は じ め に


                       江戸川区立臨海小学校教諭 浅野 一也


 バレーボールをしている皆さん、また、お子さんがバレーボールをしている保護者の方々、
これから先、子供達は勉強とスポーツの両立に悩まされる事があるでしょう。
それは、自らの手で切り抜けなくてはならない事ですが、小学校時代においては、
自分から進んで両立させていくという事は、難しい事かもしれません。
 また、宿題などをたくさん出される先生にぶつかっては、睡眠時間を削られ、
それがストレスとなり、体調を崩す事も考えられます。
 バレーボールに携わる子供達がそんな目にあわないように、
教員である私が、『少しでも何かお手伝いができれば。』と思っています。

 なお、これから述べる学習に関しては、私がTOSSで学んだ事が中心になっています。
『TOSS...?トス...?』聞きなれない言葉でしょう。
少し前までは、教育技術法則化運動と言っていたものが、現在のTOSSになりました。
(TOSS=Teacher's Organization of Skill Sharing)

 TOSS教師は日本一すばらしい教師達です。
日本一勉強している教師達です。これは疑いない事実です。
そして、日本一お金を使っている教師です。
 この日本にはさまざまな研究団体があります。さまざまな研究をしている人達がいます。
しかし、そこまで自腹を切っている教師は、ほかにはいません。
たとえば、私がこの10月23日に参加した研修についてお話しましょう。
この研修会の参加費は12,000円です。
こんな高額な参加費を取る研修会はほかに存在しません。
しかし、そんな高価な研修会に、みんなが進んで参加するのです。
その研修会は東京で行われ、私の隣に座っていた教師は大阪からの参加でした。
その方の参加費以外の宿泊費や交通費などを考えてみましょう。決して安いものではありません。
それでも、『参加しよう!!』という気持ちが起きる研修会なのです。
 私は、今までいろいろな研修会や研究会に参加してきました。
しかし、どれもがほとんど自分の学級の指導に役立つ内容のものではありませんでした。
それらの研究会(研修会)はすべて参加費無料でした。
そういう研究会がほとんどでしたので、次第に参加しなくなりました。
しかし、TOSSの研修会は違うのです。お金を払ってでも参加したくなるのです。
 私が最初に参加したのは、長野県での研修会で、参加費は8,000円でした。
朝早く自宅を出て、新幹線を利用して日帰りで行ってきました。
福島県で開催された時も郡山まで行きました。
 そして、今週末は福岡まで行きます。
それはインターネット会議といって、日本の公立学校ではもっとも進んだ会議(研修会)です。
日本中の優れた教師が参加し、私はそこに参加できるだけでも光栄です。
参加費、交通費、宿泊費、おみやげ代その他もろもろで、8~9万円ほどかかるでしょう。
当然自腹です。

 一般の研究会で得るものは、『ここまでくるのに相当な時間を費やしているだろうなぁ~。』
という授業者に対する哀れみと、己の疲れです。
しかし、TOSSの研修会で得るものは、明日への希望と力です。
だから、みな自腹を切って参加するのです。しかし、このような教師はあまりいません。
TOSSの教師にめぐり合うという事は少ないのです。

 研修会で私が得たものを、『バレーボールをしている子供達に少しでも伝えられたらなぁ~。』
という願いを基に、この【勉強部屋】をオープンしましたので、どうぞ参考にしてください。

 なお、内容はほとんどがTOSSのリーダー・向山先生の教えが元になっている事を
付け加えておきますが、言葉はすべて浅野の理解の下で表現されている事をご理解ください。


                                  2004年11月9日


   第1章 学 用 品

 まずは勉強の基本となる学用品です。
意外と知られていないことが多く、また、書けるものなら何でもよいとか、
まったく無関心である場合が多いです。
しかし、学用品1つにしても、勉強が『できる・できない』の差になってしまうものです。
ここでしっかり確認しておきましょう。

①鉛 筆

 鉛筆は最低でも【B】を使いましょう。【2B】なら、なおさら良いでしょう。
今の小学生では、【HB】ではちょっと薄いです。今の子供達は筆圧が低いので、絶対条件です。
また、先生によってはシャープペンシルを許可する先生がいますが、
この先生はまったく無知なドシロウトです。
 指先は、第2の脳ともいわれています。
書いているときに、指先からゆっくりと知識が脳に伝わっていきます。
シャープペンシルを使ったとき、力を入れると書こうとすると芯が折れてしまい、
カシャカシャと芯を出すとき、脳まで伝達されようとしている知識がそこで途絶えてしまいます。
その上、集中力も途切れ、大切なことを聞きのがしてしまったりします。
 シャープペンシルを許可する先生は、高学年の男の先生に多いようです。
高学年の女子にいい思いをされたいためです。
そのときだけ『今度の先生、前の先生と違っていいねぇ~』と思われますが、そのときだけです。
いつまでもいい思いは続きません。でも、先生はそれがいつまでも続くと思っているので、
そこから学級崩壊が起こるのです。こんな先生に教わったら、悲劇の始まりです。

②ノート

 もう、TOSSノートしかありません。特に、算数ではこのノートしかありません。
理科や社会でも有効ですが、国語には不向きです。
 しかし、残念ながら、TOSSノートは通常の店では販売されていません。
東京教育技術研究所でのみ販売しています。1冊150円です。
ただ、100冊まとめて買うと、1冊100円にしてもらえます。
TOSSにかかわる教師のみこのノートを扱うことができます。
このノートの有効性は、大学病院の臨床内科医の先生も述べています。
 浅野を経由してこのノートを1冊100円(税なし)で手に入れることができます。
三小の子供達であれば学校で受け渡しができます。
浅野が売っているかといって、浅野にはリベートは一切ありません。
子供達が勉強できるようにと、浅野が大量に購入し、ほしい子供達に分けているのです。
どうぞ、三小の児童に限らず、他のバレーボールチームの児童にも実費でお分けします。
練習試合や大会のときなどに声をかけてください。
事前にご連絡頂ければ、練習試合や大会のときなどにお持ちいたします。
(今の中学2年生の子が、学校にやってきて10冊まとめて買っていったこともありました。)

③赤鉛筆、ミニ定規

 意外と旧式なものかな、と思われがちですが、『赤鉛筆を持って来なさい。』と
指示している先生は、意味のわかっている先生です。
赤鉛筆の有効性はミニ定規とともに、算数の章で詳しく述べてみたいと思います。
また、【消しゴム】は白いものを使いましょう。

 まだまだいろいろありますが、そのつど述べていきたいと考えています。


                                 2004年11月10日


   第2章 漢 字 学 習


 教室で行う学習の中で、得意な子とそうでない子の差が激しいのが【漢字学習】でしょう。
みなさん(バレーボールをしている子どもだけでなく、その保護者の方も)は、
どのように漢字を覚えてきたのでしょうか?
 私自身は、漢字の学習については記憶にありませんが、英単語を覚えるときは、
ひたすら単語を書いて覚えました。
これは、いわゆる“体力勝負”です。今だにこのような方法で漢字を覚えようとしていませんか?

 漢字の苦手な子どもは、ほとんど過去において、この体力勝負をしてきました。
しかし、漢字をたくさん書かせると、子どもはどのように漢字を練習するかご存知でしょうか?
 例えば、『語』という漢字を10回書くとしましょう。
物事を丁寧にやる子は、ゆっくりと10回書きます。
しかし、落着きのない子や漢字が嫌いな子は、まず『ごんべん(言)』だけを左側に10回書き、
その後、『吾』を右側に10回書きます。
早く終わらせたいと願う子どもの作戦ですが、これでは覚えられるわけがありません。
したがって、漢字が苦手な子どもに漢字の宿題を出しても無意味なのです。
でも、意外とそれを理解していない先生が多いのです。
 また、漢字ドリルがたくさん世に産出されていますが、それらはどれも似たようなものです。
ドリルというのは、『繰り返し学習する』という意味で、
漢字も「繰り返し練習しなさい」と言っているのです。
したがって、体力勝負に出る先生方が多いのです。

 私は、9年間連続高学年を受け持ったあと、3年生を担任すると知った時、とても喜びました。
「漢字学習がゆっくりできる。」と思ったからです。
しかし、7月にはそれが不可能だと知ったのです。
漢字学習をゆっくりやった結果、かなりの学習が1学期に残されてしまったのです。
漢字学習の時間がほとんど取れないのは、何も高学年だけではなかったのです。

 さて、TOSSではこれから述べるような漢字学習を提案しています。
この通りにやれば、「学級平均90点以上は確実だ!!」といっています。
私のクラスでは、10月下旬にやった漢字テストで30人中28人が100点満点でした。
これだけでも、平均点90点を越しています。
 使用する漢字の教材は【漢字ドリル」】なく、【あかねこ漢字スキル】です。
ドリルではありません。毎日漢字の学習時間を6~7分とり、次のように学習しています。

●月曜日
 新しい漢字を『ゆび書き』『なぞり書き』『うつし書き』します。
まずは、『ゆび書き』で、それをする際は、テキストをよく見て、指を決して机から離さずに、
「1、2、3、・・・」と、書き順を唱えながら行い、覚えたらテキストの漢字を丁寧になぞります。
そして、その漢字を見て、2回丁寧に書きます。ここまでが1ステップです。
(指導ステップの詳細は、私の手元にありますので、欲しい方は希望の旨をお伝えください。)

●火曜日
 月曜日と同じように行います。
この2日間で8~9個の新しく出した漢字を覚えてしまいます。
(しかし、覚えたからといっても、次の日には2~4個忘れていますが...。)

●水曜日
『あかねこ漢字スキル』の練習ページを練習します。
この練習ページも使い方を間違えると、点数に響きます。
ここまで絶対にやり方(漢字練習の順番)を間違えてはいけませんが、
先生でさえも、練習順番を間違えることが多いです。

●木曜日
 テストをします。
この段階で、クラスの5割~7割が満点です。

●金曜日
 再テスト。
この段階で、残りの2割~4割が100点です。

 週5日制にぴったり適している学習方法です。
しかも、うるさく言う必要がないし、練習の際はクラスが「シ~ン!!」となります。
学級崩壊なんか絶対に起こりません。
(点数がよいと、教師はにこやかになり、子どもたちも楽しく学習できます。)

 いかがですか。【あかねこ漢字スキル】を使うといいことばかりなのです。


                                 2004年11月20日


   第3章 算 数 学 習

 基礎学力を確実に身に付けるという点で、絶対にしっかり理解しておかなくてはならないのが、
第2章の「漢字」と「算数」です。
 算数の理解には、自分で努力する立場と先生の教え方に関わる立場とがありますので、
両方の点から確かめて見ましょう。

 <自分編>

① きちんとした学用品を使用する。

 第1章の「学用品」編を参考にしてください。
ノートはできるだけTOSSノートを使いましょう。
TOSSノートが手に入らなければ、10ミリ方眼ノートがよいでしょう。
大学ノートなんて、もってのほかです。
また、横線だけのものは、字が上手でない限り、使うことはやめましょう。
 それから、算数は○付けが多いですが、赤鉛筆で丸をつけるようにしましょう。
指導が上手な先生なら、赤鉛筆は○付けだけでなく、教科書の図に色を塗ったり、
他の用法にも使います。プロの先生は、赤鉛筆を上手に使わせますよ。
 さらに、筆算の計算には、必ず「ミニ定規」を用いて、きれいな線を引き、計算します。
ぐちゃぐちゃな文字や数字をノートに書いていると、算数ができなくなりますよ。

②それぞれの学年で大切なことを理解する。
●「2年生」

いわずとしれた、かけ算の【九九】です。
これは絶対に理解しなくてはならないものです。なお、暗記が苦手な子には、
インターネットランドで検索すると、「かけ算チャレンジャー」があります。
面白く学習できるので、必ずマスターしてくださいね。
●「3年生」
わり算がでてきます。
しかし、わり算の理解とは、かけ算と引き算の繰り返しで成り立っています。
「商をたてる→かける→(補助計算の積を)写す→引く→おろす→‥‥」を
きちんと計算していきましょう。
●「4年生」
面積など大切な学習がかなり多くなってきます。
意外ときちんと指導されていないのが、「倍の計算」です。ここがしっかり理解できていないと、
5年生になって同様の文章題が出てきたとき、「この問題の式はかけるのかな?わるのかな?」と
算数らしくない考え方で解く場合があります。絶対に注意したいところです。
●「5年生」
いよいよ割合が出てきます。
4年生の倍の計算の応用で、それが理解できていないと、ここで落ちこぼれます。
浅野先生が開発した「数直線法」をマスターすれば、困りません。
知りたい人は、南葛西スリーファイヤーズの5年3組児童に聞きましょう。
また、意外とできないのが、小数のわり算のあまりの出る計算です。
小数点を打つ場所が、答え(商)の場所と異なるので、間違いが多いです。
ぜひ気をつけてほしいところです。
●「6年生」
「単位量あたりの大きさ」「比」など割合の応用な問題が多くなります。
5年生の算数がきちんと理解できていれば、ほぼ大丈夫です。
なお、拡大縮小の計算の間違いが多いので、注意です。


 <先生編>

 先生の教え方でチェックをしておかなくてはならない点があります。
主に以下の点をあげておきますが、担任の先生が以下のチェック項目に当てはまる場合は、
そのクラスの子は授業内容を理解していない子が多いと予想されますので気をつけてください。

●教科書を使わずに、いきなり文章問題を書いて、考えさせる先生。

 これは、問題解決学習といった方法で、しばしば算数の時間に行われている学習です。
10年前の算数学習は、ほとんどこのやり方でした。しかし、TOSSでは、これを悪法とし、
児童を混乱させて、算数の苦手な子を算数嫌いにする方法と定義しています。
1時間の授業で1,2題しかやらないので残りは宿題になり、わからない児童は負担が重くなり、
ますます算数嫌いになります。TOSSでは、向山型算数で教え、教科書をきちんと指導し、
計算スキルを授業中にやるので、学習内容を授業中で理解し宿題がありません。
宿題を出さなくてすむというのが向山型算数の利点です。

●ノートを使わずプリントで学習を進める先生。

 プリントを毎時間使うということは、一見熱心に教材研究し、授業に臨むという先生だと
思われがちですが、そのプリントは先生の意図に沿って作られていますので、
自分でノートを構成するという力が失われます。そういうクラスの子は、
ノート指導がされていないことが多く、字が上手でない児童は確実に落ちこぼれていきます。
教科書を使って、計算等はノートに書いていく、というのが原則です。
しかも、ノート指導をきちんとされている先生が、本当のプロ教師です。

●百マス計算をさせる先生。

 一時期百マス計算をさせる先生が多かったです。
広島の某校長先生がテレビ朝日の番組に出ていたころが最盛期でした。
しかし、百マス計算は、クラスの3分の1の児童に対してのみ有効なのです。
逆に言うと、クラスの3分の2の児童に対しては、害でしかないのです。
それを理解せず、流行だからと「百マス計算の特性」をしっかり勉強せずに、
それを授業中使っている先生がいます。
 百マス計算が有効な児童は、クラスの中位レベルの子だけです。
よくできる子にとっては「字が乱雑になる」だけの悪でしかないし、できない子にとっては
「遅いと怒られ、間違いが多いといって怒られ」る材料でしかありません。
しかも、クラスにADHDの子がいると、これがきっかけで学級崩壊になる場合があります。
それを知らないで、流行だからやってみようとしている先生、危ないですよ。

●教室に列ができる先生。

 算数の時間、児童が解いた問題の○付けで、先生が自分の元に呼ぶ場合がよくあります。
この場合、延々と列が長くなっていくクラスがあります。
それは、先生が×を付けながら解説をしているからです。
 教室に列ができると、これもまた、学級崩壊のきっかけになります。
学級崩壊とはちょっとしたところから起こるのです。


                                 2004年12月27日


   第4章 総合的な学習の時間

 平成14年度から完全実施になった総合的な学習の時間。
名称が長いので、みんな「総合」とかその学校なりの呼び方で呼んでいます。
南葛西三小では「三小タイム」という名がついていますが、
名が長いので、私は単に「総合」と呼んでいます。
 さて、この総合ですが、実は曲者なのです。
教科書がないから保護者の方は重要視していないようですが、
各学年(総合の学習は3年生以上)とも国語、算数に続いて3番目に学習時間数の多い教科です。
これを考えると、もっと中身を監視し、変な内容のところは、学校に訴えかけないと、
まったくの無駄な時間になってしまいます。

 小学5年生で見ると、年に学習する時間は、
国 語-180時間
算 数-150時間
総 合-110時間
理 科- 95時間
社 会- 90時間
体 育- 90時間
家庭科- 60時間
音 楽- 50時間
図 工- 50時間

という具合になっています。なんと、社会や理科よりも学習時間が多いのです。

 総合の完全実施からすでに3年たったので、
どの学校も、どの学年にどんな内容を学習するかが決まっていますが、
その準備を早い学校では平成8、9年あたりからやっていました。
私も前任校でずいぶんやりましたが、そのときの内容と今では恐ろしいほど変わっています。
 まず、当時は「何でもありき」で、
カレー作りや豆腐作り、そば作りなど調理実習みたいなことも行われていました。
当然今では、それは総合とみなしていませんが・・・、
(まさか皆さんの学校ではやっていませんよね?)

 完全実施までの間、総合の内容でいろいろ議論されてきましたが、
やはり最初に文科省(当時の文部省)が例示として提唱した、
「国際理解、情報、環境、健康、福祉」に内容が落ち着いてきたようです。
また、「学校や地域の特色」に触れている所もあるでしょう。(本校でいえば、葛西臨海公園)
 今でも教科書がないがゆえ、内容は学校に任されていますが、
でも、これはやらなくてはならないというものが、
今の学校教育の現状を踏まえて、ほぼ打ち出されています。

 ところで、つい最近、
『日本の児童の学力が世界の児童のそれと比べて落ちてきている』との発表がありました。
それは当たり前のことです。
「ゆとり教育」を打ち出し、知識理解は最後でよいという方針があったからです。
しかし、ここにきて児童の学力低下がはっきりして、あわてて方針を変えてきました。
この20年間のゆとり教育は失敗とは言っていませんが、失敗なのは誰の目にも明らかです。
その20年間のゆとり教育をまともに受けてしまった人たちは、どうするのでしょうか・・・。
当然そこまで国は保障しませんから、自分で補っていくしかありません。
 そして、これも口には出していませんが、週5日制が崩れかけています。
私立学校は始めからそれは無理だと判断して土曜を休みにしなかったし、
今でも土曜日に授業を行っています。(すべての私立学校ではありませんが)
 ついに、各々の教育委員会は、
土曜日に独自の方針で学力を補充しようとしていますし、現にやっている区もあります。
もう、現教育制度は失敗なのは明らかなので、「責任を区単位で考えろ」と、
丸投げが始まったのです。恐ろしい世の中になりました。

 ある区では、土曜日に授業を入れていますし、
私の住む江戸川区ではサタデープロジェクトというものが始まります。
全員対象ではありませんが、希望者に学習を行うというものです。
あるいは、私の前任の区では全校冷房化にしたので、夏休みを短縮し、2学期を早めるそうです。
今後は、区単位の独自のやり方で、学校教育が展開されます。
私見ですが、冷房化してくれるのなら、夏休みの短縮は一番よい方法だと思いますが、
今の予算と学校数が多い江戸川区では無理でしょう。
このままでは、23区で最も学力が低い区というレッテルがはられるのも、
遠い未来のことではないと思っています。


 さて、総合の内容ですが、
こういう世の中では、次のような学習は絶対にやってほしいと思っていますが、
あなたの(お子さんの)学校ではどうですか?

①英会話
 「国際理解」の1つとしてやることが可能ですし、今では日本の約70%の学校
(3月末にはほぼ100%になるでしょう)が何らかの形でやっています。
しかし、単発的な内容が多く、週に1回などと継続性のある計画を立てている学校は、
きわめて少ないです。  
 さらに、アジアの先進国の中では、日本の小学校の英会話レベルは最低です。
中国上海の中学年では、オールイングリッシュの(母国語を用いない)授業が行われています。
この傾向が続くと、日本の教育はあっという間にアジアの国々からも遅れていく事でしょう。

②ボランティア
 ますます高齢化する日本社会。今の教育から切り離すことはできません。
しかも、ゲーム社会が浸透して久しい今、いのちを大切にする授業は不可欠です。
 わが三小では、6年生になると近くの老人施設を訪問し、
出し物をしたり会話の相手になったりします。
その準備に相当な時間を費やしますが、相手のことを考えると、それは当然のことです。
【お年寄りを大切に】という考えを常識化したいものです。

③コンピュータ
 私は、これからの総合は、コンピュータと英会話は絶対不可欠だと思っています。
みなさんの学校では、どの程度のコンピュータ学習をしていますか?
私の5年生のクラスでは、クラス全員ホームページを作りました。
ローマ字入力は当たり前にできます。なお、ローマ字入力の練習として最適なのは、
インターネットランドの「ゆびまるくん」です。
4年生を受け持ったとき、週に1回はやらせていました。すごく上達しますよ。

④環境(5年生が適当か)
 地球が今おかしくなっています。
「オゾン層破壊」「酸性雨」「地球温暖化」「動物絶滅」「砂漠化」
あるいは「乾燥化していく土地」・・・など地球上には危機的な現象がたくさん起きています。
これは地球上の全人類が協力して防いでいかなくてはなりません。
 30年前は日本は公害が人さわがせな現象でありましたが、いまは大変なことが起きています。
小学校高学年のうちに理解したいものです。
 さらに、エネルギー教育など、総合の時間にやりたいですね。


                                 2004年12月29日


   第5章 インターネット学習
 
 1~2年前に比べると、インターネットの家庭への普及率が急速に高まっています。
学校では、当然ながらインターネットが敷かれていますが、どこまで敷かれているかによって、
学習の効率が大きく異なります。
 江戸川区に属する本校も他校同様パソコン室があり、そこには40台のパソコンがありますが、
インターネットをしたい場合は、その部屋まで行かなくてはなりません。
(教室ではできないということ。)
しかも、基本的に1週間に1時間しか使えません。(空いている時間は早い者勝ちです。)
 したがって、あまり思うように利用できないのが現実ですが、
皆さんの学校ではどのようなシステムになっているでしょうか。

 インターネットを利用する場合は、
ちょっと前までは社会科や総合的な学習での『調べ学習』が主でした。
しかし、使い方によっては、自分の学習能力を高められる“もの”となりますので、
効率的に利用したいものです。
また、教室でインターネットができる環境であれば、学習形態が大きく変わります。
 そのためにも、どんなサイトがあるのかを知っておかなくてはなりませんが、
ぜひ活用してほしいのが、
「インターネットランド」【http://www.tos-land.net/index2.ph】です。
 現在、子どもたちが使って学習効率が上がるサイトがたくさんできていますので、
家庭でやってみるとよいと思いますので、その例をここでご紹介しておきましょう。
(ご注意、ほとんどのサイトでMacromedia Flash Playerが必要です。)

○ゆびまるくん【http://www.human.gr.jp/key/】
4年生でローマ字を習いますが、
それと併用して行うと、学習の効率が一段と高まります。
平成15年度に4年生を担任したときは、年間10時間あまり取り組みました。
32人中14人がその中の1級を取得しましたので、皆さんもぜひ挑戦してください。
4級を取得できるようになると、もうローマ字学習はばっちりOK!です。

○五色百人一首【http://www.tos-land.net/5cc/trial.htm】
中学校では百人一首大会が開かれますが、
時間数が少なくなった小学校では百人一首が行われることが少なくなりました。
しかし、TOSSでは学級をまとめる道具として、五色百人一首が行われています。
子どもたちも夢中になってやります。
家庭で練習する場合は、インターネットランドの中にさまざまなサイトがありますので、
そこで練習するとよいでしょう。

○かけ算ファイター【さが】【http://homepage2.nifty.com/saganoia/Xfighter/】
小学2年生の男の子なら必見。
ゲーム感覚でかけ算九九が覚えられます。インターネットランドの中でも、超人気サイトです。

○かけ算チャレンジャー【http://tos-hit.net/fujii/child/kake2/kake40.htm】
人気サイト【しりとりチャレンジャー】を作った人が、
福岡インターネット会議で提案したサイトです。
あらゆる間違いに対応しているのがすばらしいです。
2年生の子1人でも学習できるようになっていますので、ぜひ使ってみてください。
(福岡インターネット会議第2位サイト)

○ダイアローグランドへようこそ【http://tos-nishikaze.net/okamoto/dialogue/top.htm】
福岡インターネットランド会議第3位サイトです。
ネイティブな会話(英語)を聞きながら、ゲーム感覚で遊べるサイトです。
インターネットの接続環境が高速化していないと、遊べないかもしれません。

○中学算数【http://wish.or.tv/math】
福岡インターネットランド会議で第1位になったサイトです。
現在不登校の中学生はたくさんいます。
そういう子を意識して、自分でも学習できるサイトにしたのが、このサイトです。
ぜひ覗いてみてください。

 まだまだ数え切れないほどよいサイトがありますが、それはまた別な機会にご報告します。
なお、TOSSのリーダー・向山先生は、インターネットについて次のように言っています。
 
 『インターネットの誕生は、社会のあり方を根本的に変化させている。
  それは、まさに“人類史における第3の革命”だ。
  (第1の革命は、農業の発明。第2の革命は、蒸気機関の発明。)
  第3の革命は、始まったばかりである。
  どのような社会になるかわかるまでに少なくても50年は必要だろう。
  インターネットは、教育界に革命的な変化をもたらす。 
  教師の1人1人は、そこから逃げることはできない。』

 
 このご意見は、
教育トークライン2004年12月号の巻頭論文の一部を浅野の解釈で書き換えて載せました。
すばらしい論文です。
ここまで意識してインターネットと対面している教師はほとんどいないでしょうし、
私は向山先生の論文によって学習しました。
(本校でここまで理解している人は皆無でしょう。だから、TOSSはすばらしいのです。)
 どうぞ、皆さんもインターネットを有意義に活用してください。


                                 2005年 1月25日


   第6章 英 会 話

 私の学習の組み立てを見て、(第一章からの順番)
「おかしいな。社会や理科はいつ出てくるのだろうか?」と思っている方も少なくないでしょう。
「先生の思い立った順から書いているのかしら?」と思った方もいるでしょう。
でも、この組み立ては、現代の教育課題の流れに沿って書いているのです。
 まずは、勉強する以前の構え(第1章)、
そしてどんな世の中になろうとも絶対に身に付けなくてはならない学習(第2章、第3章)、
さらに、学校間によっては大きく差がつく学習(第4章、第5章、第6章)という
配列になっているのです。

 さて、この章は【英会話】。今が旬な学習内容です。
「え?旬?うそだろ?」と思っている教員は、はっきりいってすでに出遅れている教員です。
このような教員が担任になったら、絶対といっていいほど英会話の授業はやりません。
このような実態を保護者の方はどれだけわかっているのでしょうか。

 ちょっと前、報道ステーション(ニュースステーションのあとの番組)で、
中国の公立小学校の2年生の英会話の授業の様子を放映していました。
すでに、小学2年生が“英語ペラペラ”です。私は、その光景を見て、驚きました。
「これでは、完全に負ける‥‥」 学習に「負ける」という表現はおかしいかもしれませんが、
現在、日本の経済は完全に中国に圧倒されています。
さらに、学力で負けると、今までの「世界の中の日本」の立場が、
完全に中国にとってかえられます。
 今、中国では、北京オリンピックに向けて、
「全員が外国語(英語)を話せるようにしよう」という一大プロジェクトが動いています。
中国といえば、朝はみんなで太極拳をやっているというイメージですが、
あれが英語に置き換わっていると考えてもよいでしょう。
 北京オリンピック直後にそう(以下のようなこと)なるということはないでしょうが、
少なくても10年後には、世界で活躍しているアジア系のサラリーマンのほとんどが、
日本人ではなく中国人であるというのが、簡単に予想つきます。

 では、なぜ日本で、英会話の必要性がわかっているにもかかわらず、
小学校でその授業が広まっていかないのでしょうか。
いや、広まっていかないのかという表現は間違っているかもしれません。
地方では東京の実態から比べると、信じられないほど英会話の授業が行われているのです。
だから、「なぜ東京の小学校では?」、と考えてもよいでしょう。

 ところで、2年前に発表された向山先生の論文の中に、
ぜひ保護者が認識しないといけない事実があります。それは以下のようなことです。
 
  『アメリカに留学を希望する学生に実施する英語のテストで、
 日本はアジア地区最下位である。世界130ケ国で、110番あたりに位置する。
  つまり、日本の英語教育は、世界で最も駄目だということだ。
  日本の子どもの能力が低いわけではない。
  小、中学校の算数、理科の国際比較ではトップクラスだからである。
  このような、世界最低の英語教育をしてきた責任は、
 第1に「英語教師」にあり、続いて「英語教育」に携わってきた関係者にある。
  それにしても、アジア最下位、世界でどん尻クラスはあまりにもひどい。
  よほどひどい英語教育をしてきたのである。
  ところが、これほどひどい英語教育の結果が出ているのに、
 英語教師の反省の声はほとんど出てこない。
  「ひどさ」をみつめる感性をなくしてしまっているように見える。
  それどころか、中学校英語教師は、自らの劣悪な結果を反省もせずに、
 小学校の英会話にイチャモンをつけている。
  「小学校で英会話をするのに反対だ」 何を言っているのだ!
 中学校の英語教育が世界でどん尻の結果をもたらしたからこそ、こうなったのである。
  「英会話の前に、国語を考えるべきだ」
  アジアの主な国で(例えば中国、韓国、台湾、シンガポール、フィリピン、インドetc)
 小学生に英語を教えていないのは、日本だけである。
  世界中の主な国々は、どこも、小学校から英語を教えている。
  教えていないのは、日本くらいだ。
  小学生から英語を教えている世界の国々の方針は間違っており、
 教えていない日本は正しいというのだろうか。ぜひ、この観点からの論文を発表してほしい。

                        出典『教室ツーウエイ2002年6月号』
 
 どうですか。向山先生の2年前の論文は間違っていると思いますか?。
 間違っていると思っている少数の小学校教師が英会話をやっていないのです。
でも、それで保護者の皆様は許せますか?。
 税金で給料をもらっている教師が、保護者の要望に応えず、
世界の国々から遅れるような教育をしているのを見て、黙っていられるのですか?。

 このような駄目な英語教育に対し、
向山先生は私財をなげうって「インターネットランド」を創設しました。
向山先生の莫大な著作料がその維持費に充てられています。
(なお、インターネットランドの創設は、英語教育のためだけではありませんが。)
 未だに中学校英語教師からの反論はありません。この論文の事実を認めているのでしょう。
小学校では英語を教える時間がない、というのなら仕方がありません。
 しかし、総合学習の時間が年に110時間(小学5年生)もあるのですよ。
この時間を変な『調べ学習』とか『そば作り』とかに当てられて、
英語教育をやらないという小学校を、保護者の皆様は許せるのですか?。


                                 2005年 1月30日


   第7章 学力低下問題

 今、教育界を騒がせている話題の1つに学力低下問題がある。
私があれこれ述べるよりも、TOSSリーダーの向山先生が、雑誌『エコノミスト』で次のように
簡潔にまとめているので、それを挙げていきたい。
 向山先生は、この問題に関して次のように言っている。

 『学力低下は確かに問題になっているが、その本質的原因はほとんど報じられていません。
原因は3つ。学校で教科書がきちんと教えられていない事、多数の軽度知的障害の子どもに適切な
対応をしていない事、そして教師の技量が低い事です。これはどれも解決可能な問題です。』

 さて、この3つについての向山先生の解説を、私なりに理解して次のようにまとめたので、
ぜひ参考にしていただきたい。

(1)教科書を教えていない
 算数では、20年ほど前から問題解決学習(自ら問題を解く力を身に付ける学習)が大切だとさ
れ、展開されてきた。
この学習は授業の最初に問題が提示され、その解き方をみんなで考える。
できる子は2~3分でできてしまうが、できない子は何分費やそうともできない。
しかも、解説のとき、まず始めに間違えた子の意見が取り上げられるので、最初にあてられる子の
学習意欲が極端に減退する。(あてられた瞬間に本人は間違えと気づく。)
そして、後半にできる子の意見が発表され、最後に先生がまとめる。
できない子は、それを聞いているだけ。聞いているだけだからほとんど理解できていない。
そんな授業が今までよいとされてきていた。しかも、授業でやるべき教科書問題がやられず、
残りは宿題になる。問題ができなかった子にとっては、理解できていない問題を家でやらされるの
で、苦痛になる。これがよい授業だといわれていたのである。
 また、国語の漢字学習でも似たようなもので、授業中にきちんと教えず、宿題任せにしている。
 これでは学力が低下しないわけはない。
 教科書はいわば民族の知恵である。ベストとまでは言わないまでもベターな教材であり、きちん
と教えれば、たいていの子はわかるようになる。なのに、その機会が奪われている。
ゆとり教育による授業時間数減少は大した問題ではない。問題は、教えるべきことを教えていない
ということなのである。

(2)軽度知的障害者の問題
 教師にとって一番大変なのは、授業についていけない子たちが騒いで授業が成立せず、
学級崩壊に至ることだが、往々にして、軽度知的障害の子がその中心にいる。
 軽度知的障害とは、ADHD(注意欠陥多動性障害)、自閉症の一種であるアスペルガー症候群
、LD(学習障害)などで、合わせて全体の7%程度と推定される。30人学級では1人か2人は
いる計算になる。
 教師として知っておかなくてはいけないのが、この子たちの多くは決して不注意なのではなく、
注意が1つに集中してしまうということである。
例えば
「教科書を出して23ページの5番をやりなさい。」という指示は3つのことを同時に記憶
しておかないと実行できない。
この子たちは「教科書を出す」ことだけしか記憶できず、
「先生、どこやるの?」と聞き返す。
多くの教師は
「今言ったばかりでしょ!聞いていなかったの!」と叱ることになる。
 また、この子たちの多くには微細運動障害という障害がある。専門家に言わせれば、
手袋を2つはめているような状態」だそうで、当然鉛筆はうまく握れないし、小さな算数タイルな
どもうまく扱えない。
専門家の指導でうまく訓練すれば、3ヶ月ほどで他の子並みになれるのに、たいていは放置され、
不注意だと叱られてばかりいるということになる。
 障害を理解されず、理不尽に叱られ続けた子どもは、往々にして3~4年生で何にでも反抗する
ようになる。それでも3~4年生なら適切な対応によって改善されるが、放置されたまま高学年、
さらには中学生になると、もうどうにもならない。
 教師がこのことを理解し、指示は1つ1つ出す、その子たちにも扱いやすい教材を使うなどすれ
ば、それだけで解決する問題である。(さらに、中学年までにこういう問題を保護者と協力して専門
機関に相談しないと、その子の一生を台無しにするという恐れもある。)

(3) 教師の技量が低い
 授業には必ずマニュアルがあり、それを明確にしているのがTOSSである。
TOSSを実践しているかどうかは、授業の最初の1分でわかる。
マニュアルを無視している教師は我流で教えていることが多い。
我流というのをわかりやすく言うと、医者が手術の仕方を無視して、自分がこう思うからこうやり
ます、と言っているようなものである。しかも、教師の世界は医者のものとは異なり、授業の仕方
をほとんど学んでこないで教壇に立つ。
とても恐ろしいことである。
 しかし、TOSSの教師はそれを優れた先生から学び、自分の教室で実践している。
さらに、日本全国で行われる研修会に進んで自腹を切って参加している。
本もたくさん読んでいる。これがTOSS教師の共通するところである。
 日本には100万人以上の小中学校教師がいるが、TOSSの教師は1万人程度である。
100人に1人の割合なので、その学校に1人もTOSS教師がいない、ということもある。
そういう場合、授業を我流でやっている先生が大変多い。

 今、各学校では学力低下問題に対して少人数指導や習熟度学習などといった方策が採られている
が、TOSS教師がいるのといないのとでは、子どもたちの学習理解に大きく差が出ている。
自分の担任がTOSS教師でなくても、きちんと教えているかどうかを保護者の目で正しく判断し
てほしいものである。
 最後に、この問題に関して3つの観点を挙げたが、3つ目の「教師の技量が低い」に関わる内容
は、浅野の考えで書かれていることを付け加えておきます。


                                 2005年 8月26日


   第8章 学力低下を防ぐ
         ~算数学習の基礎①~

 さて、現代の教育課題について述べてみたので、ここからは各論に入っていくことにする。
 小学校の算数では、つまずくところがはっきりしている。
(学習に臨む姿勢は、第3章を参考にしていただきたい。)
 しかし、そのポイントの指導を間違えると、あとあとまでその児童はつまずきから立ち直ることができない。
 これは当たり前の事であるのに、その指導を怠っている教師は、少なくないという事実がある。
指導のプロが親の教えと同じ事をしていては、プロとしての名が廃るというところだ。そういう教
師に教わっては子どもが不幸である。
 しかし、ここでは、児童がつまずき、そこから立ち直れない例をあげ、保護者の皆様でも救える
ような指導例を紹介していこう。

(1) 数の概念
 低学年の算数では、よく
『算数セット』が利用され、活用されている。
ほとんどの子がこれで十分だが、中にはこのセットでは十分理解できない子がいる。
 そういう子はうまくタイルが操作できず、学級での指導についていく事ができない場合が多い。
(また、第7章で述べたように、最初から扱えない子もいる。)

 このときに利用したいのが、TOSS推奨
『百玉そろばん・児童用』である。
そろばんと書いてあるから、あのそろばんをイメージしがちだが、まったく違う。
 これは、十進法に即して作られている。したがって、数の量感が一目瞭然である。
『児童用』というから教師用もあるが、これは主として低学年の授業に使うことが多い。
当然私も教師用を持っているが(私物、定価25,000円程度)、低学年を担任した事のない私は
授業で使ったことはない。唯一、サタデースクールで1度使用したのみであるが、2年生の子ども
が一瞬にして集中するようになり、そこで、子供たちをほめたりすると、どんどん食いついてきて
、ボーとしている子も真似をするようになる。これはとてもよい教材教具だが、実際に学校にある
場合は少ない。TOSS教師は、みな自腹で購入して、活用している。
(学校予算ではそれまで買えないことが多い。)
 しかし、この
『百玉そろばん・児童用』は、数を数えたり計算をしたりするのが苦手な子には、
とてもよいものだ。そういうお子さんをお持ちの場合は1度私に相談してほしいと思う。
(家で扱ってみると、よく理解できますよ。)
 また、2年生になるとかけ算九九の学習が出てくるが、これは口で唱えることが中心となり、
量感を捉えにくい。この百玉そろばんでやると、量感はよくわかる。
 ぜひ1度試してみたい教材教具である。
(最近TOSSでは、かけ算九九セット、というものを開発し、販売している。開発したのは、
なんとあの向山先生である。)

(2) わり算の筆算
 さて、クラスの5分の1近くの子がつまずいてしまうものに、わり算の筆算がある。
 簡単な筆算から始まるこの学習は、教えどころを間違えると、6年生まで引きずることになる。
すごく大切な場面だ。

 例えば、右のような筆算があるとする。
暗算が得意な子は、すらっとできるが、
計算を頭の中で整理できない子は、
そこで鉛筆が止まってしまう。
 まずは、どんな答えがたつか、
補助計算を隣に書く、
ことが第1のポイントである。
 次に、立てた答えが間違えていると気づいたとき、
その補助計算を消しゴムで消してしまうという子が大変多い。
しかし、その
補助計算は、消してはいけない、
大きく
×印を書くのである。
「ノートが汚くなる!」と思う人が多いだろう。
でも、この
×印が次の活動に役立つのである。
(答えを立てるときの参考になる。)
そして、
補助計算の答えを写し、引くのである。

 TOSSでは、算数の筆算のやり方を、
①立てる②かける③写す④ひく⑤おろす、の5段階にしている。
一般に教えられているものには、この
が、ない。がないということは、
基本的に頭の中で計算するという意味であろう。ただ、それでは、できない子がいるのである。
そして、間違えをいかに少なくするか、というのがTOSSの基本である。
 計算間違えが多い子は、ぜひ右上のように計算してほしいと思うし、
算数の習熟度学習で算数の苦手なクラスを受け持っている私は、全員、右上のようにやるよう指導している。
例外は、認めない。みんなが同じようにやることで、一斉学習がしやすくなるのである。
 
「子どものやり方に応じてやっていいよ」というのは、できる子たちに当てはまる言葉である。
教師が教師である意味をしっかり理解して指導しなくてはならない。


                                 2005年 8月30日


   第9章 学力安定を図る
         ~算数学習の基礎②(割合編)~

 5年生になって、わり算の筆算につまずいている児童が少なくない。
そんなときは第8章のやり方で必ずやって見よう。必ずできるようになります。
 さて、そのわり算でも、小数になってくると、またまたややっこしくなってくる。
その上、『割合』の学習が出てくる。ここで落ちこぼれてしまう子がたいへん多い。
そうならないように、文章題の解き方を教えていこう。

    割合の文章題の公式 → もと×割合(小数)=くらべ
 これだけである。教科書はいろいろな(式)が書いてあるが、そのつど覚えさせると、
算数の苦手な子の頭の中は、必ず混乱する。しかし、これ1つだけ覚えればいいよ、というと、
それなら誰でもできる。
 さて、どのように活用していくか、具体的に例を示して、やってみよう。
(5年生の教科【東京書籍】から問題を抜粋)

(例1)
  赤、青、黄の3本のテープがあります。
  赤のテープの長さは5mです。
  青のテープは、赤のテープの長さをもとにすると、3.5倍、
  黄のテープは、赤のテープの0.6倍の長さです。
  青と黄のテープは、それぞれ何mですか。
(教科書p83)

(例2)
  れなさんの家には、生後10日の犬がいます。
  今の体重は630gで、生まれたときの体重の1.8倍です。
  生まれたときの犬の体重は何gでしたか。
(教科書p97)

 この2つの問題をすらすら解ける子は問題はない。クラスでも中より上の位置にいるはずである。
 算数の苦手な子には、解くための手段を、明確にしていかなくてはならない。

(1)割合の数字を○で囲む。
 公式に、割合(小数)と、うたっているのは、百分率(~%)と区別するためである。
 これも後で例示したほうが分かりやすいので、そうすることにする。
(例1)では、3.5倍と0.6倍をで囲み、
(例2)では、1.8倍をで囲む。

(2)“もと”を表す言葉に線(アンダーライン)を引く。線の下に(もと)と書く。

 これがけっこう間違える。
 最初に次のことを教えてあげる。(必ずノートに書かせる。)
    ※ 割合の文章題で
“もと”を表す言葉 ※   ~~~をもとにすると
    ~~~“もと”を表す言葉にあたる)    ②
~~~を1とみると
                           ③
~~~の何倍(何割、何%)
                           ④文章題にない場合
 この④の場合であるが、たまに出てくる。その時は「割合」の前に
「全体(全部)の」
という言葉を補い、それが
“もと”を表す言葉になると説明しておけば、よい。
 
(例1)では、「赤のテープをもとにすると」になり、
(例2)
では、「生まれたときの体重の(~倍)」になる。
しっかり読み取れれば、間違うことは、ない。

(3)数字を公式に当てはめる。分からない数字は□とする。

(例1)
青のテープ:5×3.5=□      黄のテープ:5×0.6=□
          5×3.5=17.5          5×0.6=3
                答え:17.5m           答え:3m

(例2)
□×1.8=630
        □=630÷1.8=350
                 答え:350g
(例2)の移項問題が難しければ、その前に次の例題をやらせてみよう。
そんなに難しくないはずだ。

< 練 習 問 題 >

(例3)
□×2=18         問題①:□×9=63
      □=18÷2       問題②:□×12=144
      □=9          問題③:□×16=224
(例4)7×□=56         問題④:6×□=48
      □=56÷7       問題⑤:15×□=225
      □=8          問題⑥:24×□=768

 ここで注意するのは、=(イコール)は必ず縦にそろえて書くということをきちんと指導することだ。
ここをいい加減にやると、中学の“X”(エックス)の指導のとき、ボロが出るのでそうならないようにしたい。
 これで、割合の文章題はOKである。その前のこのような何倍か、という問題にも使える。
算数の苦手な子は
(例1)をかけ算で解き、(例2)をわり算で解くということの区別ができない。
 最初の式は、
必ずかけ算ということを示してあげると、間違いが極端に少なくなる。
 さて、最後に次の例題を考えてみよう。(教科書下巻p45)

(例5)
アフリカには、現在2800頭の野生のクロサイがいます。
これは、10年前の140%にあたります。
10年前のクロサイの数は何頭でしたか。

 それでは手順に従って解いていこう。
まずは割合を見つける。140%に○をするが、これは小数でないので、○の下に「1.4」という小数を書く。
この問題はここがポイントだ。
次に、“もと”を表す言葉を見つけ、線を引く。
割合の前の
「10年前の」がそれにあたる。ここで「10年前の」は何を意味しているか考えさせる。
「10年前のクロサイの数」と考えるのは自然のことだ。
数は分からないから、□とする。さあ、立式。

□×1.4=2800                さあ、難しくはないでしょう。
    □=2800÷1.4=2000        問題集にトライしてみよう。
    □=2000     答え:2000頭


                                2005年 11月10日