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だれでも
ファンタビ2 黒い魔法使いの誕生 レビュー
①全体的な感想と軽い考察
クリーデンスの件やダンブルドアの過去についてハリポタを踏まえたネタバレをしています、注意。

FB2は起承転結の”起”に当たる作品だったなと感じます。
そしてFB1は所謂、前日譚・主要人物紹介だった。だからFB2で答え合わせを期待してはいけない。むしろここが始まり。
FB3,4,5で承転結が展開されるのだと期待します。

フォロイーさんが「こんなに詰め込んで、FB2は5時間くらいの映画になるのでは」なんて仰っていたが、実際に観てみると「本来ならば5時間の映画を2時間に収まるようギリギリまでカットした」という印象です。
そして実際に多くがカットされていたのだろう。少なくともトレイラーで見た、舞踏会のリタや、屋上のクリーデンスとナギニの場面はカットされていた。また、ゲラートと座って対話するクイニーの場面もどうやら存在していたがカットされたみたい。
あれらは人物の内面や人間関係を物語る大事な場面だったのでは?と思っているが、メインのストーリーラインにおける優先順位があるのだろうから残念だけど仕方ないのかな。

ただ結果的に、主人公ニュート周辺以外の人間関係は少し唐突に感じる部分もある。私はハリポタオタクだし、ファンタビも事前知識を多く詰め込んで行ったからこそ脳内補完できたが、あらすじ程度の知識で観た方にとっては驚きの展開と言うよりも面食らうだけなのでは?ついていけないのでは?と心配にもなります。
また、多くのカットと速い展開の為に、脇の人物達が勿体無い扱いだったようにも感じます。
ナギニは今後まだまだ活躍出来るし物語が開示されて行くだろうが、亡くなった人物に関してはやはり残念としか言いようがない。
ゲラートの部下の1人クラールは、ダンブルドアに関して思うところがあるような言動だったが、特にドラマは開示されないまま彼は「やはりゲラートにはついて行けなかった」として退場…
どうせならもう少し長生きさせてFB3,4あたりで離反させた方が良かったのでは?と落ち込む。
クリーデンスの面倒を見ていた侍女も登場した次の瞬間には退場。クリーデンスの出生トリックの為だけに使われてしまった印象を拭えない。
しかしハリポタを振り返ればこんなものだった気もしなくは無い。JKRは人物を殺さないタイプの作者では無く、何なら登場して数行で命を散らされた人物は沢山いた。
FB2に触れて私は漸く彼女の作風を思い出したような気もします。


またFB2は起承転結の起に当たる為、答え合わせは無い。終盤に差し掛かって答え合わせが始まったのか?と思っていたら、むしろ新しい問題文を読まされていましたね。
JKRが「分かったつもりでも、そうとは限らないエンディングです」と言っていた意味を漸く理解した。事前知識を元に8割は分かっていたつもりだったが、まさかのどんでん返しをされてしまった。
クリーデンスがリタの異母姉弟、というネタバレはそもそもネタバレですら無かったという事になります。私は既にFB2の大きなネタバレを把握して観に行ったつもりだったが、完全にミスリードにハマっていたのだ。
これは宣伝やトレイラーから深く考察するハリポタファンダムの習慣を逆手に取ったテクだなぁと感心した。隠すのではなく、敢えてミスリードのネタを流す。そうして意外性を管理するのですね。


更に、今作は展開が速いながらも良い意味で印象に残った部分も多く、僅かなモーションで作品を際立たせていたなと感じます。
序盤でピッカリーさんがさらりと、ゲラートの舌を取り除いたと伝える場面は、この映画のトーンの暗さをスタート地点から上手く説明していて好きだな。あぁこれはFB1よりも暗くなるぞ、と覚悟をさせられましたね。

そして、ゲラート一行が他人の家を乗っ取り赤ん坊まで殺した場面。これはハリポタファンならば嫌でもポッター一家を連想してしまう。あの場面で私は赤ん坊を殺さないゲラートを期待したが、そんな事は無かった。彼はとっくの昔に一線は超えていた。ゲラート一行は容赦をしない、紛れもない悪である、と改めて示す意味もあるのだろう。
しかし、赤ん坊の始末は自らの手を汚さず、部下にやらせる為に扉を閉めたゲラートは、僅かながらもやはりヴォルデモートとは人格が違うのだと仄めかされているのだろうか。それとも自らの手を汚さずに他者を使う狡猾生の強調か。

また、女性は顔ではなく花として描かれるレストレンジ家の家系図。強烈な風刺に苦笑いしてしまいます。
女は美しく咲き、実を成す為に枯れていく。それで良い、それが女の生き方。
人格や個性は必要ない。
饒舌に語る事なく、レストレンジ家の男尊女卑思想を表していましたね。
でもよく見ると、レストレンジ家は男子も全員同じ名前を引き継いでおり、男子であっても結局は血と名前を守る為だけに生きているような哀しく滑稽な信条を読み取ってしまいます。
個性や人格を尊重されない環境で、変わり者のニュートと友情を育んだリタ…
ホグワーツ教室の机に彫られていた、L+Nは2人の名前ですね。確かに存在した”その瞬間”を刻まれた机に触れてリタは何を思ったのか…
リタに関しても語りたい事が山ほどあるので、後でまとめたいです。

そして、特に印象深かったゲラートのスピーチ。
この扇動的スピーチの場面、めちゃくちゃ怖くないですか?
だって、現実でこういう事をしている有識者・指導者を我々は沢山知っている。情報と知識を持たない民衆の憎しみを煽り、対立させ、攻撃させ、犠牲者を自らの思想の正当化に使用する。
自らの手を、名を、汚す事なく、自らの過激な思想と攻撃性を神聖化させるテクニック。
またゲラートがスピーチで使った言葉も、絶妙である。自分はマグルを憎んでいる訳では無い。ただ我々は彼らより優秀なのだから、我々が暴走する彼らを管理してより良い社会を作ろう。差別ではなく区別、侵略ではなく管理、だと。これは正に人類が過去に、また現在も一部で実践されている自己正当化の主張パターンではないか。
JKRはハリポタ時代以上に、マグル世界の政治と大戦の歴史を魔法界とリンクさせているのだ。トレイラーで既に見ていたが、マグルの大戦のビジョンが共有される場面の緊張感は凄かったな。既にFB5は1945年が舞台設定になると発表されている。マグル世界は終戦の年、そして魔法界はダンブルドアとグリンデルバルドの伝説の決闘があった年。
そういう事なんですよね。

ちなみに今作は舞台が1928年のパリだったが、この年のパリと言えば、パリ不戦条約の締結。
これは戦争の違法化を複数国が集まって取り決めようとしたのに、結果的には各国が自国の解釈を正当化しようとして分裂してしまった、人類の滑稽で哀しい歴史の一部。
今作の物語を振り返れば、なるほど。そういう事だったのねと納得せざるを得ない。

あぁ、あと、主人公の周辺が丁寧に描かれていて安心しました。ゲラートとアルバスが本格的に参戦するのでニュートが霞んでしまうのでは?と少し心配でしたが、全くそんな事はなかった。むしろ誰といても人間関係の軸に立つのはニュートなのだと確信させられた。
主人公はやはり主人公である。嬉しいです。
ニュートの周辺の人間関係についても後で個別に感想を綴りたい。ティナの事、リタの事、テセウスの事。そしてジェイコブとクイニーの事。


起承転結の起である今作で散りばめられた前振りや伏線、語られなかったストーリーの数々。
今後に期待する事も沢山あります。
まずはマグゴナガル先生。
本来ならば、彼女はFB2の時点ではまだ生まれてすらいない筈。だから成人女性の姿で教員をしているのはおかしい。
ミネルバマグゴナガルという同姓同名?とも思ったが、本当に私達の知る”あのマグゴナガル先生”だと仮定すると、やはりおかしい。
ここで、タイムトラベルの考察になる訳です。
FB2はHP3とポスターの構図も似ているし、トレイラーやサントラ、ゲラートの台詞でやたらと”時計”が強調されていて、実はHP3同様にタイムトラベルが関与しているのでは?と考察されていました。ダンブルドアが時計台の横に立つ場面では、時計は7時半(=HP3映画でハーマイオニーがタイムトラベルした時刻)を指し示す。
ハリポタ3巻で、ハーマイオニーに逆転時計をあげたのはマグゴナガル先生なんですよね。
逆転時計でどこまで戻れるのか、どう使うべきなのか。その辺のアドバイスは、もしかして彼女自身の経験に基づいていたのか。
マグゴナガル先生はダンブルドア先生の、教え子であり、同僚であり、同志であり、戦友である、特別な存在です。
実はダンブルドアが珍しく自分の過去をシェアした相手でもあります。
その辺の人間関係を考えると、何らかの理由があって、マグゴナガルは自分が生まれる前のダンブルドアに会いに来ていたのかなと…
マグゴナガル自身も喪失や挫折の多い人生で、もしかしたらその辺のタイミングも関係して、ダンブルドアの過去を訪問していたのだろうか。
分からないですが、上手いトリックがあったら良いなぁと期待しています。
私は好きな作家にはとことん期待したいので、JKRのミスとか後付けだとかは考えたくはない。次もまた驚かせて欲しいのです。この女性には。

次に、ユースフカマ。結局のところ、彼は使命を果たせなかったという事になるのだろうか?彼の今後は…?
母を奪われ、命懸けの約束に縛られ、運命に翻弄され、しかも土壇場で誤解が判明し、何だかんだでニュート達と共闘し…
私は彼の事を応援したい。人生を取り戻して欲しい。
FB3の冒頭であっさり亡くなっていたりしたら悲しいのでどうかそれは勘弁。
優しい未来に期待します。

そしてナギニ。トレイラーの時点で相当に騒がれた彼女だが、彼女の物語もまた次に持ち越し。一体どのような背景があり、またどんな呪いでそうなったのか、そして彼女の道がどうやってヴォルデモートに繋がるのか。
それを知るのは、ハリポタファンとしては怖くもあり楽しみでもあり…
今作の時点でヴォルデモート/トムリドルは既に世界に誕生している。今後確実に学生姿の彼を我々は目の当たりにするだろうと私は確信しています。トムリドルが秘密の部屋を開けた事件とかもね、バジリスクなんて特殊な生き物が関与するのだから、ニュートがその件でダンブルドアから意見を求められる展開もあるのでは?
ニュートと似たような過去を持つハグリッドもきっとそこで登場する。
何にせよ、ハリポタへの繋がりはやはりワクワクさせられるし、ファンタビを経て読み返すハリポタの世界が今までと違って見えたら更に面白いです。

そして、ニコラスフラメル 。
今回はさほど活躍のなかった彼は何の為に登場したのか?と思う人もいるだろう。特にハリポタ原作を読んでない方にとっては、誰このお爺ちゃん?状態かもしれない。
ダンブルドアが共に研究をしていた時期もある大事な友人の1人で、賢者の石を創り出した錬金術師で、ハリポタ1巻においては直接登場しないものの濃厚な存在感を醸した存在。
ファンタビシリーズでは今後もそれなりに重要なキーパーソンとして続けて登場するのだろう、と私は確信しています。
ダンブルドアが彼と過ごしていた時期はダンブルドア自身の過去のキーにもなるし。
これはクリーデンスについて考察する時に詳しく書きたいですが、
ダンブルドアの妹はArianaという名前です。
そしてクリーデンスの本名とされる名前はAureliusです。
Ar銀とAu金…
(追記:ラテン語で金はAurum、銀はArgentumです。
ハリポタは呪文とかもそうだけど、ラテン語由来の言葉が多い)
そしてクリーデンスは恐らくダンブルドアがニコラスフラメルと共に研究をしていた時期に生まれている。
錬金術師と賢者の石、そして金銀の弟妹…
偶然でしょうか。

ダンブルドア家のことは、例の詩も含めて今後更に多くが開示されるのでしょうね。
そう言えばダンブルドアの父も、HP3で登場したシリウスブラックも、アズカバンにいたんだよなぁ…と考えちゃいますね。
ダンブルドア父はダンブルドア妹であるアリアナを暴行したマグルに反撃し、アズガバンに投獄され、そこで獄死したとされているが、これはどこまでが本当なのかな?
ダンブルドア母はダンブルドアが若い時に亡くなっていると確定しているが、父に関しては不透明では…?だってアズガバンにいたのだし。
アズガバンは脱獄できない場所ではないとシリウスが示している。
ダンブルドア父が他の女性との間に子を成した可能性はゼロではない。
クリーデンスがダンブルドアの一族というのがどこまで真実かはまだ分からないが、ゲラートがそうだと主張し、クリーデンスこそが打倒ダンブルドアに使えると確信するからには、ダンブルドア家のあれこれは物語の大筋に入るに決まっている。
誰のペットにもならない筈の不死鳥がダンブルドアの側にいた理由…
ハリポタ時代は特に深くは考えていなかったが、振り返れば不思議な存在だった。
JKRは膨大な量のネタと背景を詰め込む人なので、本人が口にしていたように、昔は披露出来なかったネタをファンタビシリーズで解き明かせるのは喜ばしいのだろう。

作者の喜びは作品の熱に現れる。JKRの魂がギュッと詰め込まれた2時間を体感して寝付けなかった先週の夜…
ここでは軽く感想を述べるに留める予定だったが気付けばこんなに饒舌になっていた私は、今も昔もやはりこの女性の世界に魅せられているのだ。
アルバス・ダンブルドアは言った、
「言葉は尽きるのことない魔法」だと。
それならば、言葉で世界を彩りを変える小説家が、魔女や魔法使いではない筈がないのです。

ファンタビシリーズは漸く始まったばかりという印象ですが、製作陣にはジェイコブの言葉を送りたい。
I’m already enchanted.
私はもうすっかり、魔法にかけられているのだから。
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