クロイツと勇者候補選抜御前試合 その十四 ~金髪幼女爆誕、幼女は私の養女になる~
どう言うこと? オババがなんでアリエル達といるの?
まさか、オババが敵?
いや、違う。なにこの気配、まるでシンヤ、いいえその以上のなにかがいる。
どう考えても私じゃ勝てない、なによりアリエル達が敵うわけがない。
もっと早く飛べないの? こんな速さじゃ馬車まで数十分はかかる、間に合わない。アリエルがティアがディオナが殺されてしまう。
「「「もっと速く飛びなさいよ!!!」」」
声が三つ重なった、誰の声かもわからない。私の声? でも、そんなのはどうでも良い。訳のわからない知識や記憶が流れ込んでくる。それもどうでも良い。今すぐ私はアリエルのもとに行く!
「
移動先の景色が見える。アリエルが宙吊りにされ何度も何度も黒髪の女に腹を殴られている。
私は目の前が真っ白になりいつの間にか転移して黒髪の女に切りつけた。
「
私の一撃と黒髪の女の技がぶつかり合いは空間に亀裂を作りだした。いや、正確には私の一撃が空間を切り裂いたと行った方が良いだろう。あの女はそれが広がらないように止めたのだ。
「この糞女! 人の嫁にこんなことして生きて帰れると思うなよ!!」
「……ごめんなさい。……クロリア様ごめんなさい」
倒れこんだアリエルが必死に私に手を伸ばし謝る。アリエルが何に対して謝っているのか私にはわからないが、今はアリエルの回復だ。私は黒髪の女など無視するようにアリエルを回復した。
回復魔法を使う私を驚きの表情でアリエルは見る。
「回復魔法? シルフィーネ様? いいえ、その口調はクロリア様ですよね?」
「そうね、私はクロリアよ、そしてシルフィーネでありクロイツでもあるわ」
「どういう……」
「愛する人を助けたいと思う心が私たちの心を一つにした。そうね私を呼ぶならこう呼びなさい」
私は立ち上がると黒髪の女と対峙する。そして私は言った。
「愛の戦士
私はビシッと格好つけてポーズをキメた。
「カッコ悪いですよクロリア様」
「ないですよクロリアさん」
「あり得ないくらいダサいです」
「センス無いわね」
みんなが声をそろって私にダメ出しをする。黒髪の女まで私のネーミングセンスに否を唱える。
私はそれを無視して、倒れてるオババの元へ向かう。脈がないマップにも鑑定眼にも映らない死んでいる。
「オババ……。黒髪の女、お前は絶対に許さない!」
「待ちなさい、その剣は振るっちゃダメ」
「命乞いなら聞かないわ」
私は
「やめなさい、あなた世界を壊すつもり? あなたの大事なものも死ぬわよ」
世界を壊す、何のこと? その言葉で切り裂かれた空間をよく見ると、切れ目の中には別な空間があり木々が見える。なんなのこれ?
「どういうことよ」
「あなたは強くなりすぎた神と同等、いいえ、この世界の神を越えてるのよ」
黒髪の女は言う、この世界には耐久度があるのだと。そして私の攻撃はそれを易々と越えてしまっていると。本気の技を使えば一瞬で世界が崩壊するほどに。
「だからと言ってアリエルを殺そうとしたあなたを許すわけにはいかない」
「勘違いしないでちょうだい。その子が自爆をしようとしたから
それに「ジュリエッタの思いを無視して自爆など許されないわ」と黒髪の女は言う。
「本当なのアリエル」
アリエルはコクンと頷くと「はい、……私は自爆してでもその人を倒そうとしました二人を守るために」と言った。
私は二本の剣を地面に突き刺し、アリエルを抱き締めた。
「クロイツみたいなことしないでアリエル。あなたがいなくなったら私は生きていけないわ」
「クロリア様……。でも、シルフィーネ様の記憶があるならわかっていると思いますが、私はあなたを騙していました。側にいる資格などありません」
「アリエル、シルフィーネはあなたに言ったわよねあなたを置いていくことなどしないって」
「……はい」
「でも私はね置いていく置いてかないじゃないのよ。私が絶対に側にいるアリエルから離れない。あなたが逃げても私があなたを追いかけるわ」
「でも、私はあなたを、クロリア様を作って心をもてあそんで――」
「なら、今日からアリエルは私のお母さんね。その胸に母性を感じちゃうわ。ばぶぅ」
アリエルは泣きながら笑う。「バカじゃないですかクロリア……」私に様を付けないアリエルに心が繋がった気がした。私はそんなアリエルを強く強く離さないように抱き締めた。
「あー黒髪の女、動くと一瞬で殺すわよ。そこもまだ私の間合いよ」
私は何かをしようとした黒髪の女に忠告をする。
「はいはい、なら降参よ。私はこの世界に壊れて欲しくないわ。でもねズルは許せないのよ」
「ズル?」
私は黒髪の女の言うズルのことを聞いた。なるほど、確かにあれはズルと言えばズルよね。
「だからと言って、ティアは渡せないわよ」
黒髪の女は少し考えると「ならこうしましょう」と見逃す条件を提示した。
・一つ、そのスキル上げのことは口外無用。
・一つ、ティアを使ったスキル上げはあなた達以外に適用することを禁ずる。
・一つ、見逃す見返りとして、デスの名を冠するものと敵対しないこと。もちろんデスの名を冠する者達も今後あなたと敵対することはない。
「これが唯一私が譲歩できる条件よ」
「無理ね、オババを殺したあなたをこのまま許す気はない」
黒髪の女は私の言葉に首をかしげる。
「ジュリエッタなら死んでいないわ」
「は? 死んでるのは確認したわ」
「よく見てみなさい」
その言葉に私はオババの死体に目をやると、いつの間にかオババはマップに現れ鑑定眼でも表示されるようになった。
「どう言うことよ」
「私が可愛いジュリエッタを殺すわけがないでしょ。私がしたのはジュリエッタの年齢と記憶を殺したのよ。私との記憶をね。そのせいで仮死状態になったようね」
そう言うと黒髪の女はオババの死体を見つめ寂しそうに笑った。
「わかったわ。でも私はあなた達デスに言ったわよね”仲間を傷つけるような敵として現れたら容赦しない”と」
「傷つけてないわよ?」
「アリエルを宙吊りにして、お腹を殴ったでしょ!」
黒髪の女はまるで自分が悪いことをしたと思われるのは心外だと言わんばかりに首を振る。
「あれは意味があってしたことよ。
「アリエルを助けるために殴ったと?」
「そう言うことね、でもジュリエッタと私の歳月を消さなきゃいけなかったことでイラついてたから八つ当たりしたかもしれないわね。それは謝るわ」
自死のことはアリエルも認めている、オババも死んでない、そしてティアも見逃すといっている条件付きだけど。
だけど、それはあちらの提示条件だ。こちらにメリットがない。
「なら、私からも条件をつけるわ。それで見逃してあげても良い」
「見逃すのはこちらなんだけど……。まあ良いわ言ってみなさい」
これ以上の戦いは避けたい黒髪の女は、私の提案する交換条件を聞く気になっている。まあ、世界を壊してまでルールに固執しても良い結果は得られないそのくらい考えられる頭はあるようだ。
そして、私の条件は黒髪の女の力である”
「あなたの能力は把握したわ、選択したものに死を与える力よね」
「あの一瞬でそれを見破るとはすごいわね。ええ、そうよ。それがあなたの望みと関係あるの?」
「この剣に宿るクロイツの魂、あるいは私の肉体にある使徒を殺さずにはいられない衝動を殺してちょうだい」
クロイツが自殺した原因である殺意の衝動、それさえなければクロイツは悩む必要がない。子供の時からあれほど辛い目に遭ったクロイツを私は放っておくことなどできない。まあ、私でもあるのだけど、私のは経験ではない分辛くはない。だけどクロイツは辛かったろう、そして今もまだその殺意の衝動に悩まされている。
それをなくすチャンスが今なら私はなくしてあげたい。
「私が、あなたの存在を殺すかもしれないのにそれをやらせるの?」
「もし殺意の衝動を消してくれるなら私はあなたの言うことを信じるわ」
「クロリア危険です!」
アリエルの言うとおり確かに危険だ。黒髪の女は自分の殺気も殺してるでしょうし、殺意もなく私を殺せるでしょうね。だけど、どうしてもクロイツを助けたい。
「アリエル、あなたも知ってる通りクロイツは元の私よ、そのクロイツの声が聞こえるのよガリウスを殺したくないって。泣いてるの。だから助けてあげたいの」
「クロリア……」
「良いわ、その殺意の衝動殺してあげる」
黒髪の女は穏やかな表情でそういった。まるで愛しいものを見るように、その表情が何を意味するかはわからない、だけどわたしはこの表情をする女は信頼ができると思った。
「たのむわ」
黒髪の女は私の頭の上に手を奥とすべてを見透かすような目で私を見る。「これね、
「終わったの?」
それは本当に一瞬だった、これでクロイツの悩みが消えたと思うと拍子抜けだが本当によかったと思う。
「ええ、これであなた、いいえクロイツはガリウスや使徒を見ても反射的に殺そうとは思わないわ」
「そう、ありがとう。約束通りあなた達デスには今後関わらないわ。もちろん私たちに危害が及ばない限りだけど」
「ええ、そうしてちょうだい。正直あなた達に関わってる暇は私にはないから」
「ねえ、最後に一つ質問があるわ」
「なにかしら」
「あなたの名前とガリウスとの関係を教えてちょうだい」
私に名前を聞かれた黒髪の女はなにかを唱えると暗黒のドームを作り周りの世界との情報を遮断する。
「敵対? というわけではないようだけど」
「これは内緒の話だから世界を隔離させてもらったわ。これから話す話はあなたの胸の中にだけに留めて。これを話すと言うことはあなたと敵対する気は絶対に無いという意思表示だと思って欲しい」
そう言うと黒髪の女は私の疑問に対して全てを答えた。
「そう」
「驚かないのね」
驚愕の事実だったが何となくだが分かっていた気がする。
「私としてはガリウスが誰であろうと関係ないわ、好きでも嫌いでもないしね。それはクロイツとシルフィーネの領分だわ。それにあなたがデスのトップなのは分かっていたしね全て許容範囲のことよ」
「ふむ、では一つ忠告しておきましょう。この世界はひどく脆い。まるで薄いガラスの上に作られた世界のように。だから全力で戦わないこと。この世界が、その娘達が大切ならね。力を押さえる戦いかたを覚えなさい」
「分かったわ。もう、用はないわ行きなさい」
「まあ、でもあなたにあえて良かったわ。ガリウスがあなたのことを好きになったのがわかった気がするわ」
黒髪の女が私をクロイツであるかのようにそう言う。私が好きなのはアリエルとティアなんだからガリウスとかの話を出されても困るのよね。「私はクロイツじゃないわよ」と黒髪の女に吐き捨てた。
だけど黒髪の女は笑って言う「シンヤもそうだけど人間の大本は変わらないわ、あなたの根底はクロイツだしシルフィーネなのよ」と。
「それでガリウスがなんでクロイツを好きになったの?」
「ふふふ、それは自分で考えなさい。じゃあね」
そう言うと黒い渦に包まれ、黒髪の女はその場から掻き消すように消え去った。最後に意地悪をしたというところだろうか。いけすかない女だわ。
私は
暗黒のドームが消えると、みんなが私の周りに集まり心配そうに私を見る。
「ごめんね、助けに来るのが遅れて」
「クロリアさん?」
ティアが私の名前を疑問系で聞く。シルフィーネかもしれないということだろう。
「大丈夫よ、私はクロリア、他の誰でもないわ」
アリエルが不思議そうに私を見て言う「でもなぜ
「私にもわからないのよね、シルフィーネとクロイツの記憶が流れ込んできたと思ったらいつの間にか抜いていたわ」
みんなを助けたいと言う心があり得ないことを起こしたのかもね。
「でも、助けに来てくれたクロリアさん格好よかったです」とティアが潤んだ目で私を見る。ふむ、なるほどここはもう一度
「え、なんで?」
ちなみに、あらゆる魔法の知識で魔法を使ったけど発動することはなかった私はB・W・クロリアからただのクロリアに戻っていた。ちなみに
「ちょ! シルフィーネ、クロイツ! 力を寄越しなさいよ!」
だけど私のといに二人は答えることはなかった。何度呼んでも応答なしだ。記憶はあるのに力だけが奪われた。なんなのよあんたらわ!
「う~ん、うるさいのだ。まだジュリは眠いのだ」
私が私の中の二人に憤慨していると、眠そうな声で私を罵倒する声が聞こえた。オババが起きたのかとそちらを見ると大きな黒いローブを着た超絶金髪美幼女がいた。
「え、だれ?」
ジュリはジュリなのだ!