とあるフレンチの食事会に3人で参加予定だったのが10日程前に一人が脱落、慌てて埋め合わせを図ったが幸いなことに2人が急遽参加ということで一件落着。4人用のテーブルは4人揃った形になった。
メニューは予め決めていたがメインは3つの中から選択ということは前日の facebook で知った。
小振りのグジェールは一人2個だけ。ボワイエ・レ・クレイエールや昔よく行ったランスのル・シャルドネなどはそれこそ丼鉢山盛り出てきたのだが・・・ グジェールを摘まみながら分厚いワインリストと睨めっこするのが当時の慣習だった。
お仕着せの所謂「ペアリングワイン」は何と1万3千円也、しかもシャンパーニュは別料金。それも NM としては最も印象悪いフィリポナのノン・ドゼ 2000円也、ましてやプレミアム物として感心しないクロ・デ・ゴワッセが1グラス何と5500円とは・・・ 結論から言わせて貰うとペアリングは拒否、ボトルでオーダーすることにした。
ドラモットのブリュットNV、好みの辛口なのでフィリポナよりはマシと考える。
で、最初に登場したのが「カリフラワーのムースと冷たいトマトにヘルシーチップ添え」。カリフラワーのムースなのかトマトのジュレなのか、どちらかが青臭いのは明らか。電子レンジでチンしたみたいな野菜のチップは好みではない。
次は牛タンとフォワグラのルクルス、画像では大きさが分からないはずだが 2.5センチ×4センチほど、厚みは2ミリ程度のそれこそアミューズ・グール。これがグラン・シェフの食事会用の一皿とは・・・ まるでミニチュア料理の世界である。
次は鰯とジャガイモのテリーヌ。愛弟子のスペシャリテとのことだが先ずジャガイモに旨さが無い、そして何より酷いのは鰯の小骨の多さである。これが気にならないというのは余程の味音痴ではないか。風味の無いトリュフに異様に香るのは塩かまたはオイルか? アンチョビ臭いクリームも余計である。添えられるスープも至って普通。フランスのジャガイモを使わなくても旨いジャガイモは日本にだってあるはず。
スープの後にまたスープというのも常識外だが次の料理は「雉のブイヨン」と題されていた。雉を珍しい食材とは考えない私には全く感動を覚え無い一皿、上柿元氏のコンソメには足元にも及ばないただのスープ。
本日の唯一美味しいと思えた一皿が「甘鯛のうろここんがり焼き、ビーツのヴィネグレット」、赤甘鯛だったがこれは美味、しかしソースは余計。甘鯛の繊細さが台無しになってしまうのでソースは残した。
そして魚がまた続くのだが「クエのポワレ、ソース・メディテラネ」、ガルニチュールは凝ってるものの肝心のクエがダメ。養殖なのか焼き方が下手なのか水っぽい。こんな不味いクエをメインの一つとして客に供して恥ずかしくないのか不思議でならない。
メイン料理は「川俣シャモの黒米包みのロースト 焼き茄子 セップのカプチーノ」と「熊野牛のソテー 赤ワインのソース」、2人分の提供で「ジビエのトゥルト」。各1皿に2人でジビエを頼んだが、ビーフに異物混入ありというお粗末な結末となった。
2人でしか注文できない一皿は何のジビエか判らないほど煮込まれた青首鴨? 真ん中にフォワグラが挟まっているのだがこれが何の香りもしない。ソース・ペリグーならトリュフの香りも期待できたかもしれないが香らないソースという代物。
シャンパーニュの後にブルゴーニュ白ワイン Chassagne Montrachet 1er Cru 2009 を注文したのだがソムリエの一言に愕然としてしまった。「あまりお勧めできない」という。
どうやら日本人を妻に迎えたサントネのドメーヌでシェフの知り合いというだけでオン・リストしてあるというのだ。
仕方ないので「じゃあこれを・・・」と頼んだムルソー・シャルム・オスピス・ド・ボーヌにも「至って普通」と勧めようとしないのだ。無視して「構わないから持って来て」と頼む始末。
これまたその曰く因縁付きの生産者が落札したキュヴェ・ド・バエーズル・ド・ランレイである。
しかしオスピス・ド・ボーヌのワインは醸造所は別のため、熟成の場と瓶詰めだけがそのサントネであるだけなのでワインの良し悪しに影響はないはず。
結論的には大変美味かったと申し上げておく。
ソムリエの仕事は「価格に見合ったワインを購入してセラーで熟成させ、飲み頃を迎えたワインをオン・リストして客に選んでもらう」これ基本であり、シェフの知り合いだからオン・リストするなど以ての外と考える。あってはならないことだ。
さて魚料理には赤を合わせるのが私のやり方で選んだのは知る人ぞ知るトレバロン、他のヴィンテージもあったが 2000年が1000円ほどの違いなので当然西暦2000年をチョイス。これが実に美味なり。
そして最後にはロベール・シュヴィヨンのニュイ・サン・ジョルジュを選んだ。4人でボトル4本に、異物混入のお詫びとしてコニャックを頂いて何とか終わった。
上柿元氏の料理に親しんだ者としては粗漏、杜撰としか思えなかった料理である。ソムリエの態度も良くない、客が頼んだワインを供しようとしないソムリエは失格である。