旧石器捏造事件と精神病

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 藤村新一氏がやった捏造は、隠し持ってきた簡単に手に入る縄文石器を自分で埋めるという、単純にして幼稚な手法でしたが、考古学会も世間も簡単に騙されてしまいます。その背景には、原人のころから日本人は優秀であったとしたい、北京原人がいた中国には負けたくないといった意識が根底にあって、自分たちが望むものが出てきたので、それに飛びついてしまったということがあったものと思われます。

 墓や建物跡は、藤村氏の発見に乗っかりたい人たちが、調子に乗って自然地形を見誤ったものでした。そうありたいと思っていると、無い物も見えてしまうという典型的な錯誤でした。

 発覚直後は藤村氏は、毎日新聞の記者に埋めているところを目撃された二か所だけで、発見しなければならないプレッシャーに負けてやったと言っていましたが、そんなことはないだろう全てを言うようにと迫られると藤村氏は精神病院に入ってしまいます。

 多重人格障害であり、埋めた時の人格と掘り出したときの人格が異なっているので、本人が埋めたことを知らずに私は本物の旧石器だと信じて掘り出していたのだから、法的、倫理的な責任を追及されても困るという言い分が病院の中から展開され、考古学会の調査委員会の人たちが会おうとしても、接見時間が制限され、得た回答も脈絡がないものばかりという状態になりました。この時の藤村氏は、私と本人は、同一人物だが人格は別であるから知らなかったという論法を使っていました。

 それまで藤村氏周辺からは精神病といった話は一切出ておらず、次は100万年前の石器を掘り出すなどと言っていたのに、追及が始まったら精神病というのは変な話ですが、それがどうしたわけか成立してしまったのです。

 考古学会としては、偽物の遺跡や石器は全て登録から外さなければなりません、本人の正確な供述があればその作業は容易に進んだはずですが、本人が別人格のときのことは知らないというものですから、再発掘して幾ら探しても石器は出ないから、ここでの発見は藤村氏による捏造であると証明しなければならない、という作業を強いられることになりました。

 藤村氏が関与した発掘の多くは地方自治体が依頼したものでしたから、遺跡でないことを証明するための再発掘という、学問的に無意味に近いことのために税金が投入されたのです。

 精神病というものの利用のされ方に関して、疑問を持った人も多かった結末になりました。

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