本件を担当した警部曰く、 「動機はおそらく嫉妬だろう。事件があった日の夜、被害者はボーイフレンドと出掛ける予定だったんだよ」 たしかに、嫉妬も動機の一部だろう。だが、それだけでは子供たちまで殺してしまったことを説明できない。やはり何らかの狂気が介在していたと考えざるを得ない。 1987年12月14日、オクラホマ州オクラホマシティで暮らすヴァージル・ナイト(26)は、まず弟の元妻、キャリー・ナイト(23)の居所に出向き、彼女とそのボーイフレンド、アレン・ロックハート(24)の頭を銃で撃ち抜いて殺害した。彼女たちがどうして殺されなければならなかったのかは詳らかではない。 その後、かつての我が家に出向いたヴァージルは、元妻のディエッタ・ナイト(26)と長男のカーティス(6)、次男のケヴィン(2)を殺害し、自らの頭も銃で撃ち抜いて自殺した。 長女のシェリー(4)も頭に銃撃を受けていたが、幸いにも一命だけは取り留めている。 遺体はクリスマスツリーを取り囲むようにして倒れていたという。そのために本件は「クリスマスツリーの虐殺(The Christmas Tree Massacre)」と呼ばれている。 ヴァージル・ナイトとディエッタは事件の1週間前に正式に離婚したばかりだった。ヴァージルの母親曰く、 「息子は離婚調停がフェアではないと感じていました。そして、子供たちの親権を奪われたことを嘆いていました」 結果、ワケが判らなくなったヴァージルは、あたかも星一徹のように、ちゃぶ台をひっくり返してしまったのだ。 何もかも台無しにしてしまったのである。 (2010年11月11日/岸田裁月) |