楽天はなぜ経済圏拡大に走るのか?新規事業の勝算と焦燥

EC事業大手の楽天が、M&A(企業の合併・買収)や新規事業参入によって事業領域を広げている。今なぜ「経済圏」拡大に走るのか。勝算はあるのか。

携帯電話事業への投資は十分か

まず経済界を驚かせたのは、自らが回線を保有する携帯電話事業への参入だろう。

2018年2月26日、総務省が新たに割り当てる携帯電話向け電波の取得を申請。認可が下りればNTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクに次ぐ第4の携帯電話事業者になる。2019年から新サービスを始め、約10年後をメドに1500万人の顧客獲得を目指すとしているが、サービス開始前から評判が芳しくない。

最大の理由は、2025年までに基地局などの整備に6000億円を投資するとしている点だ。

屋外基地局に3000億円、屋内基地局に800億円、基幹回線網に650億円、ユーザー増対応に800億円などと内訳も明確。設置に向けて東京電力や中部電力などが保有する電力設備を活用するとしており、かなり具体的なのだが、大手通信会社は一様に「そんな少額投資で全国にネットワークを張り巡らせられるわけがない」と口をそろえる。

携帯電話事業者として全国にネットワークを張り巡らせるには数兆円の設備投資が必要となる。6000億円という規模はドコモやKDDIがネットワークの維持で毎年投じている額でしかない。

三木谷浩史会長兼社長は「勝算がなかったら始めない」とした上で、設備投資が少なくて済むのは、構築する通信インフラが「第四世代(4G)と呼ばれるもので、すでにNTTドコモやKDDI、ソフトバンクが整備を終えたものだからだ」と強気の姿勢を崩さない。しかし、楽天が向こう7年で投じる金額は、ドコモの1年分だと言われれば、通信関係者ならずとも首をかしげるだろう。

6000億円では済まないとみられる理由は、そればかりではない。

総務省が開放する周波数帯は防衛省などが使用している1.7ギガヘルツ帯と3.4ギガヘルツ帯。これは大手3社が活用している「プラチナバンド」と違って使い勝手が悪い。プラチナバンドは例えば建物などの障害物があっても電波が回り込むといった特徴があるが、楽天に割り当てられることになる電波はまっすぐしか飛ばない。繋がりやすさを確保しようとすると、それだけ基地局の数を増やさなければならないのだ。6000億円で全国ネットワークを作るというのは至難の業だ。

相次ぐ事業参入の背景にあるアマゾンの攻勢

事業領域を広げ、着々と経済圏拡大を図る楽天。
Kim Kyung Hoon/reuters

もっとも、楽天の足元の業績は好調といっていい。2018年2月13日、楽天が発表した2017年12月期連結決算は、純利益が前期比2.9倍の1104億円と3年ぶりに過去最高となった。

ところが、この日の記者会見に出席した三木谷氏が業績について触れることはなく、発言のほとんどは新規事業の狙いに割かれた。その意味では、三木谷氏の関心事は、将来の事業展開をどうするかに移っているように見える。

実際、ここにきて楽天は新規事業参入を相次いで打ち出している。

野村ホールディングス傘下の損害保険会社、朝日火災海上保険を株式公開買い付け(TOB)で完全買収すると発表、2018年春にはビックカメラと家電の通販サイトを立ち上げ、2018年9月までにはアメリカ流通大手ウォルマート傘下の西友ともネットスーパーを立ち上げる。決算記者会見で三木谷氏は「インターネット革命が一段落したときに生き残れるように、この局面では経済圏を拡大していく」と語ったが、「経済圏の拡大」とは携帯電話事業だけではないのだ。

なぜ今、それを急ぐのか。

楽天の決算をひもとけば理由は見えてくる。2017年12月期は連結売上収益が前期比21%増の9444億円、連結営業利益は同90%増の1493億円。先に触れた純利益なども並べてみれば、一見、好決算を背景として一気に経済圏の拡大に乗り出したように見えるが、注目しなければならないのは米アマゾン・ドット・コムとの競争で生じている国内EC事業の低迷だ。連結営業利益は746億円を確保したものの、前期比では3.8%減と頭打ち。代わって、存在感を増しているのが売り上げの35%を占める金融事業。連結営業利益は国内EC事業に匹敵する728億円だが、前期比では11%増と勢いがあり、楽天を支えているのが実情だからだ。

「楽天が始めた海外事業は撤退が相次ぎ、ホームグラウンドである日本で成長するしかない。しかし現状維持ではアマゾンの攻勢をかわせない。そこで経済圏の拡大に乗り出した」と楽天関係者は言う。つまり背水の陣を敷いたわけだ。

座して死を待つことはできない。だから打って出るという戦略は間違ってはいないだろう。しかし問題がある。

「損保買収は穂坂(雅之・副会長執行役員)氏の案件、携帯電話事業は山田(善久・副社長執行役員)氏の案件といった具合に、一部の経営幹部が成長戦略を掲げ、突っ走り始めている」(楽天幹部)

「それぞれ他の幹部が何をやっているかに関心を持たない。三木谷さんのグリップが効かなくなりつつある」(別の幹部)という声もある。

相次ぐ新戦略は乾坤一擲(けんこんいってき)なのか暴走なのか。判断を下すには、しばらく様子を見る必要がある。

(文・悠木亮平)

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悠木亮平(ゆうき・りょうへい):ジャーナリスト。新聞社や出版社で政官財の広範囲にまたがって長く経済分野を取材している。

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Adweek Asia 2018で落合陽一氏が基調講演に登壇

5月14日(月)〜17日(木)の4日間、港区・六本木の東京ミッドタウンにて開催される世界最大級のマーケティングイベント「Advertising Week Asia 2018」(AWAsia 2018)。ADWEEK Asiaは今年で3回目の開催となる。

公式サイトによると、4日間の開催期間を通して、100以上のセミナーやワークショップ、210人のスピーカーなどを予定している。

Shuya Nakano

基調講演に、メディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏が登壇するなど、注目の登壇者やセッションの順次発表が続く一方、今年は例年と違った「学生向け」の新たな試みも追加される。

初の「ADVERTISING WEEK ASIA 2018 Special Program STUDENT COMPETITION」とは?
AWAsia初の試みとして行われるのは、最終日(17日)に学生向けのコンペティション「ADVERTISING WEEK ASIA 2018 Special Program STUDENT COMPETITION」。

「2020年に向けて日本をブランディングしよう」をコンペテーマに掲げたアイデアコンテストで、個人あるいは2人1組のチーム参加で応募するもの。募集期間は4月16日(月)まで。優勝特典は、ADVERTISING WEEK NEWYORKへの招待と豪華だ。

またこのコンペでは、落合陽一氏による学生向けのスペシャル講演も決定している。AWAsiaの事務局によると、近年、その距離が近くなっているアート、デザイン、サイエンス、エンジニアリングの広告における役割について語る講演になるという。

出典: YouTube

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キャッシュレス、カード支払いで無駄遣い増えてませんか?

shutterstock

日本人は“現金好き”とは言われますが、それでも近頃はカードで買い物をする人は増えてきています。

「カード」といっても種類はいろいろで、クレジットカード、デビットカード、電子マネーなどがあります。それぞれに特徴があって細かい違いはあるものの、ここでは単に「カード」という場合、それらをまとめて捉えたものと考えいただければと思います。

さて、このカード決済。なぜ増えてきたのでしょうか。主に理由は3つあると思います。

・ポイント付与
・便利さ
・現金NG

まずはひとつめのポイント付与。

カード決済するたびに、所定のポイントが与えられ、次の買い物時にポイントを利用すれば、簡単に割引を受けられるというもの。ポイントではなく現金還元といったカードもありますが、いずれにしても、購入した金額に対し、実質的に常に一定の割合で割引を受けられるようなものです。同じ買い物でもこうした“割引”は現金決済では得られません。

ポイントは普通預金金利の1000倍

クレジットカードによるポイント付与は、現金にはない魅力だ。
Rawpixel.com / Shutterstock

カードによって、ポイントの付与率は異なりますが、1%前後が多いでしょうか。それでも現在の銀行預金金利と比較すれば、はるかに高利率です。

例えば、ポイント付与率を1%としましょう。現在(2018年3月現在)、大手行の普通預金金利水準は年0.001%。ポイントの方がなんと1000倍です。単純に100円の利息を得るには、銀行預金では1000万円を預けないといけませんが、ポイントでは1万円の買い物でOKということです。

これだけでも十分に“高利率”。さらに言えば、預金金利は1年かけて利息が得られる利率ですが、ポイントは買い物の都度得られるので、より短期間で付与されます。また、利息には20%、厳密には現在は復興特別所得税がかかり、20.315%課税されます。

こう考えると(仮に買い物から2カ月後にポイントが付与されるとして)、ポイントは実に預金金利の7500倍を超えます。例えば、1万円の買い物で得られるポイントは、銀行預金に置き換えると、7500万円以上預けて得られる金銭的メリットに相当するというわけです。

2つめの便利さ。レジで財布から現金を出す煩わしさ、かかる時間、おつりの受け取りといった現金での支払いの一連の動きと比較すると、カード決済の方がスムーズに感じられる場面も多いでしょう。

サインレスの決済手段もだいぶ増えました。スイカやパスモは電車に乗る時だけでなく、いろいろな場面での支払いも可能になりました。以前よりもカードが使える場所が増え、少額決済も可能になったことは、カード利用を後押ししています。

そして3つめの現金NGとは、そもそも現金利用ができないケースです。例えば、ネットでの買い物。ネットショッピングの場合、代引きなど配達時に現金で支払う方法が選択できる場合もありますが、クレジットカード払いが主流です。

ポイント“呼び水”で無駄なものを買えば本末転倒

ネットでの買い物には、クレジットカードが欠かせない。
DW2630 / Shutterstock

こうして見てみると、カードはとても便利なもの。さぁ、どんどん活用しましょう、と言いたいところですが、何にでもメリットとデメリットはあるもの。今回は「お金使い」の面からデメリットに目を配っておきましょう。

まずポイント付与。なぜ銀行の普通預金よりもはるかにいい利率のポイントがつくのでしょうか。なぜ売る側はコストをかけて、カードを利用しやすい環境を整えてくれるのでしょうか。私たちにもっと買い物をしてほしいからです。当然ポイントが使えるのは、原則として付与した当の店。繰り返し買ってもらうことを期待しています。

ポイントはあくまで自分が買い物をした一部が戻ってきているもの。ポイントを貯めるために、たくさん買い物をしようとしがちですが、これは本末転倒です。あくまで「自然に貯まる」程度に留めたいところです。

またポイントの利用方法ですが、ポイントだからといっていらないモノを買わないようにしましょう。これでは実質の“割引”になりません。いらないものをおまけでもらった感覚です。

ポイントの範囲内で買うにはまだいいのですが、ポイントが“呼び水”となって余計なモノを買ってしまうと、無駄遣いが増えてしまう結果に。例えば、ポイントが200円分あるからといって、勢いで1000円のモノを買ってしまうと「2割引きで買えたからラッキー」ではなく、「支出が800円増えてしまった」ということ。もちろん前者であれば、賢いポイント活用です。

キャッシュレスはそもそも無駄遣いを生みやすい

ポイントを貯めようと、逆に散財してしまうことも…。
Shutterstock.com

こうした行動を取りやすいのは、行動経済学でいうところの「メンタルアカウンティング(心の会計)」です。同じ金銭的価値がも、ポイントは“おまけ”というイメージが強いので、自分で働いて得たお金と比べて、散財しやすい。だからこそ、ポイントは使い途をより意識して利用することが大事です。

そこに少額での使いやすさ・便利さが伴えば、さらに消費は進みます。キャッシュレスでの買い物は「(お金を)使った」意識が薄くなり、そもそも無駄使いが増えやすいものです。

ある時、「カードで支払っていると、どうしても無駄遣いが増えてしまいます。でもポイントがつくからカードで買った方がお得だと思うんです」という相談を受けました。家計を精査すると、ポイントよりも、無駄と思える買い物の方が金額が大きいことがわかりました。

「カードは逃げません。お金使いに自信が持てるようになったら、いつでもカードを再び活用すればいいと思いますよ」

と、この人にはいったんカード利用をやめることをアドバイスしました。

どのような支払い方法であっても、その源泉は自分の「お金」です。それ以上には使えません。現金決済もカード決済も、お金が「形」を変えただけ。形が変わっても、お金の使い方をしっかり考えていればポイントを無駄に使ったり、余計な出費を防ぐことにつながります。

カード決済は、今後もますます広がっていくでしょう。

カードのメリットを十分に生かすためにも、デメリットにも注意して上手にカードと付き合っていただきたいなと思います。

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八ツ井慶子:生活マネー相談室、ファイナンシャルプランナー。どなたでも参加できる「生活マネー塾」を主宰。

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フェイスブックもヤフーも2100年までに沈むのか

2018年3月27日 16:00 Shayanne Gal/ Business Insider

世界の海面は、海水温の上昇と大陸氷床の融解により急速に上昇している。サンフランシスコ・ベイエリアなどの沿岸地域は、海面上昇の被害を受けることになるだろう。

海面上昇のみならず、サンフランシスコは年間最大10ミリのペースで、ゆっくりと沈みつつある。地盤沈下だ。

迫りくる水は、サンフランシスコに壊滅的な影響を与えるだろう。高級不動産開発地や数多くのテック企業は、移転を余儀なくされる可能性がある。

非営利団体クライミット・セントラル(Climate Central)は、「最悪の」海面上昇がいかに壊滅的なものかを示すグーグル・アース(Google Earth)のプラグインを開発した。データは、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の2017年のレポートの予測に基づいている。

クライミット・セントラルの予測によると、サンフランシスコ、シリコンバレー、そしてサンフランシスコ湾一帯は危険な状況になり得る。

クパチーノにあるアップルの新本社は安全だが、フェイスブックなどメンローパークにある企業は完全に水浸し。

気候変動が衰えることなく続いた場合、オフィスが水浸しになるテック企業を見てみよう。

現在のサンフランシスコ。

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2100年のサンフランシスコ中心部の予測。最悪のシナリオで海面上昇が起こった場合。

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LinkedInのサンフランシスコのオフィスはギリギリの位置。スクエア(Square)やTwitterは大丈夫そうだ —— この時点では。

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フェイスブックのメンローパークの本社 —— サンフランシスコの南に位置する。

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今世紀末までには、完全に水浸しになりそう。

NOAAの100年予測に基づくFacebook。
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何の対策も取らなければ、こうなってしまう。

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サニーベールにあるヤフーも、フェイスブックと大差なし。

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本社とその周辺は2100年までに水浸し。

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eBay。

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今世紀末までには、目の前がビーチになるかも。

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サンフランシスコ空港とその周辺は、低地のため浸水しやすい。

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良い旅を!

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アップルの新本社(中央の大きな輪)は高地にあるため、大丈夫そうだ。

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アドビなどサンノゼにある企業は海岸から離れているため、海面上昇の影響を受けにくい。

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ニューヨーカーも、侮るなかれ。マンハッタンもしょせん、島。

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Business Insiderのオフィスやスポティファイ(Spotify)の新本社もある金融街も、今世紀末には水浸し。

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[原文:Disturbing before-and-after images show how Silicon Valley tech offices could be submerged by 2100]

(翻訳:Ito Yasuko/編集:増田隆幸)

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低迷する銃の売り上げ、老舗が破産法の適用を申請

2018年3月27日 10:45 AP Photo/Jessica Hill

・トランプ政権下で売り上げが急激に減ったレミントン・アームズ(Remington Arms)が破産法の適用を申請した。
・同社の売り上げは2017年、30%減って、6億ドル(約630億円)となった。
・レミントン・アームズはアメリカで最も歴史ある銃器製造会社の1つだ。
・同社は手続き中も、銃の製造は続ける考えだ。

銃の売り上げが伸び悩む中、レミントン・アームズが連邦破産法11条の適用を申請した。

202年の歴史を持ち、ブッシュマスター(Bushmaster)やマーリン(Marlin)といった銃器を製造する同社は、2017年の売り上げが30%減り、6億ドルとなったという。

売り上げが低迷しているのは、レミントン・アームズだけではない。一連のトレンドは「トランプ・スランプ」と呼ばれている。大統領は銃産業の支持者と見られているからだ。

しかし、同社が逆風に直面し始めたのはトランプ氏が大統領に選ばれる前のことだ。

レミントン・アームズは2014年、集団訴訟の結果、欠陥の見つかった銃750万丁の引き金を無料で交換することで合意した。同社は銃の安全性を主張したが、裁判では銃と「数百人の重傷、少なくとも24人の死亡」との因果関係が認められたと、CNBCは報じている。

また、2012年にサンディフック小学校で起きた銃乱射事件で同社のライフルが使用されたことでも、批判にさらされた。コネティカット州ニュータウンで発生したこの事件により、26人が死亡した。

手続き中もレミントン・アームズは銃の製造を続ける考えだ。

[原文:Remington files for bankruptcy amid 'Trump slump' in gun sales]

(翻訳、編集:山口佳美)

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迫りくる人口時限爆弾、トイザらスの破綻はその第一歩か

2018年3月27日 10:30 Getty Images

・トイザらスは、アメリカ国内の700以上の店舗を閉店または売却する。
・同社は最新の年次報告書で、出生率の低下が売り上げに影響したと指摘した。アメリカでは2008年以降、出生数が急速に減少している。特にミレニアル世代の女性で顕著。
・トイザらスは全米規模のおもちゃ小売チェーン、多くの小売事業者が厳しい恐々に追い込まれそうだ。
ミレニアル世代は、親世代とは違う。

ミレニアル世代とは一般的に1981〜1996年に生まれた世代で、前の世代よりも人種的な多様性に富み、大卒が多く、結婚が遅い。ミレニアル世代の女性の間では、親になることを先送りしたり、そもそも見送る人が増えており、アメリカの出生率低下に影響を与えている。2016年、15〜44歳の女性1000人あたりの出生率は62人となり、過去最低を記録した。

エコノミストたちは、出生率の低下がアメリカ経済におよぼす影響を懸念している。人々が子どもを持たなくなると、経済成長は難しくなるからだ。

なかには、アメリカは「人口時限爆弾」を抱えるリスクに晒されていると指摘する人もいる。出生率の低下と同時に、高齢化が進む現象のことだ。日本は2016年、1899年に統計をとり始めて以来、始めて出生数が100万人を切り、2017年にはさらに減少、だが同時に高齢化も進んでおり、こうした現象の代表例とされる。

小売業者、特に新生児や子どもをターゲットにしている小売業者は、この現象に注目し始めている。最も新しい事例がトイザらスで、同社は2017年の年次報告書に、アメリカの出生率の低下が売り上げ悪影響を与えている可能性があると記した。

「エンドユーザーのほとんどが新生児と子どもであり、当社の売り上げは、事業を展開する国の出生率に左右される」と年次報告書に記した。

「近年、多くの国で出生率が低下もしくは停滞し、教育レベルと収入が上がっている。これらの国で新生児と子どもの数が大幅に減り続ければ、当社の事業に重大な影響を与えかねない」

トイザらスは、アメリカ国内735店舗の閉鎖または売却を発表した。トイザらスの破綻は、アメリカの出生率の低下だけが原因ではない。同社はオンライン小売業者との競争の激化、負債、オンラインゲーム人口の増加、工場での人件費の増加なども事業に影響したと述べた。

だが、同社が子どもの減少に懸念を示したことは、ビルド・ア・ベア・ワークショップ(Build-A-Bear Whorkshop)のような有名おもちゃブランドから独立系玩具店まで、様々な同業者に新たな問題を突きつけたのかもしれない。雑誌ニューヨークは2017年、地元の玩具店の中には売り上げが伸びず「全商品が超特価セール」になっている店もあるという記事を掲載した。

トイザらスの新店舗オープン。1990年。
Getty Images

アメリカでは第2次世界大戦後、20年間にわたってベビー「ブーム」が起こり、子どもをターゲットにした小売業者に潜在顧客を提供し続けた。トイザらスは1957年、ワシントンD.C.に1号店をオープン。ベビーブーム世代がまだ若かった頃だ。

ベビーブーム世代はアメリカ史上最も人口の多い世代だが、ピュー・リサーチ・センターは2019年にはミレニアル世代がベビーブーム世代を追い抜くと予測している。

トイザらスの売り上げは、1990年代はじめに落ち始めた。ちょうどその時期に出生数も減少し始めた。そして出生率の減少は2007年の世界金融危機の最中に加速した。トイザらスは玩具に注力した全米規模の小売りチェーンだった。その衰退は、1つの時代の終わりを表しているのかもしれない。

[原文:Toys R Us says millennials not having kids hurt the company — and it could be because of a looming 'demographic time bomb']

(翻訳:山口玲子、編集:増田隆幸)

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ウォルマートが明かす、新たなロボットの導入とその理由

・アメリカのウォルマート(Walmart)は、ロボットの導入を国内50店舗まで拡大した。
・ロボットは自動で通路を行き来し、陳列棚をスキャン、品切れになっている商品がないか、表示価格に間違いがないか、ラベルに間違いがないか確認する。
・ウォルマートのイノベーション担当の幹部John Crecelius氏は、このロボットを使用したプログラムの成果に、同社は「非常に興奮し、動機付けられている」と語った。

ウォルマートの新たなロボットたちが、アメリカの小売業界に衝撃を与えている。

同社は陳列棚を自動でスキャンして回るロボットの試験運用をアーカンソー州、カリフォルニア州を含む4つの州、50店舗に拡大した。180センチ超の車輪のついたタワーのような形をしたこのロボットには、陳列棚のエラーを発見すべくカメラが搭載されている。ウォルマートは自動ロボットを製造するボサノバ・ロボティクス(Bossa Nova Robotics)と共同でこのプログラムを進めている。

ロボットは陳列棚をスキャンして回り、品切れになった商品がないか、買い物客が間違った場所に置いた商品がないか、表示価格に間違いがないか、ラベルに間違いがないか確認する。店内を絶え間なく行き来し、見つけたエラーを人間の従業員に伝達する。

同様のタスクを人間の従業員よりも効率的に行えるであろうロボットを使うことで、従業員の時間を顧客へのサービスにより多く振り分ける狙いだ。

だが、ウォルマートのイノベーション担当の幹部John Crecelius氏によると、この試験的なプログラムで同社が注目しているのは生産性ではない。

「それは主に、我々のパフォーマンスや顧客へのサービスをいかに向上させるかということだ」同氏はBusiness Insiderに語った。

時速約3.2~4.8キロメートルと、ロボットはゆっくり動く。
Walmart

その1つが、陳列棚に置かれた商品がなくなりそうなとき、より早く気付き、補充することだ。

Crecelius氏は、こうした情報はウォルマートのオンラインショップでも役立つと言う。店舗にどれだけの在庫があるか、より正確に把握できるからだ。

最初のテスト段階で、ウォルマートの店舗従業員たちは、ロボットが収集した情報を使って、配送トラックから実店舗の陳列棚へ一部の商品を急いで動かすなど、思ってもみなかったロボットの使い方を発見した。

「(店舗従業員たちが)大抵、最前線で我々が考えてもみなかったビジネスの改善策を見つける助けになっている」Crecelius氏は言う。

試験運用を通じてウォルマートは、ロボットをいつ動かすのが最も良いか、ロボットが提供するデータをどう使うのが最も良いか、見出そうとしている。今は、早朝、日中、夜の1日に3度のサイクルを試しているところだ。

ロボットは、ボサノバ・ロボティクスが開発した。
Walmart

Crecelius氏によると、関係者や顧客の大半は「自然な好奇心」をロボットに持っているようだと言う。

「そのテクノロジーとロボットが何をするのかに、人々は引き付けられている」同氏は言う。「関係者たちは『これが何をもたらすのか、自分の業務でどう使うことができるのか? 』と関心を寄せている」

同氏によると、ウォルマートの店舗従業員たちもロボットが気に入ったようだ。中にはロボットをチームのメンバーと見なし、名前を付け、名札を作る従業員もいるという。

「恐らくこれは良い兆候だ」Crecelius氏は言う。「これはその対象が自分たちを助けてくれる、意味のある違いを生み出してくれる存在だと感じたときに起きることだから」

[原文:Walmart reveals why it has robots roaming the aisles in 50 of its stores]

(翻訳、編集:山口佳美)

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「ソーシャルメディアは民主主義にマイナス」が6割

Facebookからの個人情報流出問題で、同社が窮地に立たされている。

Facebookを使うアメリカ人5000万人分の個人情報が第3者に不正に流出し、それが2016年の米大統領選挙でトランプ共和党候補者陣営に有利になるように使われていた。問題が報道されてから、同社の時価総額は500億ドル(5兆2500億円)吹き飛び、アメリカ議会ではマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)を証人喚問しようという動きが高まっている。

Facebookは今回の件に対して、ニューヨーク・タイムズやワシンントン・ポストなど英米の主要紙に謝罪広告も掲載。米連邦取引委員会(FTC)は3月26日、Facebookが個人情報を適切に管理していたかどうか、調査に着手したと発表した。同社をめぐる騒動は収まりそうもない。

「Facebookは“何もしていない”」と内部告発者

内部告発者のクリストファー・ワイリー氏(右)。
NBCニュースより

「Facebookは、何も(対策を)していない。アメリカとイギリスで、規制当局や司法当局と話し合うように提案したが、何もしていない」

髪をピンクに染めたこの問題の内部告発者のクリストファー・ワイリー氏は、NBCニュースに出演してこう告発した。ワイリー氏は、米大統領選挙を「操る」ために雇われたデータサイエンティストで、Facebookが持つ個人情報を使うことを考え出した張本人だ。

この問題を最初にスクープしたのは、英紙オブザーバー(ガーディアンの姉妹紙)や米紙ニューヨーク・タイムズなどだった。オブザーバーによると、Facebookは、報道が出る前に法的措置に訴えると、同紙を脅していたという。

ガーディアン紙に掲載されたワイリー氏の証言やビデオは、米大統領選挙がいかにして、Facebookなどデジタルプラットフォームを使って操作されたかが詳細に語られている。

「(Facebookのデータを元に)あなたが、どんな情報を信じやすくて、どんな文脈、話題、コンテンツに反応しやすく、つまりどんな情報に騙されやすいのか。(騙すためには)何回考えてもらったらいいのか。そうして、あることについての考え方を変えていくのです」(ビデオより)

5000万人の個人情報を100万ドルで購入

出典: YouTube

これまでに出ている報道によると、Facebookから流出したのは、ケンブリッジ大の心理学専門の准教授がアプリを使って得た27万人分の個人情報。そこには何人の友人がいるかや何に「いいね!」をしたのかなどの情報も含まれていたため、最終的に5000万人分となった。これを、ワイリー氏を雇っていたデータ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が、100万ドルで購入した。

ワイリー氏はケンブリッジ社で、極右ニュースサイト「ブライトバート」会長で、後にトランプ選挙陣営最高責任者となったスティーブ・バノン氏の下で、2014年から働き始めた。ワイリー氏とバノン氏は、ビッグデータとソーシャルメディアを使った「情報作戦」を米大統領選挙に使ってみるという計画を持っていた。

有権者個人の心理や政治志向を組み合わせたプロファイル・データベースを作り上げるために、Facebookが持つ個人データを利用することを考えついたのも、ワイリー氏だ。ケンブリッジ大の准教授から購入した資金100万ドルを投資したのは、トランプ氏と共和党の支援者であるロバート・マーサー氏だった。

ワイリー氏は、ケンブリッジ社の親会社で、英国防省と米国防総省(ペンタゴン)と契約しているSCLグループから、グループの研究成果を許されたという。軍隊が使う「心理作戦」の手法で、説得工作ではなく、噂・偽情報・フェイクニュースなどの「情報コントロール」で、有権者心理にインパクトを引き起こすという手法だ。SCLグループは、すでに小さな国の選挙に、「情報コントロール」を使っていた実績があった。

ワイリー氏が編み出した有権者のプロファイルは、クリエーターやビデオグラファー、エディターなどがいるチームに渡り、そこが作り出したコンテンツがフェイクニュースなどの形で、ソーシャルメディアなどに投入されていた。

「それを見つけて、クリックしてもらえれば、ハマって、あらぬことを考えてもらえるのです」

ケンブリッジ社はトランプ陣営と契約し、10数人のチームも送り込んだ。データ分析を駆使して、どこにCMを投入したらいいのか、トランプ氏がどこで選挙集会をしたらいいのかなどを指示していたという。

ただワイリー氏は、この作戦がどれほどアメリカ人の気持ちを変えたか、何がトランプ氏を当選させたのかは、不透明だとしている。しかし、5000万人のデータと言えば、単純計算でアメリカの有権者数2億3000万人の4分の1だ。

Facebookは流出を把握していた。しかし……

腕を引かれてオフィスに入る、ケンブリッジ・アナリティカ社CEOのアレクサンダー・ニックス氏。
REUTERS/Henry Nicholls

この間Facebookは、ケンブリッジ社に個人情報が渡ったことを知っていた。ワイリー氏はFacebookの弁護士がケンブリッジ社に送った書面を保存しており、そこでは「違法に取得した」ことを主張していたという。その後もFacebookは個人情報のデータの消去を求めてはいるが、報道によるとデータは最近までケンブリッジ社が所有していたという。

ザッカーバーグ氏は3月25日、ニューヨーク・タイムズなど米英の主要紙に、異例の一面謝罪広告を掲載した。

「私たちは、あなたたちの情報を守る責任があります。(情報の流出は)信頼に反することであり、当時もっと何かしなかったことについて謝罪します」

また、個人情報を吸い取る仕組みとなっているアプリを停止し、アプリの数も限定しているという。

6割が「ソーシャルメディアは民主主義にマイナス」

Facebookの謝罪広告。

ロイター通信は、アメリカとドイツでの世論調査で、Facebookの個人情報の取り扱いを巡り、「過半数の人がFacebookを信頼していないことが明らかになった」と報じた。

独紙ビルトによると、Facebookなどのソーシャルメディアが民主主義に与えるマイナスの影響を懸念しているとの回答は60%に上ったという。民主主義にプラスの影響を与えているとの回答は33%。また、ロイター/イプソスの調査では、Facebookが個人情報保護法を順守すると信じていると回答した人の割合は41%だった。この割合は、アマゾンでは66%、アルファベット傘下のグーグルでは62%、マイクロソフトでは60%だった。

Facebook、グーグル、アマゾンをはじめ、シリコンバレーの「プラットフォーマー」たちは、膨大な個人情報を世界的に独占している。それ故に株式市場の優良銘柄であり、アメリカ経済を支配すると言ってもいいアメリカの「資産」だ。

しかし、その「資産」が、個人情報をきちんと守りきることができずに、アメリカ民主主義の根幹である選挙を操るようなことを許してしまった。Facebookは、首都ワシントンで盛り上がる規制論に反対している。プラットフォーマーが今後、どう解決策を見出していくのか、根深い問題だ。

(文・津山恵子)

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コストコの試食……実は見事なビジネス戦略だった

2018年3月27日 05:30 AP Photo/Elaine Thompson

・コストコが店内で提供する無料の試食は有名だ。
・この試食こそが、コストコを訪れる主な理由だと言う消費者もいる。
・気前が良くみえるかもしれない。だが、こうした試食が事実、コストコの売り上げアップに貢献している。

コストコのファンは、しばしば店内で提供される無料の試食について熱く語る。うまくやれば、まるまる一食分を浮かせることもできると。

"Going to #Costco and I'm going to get samples!" Love, love, love Costco! t.co/CETFKKZGcD

2018年3月24日 0時15分

#Costco に行って、試食をゲットするぞ! コストコ、大好き!
顧客の中には、コストコが親切で試食を提供していると考えている人もいるかもしれない。だが、その背景には確かなビジネス戦略がある。

試食を提供することで、コストコは店内での買い物体験をより魅力的なものとし、顧客の心をつかもうとしているのだ。

When I’m trying a free sample at Costco and the cooks telling me about the product but I just wanted the free snack t.co/XoZsnCY39w

2018年3月21日 2時1分

試食をしていると、店員が商品の説明をしてくるけど、俺はただ無料で間食したいだけだ。

Twitter/@jack_jerry07

試食のためだけにコストコに行く人、わたし以外にもいない??
試食のためだけに店を訪れるという買い物客もいるだろう。しかし、1度店内に入れば、物を買う可能性は高い。

また、コストコにとっては、買い物客に新商品を手に取らせ、購買欲求を刺激する手段にもなっている。例えば、ひとかけらのチョコレートを試食したら、もう少し食べたいと思うだろう。

加えて、いわゆる「デモンストレーション」が行われると、買い物客はその商品を買わなければというプレッシャーをより強く感じる傾向にある。

こうしたマーケティングが実際どの程度、売り上げに貢献しているか、コストコは明らかにしていない。Business Insiderは同社にコメントを求めたが、返答はない。

しかし、他の小売店では、無料の試食が最大2000%売り上げを伸ばすことが分かっている。

アメリカのコストコは試食の運営を、人員やノウハウを提供するClub Demonstration Servicesといった別の企業に外注している。同社の元幹部は2014年、The Atlanticに、コストコの冷凍ピザの試食がそのアメリカ国内での売り上げを600%伸ばすことに貢献したと語っている。

「店内で行う他の手段に比べたとき、商品の実演が最も(売り上げを)引き上げた」元幹部のGiovanni DeMeo氏は、The Atlanticに語った。

[原文:People are obsessed with Costco's free samples — but it's actually a brilliant business strategy (COST)]

(翻訳、編集:山口佳美)

外部リンク

改ざんできない愛の記録、ブロックチェーンで結婚した2人

事実上、改ざんが不可能とされるブロックチェーンに結婚を記録したカップルがいる。

発達障害と診断された人たちがプログラミングやデザインを学ぶ学校GIFTED ACADEMY(ギフテッド・アカデミー)を運営するエンジニアの河崎純真さん(26)と美加恵さん(22)だ。2018年1月23日に、ブロックチェーン上に“We got married!”と、2人の結婚を書き込んだ。

「改ざん不可能」な結婚契約

ブロックチェーン上に記録された2人の「結婚契約」。下部のグレーのボックスに“We got married!”とある。

ブロックチェーン上に結婚を書き込むとは、具体的にはどんな行為なのだろう。

改ざんできないとされるブロックチェーンは、仮想通貨を支える技術だ。

仮想通貨の取引データは、中央銀行や特定の企業が管理するのではなく、暗号化され、分散化された状態でネット上に保管される。取引が記録される「ブロック」は定期的に更新され、チェーンのように連なっていく。

特定のブロック上の取引の記録が改ざんされると、チェーンの前後のブロックと矛盾が生じるため不正が分かる。記録は暗号化された状態で公開され、第三者も改ざんがないか検証できる。

このため、これまで契約書に書いていた内容をブロックチェーン上に記録することで、紙の契約書の代わりに証明として使うことができると期待されている。改ざんしてはいけない公文書にも応用できそうだ。

ブロックチェーン婚で2人は、有力な仮想通貨のひとつイーサリアムのシステムを使った。結婚をしていること、2人の氏名、日付をデータベースに記録した。

この記録は消すことができない。

イーサリアムの口座に生活費送ることも

純真さんと美加恵さんの2人は、渋谷区内で暮らしている。
撮影:今村拓馬

今回、2人はブロックチェーン上に「結婚しました」という「約束」を書き込むのにとどめたが、技術的にはさまざまな取り決めもできる。

日本では一般的ではないが、欧米では結婚前に2人の財産をどのように共有するかなどを事前に取り決め、契約を交わしておくことがある。例えば、イーサリアムでひとつのウォレット(口座)をつくり、夫婦の双方が、毎月の最終日に生活費として決まった額を、このウォレットに送るよう「契約」しておくこともできる。

ブロックチェーンを使って、事前に取り決めた条件を満たしたときは自動的に契約を履行させる「スマートコントラクト」と呼ばれる新しい契約のあり方だ。

出会って1カ月半の「ブロックチェーン婚」

2人の出会いは、美加恵さんが2017年11月ごろ、ギフテッド・アカデミーでアルバイトをしたことがきっかけだ。美加恵さんによると、「じゅんじゅんの猛アタック」で12月8日から交際をはじめた。美加恵さんは、純真さんがアカデミーの活動で「自分はあまり幸せそうには見えない人だけど、まわりの人を幸せにしようとしているのが健気だな」と思ったという。

2人は12月20日から、友人たちといっしょに1カ月ほどかけて、グアテマラ、コスタリカ、メキシコを旅行した。

なかなか他者に心を開かないという純真さんは、美加恵さんと過ごすうちに、自分の心が開いていくのを感じたそうだ。

12月30日、「結婚しよう」とプロポーズした純真さんに、美加恵さんは「いいよ」と答えた。

結婚の実感は法律婚に軍配

12月8日に交際を始めてからプロポーズまで、およそ3週間。1月23日のブロックチェーン婚までは、1カ月半だった。美加恵さんは「10年付き合って結婚しても、別れる人は別れる。断る理由もないし、日数は関係ないなと思って」と振り返る。

「愛の証明を国に出すのがイケてない」と言う純真さんは当初、ブロックチェーン婚だけで済まそうとも考えていた。しかし、美加恵さんが「河崎の名字になりたい」と言うので、2月1日に区役所に結婚届を提出した。

ブロックチェーン婚と法律婚のどちらに、実感があったのだろう。

美加恵さんは「ブロックチェーンの方は、となりでパソコンをいじっているなと思ったら、『できたよ』って。でも、結婚届は自分で書いたから」。純真さんも「区役所に行くのは、わくわくした」と言う。

法律婚から間もなく、美加恵さんが妊娠していることもわかった。2人は、生まれてくる子のことも、ブロックチェーンに記録するつもりだ。

(文・小島寛明、撮影・今村拓馬)

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