多裂筋という筋肉を知っていますか?よっぽど筋肉に詳しい人じゃないと知らないかもしれませんね。筋トレをやっていてもあまり聞かない名前です。
そんな存在感の薄い筋肉ですが、実はこれ、背中に位置している体幹を支える筋肉の一つなんです。しかも、腰痛にも多裂筋が関与していたりするので、しっかりと理解しておくと、いざという時に役立ちます。
今回はその多裂筋について、役割や特徴、さらには簡単なストレッチ方法やトレーニング・筋トレ方法までを見ていきたいと思います。
多裂筋(たれつきん)とは
背中の背骨を支えている有名で主な筋肉といえば脊柱起立筋。そして、その脊柱起立筋よりさらに深層部にあるのが多裂筋と回旋筋です。
多裂筋はその背中の深部を走行している細かい筋が連なった長い筋肉で、回旋筋を覆っています。
細長いと言っても、実は腰の部分の太さは、背中上部の多裂筋より2倍以上大きくなっており、腰の安定性に一役買っている筋肉です。
英語名は”multifidus”と言い、multi(多くの)とfindo(ラテン語で裂く)がくっついて出来た単語です。深層部に位置していることから、背中のいわゆるインナーマッスルでもあります。
役割としては、主に脊柱の伸展、側屈(横に体を曲げること)と回旋(体を回すこと)や、椎骨(背骨の一つ一つの骨)を安定的に繋げておくことがメインとなり、それ以外にも体幹の動き(例えば前方への屈曲など)には、基本的に関与します。
1)椎間関節の安定・・・椎間関節を安定させる働き
2)体幹の伸展・・・背をそらして上体を後方に曲げる
3)体幹の回旋・・・脊柱を回転軸にして上体を左右に捻る
4)体幹の側屈・・・上体を横に曲げる
背中のインナーマッスルの一つで体幹の動きを支えている筋肉と覚えておくと良いかと思います。
多裂筋のまとめ
筋肉データ | 多裂筋のまとめ |
支配神経 | 脊髄神経の後枝(C3~C4) |
起始 | 最長筋の浅部の腱、後仙骨孔と上後腸骨棘との間の仙骨後面、腰椎の乳頭突起、全胸椎の横突起、第4~7頚椎の関節突起 |
停止 | 各起始部から2~4つ上に位置する椎骨の棘突起 |
筋体積 | 71㎤ |
PCSA(注1) | 10.6㎤※総和 |
筋線維長 | 6.7cm |
速筋:遅筋 (%) | NA |
(注1)「生理学的筋横断面積」の略称。基本的に筋肉が発揮できる力はPCSAに比例する | |
【参照:プロが教える 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典 |
多裂筋の機能と働き
日常生活において
多裂筋はその性質から、日常生活においては主に姿勢の維持に関わってきます。この姿勢の維持というのは、立った状態ばかりでなく、座った状態での姿勢も含まれます。他にも脊柱を持続的に、そして安定的に繋げる役割を持っているため、歩行などの動作において、急な姿勢変更や体を捻った際なども、背骨の椎骨が離れたりしないように守ってくれています。
特に腰部へ行けば行くほど、多裂筋は太くなっていくという特徴から、腰の安定性に関しては大いに役立っていると考えることができると言えるでしょう。腰を安定させたかったら、多裂筋をトレーニングしたりすると良さそうですね。
スポーツや運動において
運動においての多裂筋の役割というのも、一言で言ってしまえば、正しく姿勢を維持したり、椎骨を安定的に繋げておくということになります。
例えば、短距離走などにおいて、上体の姿勢を安定させることは、ブレがなくなり記録が高まります。他にも、走り幅跳びで背中を反らしてジャンプの勢いをつけるといった動きの中で、椎骨を引きつけておき、姿勢を上手く反らす(脊柱の伸展)役割をします。
また、体の捻りが必要なスポーツ、ゴルフなどが該当するかと思いますが、ゴルフのスイングをする時に、上体がブレないように安定的に捻っていく動作において、この多裂筋も関与しています。
多裂筋の特徴
体幹の動きにおける割合はそこまで大きくない?
体幹の動きと言っても様々なものがありますが、基本的に多裂筋は体幹の動きの中でそれほど、主に力を発揮する筋肉ではないとされています。
というのも、背骨の一つ一つの椎骨の根元についており、それら椎骨を安定的に繋げているのが主な役割であるため、体幹を捻ったり曲げたりという動作においては、他の脊柱起立筋などが主に関与していくことになります。
例えば、前屈した状態から体を起こしていく際に必要とされる筋肉は、脊柱起立筋が殆どを担っており、多裂筋は20%程の関与なので、どちらかというと補助的な役割をしているようです。
多裂筋と腹横筋の関係
実はこの多裂筋の、特に腰部にある広い面積の部分は腹横筋という側腹の最も深層にある筋肉と、筋膜という筋肉を繋げる膜で繋がっています。この二つは、どちらもお腹周りを支えている深層筋であるため、共同筋として一緒に体幹の安定に貢献しています。
さらには、筋膜でつながり、どちらかが動くともう一方が影響されるということは、どちから一方を鍛えることで、もう一方の機能も改善するということが言えます。多裂筋の機能を改善んしたければ、多裂筋だけのトレーニング以外にも腹横筋のトレーニングも混ぜていくと良さそうですね。
(腹横筋)
多裂筋が腰痛の原因かも!?
多裂筋の弱点として、筋力低下が起こってしまうとそれを補うのが大変ということが言えるかもしれません。この多裂筋の筋力が弱くなって負担が来るのが、そう腰です。多裂筋は腰の安定を増すために、腰回りの部分が他の部分より太くなっています。それは、多裂筋にとっては腰回りに一番負担が来るということを示しているからでしょう。
しかし、この多裂筋が疲労したり、常日頃から悪い姿勢でいると、多裂筋の持久力や耐久力が低下してしまいます。こうなると、多裂筋の役割の代わりが出来る筋肉が他にないため、脊柱に負担がかかり、結果、腰痛が引き起こされることがあります。この腰痛を多裂筋性腰痛と呼びます。
もしも今現在腰痛を持っていて、次の症状が見られるのであれば多裂筋性腰痛の可能性があります。後ほど紹介する多裂筋のストレッチやトレーニングを試してみましょう。
- 座った姿勢でいると背中の下部中央が痛む
- 起床時に腰が痛む。しかし動いていると楽になる
- 前屈みになると痛む
- 歩き出した瞬間や立ち上がった瞬間、前屈から体を起こす瞬間に痛みが発生する
多裂筋のストレッチを紹介!
多裂筋による腰痛防止や、多裂筋の機能を守っていくためにも多裂筋に効くストレッチを見ていきましょう。
猫のポーズで多裂筋をストレッチ!
猫のポーズの方法
- 膝を立てて四つん這いになりましょう。
- 背中をゆっくりと丸めていき猫背にします(この動きの時には息を吐きながら)
- 息を吸いながら丸まった背中をゆっくりと元の四つん這いに戻していき、さらに背中をそらせていきます。
多裂筋へのストレッチ効果
四つん這いになって、腰を丸めたり反ったりする動きにより、多裂筋も含めた背中のインナーマッスルをストレッチする効果があります。長時間同じ姿勢により多裂筋が疲労して硬くなっている場合など、このストレッチで多裂筋をほぐしてあげましょう。
鋤(すき)のポーズで背中をストレッチ!
鋤のポーズの方法
- 仰向けになったら両足を揃えて床と垂直になるまで息を吸いながら上げる
- 息を吐きながら腰から背中までを床から持ち上げていき、足先を頭より遠くの床へつける
- この姿勢を30秒程度キープしましょう
多裂筋へのストレッチ効果
多裂筋と言うよりは、脊柱起立筋も含めた背中全体の筋肉をストレッチするのに効果的。特に背中の疲れを感じた時は、このストレッチをすると、多裂筋も一緒に伸びて疲労回復に効果ありです。
多裂筋トレーニング・筋トレおすすめ紹介
では最後に、多裂筋に効くトレーニングや筋トレ方法を確認してみましょう。多裂筋は一度筋力低下を起こすと、なかなか戻すことが大変なので、多裂筋に効くトレーニングを定期的にやっておくと良いでしょう。
多裂筋トレーニング・筋トレ ① ダイアゴナル
ダイアゴナルのトレーニング方法
- 膝をつけない四つん這いの状態になる(大変な場合は膝をつけてもOK)
- 片側の足を後ろへ伸ばしたら逆側の手を前方へ伸ばす。
- この状態を10秒以上キープ
多裂筋のトレーニング・筋トレ効果
ダイアゴナルは、体幹全体を鍛える体幹トレーニングとしても有名です。その中でも深部にあるインナーマッスルにも効くので、多裂筋の強化へも効果があるトレーニング方法になります。ダイアゴナルは多裂筋と他の体幹の筋肉も同時に強化するため、腰痛防止の効果があるとも言われている筋トレです。
多裂筋トレーニング・筋トレ ② ゆらゆら運動
ゆらゆら運動の方法
- フォームローラー又たはストレッチポールのを縦にしてその上に仰向けになります
- 膝を立てて腕を適度に開いてバランスを取りましょう
- フォームローラーを軽く左右に転がす感じでゆらゆらと揺れます
多裂筋のトレーニング・筋トレ効果
フォームローラーの上に乗って左右に揺れることで、背骨にある多裂筋を刺激もしながら、さらにほぐしていくことができます。多裂筋の筋膜リリースとしての効果があるので、硬くなった筋肉を柔らかくする効果が感じられるでしょう。刺激を与えるので、トレーニングの一種としても考えられますが、同時にストレッチとしても考えられる運動です。
多裂筋のついでに確認しておきたい記事
多裂筋を初めてしったと言う人も多いかもしれませんね。多裂筋は姿勢の維持において、大切な筋肉です。常に若々しくあるためにも、そいて腰痛にならないためにも多裂筋のことをしっかりと理解して、ストレッチなりトレーニングなりを取り入れてみましょう。
筋トレキャンプでした!