中国の巨大ポータルサイトの一つ、網易(ネットイース)は「爆買い」と呼ばれる中国人の購買意欲に着目する。運営する「ネットイースコアラ」が狙うのは人気の日本商品。広報担当幹部の崔莉莉(ツイリーリー)氏と部下の男性は「日本に行かなくても注文の当日か翌日までに品物が届くシステムをつくった」「価格も日本国内と同レベルに近づいている」と自慢げだ。
同社は通関処理や加工、検品などを一括してできる保税倉庫という仕組みに目を付けた。この倉庫を十二カ所所有し出荷時間と価格の削減を同時に実現した。
コアラは爆買い市場で人気の日本製の育児・子ども用品、化粧品、健康食品などを軸に世界で五千以上の製品ブランドを取り扱う。「一番人気は日本製品で八百六十のブランドを扱っている」という。
中国の人々は購買力の上昇に伴い、行政サービスの質にも関心を向け始めている。
「城市大脳」。アリババが人工知能(AI)技術を駆使して開発した渋滞緩和システムだ。監視カメラが集積する膨大な道路情報をAIで解析。それを基に最も効率的な信号の切り替えを行う。本社のある杭州で導入され、担当者は「渋滞率が15%減った」と話す。
中国の都市部での渋滞は社会問題化している。IT企業が政府からの指示で社会問題に取り組み、行政サービスの質向上に一役買っている形だ。
深センの深セン市海梁科技はバスの自動運転の技術を開発中だ=写真。バスに乗り公道に出るとトラックが飛び出してきた。だが自動で急ブレーキがかかり事なきを得た。中国は電気自動車の普及を加速させている。大気汚染を嫌う人々の要求が背景にある。電動の自動運転バスはその求めに合致する。
政府は言論を制御しつつ、民衆の暮らしへの欲求には応えようと懸命だ。放置すればその矛先が政府に向かうからだろう。IT企業はその調整弁として動く。豊かさをめぐる国と民の微妙な駆け引きがそこにあるようだ。
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