11/22THU(日本気象協会提供

加賀
能登

購読のお申し込み

0120-367-464みんなよむよ

富山新聞


今日の社説

2018/11/22 01:37

慰安婦財団解散 日韓合意の破棄にも等しい

 韓国政府が慰安婦問題に関する2015年の日韓合意に基づいて設置した「和解・癒やし財団」の解散を発表した。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を表明した日韓合意を事実上、無力化する狙いだろう。

 文在寅(ムンジェイン)政権は、財団を解散するものの、日韓合意そのものの破棄や再交渉は求めないとしている。韓国内で不人気な慰安婦合意を骨抜きにした「実績」を誇示する一方で、日本に対しては曖昧な姿勢に終始するつもりかもしれないが、そんな得手勝手な態度や主張は国際社会に通用しない。財団解散は日韓合意の破棄を宣言したに等しく、未来志向の両国関係を否定する愚行である。

 日本政府は韓国政府に対し、解散に反対する考えを伝えていた。日本の意向を無視し、国と国の約束を一方的に反故にしたことで、韓国は国際的な信用を失った。日本政府と国民はあらためて、韓国がいかに信頼の置けない国であるかを再認識したといえよう。

 財団の解散に対し、安倍晋三首相が「国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなる。責任ある対応を望みたい」と述べたのは当然である。

 合意に基づき、日本が拠出した10億円のうち、約半分は既に支払われた。合意当時の生存者34人、死亡者58人が受け取っている。韓国政府は10億円の残余基金について、これから日本と協議していくとしているが、日本側は「到底受け入れられない」(河野太郎外相)との姿勢を貫くことになろう。

 そもそも慰安婦を含む戦後補償問題は、日韓請求権協定で解決済みだった。これを蒸し返したのは、日本の一部メディアのミスリードと、満足な検証もなしに謝罪に応じた当時の自民党政権の責任である。韓国政府も国民に十分な説明をせず、対策も取らなかった。日本側の謝罪を引き出して、「決着」を口にしながら、政権が代わるたびに手のひらを返してきた。

 韓国側が「強制徴用裁判」と呼ぶ旧朝鮮半島出身労働者の訴訟で、賠償を認める最高裁判決が出たばかりであり、日韓関係のさらなる冷却化は避けられない。その責任はひとえに韓国の側にある。

立山の赤色粘土 地域を元気にする宝の土に

 富山県立山町栃津地域で見つかった赤色粘土が、医療への応用が注目される「磁性細菌」が多く含まれるほか、農業や水質浄化、工芸品などに活用できる潜在力を秘めていることが、分析に当たった田崎和江金大名誉教授=金沢市、環境地質学=や市民有志でつくる研究会の調査で浮かび上がった。北陸の大地から顔をのぞかせた「宝の土」を生かして、地域を元気にする取り組みを地元を挙げて盛り上げたい。

 赤色粘土は、高岡市の業者が立山町に持つ土採取場で確認した。周囲と比べて、際だって赤い土が露出していることから、田崎名誉教授に分析を依頼したところ、主に地球の表層に存在するシリカをはじめ、「鉄分」が多く含まれていることが分かり、陶芸家や土壌の専門家らが研究グループをつくり、研究成果を検討し活用法を話し合ってきた。

 先に富山市で開いたシンポジウムでは、赤色粘土で作ったビアカップにビールを注ぐと泡が長持ちしたり、同粘土製の容器で作った漬物が鉄分の影響もあってか色つやが良い仕上がりになるなど、希少な土と言うだけでなく、生活に密着した切り口で広く発信できる事例も紹介された。

 中でも、極小の磁石を体内に持つ磁性細菌は、近年、医学分野で極小磁石と抗がん剤を結びつけ、患部に抗がん剤を集めることを目指す研究が進むなど、新たな応用が期待されている。研究グループではこうした多様な応用例の科学的裏付けを進め、成果を地域に還元していくという。

 赤色粘土の活用法の探究と合わせて、大地がもたらした宝という意味で、地元立山町も参画する立山黒部ジオパークを構成する有力な素材としても発信できよう。

 ゆくゆくは世界ジオパークの認定を目指す立山黒部としては、山から海への高低差のあるダイナミックな地形と合わせて、その価値を新しい切り口で補強する願ってもない「掘り出し物」と言えるだろう。地元としても、研究グループとの連携も視野に入れ、赤色粘土を幅広く生かすアイデアを考えていきたい。