「オンライン診療を必ず進めていく」、厚生労働省

医政局の奥野氏が日本遠隔医療学会学術大会で強調

2018/11/19 09:00
増田 克善=日経デジタルヘルス

 「オンライン診療は、必ず進めていかなければならない」。厚生労働省医政局の奥野哲朗氏は、「第22回 日本遠隔医療学会学術大会」(2018年11月9~10日、九州大学医学部百年講堂)での特別企画の基調講演で、オンライン診療に対する医政局の姿勢をこう強調した。

厚生労働省医政局の奥野氏
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 少子高齢化、慢性期医療や在宅医療需要の爆発的に増加、医師の偏在化や働き方改革など医療政策課題が山積していることを踏まえ、奥野氏は「オンライン診療は、こうした課題に対してソリューションを生み出し得ると考えている」とした。

 また、生産年齢人口が減少する中で、政府全体としても医療従事者の生産性向上が見込まれ、かつそれに資すると考えられているのがオンライン診療だと説明。つまりオンライン診療は、政府としても積極的に推進していくものだとし、「遠隔服薬指導についても法改正に向けて急ピッチで整理が進んでいる」と述べた。

 奥野氏は、厚生労働省が2018年3月に発した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(オンライン診療ガイドライン)策定の中心人物として、オンライン診療を適切に浸透・普及させていくためにも「(指針に示された)基本理念を理解し、ルールに適切に則って進められることが大切だ」とし、同ガイドラインを解説した。

年度末の指針見直しを示唆

 オンライン診療ガイドラインは、6項目の基本理念が示され、それぞれを具体化した内容で構成されている。すなわち、「医師-患者関係と守秘義務」「医師の責任」「医療の質の確認および患者安全の確保」「オンライン診療の限界などの正確な情報の提供」「安全性や有効性のエビデンスに基づいた医療」「患者の求めに基づく提供の徹底」である。

 オンライン診療を行う前提として、医師と患者の関係性を十分に構築することが欠かせない。「日頃から患者とコミュニケーションが取れていることが前提であり、対面で診療を行っていることが必要だ」とした。

 オンライン診療の責任については、「患者の求めに応じて行うことは大事だが、実施するか否か、対面に切り替えるなど最終的な判断は医師が行う」とし、すべて医師の責任において実施されるものだと述べた。

 また、オンライン診療の実施においては十分なセキュリティー対策が講じられていることが大切だと指摘。「よくLINEなどの使用について問い合わせを受けるが、サーバーが海外にあって当事国の当局から情報にアクセスされ、抜き取られた場合、日本の法律で裁けない。指針には書かれていないが、そうしたリスクを理解し、かつ患者にも伝えて理解してもらう必要がある」とした。

 医療の質の確認および安全確認については、オンライン診療だけで安易に薬剤を処方しないようにするため、「必要に応じて指導を強化するような動きを出しつつある」という。特に都心部などでオンライン診療だけで薬を処方するといった広告を見かけることがあると指摘。「不適切なオンライン診療が出てくると、オンライン診療全体の信頼性が損なわれる。それは絶対に避けなければならない」と強調した。

 また奥野氏は、ガイドライン発布当初から「1年以内に指針を見直すと言ってきた。現在、来年の指針に向けて計画を練っているところ」だとし、2018年度末の指針改定を示唆した。