大一番への予行演習のような、会心のかち上げだった。高安が立ち合いで大栄翔をのけ反らせ、最後はもろ手で豪快に押し倒した。結びで2敗を守って迎える14日目は、貴景勝との直接対決。勝てば優勝争いは振り出し、負ければおしまい。最高の舞台が整った。
「きょう一つ、力を出し切って勝てれば、明日(14日目)につながりますから。前に出られたんで、いい気持ちで臨めると思います」
折り返しの8日目から連勝街道。それでも、12日目の栃ノ心との大関対決では、相手有利の右四つで組んで不満顔。だからこそ「先手先手、全開で」攻め、自分自身に活を入れた。
3横綱と豪栄道が休場し、栃ノ心と御嶽海も圏外と優勝経験者不在の最終盤。高安は今年だけで初、春両場所で優勝次点を経験したが、本格的な優勝争いは初めてに近い。12勝を挙げた初場所は栃ノ心と2差。同じく12勝の春場所では、鶴竜と1差だったものの14日目に優勝を決めた横綱に千秋楽で勝ち、差を詰めただけだった。
重圧の影響は-。取組前に「安全に勝ちにいくのか、思い切ってかち上げか。迷うよね。大事な相撲だけに、余計なことも考える」と、初手に注目していた八角理事長(元横綱北勝海)は「(勢いが)つくんじゃないの。かち上げから、はたきも多かったけど気合というか」。強気の選択を評価した。
決戦へ「精いっぱいやるだけ」と追う立場を強調した高安。無心で攻め、ピンチを初Vのチャンスに変える。 (志村拓)