オーバーロード~遥かなる頂を目指して~ 作:作倉延世
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少年の頃の彼は決して恵まれてはいなかった。毎日畑仕事をやって、それでも育ち盛りである彼の口に入る穀物はわずかであり、ひもじい思いがなくなることはなかった。彼を襲うのは空腹だけではない。時折ある盗賊の襲撃に貴族たちの嫌がらせ、いつ襲ってくるかわからないモンスターの恐怖と彼が安息の日々というものを知ることはなかった。
それでもなんとかやってこれたのは、信じていたかもしれないから。そんな状況で何の見返りもなく、ただ弱い者たちを救わんと立ち向かってくれる英雄が現れるのを。しかし現実にそんなものはなくて、変わることない虐げられる日々、
それでも彼はおれなかった。救世主がいないのであれば、じぶんがそうなればいいのだと剣を手にとってがむしゃらに振り続ける日々、それは神から唯一与えられたものではないかというもの。自分には剣の才能があったらしい。ひたすらにそれを磨きつづけ、闘技大会に出場する機会に恵まれた。それまで味わってきた鬱憤をはらすように対戦相手を破っていき、そしてむかえた決勝戦、青髪の剣士との決戦は彼のそれまでのつらい日々を忘れさせるほどに楽しく、それまでの鍛錬の結果をその身をもって感じることできるとても幸せにあふれた時間であった。そして激闘の果てに勝利して、彼とはまたどこかで剣を交える約束を交わした。そしてもうひとつ自分の人生を変える人物との出会いがあった。
「見事な戦いであった」
そういって、微笑むのはこの国の王である人物。そしてその人物は平民である自分に頭を下げたのだ。それは本来絶対にありえない光景と、なによりその王の影で甘い汁を吸い続ける貴族にしてみれば、非常にまずい事態。そこまでして何を望まれるのかと思えば、
「私の剣に、臣下になってはくれぬか?」
それこそ前例のない事であった。当然のように反対の声をあげる貴族たち。本来、王族の守護騎士、近衛隊などは、同じく王族から、あるいは貴族の人間から取り立てられるのが通例だ。もちろん単に血筋だけの問題ではない。それはこの世界に生まれてからやってきたことの違いからだ。平民の子供というのは、それこそ生まれた家で変わって来るけど、商人の家に生まれれば商いを、薬師の家に生まれれば薬学に調合、彼のように村に生まれれば、畑仕事などを学びながら成長していく。そしてそれは貴族の子供も同じこと。彼らは作法と剣をならう。よって必然的に生まれるのは経験差、しかし国中から腕に自信があるもの達を集めて行われた闘技大会優勝をはたした彼には通じない理論だ。
それならばと貴族たちが次にあげたのは彼の戦い方だ。彼の剣技はお世辞にも美しいとは言えない。いや、むしろ泥臭さをもったものだ。しかしそれもしかたのないことであった。貴族の子供が習う剣技というのは、ほとんどが決闘など1対1を想定したもので、実利よりも見た目の華やかさを優先した。彼らにとって、剣とは戦いではなくて見世物としての意識がつよかったのかもしれない。たいして彼の剣技は実践ありき、多対1を想定した実利優先のものであった。というか、そうでなければ彼はこれまで生き残ることもできなかったであろう。また彼は剣に対してそんなにこだわりはなかった。折れれば躊躇いなくすてるし、必要とあれば、相手から奪い取ってそのまま斬ったこともある。貴族共にしてみればそういった行為は何よりも許し難い行為であった。剣とは戦士の魂であり、誇り高く生涯を共にすべきものだろうと。それは彼にとってはまったくどうでもいい事であった。というか、使えれば、斬れれば、特にどんな武器を使おうと変わらないように思える。それが余計に貴族に嫌われる理由になってしまったが、
そんな自分をなんとしても臣下にしたい国王は一つの改革を行った。すなわちリ・エスティーゼ王国王家の歴史において新たな役職を作ったのだ。それが現在の自分の地位である戦士長という立場だ。そして率いる部隊の人選はすべて自分に一任されていた。そうして一人、また一人と自分が気に入った人間を部隊に勧誘した。剣の腕だけでなく、王国に、民に対する思いや性格、根性なども考慮して選んだ最高の部隊になったとおもう。たまに酒屋で飯を共にした時などは飲み比べをやったり大いに騒いだものだ。そうやって一軒完全に出禁になってしまった所があり、その時は王に多大な迷惑をかけた。が、それもいまではいい思い出かもしれない。なによりこの不安定な時代に困った民に何の縛りもなく王の名の元ふるまえるのは大変ありがたかった。それで救えた命もたくさんある。まあ、すぐに新しい壁にぶち当たってしまったわけだが、それでもただの平民でしかなかった自分にそこまでの地位をくれた王に感謝の念はたえない。だからこそ、生涯をとして、恩を返さないといけないのだ。それこそ、
「戦士長殿!」
リ・エスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフはその声で目をさました。しかしここが室内でないのは、肌を走る風が、ベッドの上ではないのは、常に揺れる視界と不安定な自身の体勢が示していた。前に視線を向ければ、ここまで共に戦場をかけた愛馬、というわけでもない馬の頭があって、自身の両手はその手綱をしっかりと握っていた。先ほど声をあげたのは隊の副長を務めている者だ。
「長い夢を見た気がするな」
どうやら、自分は騎乗中に寝てしまっていたらしい。もしもこれが、かつてアインズのいた世界であれば間違いなく免許停止ものであるが、この世界には道路交通法はおろか、運転免許ならぬ騎乗免許といったものもないため。この男を罰するすべはない。まあ、せいぜい「かの王国戦士長は居眠り騎乗ができるらしい」と嫌味を言う事ができるくらいか、
「やはり働き過ぎでは?」
彼の言いたいことも分かる。しかし、
「それはお前もだろう」
「自分は平気です」
「お前はよくてもほかの者たちは」
「「「自分たちも問題ありません!」」」
本当に自慢の部下たちだ。
そう、彼らはこのところ睡眠時間が著しく減っていた。それまで、一日の4分の1の時間だったのが、8分の1まで削れている。それだけ現在の王国が荒れているということであった。このところ王都を中心にあちこちでキナ臭い話がたえない。突然変死した店主、集団失踪した子供たち、日が昇るとともに姿をけしてしまう若い娘といった奇妙な事件から、都市の外にでれば、モンスターや盗賊といった存在の活性化がおこっているらしくて付近の村々から被害届が次から次へとやってくる。そしてそういった事態に対処するのが自分たちの役目だ。しかし、
「本当にあの馬鹿どものせいで」
苛立ちを募らせた副長の言葉が部隊全体に暗く諦めを広げた。現在の王国が抱えている問題は治安の悪化だけではない。権力争いもその原因の一端だ。王派閥と大貴族派閥、そしてその双方に与せず独自にコミュニティを広げている若い世代を中心とした新派閥の存在、そしてそれらの間を狐のように駆け、蝙蝠のように飛び回るあの男の顔を思い浮かべ、さすがのガゼフも顔をしかめる。事件があると自分たちがとんでいく訳だが、現場について調査を始めようとすれば、必ずいずれかの派閥からの横槍が入る。曰く『私の領土で勝手な真似はやめていただきたい』であったり『他派閥からの刺客ですかね?』といった具合にだ。そんなことだから普段の倍の時間がかかってしまったり、迅速に対応すれば解決したはずなのに取り返しのつかないことになったこともあった。その時の遺族の悲しみに満ちた顔を忘れることはできない。さらに帝国の存在だ。毎年収穫の時期を狙って行われる戦争が国を、民を、疲弊させていく、このまま続けば、いずれ国は落ちるだろう。だというのに、今の国の状況を正しく認識できている者は恐ろしく少ない。国王はそれを分かって現状を嘆いている。
「私はなんと無力なのか」
そう嘆く王の姿がガゼフの瞼の裏に焼き付いて離れない。そうではない、確かに優れた王ではないかもしれない。それでも、民を思い、国を思っていてその為ならば、王の威厳などは簡単に捨てることができる人物であることは今の自分の存在自体が証明であった。だからこそ止まるわけにいかない。
「戦士長殿」
再び副長の声、大丈夫だ、さすがに二度寝はしない。
「何だ?」
「今回の件、何かおかしいとは思いませんか?」
確かに心あたりがまったくない訳ではない。今回王から賜った命令は『国王直轄領付近にて帝国兵が侵入している疑いあり、直ちに調査を行い。もしもそれが事実であればただちに討伐、村々を救え』というものであった。気になるのは王にその事を進言したのが、大貴族派閥に所属しているブルムラシュー候であったということ。貴族派閥にしてみれば、王国の国力が落ちるのと国王の権力がおちるのは同じらしく、(その理屈が全く理解できない)事実、最も横槍を入れて来るのもこの派閥の貴族達なのだ。そして今回の事件が起きたのは国王直轄領、なぜ彼が今回に限って、その異変解決に進言するのか?うわさだと金を稼ぐ為には家族すら裏切るという噂をもつ男である。一体何を企んでいるのか?
(ええい、分からないことを考えても仕方ない!)
正直、自分は教養があるほうではないし、それは部下たちも同じだ。こういう事であれば、苦手意識など持たずにもっと幅広く、それこそ貴族も勧誘範囲にいれるべきだったかもしれない。最も彼が声をかけたところで『平民の下につけるか!身の程をしれ!』と相手にもされなかっただろうが、
一行は平原をかける
(これは)
見えたのは、凄惨な光景であった。壊された住居に、そのあたりに無造作に放置されている死体。我が子を抱きしめて泣き叫ぶ母親に、母に目覚めてとすがりつく子供の姿。そして途方に暮れる者たちであった。そしてそれを見て部隊では割と頭脳派な副長は得心いったらしく、軽く舌打ちをする。
「撤退しましょう」
それは、単におじけづいたわけでなく、自分を気遣ってのものだとこれまで共有した時間が教えてくれる。
「それはできない。何人か残して次へ行くぞ」
ここで彼らをおいていけば、やがてモンスターなり、飢えに襲われて全滅するのは目に見えている。それはガゼフにとって我慢できるものではない。救える命を見捨てて何が戦士長だ。副長は顔を憤怒に歪めて続ける。
「それこそ罠です!あなただって気付いていないはずがない!」
それは、彼のように様々な状況を組み合わせて計算したのではなくて、単なる感であったが、彼もそうだというならそうなのだろう。
「あなたがそうすることを分かって、わざと中途半端な人数を殺すにとどめたのでしょう。そして、狙いは間違いなく、あなたです!」
ああ、きっとそうなのだろう。きっと、この先にその為の敵の本隊が潜んでいる可能性がある。自分を殺したいと思っている者の顔には心あたりがあり過ぎる。そして、金でそういった汚れ仕事をやる連中もいることを知っている。だが、それがどうした?
「お前は平民であったな」
「ええ、というかあなたの部隊員全員が平民出身ですよ」
「そうだな、私も含めてだ。そしてどうしてお前は戦士になろうとした?」
「あなたに憧れたからですよ。おそらく部隊員の半分以上が同じ理由ですよ」
迷いなくそういってみせる副長の言葉にすこし照れ臭くなると同時に感慨深いものを感じる。俺も年をとったんだなと、
「うれしい事を言ってくれるな、そしてその私、いや、俺が戦士を目指したのは、ただ人を守る力が欲しかったからだ」
そして、とガゼフは続ける。
「動けば助けられる人がいるのに引き返すなんてことはできんさ」
それは、戦士長であり、そこまで上り詰めた男の原点ともいえる本質、まげることのない信念。その言葉に副長もおれたらしく、改めて顔を引き締めた。それは部隊に所属するもの全員にも伝播したらしく彼らの表情も引き締まっていく。
「よって行動を再開する!直ちに部隊を分けろ!」
「了解しました」
そうして行動に移ろうとしたところで
『失礼、少々よろしいでしょうか?』
突然聞こえた声はまるで直接脳に語りかけたような声であった。はじめは幻聴の類を疑うも、周囲を見れば皆同様に顔を左右に振っており、決して自分だけではないとわかる。
(なんだ今の声は?)
一瞬寒気を感じる程の威圧感とまったく何なのかわからない恐怖があった。やがてかれらは声の主を見つける。
ウィリニタスは鏡を操作しながらその者達を見ていた。現在この部屋にいるのは自分だけだ。ほかの者たちは皆再びそれぞれの仕事に取り掛かっている。時折、一般メイドかスケルトンが羊皮紙を持ってくる、そこには普通であれば中々手に入らないこの世界の情報が書き込まれている。今の彼の役目は、周囲の警戒及び、ある人物達の捜索であった。
(おそらくこの者達が、王国戦士長と彼が率いる部隊なのでしょうね)
軍隊としては装備には統一感がなく、つけている鎧にしても傷だらけであったり、どこかしら欠けていたりしていた。それは隊長たる戦士長も同じらしく。そのみすぼらしい格好に、先ほどの奴らのほうがまだマシであったと。また戦士長の人間にしては鍛えられた肉体を見て
「馬鹿馬鹿しい」
思わず言葉に出ていた。主が相手をしたという特殊部隊の者から主が聞きだした情報や、現在進行形で行われている拷問にて得ている更に詳細な情報に彼らの力からもある程度の戦士長の実力というものを予想してはいたが、正直主が関心を寄せるまでもないように思われる。この程度であれば、ナザリック・オールドガーターが5体、いや、コキュートスが今やっていることを考えれば、3体でも押しきれるかもしれない。できることならこんな者達よりも義妹の想いに目を向けてほしいと思うのが正直なところだ。
ウィリニタスとは、誰にでも優しく、面倒見のいい人物であるというのがナザリックに所属するもの達の総合評価だ。ただし本人はそう思わない。彼にとって一番大事なのは主に妻と義妹たち、そして次にくるのがナザリックの同胞たちなのだ。そんな彼にとって本来人間とはゴミ以下の害虫という認識である。自室にゴキブリにナメクジ、ミミズにヤスデ、百足があふれたとしてそれを許容できるものはいるのだろうか?否、いないであろう。もしも、もしもだ。主がナザリックの維持を優先してその上でカルネ村の件を彼に任せたとしたら彼はどうするか?襲っている騎士も襲われている村人もそれこそ老若男女、赤ん坊の区別なく、くびり殺していたであろう。間違いなくそうしていると本人が一番分かっている。いや、もしかしたら赤子と子供だけは助けるかもしれない。まあ、それも愛する妻を気遣ってのことだが。今はさすがにそんなことはしようとは思わない。何故なら、それこそ主の願いであり、ひいては義妹の為だ。いつか彼女が主のとなりで笑っている景色を見るためかれは勤めを果たす。
(悪い癖ですね)
昔から習慣になっていたことを急に変えるのは至高の41人に創造された彼でさえ難しいことである。最初にでた言葉はあくまで彼ら戦士長たちに対する目視のみの第一印象だ。
(しっかり考察をしなくては)
主の願いを叶えなくてはならない。その為には少しでも彼らを通して、王国とう国の情報を得るべきだ。そうして注意してみるといろいろ見えて来るものがある。そもそも何であんなに貧相な装備をしているのだろうか、ナザリックの尖兵たちのほうが、まだいくらかマシだ。では、何故ああなのか?仮にも王国最強とあれば、そうとう重要な位置づけにいてもいいはずだ。
(偽物、影武者、あるいはその存在そのものが情報操作などでつくられたものである可能性)
いや、ないだろう。この人物に向けられている視線は確かに一人の戦士としての憧れと尊敬をこめたものであり、先ほどから送られてくる羊皮紙を確認してもその存在がこの世界において広く認知された存在であるのは確かなようだ。もしそれが、事実だとしたら。
(本当に、この世界の水準というものがしれたものです)
もちろん、それはいわゆる表向きの世界の話、実際は現在、自分たちがそうしているように、どこかで静かに潜んでいる者たちもいるかもしれない。そういったものたちの強さとはいうものが不明な以上、あまり派手な行動、あるいは軍事的行為に戦争などはやめたほうがいいだろう。そもそも主が許可しないだろうが。
「ウィリニタス様、少々よろしいでしょか?」
敬語を使う必要はまったくないのにと、やや肩の力を落とす。視線の先にいるのはやはりというべきかデミウルゴスだ。確か現在は《真実の部屋》にて情報収集にあたっていたはずだ。それがどうしてここに来たのか?
「デミウルゴス様、いかがいたしましたか?」
問いかけるが、彼はすぐに答えることなく、何かしら考え込むように黙ると口を開く、
「やはり敬語はなしにしませんかね?ウィリニタス様」
彼の言いたいことは分かる。確かにこのままでは、お互いに敬語を使い合っているという非常に変な光景だ。互いに様づけとあれば、なおさらに
この先ナザリックの者たちが外の人間たちと関わるとなればこういった場面を見られる可能性は捨てきれないし、それで変に誤解されるほうが問題であろう。それこそ主の足を引っ張ることになりかねない。
「分かりましたよ。それはデミウルゴスも同じなのでしょう?」
「ええ、同じですともウィリニタス
「おや?話が違いませんかね?デミウルゴス?」
「違いませんともウィリニタス様、私は敬語をやめるよう頼んだだけですから」
完全にしてやられたらしい。もしもここでまた自分が先ほどの言葉遣い、彼の呼び方を戻せばいいだけなのかもしれない。しかし、先ほど自分が抱いた危惧は実際にありえる可能性であり、このままおかしなやり取りを続けることじたいに疲れている自分がいたのかもしれない。
(本当にこの男は何を考えているのでしょう?)
そんなに自分に尊敬できるところがあるのだろうか?それこそ主に遠く及ばないというのに。
「・・・・・私の負けだよ、もう好きにしれくれ。デミウルゴス」
「ありがとうございます。ウィリニタス様」
「それで?君はここに何をしに来たのかい?」
まさか、こんなやり取りをするためだけではないだろうと、そこそこの苛立ちを混ぜておく。
「ええ、少しアインズ様に用事がありましたね」
「君なら、
おそらくは主の現在の状況を鑑みてここにきたということか、なんせ主は現在カルネ村なるところにてヤスデども、訂正、人間達の相手をしていたはずだ。突然の連絡は主の窮地を招くかもしれない。それを踏まえたうえで今、現地がどうなっているのか確認をしにきたというところか、そういう気がまわるくらいこの男にとってはなんでもないのだろう。彼もだが、彼の創造主である人物も相当の御方であるということを聞いたことがある。ウィリニタスとしては、やはり何とか協力者になってもらいたいと思っている。この男の知能が加われば義妹の主への精神的距離というものはあっという間に縮むであろう。そうなれば、いつかは甥か姪をこの手に抱くことも叶うかもしれない。その様を一瞬夢想して、頬肉がゆるむ
(いけませんね)
まだその時ではないし、なにより主がそれどころではないだろう。だからこそ主の命を忠実にこなし、ついでに義妹の魅力を最大限に最適格に伝えていく。心配はいらない。なんせ、主自身が義妹の想いが本物であると認識しているからだ。時間は余るほどある。ゆっくりでもいいので確実に義妹のいいところを知ってもらう。あの娘は本当に気立てのよく、心優しく、身内びいきぬきでも美しい子だ。
(そういえば)
夜空の会談の時の一幕は義妹から聞いているが、その時に主は彼女の設定を書き換えたと言っていたらしいが、義妹は特に以前と変わらないようにみえるし、本人にもその自覚がないのだ。結局のところ何かの勘違いではないかということではないだろうか。
無論そんなはずがない。もし、彼女の設定が以前のままであれば、今すぐにでも愛する主を押し倒し、肉体的になだめていた事であろう。そもそも彼女の気持ちが彼らの崇拝する墳墓の主に向けられていた事とかの方々がいう設定は全くの無関係であり、そこから離れないと話は進まない。では、一体以前のアルベドと現在のアルベド、「ビッチ」な彼女と「真面目」な彼女は何が違うのか?結局のところ厳密なことは誰にも分らないだろう。何せ基本彼らは動けないゲームキャラでしかなかったからだ。何かしら条件が整った時は違ったかもしれないが、それでも長年彼らはあくまでデータ上の人物でしかなかったはずだ。それが、今回の異変と重なってのことだからそれこそ、明確に正確にどうなっていたかを説明できる者なんて、《リアル》にも
「そういう事なら、すぐにカルネ村に視点を戻すとしようか。少し待っていてくれ」
現在この部屋に
「おや、今映っているのが件の戦士長達ですか?」
鏡を操作しようとして、デミウルゴスが声をあげる。当然彼も自分がやっていたことは知っているはずだ。
「アインズ様から命じられてまだそれほどたっていないというのに、さすがでございます。ウィリニタス様」
「いや、それをいうなら彼らがここに来ていると断言されたアインズ様、その慧眼を称えるべきだと私は思うよ」
「おお、それもそうですね。さすがは至高の御方よ」
「ええ、まったく。さすがはアインズ様、あの娘が惚れるのも必然といえるのかもしれない。そしてそうだね、君からみて彼らはどうだい?」
せっかくなので彼の意見も聞いてみるかと話を振ってみる。次の瞬間彼から噴出したのは嫉妬であった。彼の両目は自身の片目と同じく宝石であり、そこに感情なんて映る余地はないはずなのにウィリニタスにはその瞳に憎悪が宿ったように見えた。
「アインズ様への不敬を承知の上で、その上で正直に申し上げるとしたら。やはり、そんな大した存在ではないように見えますね」
「やはり、君もそう思いますかデミウルゴス」
「ええ、ですが、」
そこで手で制する。さすがに自分もそこまでわかっていないわけではない。
「この者達との邂逅をアインズ様は望まれているからね。心配しなくても正直に申し上げるよ」
「ウィリニタス様ですからね、心配はありませんよ」
「本当、どこから来てるんだい?君のその異様な尊敬は?」
「私だけでなく、ナザリックに所属するもの達、特に第7階層から第9階層に所属するものは皆あなたに最大限の敬意をもっていますよ。偉大なる3賢人の一柱として」
「その称号自体、今では君や義妹、それにパンドラズ・アクターのものだろうに」
「それだけではないということです」
そんなものなのだろうか?今度あの2人にも聞いてみるかといい加減話を進めるべく鏡を操作する。
「よろしいのですか?」
「付近の地形と村の配置は確認した。彼らがどれくらいの速度で移動しているかもね」
それだけあれば、簡単に彼らの位置を割り出せる。最も主にしてみれば朝飯前なのだろうが、やがて、村が見えてきて、主たちが居るであろう広場へと視線が移動して、
(おや?)
何やら主と義妹が騒いでいるようだ。近くには先ほど主が救出した姉妹や、村長らしき人物の姿も見える。その中を義妹は兜をはずしてその角を大衆の中、その無数の視界内にさらしている。どういうことか?
(賢い娘のはずなんですけどね)
主に唇を求められてだとかではないのは、何やら怒られているらしい義妹の反応を見れば容易に推測できる
(やはり)
目前の彼にも協力しもらわないといけないらしい。
カルネ村、
「アインズ様、その、まるでデートみたいですね」
それは、単に彼女がこの状況を喜んでいるのでなく、きっと重くなっている自分の気持ちを気遣ってのことだろう。証拠としてはその声に喜色でなく哀色が混じっていたからということだろうか。まあ、普通のカップルはこんな死体だらけの村の中を歩いたりしないだろう。無理やりあり得る状況を考えれば、墓場への肝試しを兼ねたデートをするくらいか、それでも今回の件に直面したアインズとしてはそれが、とても酷いことであることを知ってしまっている。雰囲気を求めてそんなところに行く男女など雷にうたれて死ねばいい、決して独り身の嫉妬ではない。
「そんなに固くなることないぞアルベドよ、確かに状況が状況なら、このままお前と2人、日が暮れるまでこの辺りを散策するというのもよかったかもしれないな」
その返しは予想外だったらしく、アルベドは「はう!アインズ様!」と思わず両手で顔を覆って(兜をしているんだから意味はないんだけど)言葉を返すことができなくなってしまった。その様子にアインズは癒されると同時に別の感情が広がって行くのを感じていた。もしかしたら、
(これが、愛おしいというものなのだろうか?)
確かに今自分がここにいるのは、彼女の告白も大きい、もしあれがなければ、自分が消えてしまっていたのは間違いない。それにここまでの間、彼女は自分を助けてくれた。しかし、
(答える訳にはいかない)
彼女はいわば、友人の娘のようなものだ。たとえ、どれだけ想われていたとしてもそれに答える訳にはいかない。それにそもそも自分にそんな資格はない。一度彼女たちを見捨てたのは事実だし、そんな自分のワガママで彼女たちを振り回している。そんな状態で彼女とそんな関係になるなんてとてもできることではないし、最低でも《楽園》を作り上げるまでは、と
(ん?)
何だ?それは、まるですべてのことを終えたら彼女とそうなってしまってもいいかもと思っているのか、いいのか?彼女の想いに答えて、
「いい訳ないだろぉ!!」
思わず叫んでしまい、見えなくても一瞬アルベドが何かに反応したようにその体を痙攣させるのを感じた。しまったとおもう。これではアルベドを不必要に怯えさせるだけではないか、
「すまん、アルベド。つい大声をだしてしまった」
だというのに、
「何を謝る必要がありますか?また何か思いつめてはいませんか?」
兜越しだというのにその目にどこまでも深い愛情があるのがみえて、彼女は強すぎず弱すぎずスタッフをもっていないほうの手を握ってくれる。
「わたしの想いは変わることはありません。それに、」
彼女は自分のことを慈悲深いといっていたが、本当にそう呼ばれるべきは
「お優しいアインズ様のこと、あの時のことを気にしているならば、・・・・・その・・・・・・・恥ずかしいですけど、・・・・・その、答えはいつでもいいですので、ですから、」
彼女のことではないだろうか。
「再び死のうだなんて二度と思ないでください。アインズ様がいなくなれば、皆、悲しみますので、」
自分のことで精いっぱいのアインズと違って、ナザリックの仲間たちを、そして
「わたしは、アインズ様に笑っていただきたいのです。生きていることに喜びを見出してほしいのです」
自分を思ってくれるこの女性を前にアインズは
「ああ、わかっているとも」
彼女と同じように力を入れ過ぎずに手を握り返す。そうして、思う
(まずいな)
できることなら、今すぐにでも彼女の胸に飛び込んでしまいたい(顔面を強打するだろうけど)そして、彼女を抱きしめて、そのままどこか遠くへと逃げてしまいたいと思っている自分がいるのをどうしようもなく自覚していた。
(このままでは、本当にダブラさんに顔向けできない)
当の本人がすべて聞けば、「もうなにもかも手遅れだよ。手遅れなんだよ!モモンガさん」と言われることは確実なのに、この時点でもアインズは何とか説明できるのではと呑気に思考していた。やがて、目的地につく
(やはりだめか)
アインズ達が来たのは、助けた姉妹の住んでいた家だ。そして彼らと対面する。そう、彼女たちの両親と、
(あなた方の娘と交わした約束は果たせなかった。でも、あなた方の願いは叶えましたよ)
あのとき、まるで、この夫婦と目があったと感じた時、それは本当にただの偶然だったかもしれない。それでもアインズはこの二人に姉妹のことを託されたような気がしたのだ。そして、右手を空間に伸ばしかけて、
「アインズ様?」
止めてしまった。
「なあ、アルベドよ、一つ聞いていいか?」
「なんなりと」
「仮にこの者たちを蘇生して、それは正しいことなのだろうか?」
そう、アインズは、というよりも、
だからこそこれから自分がつくろうとしている《楽園》では命をどう扱うべきか?一人で考えてもいい答えが出るはずもなく、かつての友たちに聞いてもちょうど半々で割れるといったところだろう。だからこそナザリックの者としての視点からの意見を求めたわけだがアルベドはやや肩を落とし、
「お許しくださいアインズ様、愚かなわたしではその問いに答えることができません」
と、初めて言葉を交わした時と同じように頭を下げる彼女、
「お前の個人的な考えでいいんだぞ?」
もちろん、これから出す結論に彼女が一切の責任を感じないように配慮するつもりだ。ただ、ほかの者の意見が欲しかった。それだけのだ。
「ですが、・・・・申し訳ございません。やはり、アインズ様がどうしたいかということが何よりの正解かと思います」
突き放すような言葉であるが、それでも決して投げやりに言ったのではないのは分かっている。そして結局のところ答えはそこにあるのではないだろうか?生死を自由にできるとして、良し悪しなんて簡単に決められることではない。結局のところその力を持つ者、行使する者しだいか、で、あるならば
(やっぱりやめよう。そんなことをすれば、それこそ命の価値を貶める行為だ)
あの時、この夫婦は体を張って姉妹を逃がした。その姿に感銘を受けてアインズは動いた。この二人は文字通り命を懸けたのだ。それを単に元ゲームのアイテムとかで、簡単にしていい事ではないはずだ。この世界にその類の魔法はあるかもしれないし、もしかしたら死者の蘇生もある意味、認められているかもしれない。それでも、この夫婦に関しては蘇生はしないことにする。彼らの行為に最大限の敬意を表して、せめて、生き残った、いや助けたともいうべきあの姉妹は見守るとしよう。
(あの話をするとしようか)
「すまないアルベド時間をかけたな、戻るとしよう」
「かしこまりました。アインズ様」
いやな顔一つしない彼女の存在はとてもありがたい。
「ところでアインズ様、少しよろしいでしょうか?」
来た道をただ、来た時と同じように歩いていると後ろから彼女の声が聞こえた。
「ん?どうしたんだ?アルベド」
「いえ、先ほどデミウルゴスや義兄に何か頼まれていたみたいですが?」
「ああそうか、その時お前には村長たちの相手をさせていたな」
彼女の頭であれば、ある程度は予想できるだろうが、それでも実際に言葉にするのは大事だしな。と、アインズは先ほどの
「戦士長が、来ているのでしょうか?」
「その可能性も考慮してだが、何、かの男が聞いた通りであれば、必ず来ているだろうさ」
何の躊躇いもなく言ってのける主の姿にアルベドはやはりこの御方はすべて見通しているのではないかと期待してしまう。思えば、自分がこちら側に合流した時、あの姉妹は主を『神』とあがめていた。その時に思い出したのは、デミウルゴスとのやりとり、主が鏡でこの村をさがしていた時のことだ。曰く『アインズ様の望みは楽園計画だけにあらず』なんて、主の言葉を変に深読みしたのではないかと思う妄言に少々声をあげてしまった。不敬であると。あの男だって、主の崩れた姿を見たはずだ。なのに何故そんなことがいえるのかと、問い詰めたところ。逆に言い返された。『では、ここまでの、これまでのアインズ様の采配をどう説明すると?』確かにナザリックのかつての
(やっぱりやめましょう)
考えるのをやめた。たとえ、どの主が真の姿であっても、彼女にとっては関係ない。最後まで自分たちを見捨てなかった。心優しくもどこか弱さを抱えている。そんな主のことを好きになったのだ。自分は臣下としてはすでに失格だ。もしも真の臣下であれば、あの時、主の願いを叶えるべきであった。しかし、自分の勝手な想いで主をこの世にとどめたのだ。いわば、これは自分のワガママ。ならば、自分はこの先何があっても、それこそ、世界のすべてや、考えたくはないが、ナザリックの者たちが主に反旗を翻したとしても、最後まで主に寄り添うのが自分の最後の努めだ。
(わたしは、いつまでもあなた様とともに、ア、いえ、今だけはお許しくださいモモンガ様)
心だけではそう呼ばせてほしい。と、アルベドは改めて主への想いを確かにした。そしてもう一つの決意
(デミウルゴス、あなたが何を考えているのか知らないけど)
もしも、主を悲しませるものであれば、たとえ、同胞であろうと躊躇いなく斬ると、
(実際、どうなんだろうな)
アインズは考える。戦士長ガゼフ・ストロノーフは見つかるのか?まあ、見つかれば儲けものぐらいにしか彼は考えていない。そもそもスレイン法国からきた特殊部隊をとらえたのも、王国に対するアプローチの一つとしてだ。もしも、ガゼフという人物と出会うことができるとすれば、そのまま引き渡してもいいし、できなければ、直接王国に赴くつもりであった。その時の人選はどうしようか?どうせなら、アウラやマーレなどにもっと広い世界を見てほしいと親心全開で思考を巡らす支配者。
(ふふふ、アルベドの奴、黙りこくって、さっきの台詞は決まったな)
先ほどアルベドや支持を出すときにウィリニタスに『戦士長は必ず来る』と断言したのは、単にロールプレイの延長と単に、臣下たち、特にアルベドあたりにかっこよく見せたかったというのが大きい。何、大丈夫だ。彼女たちはそれで戦士長が見つからなかったとしても失望はしないだろうし、いわゆる支配者ジョークだとわかってくれるはずだ。そんな悪戯心が元で大変なことに巻き込まれる可能性を自ら広げていると自覚せずに。
(もう危険もないだろう。弐号とあの姉妹も連れてこないとな)
話はそれからだと、アインズはかけた魔法を解除して、弐号に来るよう伝える。もちろん姉妹を連れて、
周りの空気が変わった。それは魔法に関してまったく知識がないエンリでも地方育ちの勘で理解できた。
(お父さんと、お母さんは)
そこではたと気づく、あの方の名前を聞いていない。あの時はいろいろとありすぎた。それでも、次に会った時は必ず名前を聞いてお礼を言わなくてはならない。
「お姉ちゃん」
妹が手を握って来る。まだまだ甘えたがりの年ごろか、
「うん、いこうか」
しかし、どこに向かえばいいのか?とりあえず村に戻ってみようか?そんな姉妹を前に主より命をうけた弐号は片膝をつき吠えた。
(さあ!お嬢さん方!吾輩の肩に乗りたまえ!)
しかし、
「お姉ちゃん、この骸骨さん、何言ってるの?」
「ん~なんだろうね?ネム」
伝わるはずがない。やがて、彼の言わんとしていることをなんとか察してその肩に四苦八苦しながら乗り込み、彼は走り出す。早すぎず、遅すぎず。姉妹に負担がかからないように紳士的に村へと向かう。
「おや?デス・ナイトが三人とも揃っているな」
「そのようでございます」
さて、心を決めないとな。こちらに気付いた姉妹が走って来る。姉のほうはちょうど二歩ほど前で、立ち止まり、妹のほうは勢いを止められなかったのか、そのままアインズの足に激突する。
「こら、ネム、失礼でしょ!申し訳ございません!恩人なのに」
「いや、気にする必要はないさ。それより、少し大事な話がある」
その言葉と、おそらくは自分がここに返ってくるまで生き残った者達から話を聞いていてある程度はわかっているのだろう。それでも、しなければならない
「その為にどうしても村長に立ち会ってもらいたい、いいかな?」
よし、ある程度柔らかくはできているはずだ。
「は、はい、では案内します」
こうして四人で村長の元へと向かう。
「これは
そう言われて、そういえばまだ名乗ってなかったなと、思い出し
「すまない。名をいっていなかったな私はアインズ・ウール・ゴウンという。気軽にアインズとでも呼んでくれ」
アインズとしては本当にそのつもりであったが、
「と、とんでもございません!」
「お、恐れ多いです。ゴウン様」
なんだか慌てふためく村長とエンリ、ネムだけは首をかしげているが、少し長すぎたか?
「さて、まずはエンリ、君には謝らないといけない」
頭を下げようとして、
「待ってください!ゴウン様!」
エンリは声をあげる。
「ゴウン様が謝ることはありません!それよりも助けていただいて改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました!」
その言葉と共に頭を下げる少女と、それをまねるように妹も「ありがとうございます!」とお辞儀をしている。
その様子にアインズは驚き、そして感心した。強い子だと、
「村長、この先、この姉妹は村で暮らしていけるのか?」
そう、彼が気になっていたのは、そこなのだ。半数近くの住民を殺されてしまった。この村で、みなしごを養っていけるのかと。
「ええ、厳しいでしょうが、助けあいは村の基本ですので」
「そうか、しかし、収入がないというのも大変だろう。それにこの村は畑仕事が主な収入源といったところみたいだしな」
それが、先ほどアルベドと2人、歩いてきたもう一つの理由。この村のある程度の実態をしることであった。
「それを言われると、頭が痛くなります」
やはりか、そうだろうと思う。どっちにしても女よりも男手のほうが必要なはずだ。
「そうだろう、それで一つ提案があるのだが」
全員の視線が集まるのを感じて、きりだす。
「その姉妹の後見人、それを私が引き受けるというのはどうだろうか?」
「後見人?でございますか?」
やっぱり聞き覚えはないか、まあ、元々複雑な法律だったしなあ。
「ようは、私がその姉妹の親代わりとして、しばらく資金援助などをしたりすることだ」
「そんな!そこまでお世話になる訳には!」
少女はこれが自分の善意からだと思っているだろが、もちろんそれだけではない。姉妹を見守るとういう気持ちは本物だ。しかしそれとは別にもうひとつ狙いがあった。それはこの村を《楽園計画》の足掛かり、ようはその本拠地にしたいという思いがあった。その為にはこの村に多少なりとも恩を売っておかなければならない。なぜなら、計画に組み込むことは、いずれこの村に所属である王国を裏切ってもらうことになるかもしれない可能性もあるからだ。正直心苦しい、それでも
(王国よりもナザリックのほうが力がある)
必ずこの姉妹もあの村人たちも幸せにできるはずだ。と、様々な思惑をもって提案を続ける支配者がそこにいた。
(どうしてそこまで?)
それが、アインズに後見人なる話を持ち掛けられた彼女の感想であった。自分とこの御方は本来何も関係ないはずだ。もし考えられる可能性があるとすれば、
(もしかして)
「あ、あのゴウン様?」
「どうしたんだ?エンリさん?」
「あ、いえ、呼び捨てで構いません」
さん付けなんてそれこそ心臓が飛び出そうだ。
「ん?そうか、ではエンリ、どうしたんだ?」
「どうして、私たち姉妹にそこまでしてくれるのですか?」
結局、直接本人に聞くしかなかった。
「そんな大した理由はない。ただ、」
「ただ?」
「私なりに責任を取りたいのだ」
ああ、やっぱり、
(私のせいだ)
この御方が底なしに優しい方であるのは、ここまでの顛末をみればわかる。見ず知らずの自分たちを助け、村のみんなを助けてくれて、敵であるはずの騎士達にしても殺さずにできる限り穏便にすませようとしたことから、その心がどういう方であるか十分にわかる。エンリとしては自分の両親を殺した騎士に何かしら言ってやりたいと思っていたが、そこまで望むのはさすがにおこがましいだろう。そしてそんな方だからこそ、自分との約束をまもれなかった事を気にしているかもしれない。それこそ、エンリのワガママでしかない。この方が気にする必要は全くの皆無だ。しかし、目の前の人物をみて、今は仮面をしているが、自分と妹は知っている。その中にいる人物がアンデッドであることを。初めは神かもと思った。死んだはず、正確には自分の勘違いだったらしいが、の自分を簡単に治し、あれほど恐ろしかった騎士たちを殺すことなく無力化できる程の騎士を召喚する力をもつこの方を、しかしその方でもできないことがあり、それで心に傷を負って、もしかしたら
(本当に、神様ではない?)
この御方も自分と同じなのではないか?いや、力などはとても及ばないが、この御方も、いや、この人も
(普通の人と変わらない?)
だとしたら、もちろん恩を返すのはもちろん、何か力になれないだろうかと少女は考える。今この方が望んでいるのは自分たちの親代わりになること、確かにこの方の力になるには、それが一番なのかもしれない。もう両親に親孝行はできない。ならせめて、その分をこの方に返していこうとエンリは決心する。
「それでは、お願いします。ゴウン様」
「お願いします」
再び、ともに頭を下げる姉妹。その様子にひとまずは成功だと安堵する様子を見せるアインズの隣を女戦士が通り抜け、自分たちの目の前にやってくる。そしてきたと思えば、おもむろにその兜に両手をかけ、それをはずす。
(きれい)
それが素直な感想であった。まるで星月夜を思わせる黒髪に黄金に輝く瞳は宝石だ。その肌には汚れ一つなく、同じ女性として少し恥ずかしくなる。こめかみから生えているように見える角は飾りなのだろか?
「初めまして、私の名はアルベド、いずれあなた達の母になる予定の女よ」
優しく語りかけられ、思わず座り込みそうになる。その言葉から、
(やっぱりゴウン様の恋人なの、かな?)
と、その溢れてくるような母性に安心しきっていると
「アァルゥべェドォ?」
初めて聞く、かの方の怒ったらしい声に、
「ア、アインズ様、こ、これは」
慌てふためく美女とその何だか微笑ましい光景に
「・・・・ふふ」
「お姉ちゃんが笑った!」
この方たちとならやっていけるかもと未来に希望を抱くことができた。
この時のアルベドが何でこんなことをしたといえば、答えは単純明快、愛する御方が親代わりとしてこの姉妹を守ると決めたならばこの子たちは自分の子も同然、ならば挨拶をせねばと彼女にしては珍しい短慮な行動であったのだが、それがアインズには少し許せなかった。先刻確かにこの女は言った。『あの姉妹はどうでもいい』と、それでこの場面での彼女の行動はあまりにも調子が良すぎるのではないかと、それに簡単に兜をとったことにも多少の怒りがあった。
「お前はもう少し言動を慎め」
「も、申し訳ございません!アインズさま~!」
なんにしても、珍しい光景ではあった。
ナザリック地下大墳墓第6階層コロッセオ
現在そこでは3色の風が吹き荒れていた。すなわち、ハルバートを振り回すコキュートス、薙刀を振るうヘラクレス、4本の刀を振り回すアトラスである。やがて、青と黄の風がおさまる。
「フム、良キ鍛錬デアッタ」
「マッタクでございます」
先に一通りの訓練を終えた2人は体を休めながら、残る一人の訓練を見学する。
「ヤハリ、アトラスノ四刀ハ、私ヤオ前ノトハ、マタ違ッタ美シサガアルナ」
「エエ、マッタクでございます」
アトラスのみせる演舞は4刀流、というか彼はそれしか使えない。4本の刀がまるでそれぞれ、独自に動いてみせる様はよどみがなく、流れるように振るわれるその四刀が織りなす四線は半端な相手では間違いなく、死闘に誘い、死線をもって、切り伏せられるだろう。あの演舞は斬られる人間が、吹き出す血があって、初めて完成する。しかしそれを見るのはまだ先になりそうだ。
「所デ、ヘラクレスヨ」
「ナンデゴザイマシょう、こきゅーとすさま?」
「スマン、オ前二教ワッタ《落語》成ル物、アインズ様二披露スルコトハ、叶ワナイ用ダ」
ああ、そんなことかとヘラクレスは思う、そもそも自分だって、少しかじった程度で、とても主に聞かせられるものではない。わざわざその事を謝罪してくる尊敬する武人に
「キニスルヒツヨうはありません」
と答えるのであった。
第9階層廊下の一画にてエドワードは日課の掃除に取り掛かっていた。的確な強さで箒をはき、的確な衝撃ではたきを振って、ほこりをおとす。やがて、そのすべてを終える。
「ペストーニャさん!確認お願いします!」
彼は現在の自身の教育係であるいぬ頭をもつメイド長に声をかける。
「もう少し声をおとしなさいわん」
何度言ってもなかなか治らない彼の悪癖にため息をつきながらもメイド長はその結果を精査する
「合格ですわん」
「やった!これでセバス様に褒めてもらえる!」
「ちなみにこの程度のこと、ナザリックの使用人であればできて当たり前ですわん」
釘をさすことを忘れない。
(この少年の先が思いやられますわん)
執事見習いとして造られた以上仕方ないかもしれないが、彼はそのあたりの能力が割と低い。戦闘であればまだなんとかやれるのだが、
(気長にやるしかありませんね・・・わん)
律義に設定を守るメイド長であった。
「おや、エドワード君に、ペストーニャ君ではないか」
「あ、エクレア先輩!」
「あなたですかわん」
やってきたのは、というか運ばれてきたのは一羽のイワトビペンギンこと、エクレア・エクレール・エイクレア―であった。その体のため、自力で歩けない彼は覆面を被った一般使用人に抱えられて移動している。そして降ろしてもらい。まるで赤子の二足歩行のようにゆっくりと歩いてくる。
「執事見習い君、頑張っているみたいじゃないか」
「はい!執事助手たるエクレア先輩!」
この二人はやたらと仲がいいというか、エクレアがエドワードを気に入っているようであるというのが、ペストーニャの考えだ。
「いいことだ。いつか私がナザリック地下大墳墓を支配、
言葉はつづかなかった。
「冗談きついですよエクレア先輩!」
思いっきり少年がペンギンを殴り飛ばした。
「く、何をするんだね、エドワード君」
「いやあ!だってそうでしょう!ナザリックを支配するだなんて、そんなのが許されるのは、至高の41人のまとめ役であるアインズ様だけですよ!」
「く、だがいずれは、」
「いやいやこれは先輩の為でもあるんです!」
「?」
「先輩!そんなことばっかり言っていてはいつかナザリックのいずれかの同胞方に殺されてしまいます!」
「それをいったら、君だって心配だらけではないのかね?」
「いえ、自分は大丈夫です!こうして皆さんの指導のもと日々、その技術を磨いています!」
「そうかい?まだ全然にみえるけどね」
「いえいえ、自分よりエクレア先輩ですよ!心配なのは」
「いいや、君だろう」
(いいえ、あなた方二人ともですわん)
しばし、不毛な言い争いは続けられた
「所でエドワード君、一ついいかい?」
「何ですか!エクレア先輩!」
「君はナーベラル君とアインズ様のやりとりを知っていたのかい?」
それはペストーニャも気になっていることであった。主と彼女の間で何があったか知る者はいないはず。だというのに、この少年はまるで知っていたかのようなことを口走っていたとセバスから聞いている。
「いえ!自分は何も知りません!」
?、どういうことか、ではあの時のやり取りというものは一体、それはペンギンである彼も同じであるらしく、
「どういうことかな?」
「いえ、自分が聞いたのは、一般メイドの皆さんの話ですよ」
曰く、ナーベラルの様子がおかしいのは、主を止められなかったという罪悪感もだが、それ以外になにかあったらしいと。そう彼女たちはアインズとナーベラルの間にあったことを予想とは名ばかりの勝手な想像で語り合っていた訳だ。そしてそれを聞いたエドワードはそれが真実だと思い込んで、あの場に飛び込んだというのだ。それを聞いたペストーニャは胸に不安を抱えつつも、明確な解決法が簡単に見つかるものでもなく、ため息をつく
(本当、先が思いやられますわん)
同じ頃、プレアデスに与えらえた部屋にて休憩中のナーベラル・ガンマは目の前のテーブルに置かれた札に目を通す。札には人名が書いてあり、枚数は3枚、
(エンリ・エモット、ネム・エモット、ガゼフ・ストロノーフ)
それは現在進行形で墳墓中を駆け巡る最新情報、現在主が最も関心を寄せるもの達の名だ。そしてその札を裏返しにして、再び名前を思い浮かべようとして
(
「どうして、」
そうこれだ、どうも自分には固有名詞を覚えるということが難しいらしい。人間なんて下等生物、しかし、ほかならぬ主たちが元はその姿であり、そして主が人間たちの楽園をつくろうというのであれば、自分たちはそれに従うべきだ。そして、人間という種族全体の見直し、及び、その情報を共有しようとして、つまづいた。さっきは何とか、資料が手元にあったため、この醜態をさらさずに済んだ。しかし、この先そうはいかない。早急に修正せねばならない。でなければ、あの慈悲深い主の役に立てなくなる。必死に名前を覚えようとするも、中々進歩は見られない
「く、」
如何なる感情からか不明であるが、彼女の頬を彼女の意思と関係なく、一粒の涙が伝う。
「ナーちゃん?入るっすよ~」
部屋に遅れて休憩をもらったであろう姉が入ってくる。もう一人の姉ならともかく、あまりこっちの姉にみっともない姿はみせたくない。いいからかいの対象でしかない。
「いいわよ、ルプスレギナ、あなたも休憩なのね」
「そうっすよ~ほんとは休みなく働きたいところっすけどね~」
それはナーベラルも同意見であった。1分でも1秒でもあの方の為に尽くしたいと強く願う。
「おんや~それは何すか?」
しまった、札をだしたままであった。
「別に何でもないわ、ただのゴミよ」
実際、余り紙を使って製作したものであるため、そう見えなくもない。
「ふ~ん、別にいいっすけど、」
瞬間姉の顔が嗜虐に染まったように錯覚すると同時にまずいと感じた。この雰囲気をみせた姉は何をしてくるか予想がつかない。
「今、アインズ様が興味をもっている戦士長って、なんて名前だったすかね?」
これは非常にまずい、なんとか答えなければならない。
「そ、それは」
しかし、脳裏に浮かぶは
「ナーちゃん、ナーちゃん」
「何かしらルプスレギナ?」
「人間じゃなくて、アインズ様が御救いになる人間、あるいは、好ましいと感じている人間として考えてみるといいっすよ」
突然何を言いだすのかこの姉は、しかし、ほかに方法が思いつかない以上それにすがるしかない。改めて考えてみる。自分にとってアインズ・ウール・ゴウンなる人物がどういう人物であるかということを、かの御方は最後まで自分たちを見捨てなかった存在、そしてシモベたる自分達を『大切な存在』とおっしゃってくださった。寛大なる方、以前あの方に言った言葉、『盾となって死ぬことができない』不敬かもしれないが、変わったことがある。それは『盾となるが、死ぬつもりはない』である。そう、あの偉大な方に永劫仕えたいと思うようになったと思う。そしてその主が今回、できれば友好的な関係を結びたいと願う人間、
「ガゼフ・ストロノーフ」
「お!そういえば、そうだったすね~」
言えた、いやそれだけではない。明確に先ほどの三人の名前が、自然と浮かぶ、
(エンリ・エモット、ネム・エモット、ガゼフ・ストロノーフ)
札は裏返されたままだ。
(よかった)
彼女の心を満たしたのは、安心感、これであの方の役に立てると、喜びに酔いしれていた。そして、
(ん~これはナーちゃん、無自覚って奴っすね~)
ルプスレギナもまた考え込んでいた。可愛い妹のおそらくは初恋を応援したいという気持ちがあるもののなんせ相手が相手だ。誰かに相談しようか?ウィリニタスは、駄目だ。あの人はアルベドに甘すぎるところがある。同じような理由でシャルティアに甘すぎるイブ・リムスも除外、となると、
(やっぱ、デミウルゴス様っすかね~)
彼女は何となくであるもののかの悪魔が何をしようとしているか把握していた。今回のことは彼の計画にも十分役立つ内容に思えるし、相談であれば、聞いてもらえるだろう。彼女はふざけているようで、実のところ姉妹思いなのだ。
カルネ村、何とかアルベドの説教を終えたアインズは頭に声が響くのを感じた。
『失礼します。アインズ様』
「ああ、お前かウィリニタス」
『失礼ですが、義妹が、いえ、愚妹がなにかやらかしましたか?』
その声は、たとえ、感情の起伏に疎いアンデッドであるアインズに恐怖を感じさせるほど、低い声音であった。またこれまでの彼に対する印象からのふり幅が激しすぎた。
(怖!、ウィリニタスって、こんな声も出せるんだな)
そして、本来のその感情の矛先である。アルベドを思うと、さすがに可愛そうになってくる。それくらい恐ろしい声であった。
「何、大したことではない。それより用件は何だ?」
話をそらすため、とっとと業務連絡に入る。
『かしこまりました。では報告します。王国戦士長とその一団を発見しました』
「ほう、いたか!」
おもわず弾んだ声が出る程に喜んでいる自分がいた。
『アインズ様であれば、これくらいのこと見越しておられたのでは?』
「はっはっは!さて、それはどうかな?」
あえて、はぐらかすように答える。
『ではそういうことにしておきます。彼らを案内しますか?』
「ああ、頼む、そうだな、やり方はお前に任せるとしよう」
それは、これまでのやりとりで、ウィリニタスであれば、大丈夫という確信があったからだ。
『かしこまりました。では私なりのやり方でむかえさせていただきます』
「ああ、そうだな、それとこの件が終わったら、お前には二グレドのところに行ってもらおうと思う」
『!!!それは、よろしいのですか?』
会話越しでもわかる彼の上機嫌ぶりにアインズも得意になる。
「ああ、彼女にも伝えなえればならないことがあるからな。そのついでに夫婦の時間を過ごすがいいだろう」
『寛大な処置、感謝します。アインズ様、それとあと二つ、この後、デミウルゴスからも話があるのと、かの戦士長はどうやら、眠りながら馬を操る術を持っている模様です』
「ほう、そうか」
《眠りながら馬を操る術》を聞いて、アインズの心に好奇心が現れる。もしかしたら戦士長お得意の宴会芸なのかもしれない。サラリーマンでも時折ある。宴会の為にその都度、何かしらの芸を覚えなければならなかったアインズとしては、親近感が湧いてくる。ウィリニタスとて悪意があって、そう伝えたわけではなかった。それは彼なりの評価であった。睡眠と移動を同時に処理する実に合理的な技術であると。実際はただの居眠りだというのに、
「では、ウィリニタスは行動に移れ、」
『かしこまりました』
『続いて失礼します。アインズ様』
次に聞こえるのはデミウルゴスの声だ。
「さて、何の用だデミウルゴス」
『いえ、ある有益な情報が手に入りまして、少しナザリック外への調査を許可していただきたく』
(有益な情報?)それ自体はまだデミウルゴス本人にも分かっていないのかもしれない。さて、どうしたものか
「それは、ナザリックの為になることであるのだろう?」
『はい、まだ不確定ではありますが、うまくいけば、ナザリックの、ひいてはアインズ様のお役に間違いなく、たてる物かと』
「なら、許可しよう。一応、《七罪真徒》は全員つれていけ、あれは本来、お前の部下なのだからな」
『感謝いたします。アインズ様、必ずや朗報を持ち帰ります』
「ああ、よろしく頼む」
「さて、もうすぐだぞアルベド」
その声に彼女はすぐに察したらしく
「戦士長達でございますね」
再びつけた兜の下で微笑むのであった。
ガゼフ達が見つけたのは、彼らに声をかけたのは。不気味なフクロウであった。姿は普通のフクロウと変わらない。しかしその顔が問題であった。まず口ばしがなく、目が6つ六芒星を描くようにあるのだ。その目玉たちは一つ一つが、てんでバラバラの視線へと常時蠢いており、その視線もどこを見ているかさっぱりであった。さらに首という概念がないかのようにその頭は回転を続けていた。まさに化け物とでもいうべき存在、部隊の者達が武器を構えようとして、
「待て!」
ガゼフは声をあげていた。
「しかし、あれは、」
「敵意は感じない、話を聞くだけ聞いてみよう」
(ほう、先ほどの言葉といい、今の言動といい、アインズ様が興味をもたれるだけはあるか)
当然、六目フクロウの正体はウィリニタスである。主に彼らの案内を任せられ、彼がすることにしたのは、戦士長を試すことであった。よって、この姿で来たわけだ。もしも彼らが攻撃をしかけてくれば、後々、主にそのことを伝えるつもりであった。計画の妨げになる可能性があると、そもそも、主が願う楽園とは、人間に限らず様々な種族が集う、もし化け物であるという理由だけで攻撃をしようものなら。それは間違いなく、障害にしかならない。しかし、かの戦士長は無暗に武器を振るうことをしなかった。それだけで多少なりともウィリニタス内でのガゼフの評価が上がる。
「して、私たちに何のようかな?」
『我が主があなたに興味をもたれ、是非とも話をしたいということです』
「主が、か」
「戦士長殿!罠の可能性も!」
ガゼフは一瞬迷う、確かに副長の言うとおり、罠の可能性もある。しかし、
(こんな魔物は、見たことがない)
見たことない魔物という存在が、彼の言葉に真実味を持たせているように感じているかもしれない。
「して、場所は?」
『カルネ村でございます』
「村人たちは?」
『主が助けにはいり、何とか半数生き残っているようです』
「分かった。行こう、案内を頼んでも?」
『もとよりそのつもりです』
「戦士長殿!」
副長の声が響くが、ガゼフはすでに決めていた。もしかしたら、この見たこともない魔物を使役する人物に興味が湧いたのかもしれない。
やがて、王国最強の剣士と、骸骨の姿を持つ
次回、第一章最終話です。
11/07誤字報告ありがとうございます。