フロイド・メイウェザー(左)と那須川天心(2018年11月5日撮影)
フロイド・メイウェザー(左)と那須川天心(2018年11月5日撮影)

大みそかにRIZIN14大会(さいたまスーパーアリーナ)で行われるボクシング世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(41=米国)とキックボクシングの“神童”那須川天心(20)の試合が気になる。というか、とても不安です。状況を直接取材していないから、あくまで感覚的なものですが。

11月5日に対戦が発表されて「ほんまか?」と驚いた。ワクワクした。ところが、8日にメイウェザーが話が違う、と中止をにおわせた瞬間に「おいおい…」と首をかしげ、渡米して再交渉に当たった榊原伸行実行委員長の説明を聞いて「あれ~?」と暗い気分になりました。

榊原氏の説明は「最初からノン・オフィシャルバウト(非公式戦)として話をして…(中略)…決してスパーリングではない…(中略)…限りなくボクシングに近い打撃のみのスタンディングバウト…(中略)…KO決着あり」-。

一方でメイウェザーの説明は「エキシビション。キックなし。(那須川と)9分間(3分×3ラウンド)動き回る」-。

話がかみ合ってない。誤解を恐れず言うならば、一方は「真剣勝負」と言って、一方は「ショーみたいなもん」と言ってるようなもんです。

最近あまり使わん言葉やけど、この試合は異種格闘技戦みたいなもんですよね。異ジャンル同士のぶつかり合い。互いが「何でもあり」のルールを認めてやるなら、スッキリしたもんになる。でも、そうなるともはやそれはUFCのような総合格闘技。拳による打撃のみのボクシング、拳とキックのキックボクシングといった、技術をある部分に特化したジャンルのトップ同士が戦う時、両者が“すり合わせて”ちょうどええ具合のルールなんて、まずできません。それは、あの猪木VSアリ戦以降の歴史を見たら明らかでしょう。

回転胴まわし蹴りを堀口恭司(左)にヒットさせる那須川天心(2018年9月30日撮影)
回転胴まわし蹴りを堀口恭司(左)にヒットさせる那須川天心(2018年9月30日撮影)

やるなら、一方が腹を決めて、もう一方の土俵に上がる覚悟があって初めて、見応えのある試合が成立すると思います。9月30日、RIZIN13で実現した那須川VS堀口恭司戦がそうでした。総合格闘家の堀口が投げ、締め、グラウンドなどの技術を放棄した。そのスッキリ感に加え、キックボクシングという那須川の土俵に乗り込んで、互角に渡り合った。すごいな、総合格闘家が立ち技だけで、ここまでやれるんや-。世間がそう思ったからこそ、名勝負になったんちゃいますかね?

今回はルールの点で言えば、那須川がメイウェザーの土俵に身を投じる訳で、そこはスッキリするけれど、メイウェザーに1番肝心な“本気”がないなら、きっとグダグダ感だけが目立ってしまう。ビッグネーム同士の戦いは魅力的ですけど、イコール名勝負が約束される訳じゃないですからね。一時は冷え込んだ格闘技熱がせっかく盛り上がってきただけに、冷や水をぶっかける結末になりはしまいかと心配で、心配で…。もう無理にやらんでええんちゃうの? そう思う、今日この頃です。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

羽田空港で会見するRIZIN榊原信行実行委員長(2018年11月17日撮影)
羽田空港で会見するRIZIN榊原信行実行委員長(2018年11月17日撮影)