オーバーロード 骨の親子の旅路   作:エクレア・エクレール・エイクレアー
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高評価とお気に入りばかり……。


やっと一話の時間軸に戻ります。


6 魔王(仮)

 

 モモンガとパンドラは実験により、死体を用いれば召喚モンスターは永続的に召喚されたままだということがわかった。これを用いてシモベの足で大森林を把握していくことにする。

 その結果リザードマンの集落を見つけるが、ここには攻め入らなかった。盗み聞きしたところリザードマンにはきちんと理性があって、自分たちの生活を全うしているからだ。人間と変わらないと思って向こうから攻めて来ない限り放置することにする。

 

 次に、大森林を抜けて大きな山に出たところ、空をドラゴンが飛んでいることを確認。ドラゴンの素材はユグドラシルでも貴重だったので、何かあった際には狩ろうと決意。調査に何体かの中位アンデッドを仕向けたが、その内の一体がドラゴンにやられたことを知る。

 モモンガが産み出すアンデッドはクラス補正が入るため通常のモンスターよりは強い。それがやられたために、ドラゴンのレベルは50よりは上と判断した。

 

 それ以外には人の営みを確認しようとして大都市と近くの村々の監視。たまに街の外でモンスターを狩る人間もいたが、魔法や動きを見る限り敵対しても問題ない程度の強さだと理解する。オーガ程度に苦戦する相手に警戒するのもバカバカしくなってきたほどだ。

 装備も貧弱。動きも稚拙。でもアイテムや巻物で一発逆転されるかもと思い、やはり敵対行動だけは取らないようにする。

 

「パンドラ。これまで複数の人間の集落を見てきたが、異形種と共存している集落は一切存在しなかったな。これをどう思う?」

 

「やはりぃ、人間という種族として他種族を受け入れられないのかと。一番気になることは亜人種やエルフなどの人間以外の人間種とも共存をしていない点。この大森林内にもダークエルフは存在しましたので、存在を認知していないことはないと考えられます」

 

「ではこのままだと共存は難しいか……。なにせオーバーロードとドッペルゲンガーだからな。見た目を誤魔化すアイテムはあったか?変更できる物でもいい」

 

「やまいこ様が他のギルドへ行くために使用していた人化の指輪があったはずです。ナザリックから去る際に宝物殿へと寄付されましたので」

 

 やまいこはアインズ・ウール・ゴウンで三人しかいない女性メンバーだった。その妹さんもユグドラシルをプレイしていたのだが、人間種でプレイしていたためにアインズ・ウール・ゴウンには入れず。

 その妹さんに会いに行くためにやまいこが使っていたのが、人化の指輪だ。ユグドラシルにおいて、異形種は嫌厭されがちだったからだ。

 

「やまいこさんには悪いが借りるか……。お前は人間の姿にも化けられるよな?そういう人間の姿に化けながらたっちさんの能力を使えたりするのか?」

 

「いえ、姿を真似ない限り力を行使できませんっ!父上の姿を模して、その上で幻影魔法を使えば顔ぐらいならどうにかできますが……。また、人間にも化けることはできますが、化けた対象の能力の八割か、私自身の能力しか用いることができなくなります」

 

「ふむ。では戦闘時は基本的にたっちさんの姿をとれ。あれならヘルムを被っているし中身がお前でも問題ないだろう。俺も魔法詠唱者だからお前が前衛をした方が良い」

 

「父上を守れるのであれば、この身を粉にして前へ出させていただきますっ!」

 

「あー、うん。期待している」

 

 最近パンドラの扱い方がわかってきた気がする。彼は設定に忠実なために、創造主のモモンガに褒められたり期待されれば嬉しいのだ。

 実際役に立ってくれているので、言葉だけでやる気になってくれるのであればこれ以上楽なことはない。

 とか思っていると、バサァ!と音が聞こえてきそうなほどマントの音を鳴らして扉の方へ振り向くパンドラがいた。何かを察したらしい。

 

「ムムッ!!モォモォンガ様!人間が二人、この近くに来ています!おそらく近くの村に住む人間の姉妹かと」

 

「そうか。接触してみるのもありだな。……よし。俺はこれから対外的にはモモンを名乗る。お前はパンドラだ。これなら本当の名前でもないし、俺たちの正体が露見することはないだろう」

 

「わかりました!モモン様!」

 

「よし。……プレイヤーなら、俺のことを知っていておかしくないのか。装備も見直さないとな。お前はギルメン以外知らないだろうから大丈夫だろうけど。まあ、それは村娘が帰ってからで構わないか」

 

「私はどういたしましょうか?」

 

「そのままの姿でいろ。ドッペルゲンガーの姿は確認できなかった。もし存在すら認知できていないのであればかなりの手札になる。――村娘には最悪記憶操作すればいい」

 

(そんなことしたくないけどな)

 

 記憶をいじるなんて非人道的にもほどがある。そういう魔法がダンジョン攻略で必要だったことと魔王ロールで取得していたが、ただの情報収集程度で用いるつもりはなかった。敵対していた人間から情報を得るためには用いようと思ったが。

 村娘が近付いてきたために様々な音が鳴る。警戒音が多いが、パンドラへ目線を向けるだけで音を切ってくれた。さすが優秀なパンドラだ。

 

「パンドラ。向こうは村娘ゆえに知識が少ないかもしれん。相手の知能レベルがわからんがあのトロール共とは異なるちゃんとした情報源だ。たとえ俺の種族が間違えられようが少しの不遜な言動くらいは見逃せ。初めてのまともな情報源だ。こちらが異邦人である限り、下手に出なければならん」

 

Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!」

 

「そのドイツ語も他の人間がいる時は禁止な。何言ってるかわからないだろうし」

 

 そしてノックの後に村娘の声が届く。

 

「すみませ~ん。どなたか、いらっしゃいますか?」

 

 相手を警戒させないために武器などはしまって無手でドアへ近付く。パンドラが二人の村娘を確認したが、装備という装備をしておらず、マジックアイテムも所持していないということだった。

 

(そういえばアンデッドも見なかったなあ……。この姿、村に住むただの少女にはどう思われるんだろ?)

 

 そう思いながらドアを開く。そこにはくすんだ金髪の姉と赤髪の小さな妹の後ろ姿が。ドアを開けた音で振り返っていたが、元々大きめだった可愛らしい瞳がさらに大きくなっていた。

 そして何故か出てしまう営業スタイルではなく魔王ロール。後々この魔王(仮)は姿に引っ張られたに違いない。あとはパンドラという役者を傍で見続けていたせいだと一人で語る。

 

「近くの村の娘たちだな?ようこそ、我が仮宿へ」

 

 鈴木悟として人間の表情を言い当てるのは自信があった。今の少女たちが浮かべるものは恐怖で間違いない。

 

「スケルトン……?」

 

(スケルトンかー。エルダーリッチも知らないのかな?……というか、家から出てきたのが異形種だったら、そら怖がるか)

 

「娘たちよ。エルダーリッチやオーバーロードは知っているか?」

 

「エルダーリッチ、は知っています……。強力な魔法を使ってくる、疲れを知らない強敵だと聞いています。冒険者の方々でも倒すのは難しいと……。その、オーバーロード?は初めて聞きました……」

 

「そうか」

 

(エルダーリッチが強敵、ねえ……。レベル十台ならそうなるか?冒険者がたぶん狩りをしていた連中で、オーバーロードは知らないね……)

 

「娘たちよ。実は俺たちは転移魔法でいつの間にかここに飛ばされていたようでな。食事やお茶を用意するのでもう少し話を聞かせてはくれないか?」

 

「え……?」

 

 そう提案すると、姉の方は抱きかかえている妹の表情を覗き込む。そしてモモンガの方をもう一度だけ見て、うなずいた。

 

「わかりました……」

 

「それは良かった。パンドラ、ダグザの大釜で適当な食べ物と飲み物を出してこい。この消費は必要経費だ」

 

「かしこまりました」

 

 そうして二人の現地民を中へ案内する。丁重に応対するのは、営業としても印象を良くするために必要なことだった。

 

 

 




エルダーリッチくらい村娘でも知ってるんじゃない?


それとフロスト・ドラゴンなら死の騎士倒せるでしょう。防御型とはいえレベル40程度なんだから。






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