バズる記事の特徴

バズるとは

"バズる" とは、英語の動詞 buzz (人が噂する)、または "口コミ" という意味のマーケティング用語 buzz を動詞化されたものと言われています。 特定のキーワードや物事が、インターネット上で瞬間的に多くのユーザに取り上げられる状態を指します。 主にツイッターや Facebook などの SNS で話題になった場合に用いられます。

バズが発生した場合のグラフ
バズが発生した場合のグラフ

バズの表現や特徴としては、"短期間" で "爆発的" に広がる場合に用いられます。 逆にある程度の時間をかけて広がる場合は "バイラル" (viral) と呼ばれます。 viral とは "ウィルス性" という意味で、口コミによって情報が広がる様子がウィルス感染に似ていることから名付けられました。 情報の拡散方法においてバズが能動的とすれば、バイラルは受動的と言えます。

バズる状況は、短期間で注目を集めやすいため、個人や企業を問わずにマーケティング手法として利用される場合があります。 このような口コミや拡散を狙ったマーケティング手法は、"バズ・マーケティング" と呼ばれます。 バズが起こることで PV の向上、商品の購買、サービスの利用、または登録件数の向上、ブランド認知向上につながります。

多くの注目を集めているキーワードや記事は、各 SNS の機能として情報が提供されています。 例えばツイッターではトレンド機能、はてなブックマークではホッテントリなどがあります。 SNS の機能によって人気の話題はさらに多くのユーザに拡散され、連鎖的に広がっていきます。

SNSからのトラフィックが増加
SNSからのトラフィックが増加

ただし、どれだけ話題になればバズと呼べるのかは定義が存在しません。 インフルエンサーやアルファブロガーの影響力が強いユーザと、一般的なユーザでは読者やフォロワーの数が違うため、話題になる確率が異なります。 そのため、書いた記事が 50 人程度にシェアされた場合、ユーザによってはバズが発生したかどうかの判断が分かれる場合があります。

炎上とバズの違い

"バズ" とは、爆発的に情報が伝わる "事象" を指すため、情報の中身は関係ありません。 しかし、情報に対して好意的な興味や関心のようなポジティブな感情ではなく、反感や嫌悪感のようなネガティブな感情により非難や批判が殺到する事象は "炎上" と呼ばれ、しばしばバズとは区別されます。

炎上の原因は、"不祥事の発覚"、"無礼・不謹慎な発言"、"犯罪行為の告白"、"尊大な言動"、"価値観の押し付けや否定"、"賛否両論のあるトピックへの言及" などがあります。 一般的には意図せずに炎上するケースがほとんどですが、意図的に炎上を狙うケースもあります。 これは "炎上マーケティング" と呼ばれ、PV や 知名度を得ることを期待して行うマーケティング手法です。

炎上マーケティングは、多くのユーザの注目や関心を集めるという点においてバズと同じ結果を得られます。 そのため、コンプライアンスを徹底しなければならない企業においてさえ、炎上マーケティングを実施する場合があります。

炎上マーケティングは大きなトラブルに発展する可能性があり、悪評がつきやすいことから積極的に行うべき手法ではありません。 また、ターゲットユーザのリテラシーが高い場合、炎上させようとする意図を見抜かれて空振りする場合もあります。

炎上するパターンには以下のような分類があります。

  • 犯罪行為の告白:窃盗・器物破損や、未成年による飲酒・喫煙
  • ある分野の批判・否定:国籍、学歴、趣味、性別、宗教、政治、スポーツなどへの批判・否定
  • やらせ・捏造・自作自演:利益誘導、情報操作が暴露、または強い疑いがある場合
  • ステルスマーケティング:金銭的報酬のためにブログの読者を騙したことが発覚した場合
  • 悪ノリ・武勇伝自慢:倫理観が欠如した行為を SNS に投稿した場合
  • 不誠実な対応:商品やサービスに重大な問題や疑いがあり、その対応に問題がある場合

Web サイトでは、炎上を予防するためにコメント欄や、問い合わせフォームを最初から設置しないケースもあります。 アクセス数が多く、炎上マーケティングを日常的に行っている個人ブログでは、そのようなケースが多く見られます。

意図的に炎上させるユーザは、行為から生じる結果 (PV や知名度の向上など) を得るために自己の利益を重視し、他者の利益を軽視、または無視する "利己主義" の立場であると言えます。 つまり、行為の善悪や正否は "自分自身の最大幸福" であり、そのためには個人・集団・社会に被害を与えても構わないとする考え方です。

このような考え方が背景にあるために炎上とバズは明確に区別されます。 行為を道徳的に判断する場合、生じる結果で正当化する "帰結主義" の考え方が批判される大きな理由です。

バズるための条件

前述の通り、バズには成功や失敗の定義がありません。 それでも敢えて定義付けを行うのであれば、SNS で拡散する確率は PV に対して平均 0.25 % というデータがあるため、この数字を大幅に上回れば成功と言えるかもしれません。 数字の根拠は、SNSボタンの設置とカスタマイズ方法 を参照してください。

バズるための条件として、"シェアしたくなる心理""シェアしたくなるコンテンツ" について見ていきましょう。

シェアしたくなる心理

バズを発生させる条件とは、"シェアしたくなるか?" という一点に集約されます。 ニューヨークタイムズの調査報告資料 "The Psychology of Sharing" によると、情報を共有する動機は以下のパターンに分類されています。

  • 価値のあるコンテンツだから
  • 自分の趣味や好みを知らせるため
  • 交友関係を広げて維持するため
  • 社会の一員であることを実感するため
  • 自分の主張を表現するため

価値のあるコンテンツ

情報が有益であるためにシェアされる分かりやすいパターンです。 シェアされた情報が有益であれば、フォロワーからポジティブな反応が返ってきます。 人は他者のために役立つ情報を発信したい心理があるため、有益な情報は拡散されやすい傾向があります。

有益な情報をシェアするユーザは、他のユーザからも好意的に受け入れられます。 自動的に有益な情報を収集してまとめる bot には多くのフォロワーがいます。 有益な情報には、実用的な情報以外にも大笑いする写真、思わず涙してしまう動画、美味しいお店のグルメ情報、災害情報など、様々なコンテンツの形があります。

地震速報のbot
地震速報のbot

調査結果によると 94 % の人が価値のあるコンテンツを他者に紹介したいと答えています。

自分の趣味や好みを知らせる

自分の趣味や好みを発信することで、"自分はどのような人間なのか" を周囲に知らせることができます。 人は "自分が何者であるかを表現したい欲求" と "他人に評価して欲しいという願望" があるため、自分は何に興味があるのか、何を知っているのか、何が好きなのかを表現することで、欲求や願望を満たそうとします。 フォロワーはシェアされる情報の傾向から、交友関係を維持するかリムーブするかを選択する機会を得ることができます。

交友関係を広げて維持する

所属するコミュニティのユーザ同士で情報を交換することで、周囲とのつながりを持ち、結束を深めます。 シェアされた同じ情報に感動することで、直接会う機会がない友人とも親密な関係を維持したいと考えています。

調査結果によると 78 % が友人との関係を維持するためにコンテンツをシェアしていると答えています。

社会の一員であることを実感する

情報をシェアして周囲から反応をもらうことで、社会の一員であることを実感します。

自分の主張を表現する

自分の主張を伝えるための手段として、他のユーザのコメントを拡散したり、類似意見をキュレーションしたりして、自身の主張の正しさを証明しようとします。 ただし、シェアされる情報はかならずしも "情報の支持者" とは限らない場合があるため注意が必要です。 "自分はこの情報には反対" という意味でシェアするパターンもあり、自分の主張を表現する方法のひとつです。

シェアしたくなるコンテンツ

ペンシルベニア大学の Jonah Berger の調査によると、ユーザがシェアしたくなるコンテンツは、以下のいずれかの特徴が含まれているとされています。

  • 社会性:自分が特別であると感じさせるコンテンツ
  • 感情性:感情に訴えるコンテンツ
  • 実用性:有益であるコンテンツ
  • 同調性:多くのユーザがシェアしているコンテンツ
  • 想起性:鍵刺激によってユーザの意識に浮かぶコンテンツ
  • 物語性:ストーリーがあるコンテンツ

社会性

自分は優れた人間であり、選ばれた人間であると感じるコンテンツ、または示せるコンテンツをシェアしたいと思います。 ただし、主観のみの主張である場合、周囲からの反感を買いやすくなります。 このパターンでは、プライドの高い人、能力の低い人、劣等感が強い人、嫉妬心を抱きやすい人に多く見られます。

感情性

人の感情に訴えかけるコンテンツはシェアされやすい傾向にあります。 人は何に心を動かされたかを他者に伝えたいと思い、それを他者にも共感して欲しいと願います。

シェアされるために訴える感情にはポジティブな感情と、ネガティブな感情を区別しません。 ポジティブな感情としては、喜び、驚き、興奮、尊敬、感謝などがあり、ネガティブな感情としては、悲しみ、嫌悪、怒り、不安、軽蔑、嫉妬、失望などがあります。

個人差や程度の差はありますが、どのようなコンテンツにも様々な感情が表れます。 それらの感情が我慢できないラインを超えた場合、誰かに伝え、共感して欲しい気持ちが働きます。

実用性

実用的で有益なコンテンツはどんな形であれシェアされます。 なぜなら、自分にとって有益であると感じたコンテンツは、他者にも教えたいと思う心理が働くためです。

このパターンは、前述したシェアしたくなる心理の "価値のあるコンテンツ" と同様です。

同調性

人は他人が持っているものに興味、安心を覚えます。 これは、売れる商品やサービスはもっと売れ、シェアされるコンテンツはもっとシェアされる現象を説明しています。

シェアを促すためには "コンテンツの消費者" と "消費者の周辺のユーザ" を意識することが必要になります。 例えば MacBook のロゴは閉じたときには使用者から見て逆向きですが、開いたときには周囲の人からは正しい向きになります。 これは Apple のロゴを周辺の人にシェアする意味もあります。

想起性

コンテンツをシェアしてもらうためには、人の意識に浮かぶ必要があります。 2011 年に Rebecca Black が "Friday" という歌を発表しましたが、同年の最悪の歌として低評価を受けました。 しかし、低評価であることが逆に注目を集め Youtube では 1 億 6000 万回以上も視聴されるコンテンツになりました。

このことは、質の悪いコンテンツであってもシェアされる SNS の一面を表していますが、注目すべきは "Friday" という曲名です。 この曲名が金曜日を想起させており、実際の記録を調べると当時の視聴数がもっとも多い曜日が金曜日であることが分かっています。

物語性

ストーリーのあるコンテンツはシェアされやすい傾向にあります。 各国の神話が現代まで残っているのは、口伝によってシェアされ続けた結果であると言えます。

例えば、TOYOTA の CM シリーズである TOYOTOWN ではストーリー仕立てにすることで視聴者に興味を持ってもらい、シェアされやすいように工夫されています。

まとめ

バズが発生するパターンは経験則から何となく分かっていても統計によって裏付けられるデータはほとんどありません。 また、同様にバズが発生する条件や法則も存在せず、本ページで述べた方法論もバズを発生させる確率を高める方法に過ぎません。 多くの人にとって有益で、品質の良いコンテンツを継続的に提供できれば、バズを発生させる確率を高めることができると考えます。

バズが発生するとコンテンツの提供者は満足感を得られます。 しかし、バズは追い求めるものではなく結果として発生する事象であるため、サイト本来の目的を見失わないようにしましょう。