映画の中にある野球。「新幹線大爆破、太陽を盗んだ男」を見て(第792回)
東京・池袋にある新文芸座で12月12日 、開館日特別企画「友の会会員が選んだ邦画サスペンス・ミステリー映画ベスト10」と題して、新文芸座友の会で4位と6位に入った「新幹線大爆破」と「太陽を盗んだ男」を、出社を遅くして観てきた。この2本立ては、高倉健、菅原文太が相次いで亡くなったから組まれていた訳ではなかったという。しかし、ネットでも注目されていただけあって、朝9時半の初回から満員の盛況。休憩時間には男子トイレに長蛇の列となったため、2本目以降予定より時間が15分以上遅れるというハプニングもあった。
高倉健、宇津井健(宇津井さんも今年亡くなった)のダブル健さん主演の「新幹線大爆破」は、テレビでは見たことはあったが、2時間半のフルバージョンは初見。北海道の蒸気機関車爆破、そして長瀞のシーンはほとんど覚えていないのだから、テレビではカットされていたのかもしれない。しかし、爆弾犯人、国鉄、警察の3者に襲いかかるアクシデントを時系列で見せ息をのむシーンの連続は何度見ても面白い、と言うしかない。サスペンス映画でもあり、新幹線の乗客にとってのパニック映画。志村喬、丹波哲朗など豪華キャストがそれぞれはまり役を演じて、映画に厚みを増している。
一方、沢田研二の犯人と菅原文太の刑事が躍動する「太陽を盗んだ男」は初見。社の後輩が「蛭間さん、見た方がいいですよ」と、文太さんが亡くなった直後に言われた意味が映画を見て分かった。原爆を作った主人公のジュリーが、政府につきつけた最初の要求が「ナイターを試合終了までやれ」だったからだ。映画の中でも、当時のテレビ中継、巨人・大洋戦が流され、大洋・松原誠、巨人・王貞治のホームランシーンが流れるのだった。それだけではない、元球児でもあったというジュリーが中学校のコンクリート壁にボールを投げつけてつかむシーンは、今年からNPB(日本野球機構)が、全国各地の小学校、公園への設置を推進する「ベース・ウォール」の原型。私も神社でよくやったものである。
もちろん、マツダ(当時は東洋工業)が協力したというカーチェイスも、車好きとして当時あこがれだったサバンナRX-7を使ってスピード感、ラストシーンの何発打たれても死なない文太さんも迫力満点。まるでターミネーターのシュワルツェネッガーを彷彿とさせる。ジュリーの鬼気迫る演技と相まって一級品のサスペンス映画だった。また、皇居、TOKYUデパートでのシーンなどゲリラ的な撮影だったシーンも、見どころたっぷり。水谷豊、西田敏行が端役で、伊藤雄之助も、らしい役だった。
ネットのツィッターを見ると、「新幹線大爆破」2回目上映のラストシーンを見たファンから「健さーん。さようなら」という声も飛んだという。私が見た初回も私よりやや上の年代の方々が多かった。この方達の壮年時代の思い出の映画でもあったのではないだろうか。
さて、「太陽を盗んだ男」の第一の要求は、巨人戦ナイターが毎日のように地上波テレビで中継されていた全盛時代。今の若者には「なんで」と思うのではないだろうか。また、「新幹線大爆破」で刑事が工員に聞き込みをするシーン、工員はキャッチボールをやっていたのだろう、グラブをはめていた。今よりずっと、野球(ベースボールではない)が身近な時代だったのだ。そんな事を思ってしまうのは、野球記者の性なのだろうか。
最後に入社当時、池袋に住んでいた私も休み度に通ったのが文芸座。建物は変わり新文芸座となったが、数十年ぶりに入ると映画好きに相応しい空間だった。今後のラインアップも素晴らしい。今回の2本立てを企画してくれた新文芸座にありがとう、と言いたい。
新文芸坐さん、ガンバレです。
投稿: 黒ぼう | 2014年12月15日 (月) 08:51
黒ぼうさん。
コメントありがとうございます。
埼玉に住んでいますが、
昔は文芸座とテアトル池袋
が毎週末のオールナイト
観賞が時間がとれる
オフの日課でした。
今後もスケジュールを
合わせて通うようにしようと思っています。
投稿: 筆者 | 2014年12月15日 (月) 17:26
沢田研二といえば 彼がザ・タイガース時代の1969年に主演した「ハーイ! ロンドン」という映画にも
後楽園の巨人-広島戦で、王選手が外木場投手からタイムリーヒットを打つシーンが出てきます。
衣笠がファーストだったり、広島の帽子が紺色だったり、後楽園のジャンボスタンドが拡張前だったり
いろいろ時代を感じます。機会があれば是非見てみてください。
投稿: Kate | 2015年1月26日 (月) 06:55
kateさん。ありがとうございました。
全く知りませんでした。
投稿: 筆者 | 2015年1月26日 (月) 07:33