(cache)ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」(井上 久男) | 現代ビジネス | 講談社(4/4)



ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」

ルノーとの間に生じていた「歪み」とは
井上 久男 プロフィール

社員らの「反発」

仏政府やルノーが強引に日産への支配力を強めれば、西川CEOには、前述したようにルノー株を買い増して日産への議決権を消滅させる強硬策も視野に入っていたと見られる。この強硬策を実施するには、日産の取締役会での多数決で、「西川派」を過半数にしなければならない。

日産の取締役会のメンバー9人は次の通りだ。

カルロス・ゴーン氏
西川廣人氏
グレッグ・ケリー氏
坂本秀行氏
志賀俊之氏
ジャン・バブティステ・トゥザン氏
ベルナール・レイ氏
井原慶子氏
豊田正和氏

このうち、西川派は、坂本氏、井原氏、豊田氏と見られ、西川氏自身の票を入れて4票しかなく過半数を取れない。ゴーン氏はCEOを西川氏に譲ったとはいえ、取締役会メンバーは巧みに構成し、自分の意向が通る人選にしていた。

 

たとえば、前COOの志賀俊之氏は、一時収益が落ちた際に先任を取る形でCOOは退き、産業革新機構CEOに転出したが、取締役では依然として残ったままだ。これは、「志賀氏と西川氏が犬猿の仲であることをゴーン氏が巧みに利用して、志賀氏を残すことで西川氏を牽制する意味合いがある。元々、志賀氏は、ゴーン氏とは非常に親しく、ゴーン氏の戦略ミスを志賀氏が責任をかぶってCOOを退任した経緯もある」(日産関係者)との見方がある。

極めつけは、グレッグ・ケリー氏の存在だ。「ケリー氏は代表権を持つ取締役でありながら日産で勤務している形跡がなく、実際には海外で牧場経営をしている。ゴーン氏が公私混同で会社の金を使うための筋書きをアドバイスするなどの『悪知恵袋』」(同)と見られている。

今回の事件でも、ケリー氏が不正に深く関与したとされている。ゴーン氏とケリー氏を日産取締役会の中から追い払えば、西川氏は過半数を取れると踏んだ、と見られる。

西川氏サイドが「クーデター」を仕掛けたとすれば、彼らにも焦りがあったからではないか(注:西川氏は緊急会見で「クーデターではない」と発言)。昨年に発覚した完成車検査不正問題も、日産の社内不満分子が国土交通省に情報提供したことが発端と見られ、車検制度にもつながる時代遅れの古い制度を残したい国土交通省が、それに乗りかかって日産を叩いた。

社内の不満は、ゴーン氏ら一部の外国人が高給を取り、会社の金で贅沢三昧なのに、現場への投資は怠っていることへの反発であった。ゴーン氏自身が長期政権で権力の座に長くいて、腐り始めていたことは間違いない。

こうした社内の不満を放置していれば、不満の矛先はいずれ西川氏自身に向かってくる……西川氏サイドはそう判断したのではないか。真相解明には時間がかかるだろうが、それが今回の事件の背景にあるというのが、筆者の見方である。

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