彼女を嫁に欲しがる貴族の子弟は多いことだろう。


「そうなのですか? もしゆるされるのなら私が婚約者に名乗りをあげたいくらいです。 このように素敵なクラリスさんに婚約者がいないとは思いませんでした」


「そうか、そうか、シュナイザー君はクラリスとなら婚約してもいいというのですな」


フレッツの体が前のめりになる。俺はその勢いに驚く。


「それはまあ……」


あれ?話の内容がおかしくなってきたぞ。


「ニコライすまぬが席を外してくれ」


「はい分かりました。 シュナイザー君、ではまた」


フレッツ枢機卿はニコライさんに席を外すようにいう。ニコライさんは俺に一礼して部屋を出て行った。


「実はな。 女神から信託があったのだ」


「神託ですか?」


女神エヴァリエはどんな神託を授けたのだろう。少し気になる。


「ああ、なんでもクラリスの運命の者が現れるという神託があったらしい。 そして君が昨日現れた」


「それが私に何か関係があるのでしょうか?」


「シュナイザー君。 君は勇者愁一様の生まれ変わりらしい。 それで女神様がクラリスの婿にどうかと薦めてきた。 婚約するかしないかは当人同士で決めると良いという言葉も頂いている。 

だが、クラリスは君の事をかなり気に入ったようだ。 どうだろうクラリスと婚約してはくれないだろうか? 先ほど『私が婚約者に名乗りをあげたいくらいです』と言う言質をとったぞ。 嫌とは言うまいな」


フレッツ枢機卿は物凄い形相で睨んでくる。クラリスは不安そうな顔をしている。


「私は、今は子爵家の嫡男ですがもうすぐ廃嫡されます。 そうなれば成人後は平民になることは決まっています。 そこらへんは大丈夫なのでしょうか? 先ほど枢機卿も家柄も選ぶ条件と言っていましたが……」


フレッツ枢機卿は「ほっほっほ」と笑う。


「かつての勇者の生まれ変わりの方に家柄は求めない。 私が求めるのはクラリスの幸せだ」


クラリスには一目惚れしたくらいだし付き合えるのは嬉しい。でも、お互い貴族なので婚約なしに付き合うことは出来ない。


それにこんなに美しいクラリスと付き合えるなら婚約しても良いと思えてきた。しかも言質まで取られている。


女神様の神託もあることだし良縁に恵まれたと思うことにした。


「分かりました。 結婚を前提にお付き合いさせて下さい」


俺の言葉を聞きクラリスはほっと息を吐きフレッツはソファーに深く座りなおし笑顔になる。


「それでは決まりですな。 婚約はお店が落ち着いたら行おう。 婚姻はシュナイザー君が成人した後にということで話を進る」


「そういうことで宜しくお願いします」


「ああ、そういうことで」


「あの、私こそ宜しくお願いします。 シュナイザー様」


「私こそ宜しく。 クラリスさん」


こうして俺とクラリスの婚約は突然決まった。


クラリスは俺より一つ年上なので姉さん女房になる。

最後まで読んで頂きありがとう御座います。

採点をしてくれるともっと嬉しく思います。

点数が私に書く原動力を与えてくれます。

宜しくお願いします。

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