オーバーロード 骨の親子の旅路   作:エクレア・エクレール・エイクレアー
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タイトル詐欺注意。


5 東のトロール

 

 そうしてモモンガは――鈴木悟は自分の息子と言っても過言ではないパンドラへとユグドラシルとリアルの関係性について答える。とはいえ、ユグドラシルがゲームであったことは伝えず、リアルと行き来できる並行世界であるという説明をする。

 そして他の至高の41人はリアルでの生活が忙しくなってユグドラシルから去ったのだと。産まれはリアルの方なので、そちらを優先したと。

 

「なるほど……。リアルの身体はユグドラシルのように一度死んでしまえば蘇生などできなかったのですね?」

 

「そうだ。リアルではできない様々なことができたから皆ユグドラシルに来たのだ。だが、リアルでの身体に危機が訪れた場合、ユグドラシルでも消失してしまう。リアルがあってこそだから、リアルを優先した。それを覚えていてくれ。他のギルメンはお前たちやナザリックを捨てたわけではないのだから」

 

(こうでも言っておかないと、忠誠心高そうなNPCにとって捨てられたとか思っちゃうんだろうからな……。こいつもこっちの世界に来て自我が芽生えたみたいだし、不安の元はなくしておかないと)

 

 ゲームのことは言ってもおそらく理解できないと思い除外。そしてリアルのことでも話し始める。

 

「俺はリアルでは営業職をしていてな。簡単に言うと組織と組織の交渉役と商人の複合した仕事だ。その経験もあってギルドでは調整役というかギルドマスターをやってこられたのだろう」

 

「さすがはモモォンガ様!そのような難しい役職をこなした上でギルドマスターまでやってのけるとは!」

 

「世辞は良い。……あと、重要なことを一つ。モモンガはユグドラシルでの名前だ。リアルでの名前は鈴木悟。悟の方が名前で、鈴木は家名だ」

 

「それが真の名、ということですね?」

 

 キリリと聞こえてきそうなほど表情を変えているように見えるパンドラ。これを本人は真面目にやっているのだともう理解したので精神抑制は起きない。

 

「そうだなぁ。いや、モモンガも大事な俺の名前だぞ?だがまあ、伝えておくべきだと思ってな。モモンガという名前はナザリックの者なら誰でも知っているが、この名前も大事なものだ。ギルメン以外にも知っている人間がいてほしかった、んだろう」

 

「そのような尊き名を教えていただき、光栄であります!……あの、僭越ながらお願い事があるのですが」

 

「ん?なんだ?」

 

「二人きりの時で構いませんので、モモンガ様のことを父上と呼びたいのです!」

 

「ええー?」

 

 久しぶりに感情抑制が起こる。子どもどころか彼女も妻もいない。息子のような存在とは思っていたが色々と段階を飛ばしすぎている。そもそも童貞—―それはいいかとモモンガは被りを振るう。

 

「まあ、二人の時ならいいか。ただし、悟の名前は出すなよ?名前から来る呪いというのもある。俺が住んでいた日本には遥か昔にそういう呪術があったらしい。それと似たものがこの世界にはないとは限らん。この世界で用いるお前の名前も考えないとな。むやみやたらに外部へ情報を漏らす必要はない」

 

「不躾な願いを承ってくださり、ありがとうっございますっ!」

 

 嬉しさの現れなのか、すごいオーバーアクションを取ってマントをバッサバッサしている。それを見てマントカッコいいなあとか思ったオーバーロードがいたり。

 

「よし。では続いて情報について。モンスターにしろ、人間にしろ脅威となる相手は全くいなかった。そうだな?」

 

「はい。三十台はモンスターのみ。人間はそのレベルにも達しておりません。—―ですが、それでも警戒を怠るべきではない。そうですね?」

 

「ああ。ワールドアイテムの取得方法は様々だし、市場に流れる時だってあった。手にしようと思えば案外楽に入手でき、レベル関係なく用いることができる。装備するためのLVキャップなどもあったが、この世界では異なるのかもしれない。ユグドラシルの魔法は存在し、マジックアイテムも同じように使用できるが常識は捨てろ。ここはもう、ユグドラシルじゃない」

 

 それに、召喚だけでもユグドラシルとは変化している。死の騎士が召喚者の許から離れたのが良い証拠だ。フレーバーテキストが意味のないものであったのに、それが意味のあるものに変わってしまったかのような。

 ユグドラシルの常識が通じることもあれば、通じないことだってある。それを一つ一つ検証していくのは大変だ。

 

「……手っ取り早いのは、現地民から情報を得ることか」

 

「人間を捕らえますか?」

 

「よせ。俺もリアルでは人間だ。ユグドラシルではアンデッドだったがな。敵対者なら構わないが、誰彼構わずはやめろ。それにこの世界で生きていく以上、現地民とは友好的に交流した方が良い。こちら側が異邦人で、ユグドラシルはほぼ確実に消滅している。帰還する手段も検討がつかない。……俺たちは、すでにこの世界という鳥籠に囚われてしまったんだ」

 

「失礼、いたしました!では基本方針として、悪逆なる者のみ実力行使すると!」

 

「ああ、それでいい」

 

(こいつはカルマ値も悪じゃないからこういう部分は納得が早くて助かる。むしろ心配なのは俺の方だよなあ……。カルマ値極悪だし。それにユグドラシルのサービスは終了してるだろうしな……)

 

 慎重に行動する以上、敵対者は少ない方が良い。そう考えてモモンガはこの世界で生きていくために歩き出す。

 

「では父上!今日この後はいかがなさいますか!」

 

「うーむ、慣れん。……そうだな。アンデッドと言えば基本死体を用いるものだろう?俺のオーバーロードとしての能力として主なるものはアンデッド作成と死霊魔術だ。ならメインの戦法の確認をすべきだろう。モンスターならいくら狩っても問題はないはずだ。ユグドラシルのようにデータクリスタルだけ残されて消えられたら困るが」

 

「それも含めてモンスター狩りということですね?」

 

「ああ。この近辺で暴れたら拠点のことがバレるかもしれない。森の北から東方面へ向かおう。そっちの方は人里がなかったから多少暴れても問題はないはずだ。スキルの確認も同時進行する。この場所は《天軍降臨(パンテオン)》を用いて守護させる。それほどの高レベル天使なら問題はないだろう」

 

 超位魔法ならMPを消費しないのでこれからの行動にも差し支えない。その超位魔法の確認でもある。調べることはたくさんだ。

 課金アイテムも貴重なので使うことはせず、発動までの長い時間を待って魔法が起動した。

 予想通りの天使が召喚出来たことに満足し、二人は《転移門》を用いて森の東部へ向かった。

 

 そこでトロールの軍団に出会い、話が通じなかったのでこれ幸いとスキルなどの実践をする。死体はかなり手に入り、スキルなどの実証ができて二人はほくほくと拠点へ帰った。

 その行動で、森を収める頂点三体の内の一体が中位アンデッドに変化していることに気付かない二人であった。

 

 

 




臆病な名前のトロールなんて刹那で忘れちゃった。

ぶっちゃけこの時点では頂点に三体いてそれぞれが縄張りを持っているという情報がないためにあっさり退場させます。


しかしあの名前から「のんのんびより」とクロスオーバーさせるという発想になった作者様には脱帽しますわ……。

見かけた瞬間どうやって!?と困惑したものです。







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