放棄地あるのに…新規就農者を阻む壁とは?
世の中で議論を呼んでいる話題について、意見を聞く「opinions」。今回の話題は「耕作放棄地、どう活用?」。IT技術で農業の課題解決に取り組む秋元里奈さんに聞いた。 耕作放棄地とは、過去1年以上耕作されておらず、今後、数年の間に再び耕作する意思のない土地のこと。農林水産省の調査によると、耕作放棄地の面積は、2015年時点で、約42万ヘクタールで、40年前と比べると約3倍となっている。高齢化や労働力不足、収益の上がる作物がない少ないなどが要因として考えられている。 ——この結果、どう捉えていますか。フリップをお願いします。 「若者に農地が集まってくる」と書きました。若者とは言っても、地域で農業を3年とかやっていて、どんどん拡大していこうという意識のある農家、実はそういう人たちに耕作放棄地がどんどん集まってきています。一方で新規に就農したいという若者には、なかなか農地が集まらないという課題があります。 ——やる気があるのにどうしてでしょう。 やはり農地というのは、自分たちの農地だけではなくて、隣の農地だったり、地域と非常に密接しているものなので、やはり知らない人にはなかなか渡したくないという感情の方が非常におられます。 数年やったときに、信頼関係が築けていると、どんどん農地というのは集まってくるんですけど、やはり新規のやりたい方には農地は集まってこないと。やはり最初のハードルが非常に高いという問題はあると思います。 ——それが今、耕作放棄地が広がってしまっているという現状なんですね。 そうですね。やはり解決していくためには、新規の人が農地を借りやすくするというのもひとつだし、既存でやっている人たちに農地がどんどん集まってきてしまっているんですが、例えばそこで研修制度のような新しくやりたい人を使って、農地を広げるところを手伝ってもらうとか、結局、集まっている人たちも自分たちのキャパシティーをオーバーしているので、そこの再分配みたいなことをやっていく必要があるのではと思っています。 ——今後、どういう風にしていけばいいでしょうか。 まずは、担い手を増やすというところで、新規で農業をやりたいという人は実は数としては増えています。だから、その人たちが農地をより見つけやすくする環境をつくるということ。そして、その作った作物がきちんと売れる状況をつくる、販路を確保するという2軸でしっかり広げていく必要があるのかなと思います。 ——そういう意味では、今、秋元さんは販路を開拓しているほうをやっているわけですね。 そうですね。やはり私のバックグランドにはITで培った経験があるので、まずは販路を広げることをやっていきたいと思います。 ——一方でレンタル農業、レンタル農地というものがありますけど、そのあたりというのはどう考えていますか。 都市部などの人口の多い農地だと、買いたい人がたくさんいるので、今後もどんどん農地のシェアなどは進んでくるのかなと思います。農地法も改正されて、より一般の企業が農地を借りやすく、所有しやすくなっているので、今後も緩和が続いていくと思うので、そういう企業参入も増えてくるのではと思います。 ■秋元里奈さん(27)プロフィル IT技術で農業の課題解決に取り組んでいる。神奈川県の農家に生まれ、大学卒業後はDeNAに入社し、新規事業の立ち上げなどを担当。その経験をもとに、「流通面などで課題を抱える農業を変えたい」と、会社を立ち上げた。生産者と消費者・飲食店とを直接ネットでつないで、旬のオーガニック農産物を収穫後24時間以内で届けるサービス「食べチョク」などを展開している。 【the SOCIAL opinionsより】
東京2018.11.20 15:29