【記者コラム】リンクに映える感謝の滑り フィギュアスケート 山本草太2018年11月19日 18時0分
長くて暗いトンネルを歩いたからこそ、太陽の光がまぶしく感じる。華やかなフィギュアスケートの舞台だと、その光もひときわまぶしかったことだったろう。 フィギュア担当になったばかりの記者が、初めて個別取材をした選手が山本草太(18)=中京大=だった。まだシーズンが始まったばかりの今年9月。一つ一つの言葉をかみしめるように質問に応える話しぶりは、大学1年生とは思えない、背負ってきた苦労の重さを感じさせた。 中学1年の時、フィギュアのために大阪から母親と名古屋市内に引っ越した。競技中心の生活は、2年前に一変。練習中に右足首を骨折して、氷には1年半もの間立てなかった。「やれることは全部やろう」と東京や大阪、千葉など全国各地の病院を時には一人で訪れて復帰を目指す日々。自分の努力と実力によって結果を出してきたアスリートにとって、練習ができないのはこれ以上ない苦しみだったろう。 競技を辞めることも頭をよぎった時期を経て、周りの支えに気づけるようになったという。けがでリンクに立てない間もファンから送られてくる手紙。以前は練習が忙しくて読めなかったが、全部読むようになった。 「自分としっかり向き合えるようになって、周りの支えに気づけるようになった」。苦しい時に支えになった声援のありがたみをかみしめ、今は応援を力にかえる。一回りも二回りも大きくなったスケーターが、これからも表舞台で光を放つ。(谷大平)
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