オーバーロード~遥かなる頂を目指して~   作:作倉延世
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 今回、登場人物が多いのと、某アクションゲームの影響をうけています。

 読んでくださっている方々ありがとうございます。


幕間その1 守護者たちの決意

 

 モモンガが配下3名と行った非公式なる夜空の会談、その内容と結果は速やかにナザリック地下大墳墓内にいきわたり、僕たちに衝撃を与えた。主の正体にその経歴もそうであるが、なにより大きかったのは、そんな主が思い詰めていたという事実。これには当初、失望と怒りをかうのではと恐れていたモモンガの予想を大幅に裏切り、むしろ許しをこう者のほうが多かった。自分たちはなんと無力なのかと。中には、自害しようとする者もいたわけだからそのつど必死にとめることになりかえって労力を費やすすこととなってしまった。

 モモンガが新たにやりたいと願った《楽園計画》はまずその足掛かりとなる土地を探すことから始まり、情報収集も兼ねてナザリックの周囲から何とか知的生命体がいるのが好ましいということで主自らが現在捜索中であり、それまでは隠蔽工作、防衛プラン等が進められる。

 

 かくして、モモンガはアインズ・ウール・ゴウンとなり、それまで息を潜めるように活動していた大墳墓がうごきだす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   吸血鬼の憂鬱

 

 

 ナザリック第2階層、屍蝋玄室のベッドに一人の少女が腰かけていた。枕を抱きしめ物思いにふける姿は、普段の彼女を知るものであれば、恐怖を感じてしまう程に珍しい光景であった。

 

 「むうぅぅぅぅぅぅ」

 

 なぜだろう、ひどく差をつけられた気がする。それも決定的なまでに、脳内ではあの大口ゴリラが勝ち誇ったようにこちらを見下している。目をとじれば浮かばのはそんなものばかり、

 

 「何だいチビ助、ここにいたのかい」

 

 突然かけられた、言葉は本来であれば自分がアウラに対してよく使うものであり、それ以外の者が自分に言ったのであれば、たとえ同じナザリックの者でも惨殺しなければ気が済まないものであるが、

 

 「ぬしでありんすか」

 

 それは、本当に珍しく彼女にとって頭が上がらない人物であり、たとえ力で勝っていても。喜べない人物、そして自分の()()()だった存在だ。

 

 「いつも周りを見下し、尊大にふるまうチビ助がそんなになるなんて、またアルベドに泣かされたのかい?」

 

 そんなわけないと湧きだす黒炎の如き激情、しかしそれよりも腹が立つことがある。いくら頭があがらないとはいえ、その一点だけは、許せない

 

 「ぬしにだけは、チビ助といわれる筋合いはないでありんす」

 

 「はっ!口だけは達者だねぇ、必死に取りつくっているあんたと違ってこのグラマーな体形をも」

 

 「幻影」

 

 「な!」

 

 ほら崩れた。知っているのだから、普段の姿は幻術でそうみせているだけで、本当の彼女は自分はおろか、あの双子よりも幼い姿だということを、記憶を掘り返せして思い出すのは、至高の方々の懐かしき声、

 

 『イブ・リムスの外見、思いっきし、5歳の幼稚園児じゃないですか、コワいわー、フラットフットさんまじコワいわー。貧乳好きをこじらせた人の末路かあ』

 

 『まって!確かに貧乳は俺のアイデアだけど!創ったの俺だけじゃないから!それに俺は胸がないのが好きなのであって、ロリじゃないから!』

 

 『コワいわー』

 

 『聞いて!!』

 

 「これから成長する可能性だって」

 

 「ないに決まっているでありんす。だってぬし帰参者(レブナント)でありんしょう?」

 

 「ぐはぁ!」

 

 帰参者(レブナント)、それは死んでから間もない死体が魔法により復活した()()の使者。一度死んで蘇っているという点でいえば、つまりはアンデッド、シャルティアの親戚といってしまえるようなものだ。

 しばらく、崩れ落ちていた彼女だが、

 

 「・・・・・まあ、体形の話はいったん置いといて」

 

 持ち出したのはそちらだろうに、とほかの者が聞けば「あなたもたいがいですけどね」といわれる事間違いなしのことを思い嘆息する。

 

 「で?結局あんたは何が不満なんだい?別に言いたくなけりゃ別にいいけどな」

 

 これだ、これ。おちゃらけていると思えば、突然真剣になってこれだ。心配してくれて、かといって深くふみこみすぎないよう配慮してくれる。本人達に言うつもりは絶対にないが、あのチビが一番の親友であれば、今目の前にいるチビ(ただし一見グラマー美女)は自分にとって姉のような存在かもしれない。なんとか声を絞り出そうとする。

 

 「・・・・・・・ちょっと、いや、少しだけくやしい」

 

そうあれと設定された言葉を忘れながらもシャルティアは胸に抱えたものを吐き出す。

 

 「至高の御方が、私の愛しい方が、あんなにも、そう御自分で命を絶とうとするほどに思い詰めていらっしゃたのに私はそれに気づくことができなかった」

 

 「でもそれは、何もあんただけじゃない。ナザリックの者すべてに言えることだろ?あのデミウルゴスですら気付かなかったんだから」

 

至高の方々にそうあれと定められたことを無視するのは決してよくないことではあるが、その事に一切ふれることなく続けてくれる。

 

 「でも、それでもくやしい・・・・何よりもそこまで追い詰められたアインズ様を引き留めたのが、アルベドだということが・・・・・・・・なおさら」

 

そうなのだ。結局はそこに行き着く。恋敵であるあの女があの方を心を救い、聞けば、その時2人は情熱的な抱擁を交わしたという。それまでは、ほぼ互角だと思っていたのが、急に差をつけられたような気がする。至高の方々がよくはなしていた《負けヒロイン》なる言葉がうかぶ

 

 「結局それだって、結果論じゃないの?その時アインズ様があの3人を指定して話をしてその結果でしょうが」

 

 「だけど、結果は結果でありんす」

 

 「で、結局あんたはどうしたんだい?」

 

それ以上続けても堂々巡りを繰り返すだけだろうと判断した彼女は荒療治をはじめる。ようは、シャルティアが何をどうしたいのかということだ。

 

 「それは・・・・・」

 

それでも迷っている模様の守護者をみて元階層守護者はいら立つ、といってもそれは手のかかる妹を思う姉の如き静かに燃える陽炎の如き感情

 

 「ウダウダ、本当にあんたらしくない。じゃあ今からあたしの質問にYESかNoで答えな」

 

 「?????」

 

 「いいから、あんたはアインズ様を愛している」

 

 「YES」

 

 「アインズ様の妃の座をアルベドに譲ってもいいと思っている」

 

 「No!!」

 

それだけは断言できる。以前、あの大口ゴリラに言われたことがある。「シャルティアがモモンガ様に惹かれたのは創造主たるぺロロンチーノ様にそうあれと創られたあの趣向が原因ではないの?」そんな中途半端な感情であの方に近づくのはやめてほしいという中々にない大戦の布告であったが、

 

 「そんな訳あるかあぁぁぁぁ!」

 

 「驚いた、急にどうしたんだい?」

 

先ほどまでの意気消沈ぶりが嘘のような、シャルティアは立ち上がるなり、部屋を出ようと扉へと歩き出す。悩んでいた自分がアホらしい。誇りを持たねばならない。私はあの方に創造された、ナザリック最強の守護者なのだから。

 

 「ちょ!どこに行くんだい!」

 

 「最古図書館(アッシュールバニパル)でありんす!」

 

 「はあ?なんでまた?」

 

 「アインズ様のお役に立つ為、ほかにありんすか?」

 

 「そりゃあ、そうだろうけど」

 

ほんとうにどうしたというのだろうか、以前までの彼女ならば、絶対にありえない姿、力さえあれば、それですべて解決といわんばかしの単細胞娘だったというのに、

 

 「と、に、か、く!今は!少しでもできることをやって、あの御方に、わたし、シャルティア・ブラッドフォールンがあんな大口ゴリラよりもずっと魅力的であると証明してみせること、それがやるべきことでありんす!!」

 

 「ほんとうに突然かわるな」

 

 「まずはより効果的にアインズ様にアプローチする方法からでありんす!」

 

 「なんだろうね、少し安心したよ」

 

 吸血鬼には憂鬱を感じている暇はない、愛する殿方に対する気持ちを成就させる為に走るだけだ。

 

 

 

 

 

   兵器の目覚め

 

 

 第4階層地底湖、魚も微生物すら存在しない静寂に包まれたそこは創造されることなくその地位についた階層守護者が眠る場所でもある

 

 

 己の存在を認識するようになったのは、いつからだろうか、もう何年も前のように感じるし、まるで、昨日のようにも思える不思議な記憶、ここにいて感じるものは、徐々に変化していた。はじめは、高揚、歓喜、満足感といった、心地いいもの、やがて、喪失、悲観、絶望と暗く湿り気の含んだもの、そして今回だ、喜びから一転、後悔、恐怖と変わり、今感じるのは、おそらく自分がこれまで感じてきたものでも最大の覚悟、決意、そして尽くしたいという願いそのものだった。己のことは己がよくわかっている。この体故になかなか、かの御方に忠誠と働きをささげることが叶わぬ身であれど、いつかくるかもしれないその時を想う。それは第4階層守護者ガルガンチュアという兵器の明確な目覚めの時だったかもしれない

 

 

 暗い湖のそこ、そこには彼と一本の釣り糸が静かに揺れるのみであった。

 

 

 

 

 

   武人の宣言

 

 

 第5階層大白球(スノーボールアース)にてこの階層の守護者コキュートスは一人、静かに瞑想をしていた。それは先の騒動の際に、主に対して何もできることがなかったことを悔いての行いに見えるし、ひたすら見たくないものから目をそらす為にもみえ、直属のシモベたちですら声をかけるのをためらわれるものであった。

 

 彼もまた後悔していた。主がここを去ろうとしたことも主の抱えているものを気づけなかった自分が、いや違うか、彼にはまた別の心当たりがあった。主は自分が不甲斐ないせいでほかの至高の方々がここより去ったといったが、それだけとは思えない。もしかしたら、いやきっとそうだろう。脳裏をかすめるのは、あの光景、至高の41人の首を狙い、ナザリック地下大墳墓を攻め落とさんとする者たちが侵入してきた時のこと、自分は奴らに敗北してしまった。その時点で、この地と至高の存在たるアインズ・ウール・ゴウンに泥をぬったのは確かであり、その時かの方々の失望を買ったのではないだろうか?いや、間違いないだろう。なんせ至高の方々が《リアル》なる世界に帰還したのは、そのころからなのだから。

 

 それは、単にそのあたりがYGGDRASIL(ユグドラシル)というゲームの全盛期であったということ。人間というのは、実に物事に慣れやすく飽きやすい生き物であり、さすがに12年も同じゲームをやり続けるというのは無理というもの。当然プレイをやめる者は出てくる。そうなってくれば、YGGDRASIL(ユグドラシル)という存在を維持すのには相当な負担がかかる。これが例えば単純なゲームソフトという話であれば、物品として、手元に残すことはできただろう。しかし件のゲームはネットを関して運営が存在するオンラインというものであったのだ。やるものがいなければ維持費だけが運営会社の金庫を貪る。なら終了させるしかないわけであり、コキュートスのいう大戦とそこにおける彼の敗北は、たんなる盛り上がりとそれにともなう盛り下がりというもので、気にする必要はまったくない訳だが、そういった事情を知らないのと、なにより彼の武人としての誇りがそのことを忘れることを許さなかった。

 

 (私ハ)

 

 どうすればいいのだろうか、自分は戦士であり、かの方の剣となるべき存在として、創造された身。しかしかの戦いに敗れた自分は果たして存在価値があるのだろうか、ほかのことで約にたとうとしてもできることは、せいぜいたかがしれているし、そもそもそういったことは、己が盟友や統括である彼女の領分だ。どれだけ考えようともなにも思い浮かぶことはない。

 

 (私ニハ剣シカナイ訳カ)

 

 思わず冷気がでてしまう。

 

 「オソレナガラ、コキュートスサマ」

 

 「ヨロシイでしょうか?」

 

 このタイミングで声をかけてくるのは、かの方や同格の守護者達を除けば、彼らしかいない。

 

 「何用ダ、アトラス、ヘラクレス」

 

 アトラス、己の右腕として創造された存在であり、カブトムシと蟻を組み合わせたような姿をもち、その体は赤銅色に輝き、腰には左右に二振りづつ計4本の刀を下げており、腕の数こそ違うもののかつて巌流島で名勝負をしたという人物を思わせる雰囲気がある。

 

 もう一人のヘラクレスという男、こちらは左腕として創造され、姿自体はアトラスと大差ないが、その体色は硫黄を思わせる色合いで背中には、2メートルを超える矢筒と矢、そしてそれを射かける為の非常識なサイズの弓があり、さらにその倍近くあるだろう薙刀も背負っている男だ。

 

 「モシ、ヨロシケレバ」

 

 「タンレンナドいかがでしょうか?」

 

 彼らは2人ともいるときは、まるで、熟練の漫才師を連想させるように1人分の会話を行う。

 

 「何故ソウ言ウ?」

 

 本当に何でこのタイミングでそんな提案をするのだろうか?確かに武術鍛錬は彼にとっては趣味であり、一番のリラックス方法だ。しかし今となっては、意味があるのだろうか?

 

 「コキュートスサマハ」

 

 「ブキヲフルッテコソかとおもいます」

 

 それもそうかもしれない。どこまでいってもどうすればいいか考えても自分はそうなんだろうとコキュートスは諦める。

 

 「ソウダナ、デハ」

 

 「イツモノ」

 

 「トコロデございますね」

 

 もはやいつもの日課となっている訓練、しかしそれは、ここでやるのではなく、以前主と守護者がそろったあの地円型闘技場(コロッセオ)でだ。

 

 「アウラトマーレ二伝エナケレバナ」

 

 「スデニ」

 

 「キョカハとってあります」

 

 剣でしかない自分にとって恵まれ過ぎていると錯覚させるほど優秀なもの達だ。

 

 

 

 

 第6階層コロッセオ、そこでコキュートスを待ち受けていたのは、

 

 (おいたわしや!アインズ様!)

 

 (我らにできることは何もないのか!)

 

 (今はただ、武器をふるうのみ!)

 

 おそらくは自分と同じようにここに来ていたオールドガーターや骸骨の戦士(スケルトン・ウォリアー)達ががむしゃらに武器をふりまわす姿であった。それを目の当たりにしてコキュートスの中に芽生えたのは彼らも自分と同じなんだという安堵とそして、

 

 (ソウカ、モシカシタラ)

 

 一つの確信であった。彼らの姿は主を想い頼もしく好ましいものであるもの、見たところ、それぞれの個体が自分勝手に動き回っているだけで、とても軍隊なんて呼べるものではない。思えば先の敗北もこちらは個であったのに対して、あちらは()であった。

 

 (今ノ私ガ成スベキコトハ)

 

 主のなしたいこと、それは、この世界に楽園を作り上げること。その為には、他国との戦争だってあるかもしれない。もちろん自分一人でも相手をして、相手を滅ぼす自信は十分あるが、この先必ずしも自分が動けるとは、限らない。そして、ナザリック全体の運営は統括たるアルベドが、防衛にかんしては、友たるデミウルゴスが担当しているが、ではナザリック外への侵攻にかんしては?この世界で戦う為の軍隊は?そしてその指揮をとるのは誰の役目か?

 

 (!!!!!!!!!!)

 

 不意に鳴り響く何かを地面にたたきつけたような音にその場にいたすべてのスケルトンたちは音源へと目を向け跪く。そこにいたのは、ナザリック第5階層守護者たるコキュートス、さっき聞こえた音は、きっと手に持ったハルバートの石突がたてたものだろう。自分たちなど問題にならない程の人物の登場に、それまで無秩序な騒ぎだったのが、嘘のように静まる。それを待っていたかのように言葉が聞こえてくる。

 

 「我ラハカツテ大敗を喫シタ」

 

 その言葉はどのものの心にも響き、ナザリックのシモベだという自尊心を粉々に砕く。

 

 「何故我ラハ敗レタ?」

 

 誰もその問いかけに答えることは、できない。いえることといえば、自分たちの力不足か。

 

 「我ラニハ十分ナ力ガアル」

 

 その言葉に疑問が浮かぶ、力がないから自分たちは敗れたのではないか?

 

 「我ラニ足リナカッタノハ戦ノ方法デアリ、ソレヲ行ナウ為ノ知識ダ」

 

 戦いとは相手を力のままに蹂躙することではないのか?しかしかの武人がいうことに間違いはないはずだと、スケルトン達は聞き入っていく。

 

 「戦運ビガ、我ラ、イヤ、私ガ考エテイルモノヨリモ複雑デ難解ナモノデアル事ハ間違イナイ・・・・・・・・・・ソレデモ」

 

 それでも?その先が待ち遠しい

 

 「アインズ様ノ為、更ナル頂ヲ目指ス覚悟ハアルカ?」

 

((((((うおおおおおおおおおおおおお!!!!))))))

 

 そんなものとうに決まっている。最後まで自分たちを見捨てなかった慈悲深きあの方の為ならば、何だってやってみせようではないか。

 

 「ナラバ、第5階層守護者コキュートス!ココニ宣言ヲシヨウ!我ラハ最強ノ軍隊ヲ目指シ、コノ先ノ戦ガ勝利、ソノ総テノヲ偉大ナル我ラガ主、アインズ・ウール・ゴウン様二捧ゲル事ヲ!!」

 

((((((うおおおおおおおおおおおおお!!!!))))))

 

 それは後の世の歴史学者が嬉々として語る内容、時代の転換点

 

 《常勝無敗たる武人の宣言》であった。

 

 

 スケルトン達の士気の高さに満足とこれからの指針を考えねばと思案する。

 

 

 「ミゴトナエンゼツデ」

 

 「ゴザイマシタ。こきゅーとすさま」

 

臣下2人からの絶賛、彼らのおかげでもあるのだが、ここは素直にうけておく。

 

 「時二、ヘラクレス」

 

 「ナンデゴザイましょうか?」

 

 「私二将棋ナルモノヲ教エテハクレヌカ?」

 

 「ヨロコンデ、ゴシナンさせていただきます」

 

 デミウルゴスにもいろいろ相談に乗ってもらわなくてはな、とコキュートスは第6階層の空を見上げながら一人ごちる。

 

 

 

 

 

   双子の願い

 

 コキュートスによる宣言とそれを聞いたスケルトン達の騒ぎがいまだおわることないコロッセオより、しばし離れた地にある巨大樹。そのなかみはくりぬかれており、中央の支柱とそれに絡みつくようにある螺旋階段。そう、ここがこの階層の守護者たるアウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレの住居なのである。

 

 現在彼女たちは自分たちに与えられた部屋でそれぞれに過ごしていた。

 

 アウラは現在何も手につかない気分であった。あの時、そうシャルティアが来るまでの主とのやり取りを思い出していた。不敬ながらも悲しんでいるように見えたあの顔が、自分の勘違いなどではなかったのだと知って、何とかしたいと考えながらも、具体的な方法が思いつかない。

 

 (どうすれば、いいんだろう?)

 

 彼女にとってモモンガ改め、アインズ・ウール・ゴウンという人物は絶対の支配者であり、恩人であり、どこか父親のようにかんじる人物だ。それは、彼女たちの創造主がギルドにおいて珍しく、41人もいる至高の存在のなか、3人しかいなかった、女性だったというのも大きい。よって、アウラは異変以前より創造主たるぶくぶく茶釜のことを母親と、アインズのことを父親だと無意識的に考え、思い(同じく至高の存在たる、ある人物が知れば大笑いしてネタとしていじりまくった末に折り曲げられる)抱いていた。当時の心境としては、突然家に帰ってこなくなった、共働きの母親に何か事情を知りながらも決して何も話すことをしてくれなかった父親を我が家で弟と2人その帰りを待ち続ける寂しさを抱えながらも必死にそれを隠す優しい子供のものであった。といっても、実際は家族とも同胞ともいえる存在がほかにたくさんいたので、そこまで寂しく感じることもなかったわけだが、

 

 (どうすれば、アインズ様に喜んでいただけるんだろう?)

 

 彼女はひたすらに考え続ける。どうすればよかったのか、そしてこれからどうしていけばいいのか、思いつくことはなかった。それでも願わずにはいられない。今や、たった一人となってしまった。我らが主の心からの平穏と安らぎを。

 

 

 

 マーレは自室で趣味の読書をしていた。しかしページをめくる手にちからはない。彼もまた悩んでいた。主のことはもちろんだが、何より姉のほうが心配であった。あれから部屋からでてきていないのだ。いつも叱られてばかりで、やや怖いところのある姉だが、それもすべて彼女なりに自分とそして大好きな主を思ってのこと。そしてどんなに威勢がよくても、女の子だ。かつて創造主から、言われた言葉『どんなに可愛くてもマーレも男の子なんだから、お姉ちゃんのアウラが何か悲しんでいたら支えてあげるんだよ』言った本人にとってはただの言葉遊び、あるいは自身の弟に対する不満からでた言葉かもしれないが彼にとっては違う。なんとか姉にいつもの調子を取り戻してもらいたい。何ができるかわからないが、ひとまずは姉の部屋を尋ねるしかない。僕は男の子なんだと自分に言い聞かせながらマーレは行動をおこす。

 

 部屋の前にたどりつき、一呼吸、二呼吸、そして3度めの深呼吸をして、ようやく決心がかたまり、その扉をノックする

 

 「お姉ちゃん、ちょっといいかな?」

 

 『マーレ?うん、いいよ入ってきて』

 

 意を決して、部屋へはいる。そしてみたのは、

 

 「お姉ちゃん?」

 

 「ん、どうしたの?そんなところで立っていないで、座ったら?」

 

 元気に屈伸運動を行う姉の姿であった。もしかしたら、自分に心配をかけまいと、無理をしているのかもしれない。

 

 「えっと、その、大丈夫なの?お姉ちゃん?」

 

 「大丈夫って、何が?」

 

 「だって、アインズ様のことで」

 

 「マーレ」

 

 突然姉は、近くまできたと思ったの束の間、頬を左右に引っ張られる。すごく痛い。

 

 「生意気」

 

 「ひ、ひはいよ、おねえひゃん」

 

 「マーレがあたしの心配する必要はないの!それよりもアインズ様のことを考えないと」

 

 そこで手をはなしてくれた。

 

 「で、でも」

 

 姉は本当に大丈夫なのかといまだ信じられない。

 

 「大丈夫だって、心配しなくてもあたしはもう平気だから」

 

 「だって、」

 

 「確かに今のあたしになにができるかわからない。それを考えても仕方ないでしょ」

 

 「う、うん」

 

 「それにあんたにまで心配かけるんじゃ、姉としての威厳にかけるからね」

 

 『姉とは弟に威厳をもって接するべし』それも彼女が日々心掛けていることだ。

 

 「お姉ちゃん」

 

 「湿っぽいのはおしまい!さ!マーレも速くアインズ様のところに行こ?」

 

 すっかり本調子であろう姉をみて、先刻必死に振り絞ってだした勇気はなんだったのかと思いながらも喜んでいる自分がいる。

 

 「うん!」

 

 

 

 双子たちはただ願う、主が心から笑うことを

 

 

 

 「そういえばお姉ちゃん?」

 

 「ん?何?」

 

 「プラネリアさんはどうしようか?」

 

 今回のことを伝えて力を借りるべきだろうかという疑問、彼は現在第4階層にいるはずだ。

 

 「当然、声をかける。隠居だか、何だか知らないけど今のナザリックに休ませていい人はいないでしょ」

 

 現状を考えれば、当然の答え、なによりも主の意思が優先されるべきであるが、かといって何もしないのは当然許せることではない。

 

 「うん、分かった。後でボクのほうから呼んでくるよ」

 

 「ん、お願い。それとマーレ」

 

 「なあに?お姉ちゃん?」

 

 「ありがとね」

 

 「・・・・あ・・・・」

 

 一瞬見えた、照れた姉の顔。自分に向けらること自体滅多にないそれを見て、マーレは勇気を出してよかったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

   悪魔の微笑み

 

 

 第7階層、赤熱神殿にて一人眼鏡に人差し指の先を当てながら笑う悪魔がいる。それは、この階層の守護者たるデミウルゴスであった。

 

 「なるほど、さすがはアインズ様、その智謀の深さに私は感服するしかありません」

 

 誰に説明するわけでも解説するわけでもない独り言が続く

 

 「あの時、あの話をされたのは、やはりそういう意図があってのことだったのですね」

 

 何故、あのタイミングで人間の扱いに対する事をいったのか、何故あの時、世界の秘密の一端と、自身のことを話されたのか、もっといえば、何故あの時、魔法に関する実験を自分たちの前でやったのか。主のひとつひとつの行動が彼のなかで一本の線にまとまっていく。

 

 「『楽園計画』はあくまで布石に過ぎない訳ですか」

 

 「随分たのしそうだな、デミ」

 

 声をかけてきたのは、自分と同じように黒いスーツを着た男だった。まるで色という色がすべて抜けたような白髪に口元を走る傷跡が目立ち、その腰には、2本のククリナイフが交差するように下げられている。

 

 「君ですか、ベル」

 

 正式名称ヴェルフガノン、部下の一人であり、趣味趣向があうため、コキュートスの次に信頼がおける友だ。

 

 「アインズ様の話をしていたみたいだけど」

 

 この男もやはり気になるのだろう。おそらくは自分だけがたどり着いた主の真意に、まだほかの者たちに話すつもりはないが、彼ならばいいかもしれない。

 

 「アインズ様が推進される『楽園計画』は知っているだろう?」

 

 「ああ、たしか様々な種族が手を取り合いより良い世界を作っていくというものだろ?」

 

 「ええ、そうです。しかしそれはかの主の本当の狙いの前座でしかないのです」

 

 「??・・・・ほかにアインズ様が望まれていることがあるのか?」

 

 「ええ、そうです。あの時アインズ様はおっしゃっりました。『たくさんの人間が必要となる』」

 

 「それに対して、デミは『最も最適な個体を選択する』とかえしたんだろ?」

 

 「ああ、そうだともここでいう最適とは、つまりアインズ様がおっしゃる、より愚かな人間のことだろう」

 

 「まあ、それまでの話からそうなるわな」

 

 「ですが、本来そうする必要がアインズ様にはないんですよ。そう、わざわざ検証などしなくても」

 

 「ああ、《記憶操作》だっけ?ありとあらゆる記憶を書き換えることができるという」

 

 記憶というのはその生命体が存在意義のほとんどを占める。たとえば、空腹という記憶があるからこそ食事の重要さを認識するといった具合に。確かにそこに人為的に介入できるとすれば、人間を作り替えるというのもたやすい。

 

 実際は、まだそこまで万能か不明で、アインズ自身、なんとか実験をする機会を設けたいと考えているわけだが、彼らはそれを知らない。さらに言えば、先刻行った魔法の実験で主が魔法を問題なく使えるこは、確認済みという事実が彼らの推測に拍車をかける。

 

 「そうです。やはり君は話が早くて助かる」

 

 「つまり、アインズ様はその気になれば、すべての人間をご自身のいう《お人よし》にすることができるのに、それをやらずに救う人間と、救わない人間に分けるわけか」

 

 そこから導きだせる答えはなんなのか、助ける人間と殺す人間を分ける。いや、ここで重要なのは、その基準を誰が決めるとかいうことなのだろう。知的生命体というのは、群れればいやでも秩序というなのルールができる。それを無視した計画を()()()()で進めること、そして、その上で生殺与奪を主自らが取り仕切る。それは、つまり、

 

 「世界征服・・・・・からの神として永久の忠誠を世界に誓わせる」

 

 それを聞いたデミウルゴスの顔が、彼にしては本当に珍しく喜びに打ち震える。やはり君は最高なんだといってもらえた気がする。

 

 「さすがです、ベル。君は2番目に最高の友人だ」

 

 「そこは1番といってほしいとこだが、まあ、彼が相手なら仕方ない。それで?結局デミはどうするんだ?」

 

 「決まっていますとも、アインズ様のご意向に従いつつ、私なりにやれることをやるだけさ」

 

 デミウルゴスとてあの時のアインズの悲しみが本物であったことは解っているし、これ以上、主を悲しませることはしないつもりだ。しかし、それでもデミウルゴスはかの御仁が絶対の支配者ではないという言葉だけはあの時、ほかの至高の方々がいなくなり、弱気になられた主が吐いた世迷言だと思っている。何故なら、かの主の采配を異変以前より、そして現在の異変の最中も見てきて確信しているのだから、主は常に何千手という策を編み出し、そして迷いなくそれを実行しているのだと。でなければ、かつてYGGDRASIL(ユグドラシル)で築いたアインズ・ウール・ゴウンの地位を説明できない。なお実際はアインズがやっていた事といえば、イベントのセッティング、リアルでの打ち上げの用意、またそれにともなう連絡など専ら雑務であり、実際に戦略を考えていたのは別の人物だったのが、主を心から尊敬してやまないデミウルゴスは知らない事実である。まあ、あの個性的すぎる彼らをまとめていたという点は確かに評価できるかもしれない。

 

 「これから忙しくなりますよ。あなたはもちろんほかの《七罪真徒》にも協力してもらいますから」

 

 「モッチ、理解しているさ」

 

 「ふふ、『楽園計画』だって、これからですからね。アインズ様に跪き、忠誠を誓うのならば至上の幸福とやらを与えようではありませんか、もちろん人間基準のね、そして逆らうのであれば」

 

 ()()()()()()()を見てもらうだけだと悪魔はただ微笑む

 

 

 

 

   

 

   天使の望み

 

 

 

 第8階層、生命の樹(セフィロト)そこには、臓器とも赤子とも胎児ともみてとれる不気味な存在が浮いていた。階層守護者たるヴィクティムである。

 

 その存在には、性別はおろか、そういったものがあるのかすら不明である。その存在もまた自分たちの支配者が抱いていた苦悩とながしてであろう悲しみを感覚的に理解していた。その存在もまたかつての戦いを覚えている。その時、自分は求む役割を果たしたのだが、本当にそれでよかったのかと今更ながらに疑問がわいてくる。もっとできることはないだろうか、と多くのシモベ達同様にその存在もまた考える。何かしたい。ならいっそ頼んでみようか?たとえ、それで死ぬことになっても後悔はしないだろう。かつて一度だけこの体をなでてもらった時のことを思い出して。

 

 「ぼたんひはいたいしゃにあおむらさき(あいんずさま)

 

 天使は一言、新たなる主の名を呼ぶのであった。異変後の再会を望んで

 

 

 

 

 

 

 

 

   従者たちの結束

 

 第9階層ロイヤルスイート、至高の存在より与えられた一室にて、彼らの会合が行われていた。

 

 「アインズ様があそこまで、思いつめていらっしゃたとは、執事が聞いて呆れますね」

 

 開口するなり、でるのは自嘲する声、仕える主人の心内に気付くことなく、それこそ後一歩ですべてが無に帰すところであったのだ。それが、今のセバスの感情すべてだ。

 今回の顛末については性格上折り合いがあわないこともあり、あまり仲がいいとはいえない彼にも今回ばかしは感謝しなければならないだろう。

 

 「セバス様だけの責任ではありません」

 

 真っ先にその言葉を否定してみせるのは、夜会巻と知性を感じさせる眼鏡、スパイク付きのガントレットを身に着けた戦闘メイド(プレアデス)の副リーダーたるユリ・アルファだ。その言葉には、上司への気遣いと己の至らなさを悔いているものである。

 

 「そうです。責任は我々全員にあるかと思います」

 

 続いたのは、紅い髪を三つ編みにして、ホワイトブリムの代わりに帽子を被った戦闘メイド、ルプスレギナ・ベータ。普段の彼女がどのような言葉遣いをしているのか知っている者たちからすれば、非常に違和感と認識のずれを感じさせるほどに落ち着いたその様子が、今回における彼女なりの動揺と困惑を示していた。

 

 「それに今回の件、あの偉大なる御方の考えを見抜くということ自体、私たちでは到底無理だったように思えます」

 

 下手をすれば、主に対する責任転嫁ともとられかねないことばを選んでまで、上司をなだめようとするのは、金髪の縦ロールに輝くような美貌をもつソリュシャン・イプシロン。

 

 「・・・・・大切なのは、今までではなくて・・・・・」

 

 「これからどうするかだと思いますぅ」

 

 それぞれ、片目をアイパッチで包んだ精密機械を思わせる瞳と、昆虫の複眼を思わせるような瞳をもつ。シズ・デルタにエントマ・ヴァシリッサ・ゼータたちもまた彼女たちなりにセバスを励まさんとしている。

 

 いや、彼女たちがなんとかしようとしているのは、上司たるセバスだけではない。例の件からいまだ声を発さない3女たるナーベラルのことである。彼女の顔はずっと青いままであった。

 

 思えば、彼女が一番、思いつめているかもしれない。なんせことに至らんとする前の主にあっていたのだから、そして、その場で何の疑問も抱かず、一人で行かせてしまったのだ。あのナザリック最高峰の頭脳を持つ者たちでさえ、主を止めるのに苦心したのだから、彼女一人いたところで何も変わらなかったんだと、すこし酷な励まし方もあるだろうが、今の彼女がそれで簡単に立ち直るわけがない。何故なら彼女はプレアデスにおいて、ユリに続いて、行き過ぎて頑固ともいうほどに真面目で責任感があるのだから。例えばこれがほかの姉妹であれば、

 

 『いや~失敗しちゃったすね~!』 『あら、間違えちゃったみたいね?』

 

 『・・・・次は努力する・・・・』 『すべて忘れちゃいましょおぉ』

 

 などと、特に深く反省するわけでもなく、あっさりとそれこそケロリと次に切り替えるだろう。そこには、自分たちの上位たる守護者たちでもどうにもできなかったのだから、仕方ないと割り切っている部分もある。それを長女たるユリ・アルファはよく思わないが、かといって、あまりにも深く考えすぎるのもよくない。さてどうしたものだろうか、

 

 

 「大丈夫ですかぁあぁあぁ!!セバス様あぁあぁあぁ!ナーベラル先輩いぃいぃいぃ!」

 

 独特な、いや突き抜けて奇怪な叫び声をあげながら扉を乱暴に開けたのは、セバス同様燕尾服をきた少年であった。紅葉と紫陽花を無理やり混ぜたような髪色に右側のこめかみあたりで5センチほど携帯ストラップのよう小さく三つ編みでまとめた部分が目に付く。年は16から17といったところだろうか、

 

 「エドワード君」

 

 それまでの悩みが帳消しになるくらい大きなため息、もちろん先ほどまでの葛藤がすべてなくなるわけではないが、セバスはこの見習いたる少年を教育する立場にある。

 

 「君はもう少し、ナザリックの使用人という自覚を持ちなさい」

 

 決して悪いこではないが、落ち着きのない言動と、勢い任せとその場しのぎにしか見えないその行動が非常によくない。それは、普段のルプスレギナよりもあぶなかっしいものであるとユリ・アルファが太鼓判を押すほどに、しかし、彼は止まらない。

 

 「しかしですね!セバス様とナーベラル先輩がそんなんでは、ほかの一般メイドの皆さんや、使用人の皆さん、ペストーニャさんに、エクレア先輩もはては、ここ第9階層が暗いままでございます!なにとぞ、元気になってもらいたいのです!」

 

 勢い任せの彼の演説は続く。

 

 「セバス様はともかく!ナーベラル先輩は仕方ないです!それは、もう!女性として、あのようなことをされながら、あんな言葉をきかされてしまったとすれば!」

 

 それを聞いた彼女の顔が青から徐々に赤くなってくる。そしてそれに気づいた、一番のトラブルメーカーは、

 

 「おや~?ナーちゃん、赤いっすよ?どうしたんすか?もしかして、主人とメイドの禁断のLOVEってやつっすか~?」

 

 上司(セバス)の前だというのに私語をおっぱじめ、からかいはじめる。彼女なりに場をなごませようとしたたのだろうが、

 

 「・・・・・・・・・さい」

 

 「ん?何すか?ナーちゃん?」

 

 「ルプスレギナうるさい!!」

 

 放たれたウォー・ウィザードらしからぬ彼女の剛腕が襲い、プレアデスの次女を壁にたたきつけた。「ぐへぇ」と聞こえたの幻聴ではないだろう。

 

 「う・・・・・お姉ちゃんなりに気を遣ったつもなのに、ひどいっすよ~」

 

と嘆くが、長女は「自業自得よ」と介抱する気ゼロであり、ほかの妹たちも『まあ、ルプーだから』と自分を助けるつもりはないらしい。

 

 そのさまを見ながらセバスは感じた。従者にあるまじき酷いすがたであるが、おかげで先ほどまでの重苦しい空気が消えているのを。そして、そうなることを別に考えていなかったであろう執事見習いを視界に収める。

 

 (不思議な子供ですね)

 

 やや、騒がしくも従者たちは主にそれまで以上の忠誠を誓わんと結束する。

 

 

 

 

   統括の想い

 

 

 第10階層、玉座の間、アルベドはいまはあの時のことと、始まりを思い出していた。最愛たる主にされたことと、夜空での出来事、特に抱きしめあった時のことを考えて、

 

 (!!!!!!)

 

 今更ながらに体中から熱が出ていた。どうかしていた。主に己が想いを伝えられたのは、いい、でもあれはなんだ。これから主とどう接すればいいのか、その答えがどうしてもでない。

 

 それでもあの時の自分がした選択に後悔はない。あの方にたいする揺るぎない気持ち、どうせいずれこなすイベントが前通しで来ただけだ。そう思えば、多少は笑っていられる。

 

 

 「ふふふ、愛していますアインズ様」

 

 「幸せそうですね、アルベド」

 

 自分しかいないと思っていたところでのかけられたこえは、彼女の心を多少は揺さぶる効果があった。がそれも一瞬である。何故ならその声音で誰なのか分かるから、アインズが1番に愛する男であれば、彼は2番目に愛する男であったのだから。もっとも、家族愛としてのものだけど、

 

 「急に声をかけてくるなんて、ひどいですわ、兄さん」

 

 別に本当の兄というわけでない。姉の夫にあたる人物だ。

 

 振り向けば、かの方とはまた違った安心感がアルベドの胸を満たす。

 

 ライト・グリーンを基準としたワイシャツを着て、その上にダーク・グリーン色のベストを重ね、中央で綺麗に上記の2色が2分したシルクハットを頭にかぶっている。はいているスラックスは黒色で、デミウルゴスなどは、両目の代わりに宝石があるが、彼の場合、その顔にモノクルがかけれらていて、その左目は普通に眼球がある右目と違い、宝石エメラルドでできていた。一見人間であるが、自分と同じようにこめかみから生えた角(片方かけている)やこちらは、フクロウを思わせる羽が背中から生えており、ナザリックの者だと改めて認識させる。

 

 元、階層守護者であり、現、統括補佐であり、自身の義理兄たる人物、それが、ウィリニタスとういう人物であった。

 

 「別に驚く必要もないでしょう。家族なのですから」

 

 落ち着いたようで、淡々とした声、それでいて、温もりを感じさせるものであり、きっと姉はこういう所に惹かれたのだろうと容易に想像できる。

  

 「それは、そうかもしれないけれど」

 

 「アインズ様に想いを伝えたようだね」

 

 いきなりの直球に再び、体中が熱くなり、思考がとびそうになるが、なんとか、持ち堪える。

 

 「ええ、もちろん」

 

 「それは、よかった。妻も、君の姉さんも喜んでいるに違いない」

 

 「そうだと、いいのだけど」

 

 姉はナザリックではまた特殊な立ち位置で妹に夫、家族たる自分たちですら中々会う機会はない。

 

 「それで?アインズ様はこれからどうされるのかな?」

 

 「『楽園計画』の推進、それ以上でもそれ以下でもないわ、兄さんにも働いてもらいますからね」

 

 「それは当然のことだ。それに君は守護者統括、僕たちのまとめ役なのだから。是非ともこきつかってくれたまえ」

 

 

 義理兄と話している内にアルベドのなかで猛烈に沸騰していたものが、冷めていくのを感じる。やはり、1人で、抱えてもいいことはない。

 

 (家族とは、いいものです)

 

 いつか、最愛たるあのお方ともそういう関係になって、子供など抱き上げる姿をつい思い浮かべてしまい。思わず願い望まずには、いられない。

 

 

 統括の想いはただひたすらにささやかな願い、『家族になりたい』である。

 

 

 

 

 

 モモンガの覚悟に答えるように各々気持ちを新たにする守護者たち、こうして、本来の歴史から遠くかけ離れたナザリック地下大墳墓の強者の傲慢ともいえる世界の蹂躙劇が今、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 ようやく登場したオリキャラたち、前任者、双腕、隠居、七罪、見習い、義理兄とたくさんでましたが、気になるキャラはいましたか?彼らとナザリックのさらなる活躍を楽しみにしていただければと思います。

 次から新章入ります。







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