喧嘩バス事故相次ぐ中国、自動運転の“低い壁”

葛藤を伴うはずの科学技術が急速に発展する理由

2018年11月21日(水)

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クレーンで川から引き揚げられる路線バス(写真:新華社/アフロ)

 最近のショッキングなバス事故は、日本でも話題になった重慶路線バスの転落事故だろう。重慶市の22号路線バスが10月28日、万州長江二橋から約50メートル下の川に転落し、運転手および乗客15人が死亡した。31日にバスが川から引き揚げられ、地元警察がカメラ付きドライブレコーダーなどを確認したところ、転落の原因は48歳の女性の乗客と運転手が殴り合いになり、運転を誤ったことと判明した。道路工事の影響でバスが路線を変更、女性が降りたかったバス停に止まらなかったことで怒り出し、運転手に自分を降ろすように要求したが、運転手は「バス停以外で止まることができない」と拒否。口論から殴り合いに発展したのだった。

 この一部始終が車内のビデオカメラに映っており、それがネットに流出したことが、より事件の注目度を高めた。女性の乗客が携帯電話を持った右手で運転手の右側頭部を殴ると、運転手も右手をハンドルから離して女性の首を殴り返す。すると女性はさらに運転手の右肩を殴り返し、運転手も右手で女性の右上腕をつかんだ後、右手を戻してハンドルを左に切ろうとしたところ、進路がずれて対向車線の小型車にぶつかり、川に転落したのだった。警察は「乗客に攻撃されたときは反撃せずに運転に集中すべきであった」として、運転手は重大な公共交通運転手職業規定違反に該当すると指摘。女性の行為も安全運転妨害に当たるとしているが、この二人とも死亡しているので、彼らの罪が司法で問われることはない。小型車の運転手はケガをしたが、一命を取りとめた。

 国際社会がびっくりしたのは、実はこれは決して特殊な話でもないということだった。この事件から2週間に発生した、バス運転手と乗客が喧嘩したことが原因の事故、トラブルは新聞に報じられているだけで15件。いずれも死者が出なかったことは幸運であっただけで、死者が出ても不思議ではなかった。重慶の死亡事故に関連して各地方紙も類似のトラブルを報じたのであって、従来なら報じられることもなかっただろう。バス運転中に乗客が運転手の態度に腹を立てて、殴りかかったり、首を絞めたりすることは、日常茶飯事なのだ。

 中国の最高人民法院ビッグデータ研究院が最近発表した調査によれば、バス運転手と乗客のトラブルで刑事事件に発展したケースは2016年1月から18年10月までに223件、2017年は2016年より4.8%増えた。立件された事件の7割で被告は公共安全危害罪および故意の傷害罪に問われた。56%のケースで乗客が運転手を攻撃している。54.5%が営業運転走行中に起きており、うち46%のケースで運転手が急ブレーキを踏むなどの緊急措置で対応しているという。トラブルの原因の6割は乗車賃や乗降車地点を巡るもの。4割のケースで死傷者が出ているという。立件された9割で被告人は懲役刑判決を受け、半数近くが3~5年の懲役刑、10年以上の長期刑も1%ほどある。

コメント33件コメント/レビュー

AIも人間の行動を予測しての技術だろう。しかし、運転中の運転士に殴りかかるような自らの命さえ危険にさらす非合理な行動はAIの想定外、きっと中国人には通用しないに違いない。(2018/11/22 15:46)

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「喧嘩バス事故相次ぐ中国、自動運転の“低い壁”」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

AIも人間の行動を予測しての技術だろう。しかし、運転中の運転士に殴りかかるような自らの命さえ危険にさらす非合理な行動はAIの想定外、きっと中国人には通用しないに違いない。(2018/11/22 15:46)

運転手に殴りかかるなんて、子供じみて想像力が欠如している。頭がおかしいとしか言いようがない。(2018/11/22 13:52)

>コア技術が育たないのは、自由がないから。萎縮と緊張が奔放なアイデアを阻害する。

これは賛同しかねます。ナチがミサイルやジェット機を世界でいち早く実践投入できたことが説明できない。北朝鮮のように金で技術を買ってきたわけではないです。
そう思いたいということなら100%賛同します。でも残念ながら事実は違います。
きっと中国でも世界が驚く発明が出てくるでしょう。(2018/11/22 13:00)

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