EVが減速する中国、加速する欧州

積極的なEV投資にはリスクも共存

2018年11月22日(木)

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 VWが19年から量産を開始するEV「I.D.」シリーズは、一充電走行距離が550kmにまで達する。EV専用プラットフォーム「MEB」を適用することで、価格もディーゼル車と同等レベルにする計画だ。EVの量産は、独東部のツウィッカ工場、北部エムデン工場、そしてハノーバー工場の3拠点で、年間100万台規模の生産を計画中とのことだ。

日系各社に迫るEV戦略

 日系自動車各社でのEV戦略も動き出している。スペイン政府は、2040年までにガソリン車、ディーゼル車、さらにはハイブリッド車(HV)までも販売を禁止する方針を示した。純然たる内燃機関自動車の制限は理解できなくもないが、電動化で燃費向上を実現しているHVまで制限するのは現実的ではない。ディーゼル車規制の代替として位置づけられるHVの価値に理解を示していないといえる。

 消費者目線で考えれば、PHVと違って家庭内に充電器を設置しなくても良いHVは、燃費特性でも内燃機関自動車を上回ることで価値が高い。その価値を否定する考えは、欧州自動車各社がHVではなくPHVやEVを積極的に推進していることで、仮にHVを市場から締め出しても欧州勢にとっては痛くもない。むしろ、HVを制限することは、HVで強いビジネスを進めているトヨタ自動車とホンダの2トップに対する牽制そのもので、欧州自動車業界の保護政策とも見える。

 2021年から30年まで段階的にCO2排出量を制限する規制が先には控えている。ただし、この規制では自動車各社の商品ラインナップに任せる形で、電動化の種類を制限していないところに合理性があった。しかし、スペイン政府のようにHVまでに制限を加えることの意図は、欧州勢が進めるPHVとEV路線に対する防壁機能としてHVを排除しようとする考えがあるのだろう。

 そのような中、特にトヨタは近年、欧州でのHV販売を急速に伸ばしている。18年1~9月の欧州販売に占めるHVとPHVの割合は46%に達した模様だ。それだけ欧州におけるHVは市民権を得ていることになる。そのトヨタも、いよいよ2020年にはレクサスブランドで多目的スポーツ車(SUV)「UX」のEVを欧州で販売する計画になっている。HVに対する風当たりが強まる中、対抗策の一つとして構える。

 ホンダも19年には欧州で小型のEVを販売する計画だ。マツダも同様に、20年には日米欧向けにEVを供給するという。いずれにしても日系各社としては、欧州自動車各社が進めつつあるPHVとEV戦略に対して十分に競合できる商品が必要とされている状況にある。

 一方、中国市場においては中国政府が2019年から適用する新エネルギー車(NEV)規制の導入に呼応した日系各社の対応が進む。トヨタはNEV対応の一環として、18年9月から合弁相手の広州汽車ブランドでのEV販売を開始した。さらに、トヨタの自社ブランドEVを20年に発売することになっている。

 ホンダは、中国専用EVである「理念VE-1」の生産を来月12月から開始する計画だ。また、提携先の広州汽車集団との合弁企業が約530億円を投じて、年産17万台のNEV生産拠点を構えるという。

 マツダは合弁相手の中国長安汽車集団と共同でLIBやモーターを調達し、マツダがデザインと車体設計を主導する形で中国専用EVとして投入する。そのEVは小型SUVベースとなる模様で、日米欧で販売する独自開発EVとは異なるという。

 日産自動車は、中国で自社ブランド初のEVを18年8月から生産を始めた。先行した日産自動車に続き、トヨタ、ホンダ、マツダが中国市場で追いかける格好だ。

 となれば、中国のEV市場で苦戦するのは外資系自動車各社と真っ向勝負を迫られる中国ローカルメーカーであることは明らかだ。これまでは大規模な補助金で支えられてきたローカルメーカーであるが、昨年から補助金の減額が進んでおり、中国のEV販売にはブレーキがかかっている。さらには本年より、一充電走行距離が300km以下のEVに対する60%程度の補助金減額、150km以下のEVに対する補助金ゼロ化、一方、400km以上の走行距離を出せるEVに対しては補助金アップなど、メリハリのある補助金政策が打ち出されている。

コメント4件コメント/レビュー

EV車は充電用の電源が必要であり、何らかの原因で停電が長時間発生したら、EV車は自動車として役に立たなくなる。国がEV車のみに規制した場合は、その電源確保を担保しなければならないが、本当に可能だろうか?
自然災害による電源消失を何度も経験している日本ではPHV、HVはかならず残して欲しい。(2018/11/22 14:23)

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「EVが減速する中国、加速する欧州」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

EV車は充電用の電源が必要であり、何らかの原因で停電が長時間発生したら、EV車は自動車として役に立たなくなる。国がEV車のみに規制した場合は、その電源確保を担保しなければならないが、本当に可能だろうか?
自然災害による電源消失を何度も経験している日本ではPHV、HVはかならず残して欲しい。(2018/11/22 14:23)

フォルクスワーゲンは、日本でディーゼル販売に乗り出しています。なぜでしょう。。。(2018/11/22 10:56)

自動車業界人(特に日本メーカーの)は地球温暖化問題とその対策を我が事ととらえていないのでしょうか。国の施策で業界環境が変わるから適応する、法規制が進むから対応する、他社が動くから対抗する、商売上の舵取りに関する論調ばかりで、進んで環境問題を解決してゆこうとする意思が全く感じられないが、何故なのでしょう。自動車をはじめとした輸送機がCo2の大きな排出源であるのは間違いがなく、温暖化ガスが招く気温の上昇が気候災害の被害を拡大させていることなど、化石燃料の消費削減と地球環境の保全が差し迫った課題であることは既に疑わしい仮説レベルの議論ではなくなってきているにもかかわらず、責任ある対応策を自ら進んで示そうとしない(日本の)自動車業界には疑問を感じます。(2018/11/22 10:56)

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