強くてニューゲーム   作:トモちゃん
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4話

魔導国。

この地に残った最後の至高の主が治める楽園。何と素晴らしい響きであることか。

自分たちは聞いたことが無いが、至高の主が言うのだからそれは存在したに違いないのだ。

「アウラ、この農場が君が言っていたものだね?」

「そうだよ。小麦、リンゴ、オレンジ、牛や豚もいるね」

「せ、世話をしているアンデッドはアインズ様が作られたんでしょうか?」

「皆さん、一つ、これを食べてみて下さい」

いつの間に取ったのか、パンドラズアクターがリンゴを一つ差し出した。

慣れた手つきで皮をむき、綺麗に切り分けると守護者達に配る。

「美味しい。けど、特別な効果はないようね」

「うん、美味しい。すごく甘いよ、これ」

「ほ、本当だ。いつも食べてるやつより甘いね、お姉ちゃん」

「蜜ガ多イナ。糖度モ高イヨウダ。コレハ旨イナ」

「甘さだけじゃなくて酸味もちょうど良いでありんすね。後味がさっぱりしていんす」

「なるほど…これはおそらくですが、魔導国産ということですね」

「流石はデミウルゴス殿!私も同じ意見です」

「ああ、そういうことね」

「え?どういうこと?三人だけで分かってないで説明してよ」

アウラが自分たちと異なる反応を見せる三人に不機嫌そうに詰め寄る。

 

「ああ、食べてみてわかったと思うけど、このリンゴは特別な効果があるわけではない。にも拘らず、レアなリンゴと遜色ない旨さだ。つまり「相当な品種改良を行ってきた、ということですよ。アウラ殿」

「それも凄い世代を経てきたはずよ。徹底的に味を追求してきた品種ね」

「あ~君たち、私の台詞に被せるのは止めてくれないかな?」

クイッと眼鏡を直しながらデミウルゴスが続ける。

「このリンゴ一つにしてもどれだけの年月を掛けてきたか良く分かるというものだよ。それに品種改良というのは時間も手間暇もかかるも「つまり、このリンゴを見ただけで魔導国の国力、技術力というものが分かるということです」

「パンドラズアクター、ここの作物は全てこれに相当する素晴らしいものだと想像は付くけれど、勿論これだけではないのでしょう?」

「ええ、これをご覧ください。先ほど、アインズ様に許可を取って宝物殿より持ち出したものです」

パンドラズアクターが大袈裟な素振りで虚空からアイテムを取り出す。

「ム、コレハ刀カ?素晴ラシイ。斬神刀皇ニモ劣ラヌ業物トミエル」

真っ先に反応したのは武人であるコキュートスだ。

「全く君たちは…ん?この刀はユグドラシルのものでは無い?この刃の刻印は、ルーン文字?」

「流石はデミウルゴス殿!左様でございます!この刀の材質はヒヒイロカネ。それ自体はユグドラシルにもありました。ですが」

「特殊な効果についてはこのルーン文字の力ということね?ユグドラシルではなかった効果だわ」

「そうです。希少なデータクリスタルを使用せずに神話級アイテムを作成しているわけですよ!つまり、神話級アイテムを量産することすら可能なのです」

「マジで?」「す、凄いです!」

ダークエルフの双子は素直に驚いた。神話級アイテムは至高の方々でも入手するのが難しい非常に希少なアイテムの筈。それを簡単に量産出来るとすればナザリックの戦力はどれだけのものになるだろうか。

「図書館の一角には魔導国の技術書が集められております。私も全てを見たわけではありませんが、これらのアイテムの他、法律に関するものも大量にございました」

「既に準備は万端。あと、アインズ様の国を作る為に必要なものが国民ということね」

「甘い蜜に浸したような楽園を作る。つまり、アインズ様は力での支配を望まれてはいないということだね」

「何でさ?人間の国があるならさっさと力ずくで占領しちゃったら早いじゃん。アインズ様が支配して下さるんだから最高の国になるに決まってるんだし」

「力で占領することは簡単よ。でも、支配を維持するのは大変になるわ」

「我々ならそれも問題なく出来るでしょうが、アインズ様に無駄な労力を払わせるわけにはいかないからね」

「力で押さえつけられた人間たちはどれだけ血を流そうが自由を諦められないでしょう。だからといって、反抗する気力を根こそぎ奪ってしまえば生きる気力も無くなり労働力をしては役に立たなくなるかもしれません。ですが!」

「アインズ様が言われるような、民が幸福に生きられる楽園のような国であれば反抗する必要すら考えないということよ」

「そういうことです。自分から安定と繁栄を捨てるような馬鹿はそうそう居ないでしょうからね」

「ツマリ、善政ヲ敷くコトガ結局ハ安定的ナ支配ニ繋ガルト言ウノダナ?」

「んで、結局私たちは何をすれば良いんでありんすか?」

目指す目標は分かった。それを達成するためには何をすれば良いのか?大事なのは、聞きたいのはそれだ。

「最初は地味な仕事になるだろうが、暫くは我慢してくれるかい?」

至高の主のお役に立てるならばそれは何よりも幸せなことだ。どんなことでも喜んでやり遂げて見せる。

「当然でありんす。さあ、指示をよこしなんし」

 

アルベドが守護者統括として威厳のある態度で各守護者に命令を下していく。

転移から既に数日が経過している。

その僅かな期間で多くの情報が得られたのは、偏に至高の主の慧眼によるものだ。

大きな都市を遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)により発見し、不可視化の能力を持つ僕を転移により潜り込ませることにより、各国の重要な情報が大量に集まっていた。

「では、コキュートス。貴方はトブの大森林に生息する亜人たちを支配なさい」

「アウラノ報告ニアッタリザードマン、フロッグマン達カ、心得タ」

「アインズ様の御威光を汚すことが無いように。力ではなく忠誠を植え付けるの。亜人たちは強者に従う本能があるらしいから、人間たちよりは容易のはずよ」

「承知シタ。ダガ、私ニモ初メテノコトダ。デミウルゴス、相談ニノッテモラエルカ?」

「当然だよ。私たち守護者が一丸となって協力しなくてはアインズ様のお役には立てないだろうからね」

「そういうことです。アインズ様の智謀は我々を遥かに凌駕しておりますので、バラバラに働いたところでアインズ様の足を引っ張るだけになりかねません」

「シャルティア、貴方はパンドラズアクター、マーレと共にカッツェ平原でアンデッドを使役して農場を作成なさい」

「了解でありんす。アインズ様の妃として全力を尽くすでありんす」

 

「妃?貴方、覚悟を決めたの?」

もし中途半端な覚悟であるなら許すわけにはいかない。

「ええ、もしぺロロンチーノ様とアインズ様が敵対したとしても必ず止めてみせるでありんす」

「何を言ってるの?アインズ様に全てを捧げるつもりがないならその首を刎ねるわ」

全ての忠誠を捧げることが出来ないものなどいらない。このナザリックにそんなものが居てはならない。

いつの間にか握られていたバルディッシュに殺意を込める。

「創造主を弑することなんて出来んせん。でも、アインズ様に手を出させるようなことも止めてみせんす」

「そんな都合の良いことが」

「お二方はとても仲が良かったの!どちらかが生き残っても残された方はずっとお心を痛めることになるわ!だからよ!」

シャルティアは普段の言葉遣いも忘れ叫ぶ。

「なるほど、アインズ様の仰る通り、NPCは創造主に似るものなのね」

ぺロロンチーノは仲間との輪を大切にする男だった。仲間が喧嘩して居れば自分が道化になって仲裁していたものだ。

「分かったわ、良いでしょう。シャルティア、アインズ様にお話を通しておきます」

ぺロロンチーノは特にアインズと仲が良かった。

その創造物であるシャルティアはアインズからは離しておきたかったが仕方がない。

 

「話を戻して良いかい?」

女同士の話題には触れるべきではない。出来る男デミウルゴスは何事も無かったかのように話題を修正する。

「私はアベリオン丘陵の亜人たちを制圧してくるよ」

「そう、どの位かかりそうかしら?」

「恐らく一月といったところかな。もう少し前倒し出来るとは思うけどね」

「で?あたしは?」

「君とアルベドは共にナザリックの守護を頼むよ」

「何でよ!あたしにも仕事ちょうだいよ!」

アウラの小さい手がデミウルゴスの襟を締め上げる。

「落ち着き給え、ナザリックの防衛程重要な役割も無いだろう?」

「それはそうだけど…」

自分も主の役に立ちたいのに侵入者が居なければその機会が得られないではないか。

「アウラ、貴方は私と共にアインズ様の護衛についてもらうわ」

「本当?やった!」

「ええ、ナザリック周辺は主に人間の国。貴方のがアインズ様に懐く姿は人間たちの警戒感を解くのに役立つでしょうからね。子供らしく甘える姿を見せるのも貴方の仕事だと思いなさい」

今まで優越感に浸っていた守護者達の目が一瞬で嫉妬に染まる。

「二人とも、精々アインズ様に迷惑をかけないようにするでありんすよ」

最もアインズに迷惑をかけるであろう守護者の一人の言葉はむかつくが、気を引き締めなくてはならない。

「任せなって」「安心してお勤めを果たしてきなさい」

「さあ、それでは行動に移るとしましょうか」

卵頭の号令で一斉に行動を開始する。

世界を至高の主に捧げるために。

 








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