オーバーロード~遥かなる頂を目指して~   作:作倉延世
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今回から割とオリジナル展開はさんでいきます。


第3話 階層守護者

「先ほどはお見苦しいところをお見せしました」

 

ようやく落ち着きを取り戻したアルベドが頭を下げる

 

「いやお前が謝ることはなに1つない」

 

実際その通りだ彼女はただ自分の我儘を聞いてくれただけだむしろ全面的に自分が悪い。しかしそれをいえば、彼女こそ「モモンガ様が謝ることなど何一つありません!」とかえしてきて下手をすれば謝罪が行き交う無限ループの完成だそうなっては面倒だし、何より今はやらなければならないことがたくさん控えている。

 

「これより私は6階層のアンフィテアトルムに向かう。今から1時間後そこに第4、第8を除く階層守護者に集まるよう伝えてくれ、それと、・・・・・宝物殿を管理しているパンドラズ・アクターは知っているか?」

 

「はい、その名前と役職と職場は名目上存じております」

 

「よし、それで十分だ奴には私のほうから伝えておく。それとアウラとマーレにも直接伝えるとしよう」

 

「畏まりました。ではわたしが担当するのは実質3名でございますね」

 

「そうだ、よろしく頼む」

 

丁寧なお辞儀を披露したのち優雅に早歩きをしてアルベドはその場を離れるできる社長秘書はああいう女性のことを指すのだろう

 

(・・・さて・・・)

 

正直気が乗らない。なぜならアイツは自分の黒歴史そのものだから、それでも自分がこれからやろうとしている事を考えればその能力は必ず必要になってくる

 

〈伝言〉(メッセージ)パンドラズ・アクターよ私だ」

 

『いかがなさいましたか。我が偉大なる創造主たるモモンガ様!』

 

帰って来るのはハイテンションを通り越して、もはや素で叫び声を日常会話に使っているような遠慮なしの声量が押し寄せる。所々演じるように語っている部分などもないはずの心臓に悪いきがする。どこをどうしたらこうなるのだろうと過去の自分に聞いてみたい気分である。

 

「お前も元気そうだな」

 

「はいそれはもう元気にやらせていただいております我が偉大なる創造主たるモモンガ様より頂いた役割である宝物殿の管理を行っております!それはもう毎日が楽しくて仕方がありませんいろんな財宝に触れる事ができるのですから!」

 

それは過去にモモンガが彼を想像する際に与えた設定の一つが由来であろう。それにわざわざ声をはりあげなければならないのだろうかその動作のすべてが何とも痛ましい、しかしここでモモンガは自分に起きているある異変をはじめて自覚する

 

(思っていたよりダメージがないな)

 

一つの違和感を起爆剤にまるで複雑に絡んだ糸をほぐすように次々と疑問が浮かんでくる。そもそもどうしてあの時自分はああも的確な指示を出すことができた?なぜあのときアルベドになんのためらいもなくキスができた?現実のモモンガは何もない会社員である。はっきりいって知識もあまりないし頭の回転が速い訳でもない、その上女性の扱いに慣れているわけでもないのだ。実際かつてのギルドには自分より強いものはもちろん、頭脳にしてもコミュニケーション能力にしても自分より上の仲間はいっぱいいた。卑屈かもしれないが、おそらく自分はその中だとギリギリ平均を下回るように思う。ではそんな自分がなぜ?

 

(今は考えても仕方ないな)

 

今は非常事態、時は一刻を争う。正に「時は金なり」というやつだろう

 

「パンドラズ・アクター大事な話がある1時間後に6階層のアンフィテアトルムに来てくれ、その間の宝物殿の警備だが、最古図書館から司書を数人派遣しよう」

 

「畏まりました我が偉大なる創造主たるモモンガ様!」

 

「・・・・ああ、頼んだぞ」

 

言いたいことはたくさんあるが、とりあえず今はこんなところか、

 

(ああ、そうだった)

 

あそこはかなり特殊な手順が必要になる所だった。再び「伝言(メッセージ)」を開く。その相手は、

 

 

 

 

パンドラズ・アクターに連絡をすませたモモンガはそのまま第6階層へと向かう先ほど呼び出し、新たな命令を与えたプレアデスの1人にも渡した同じアイテム、その名をリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン かつてギルドメンバーのみが使用するのをゆるされたアイテム、そのちから「ナザリック地下大墳墓内の名前がついたところであれば、無制限に転移ができる」というものでここにいる限りはあらゆるマジックアイテムの中でも間違いなく抜群の使用頻度をこえる。そんなアイテムをNPCに貸し出すのは問題だろうが、今は緊急事態、ある程度は目をつぶってもらおう。当初は使えるのか不安だったが、無事目的の場所に転移できた事実を確認して安堵する。この事実はつまり今の状況でも以前のように魔法が使えるという事であり、ナザリックの防衛に十分使えるはずだ。

 たどり着いた先はいわゆる中世ローマ史に名前を刻む円型闘技場(コロッセオ)というものだ。正直、自然の宝庫たる密林の中に人工物が何の脈絡もなく置かれているのは、かなりの違和感があり不釣り合い感がどうしても出てしまう。それでもかつての仲間たちが力を入れて作ったのは確かなことでもあり、その光景はモモンガにとっては宝の一つである。通路を進み広場にでれば視界を埋め尽くすのは無数の観客席とそこに座るゴーレムの数々だ。かつては侵入者をここにおびきよせて拳闘試合という名の公開処刑をよくやったものだ。

 

「モモンガ様!」

 

回想に浸っていると突然聞こえる声と石を叩く音が響き小柄な影が視界に入る黒い肌に金髪と左右で色が違う瞳を持つ闇妖精(ダーク・エルフ)である。身に着けているのは軽装鎧にベスト、長ズボンと背に背負った巨大な弓に右肩から腰にかけてたすきのようにかけられた鞭と一見狩人の少年に見えるが、

 

「ブイ!!」

 

天真爛漫とも形容できる明るさと年齢特有の純粋さ、そしてなにより、向けられた感情が彼女を物語っていた。

 

「モモンガ様、ようこそあたしたちの第6階層へ!」

 

家庭訪問で担任の教師が自分の家に来たんだと喜びを全身で表す小学生を思わせる微笑ましさをもった反応、といっても実際にそのような風景があったかは不明だが、なんせそれはテレビドラマ内のやりとりであったのだから。

 

「ああ、邪魔をさせてもらおう」

 

「邪魔なんてとんでもない!モモンガ様はこの大墳墓の絶対の支配者!そのお方を邪魔なんて思うものは絶対にいません」

 

両手で握りこぶしをあげながらできる限りの称賛をおくってくる少女の一生懸命さがなんだか可愛くてうれしくなった

 

「ところでここにいるのはアウラだけなのか」

 

軽い疑問を聞いたつもりだったのにそれが少女には気に入らなかったらしい、顔をしかめたと思えば観客席を睨み大声を張り上げる

 

「失礼でしょマーレ!モモンガ様がいらっしゃっているのよ!」

 

早く来いという催促と礼儀がなっていないという怒りからくる声は先ほどモモンガに向けていたものとはまったく違うものであった、もしも彼女の使役する獣たちが同じめにあえば間違いなく丸くなってがちがちとふるえてしまうことだろう。はたして今回向けられた相手といえば、

 

「ごめんなさいお姉ちゃん」

 

ふるえることこそないもののアウラに比べてだいぶその足取りは遅く感じてしまう。身に着けているものの違いや職業の違いなどがあるのだからある程度は仕方ないとモモンガも思っていたが、そんなことは少女には関係ないらしく

 

「謝るならあたしじゃなくて、モモンガ様に謝りなさい!」

 

「う、うん。お待たせしました。ごめんなさいモモンガ様」

 

姉に急かせに急かされてようやくやってきのはアウラと同じく闇妖精(ダーク・エルフ)である。身に着けているのは銅鎧に森の葉を思わせるマント、姉と同じく白のベストとスカートにストッキング、手にもった木製の杖と「聖なる森の巫女」の代名詞が似合いそうな姿と、常にこちらをうかがい怒られるの恐れているような態度はまさしく少女のものだが、

 

(男なんだよなあ)

 

彼女たちを作った者の趣向で性別と真逆の格好をした闇妖精(ダーク・エルフ)姉弟ということになっている。要は男装した姉と女装した弟である。まあ、その者の悪癖を抜きにしてもマーレの格好は似あっていた。第2次成長期を控えた少年特有の中性的魅力を備えた体格と彼の内気な性格があわさり、恐らく初対面で彼の性別を正しく認識するのは難しいだろう。

 

(悪くはないかもしれない)

 

ふとそんなことをかんがえてしまい。モモンガは我に返る、自分は確か大人の女性が好みであり、かつ異性愛者であることを、どれだけ見目麗しい姿をしていたとしても彼は同性なのだ。

 

(どういうことだ?)

 

まさかこの異変で自分の性癖すら変わってしまったというのだろうか、確かに自分は多くのものを失った身だ、もう食事を摂ることは叶わないだろうし、経験がないまま使い物にならなくなってしまった物もある。改めて己自身についても調べる必要がありそうだ。

 

「2人とも元気そうでなによりだ」

 

「ええ、元気ですよ。でもそれだけじゃないんですよ。あの敗戦の時のような事を繰り返さない為に訓練を繰り返しています」

 

「は、はいボクもお姉ちゃんと同じです」

 

「まて・・・・・あの敗戦とは何だ?」

 

軽く言われた一言はモモンガには無視できるものではなかった。もしも自分の記憶が正しければ、

 

「1500人のプレイヤーなるものが攻めてきた時の話ですが、・・・・・モモンガ様?」

 

やはりそうだったのかと1人納得するモモンガ、双子が向ける不安な視線を無視してかつてあったことを思い出し、思案する

 

「その時の事を覚えているのか?」

 

急に雰囲気が変わった自らの主を前にマーレはわずかに後ずさり、その姿に軽い怒りを覚えながらも仕方ないかとどこまでも面倒見のいい姉のアウラはこれまでで一番落ち着いた姿勢で話し始める。

 

「はい、あの時あたしとマーレはここで奴らを迎え撃ち15人ほど打ちとったんですけど、結局そこまでですね。最後はあたしもマーレも殺されてしまいました。」

 

変に話を飾り付ける訳ではなく、本当にあった事実を淡々と語るアウラともしかして主の怒りを買ったのではないかと怯えるマーレ、モモンガは深く息をすい再び吐く、普通の獣であればそれだけで精神を壊してしまう程の威圧感をもつ吐息を姉弟は黙ってあびる、やがて主は再び問いかける

 

「怖くはなかったのか?」

 

これはどういう意味なのだろうか?もしもここで間違った答えを言えば、自分たちは主に見捨てられてしまうのだろうか、それは絶対に避けねばならないことであるし、自分たちはまだまだこの方に恩をお返しできていない。

 

「怖くはありませんでした。それよりも悔しい気持ちのほうが大きかったと思います。もっと強ければもっとたくさんの奴らを殺して、モモンガ様たちの負担を減らすことができたかもと思うと、尚更」

 

「ボ、ボクも同じです。・・・・・あ、でも少し怖かったかもしれないです」

 

「ちょっ!マーレ!」

 

すぐに愚弟の発した発言を訂正させなくてはならない至高の方々に使える自分たちが倒すべき敵を前に恐怖を感じるなんてあってはならないことだから。しかし

 

「でも、でも・・・・その時戦わなければモモンガ様たちが殺されると思ったら、そっちのほうが怖かったです。だからボクも、・・・・頑張りました」

 

紡がれた言葉はアウラも同じく感じていたことだった。そうあの時自分たちが止めねば間違いなく奴らはモモンガ達を殺しに行っただろう。その最悪の未来を思い浮かべるだけで全力以上で戦えた気がする。大好きなこの方たちにもっと生きてほしいと願って。

 

「あたしも同じ気持ちです。モモンガ様たちが居なくなってしまうほうがずっと怖い、だからあの時のあたしたちは戦えたと思います」

 

この答えであっているのだろうか?次に主が何を言うのか自分も弟も気が気でなかったと思う。

 

「そうか、」

 

ふいに主は両手をあげる。ああ、駄目だったのだろうか、なんでそう思うのかといえば、自分たちの主は偉大なる魔法詠唱者(マジック・キャスター)なのだから、大抵両手をあげるときは超位魔法を使うときと決まっていたのだ。

 

(もっとお仕えしたかったなあ)

 

どうしようもない後悔を表情には一切出さずアウラはその時をまつ、

 

 

(・・・・・・?・・・・・)

 

ふいに頭に暖かい感覚を覚える。それはずっと昔自分たちの想像主がよくやってくれた事と同じであった。隣をみれば、同じように頭をなでられている弟は「ふへへ」とだらしない顔をしていて、少しばかりの怒りが湧いてくるものの今回ばかりは弟ばかりせめる訳にはいかないだろう。だって、きっと自分も同じ顔をしていることに変わりはないだろうから、そして主といえば、

 

「すまなかったな、怖かったろうに」

 

どこまでもただの僕でしかない自分たちを思っていてくれる優しい声と、骸骨であるためその顔からは表情はよみとれないものの何だか泣いているように見えてしまい。不敬と思いながらも、声をかけずにはいられなかった

 

「モモンガ様?・・・・・あの」

 

 

 

「ああ、わが君。わたしが唯一支配できぬ愛しの君」

 

突然開かれた〈転移門〉(ゲート)とそこから現れた空気を読まない吸血鬼のせいで、聞くことは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

モモンガは困惑していた突然現れ抱きついてきた少女のことだ。ボールガウンを身に着けた銀髪の少女、その口からでている舌はまるで違う生き物ように蠢いており、だいぶ収まっていた恐怖が再びぶり返すには十分だった。

 

(こんなキャラだっけ、シャルティアって、?)

 

何せ作ったのはあの男だからなあと諦め9割の心境で言葉をかける

 

「シャルティア、すまないが、離れてくれないか?これから大事な実験や、話があるからな」

 

「お断りします」

 

彼女はさも当然のようにモモンガの言葉を拒否し、年齢にそぐわない胸部を押し付けてくる。正直以前のリアルでのモモンガであれば、それだけで精神を乱して、みっともない姿をさらすだろうが、そうならない理由が2つあった。一つはシャルティアの外見年齢が13、14であるという事実、そしてもう一つ

 

「いい加減離れなよ、偽乳」

 

「何で知っているのよー!」

 

いくら立派なものでもやはり作り物ではどうしようもない。あるのとないのではあるほうが、ありがたく感じるというものである。(もちろん口にしようものなら社会的に殺されるのは確実だが、)その間も少女2人による口論は熱をあげていた。マーレはどうすればいいのかわからないらしくただ居心地が悪そうに立ち尽くしているだけだった。

 

「ぬしだって、無いでしょ!!このちび!!」

 

「残念!あたしはまだ76歳、これから育つ見込み大なんだから。あんたは大変よね、成長止まっているんだし、あるもので満足して、諦めたら?」

 

アウラに言い負かされ歯ぎしりと地団駄を踏みながら悔しがっていたシャルティアであるが、やがて何か思い出したのか、少女とは思えない邪悪な笑みを浮かべる。耳元まで口が裂けて見えたのは幻覚に違いない

 

「ふふふ、これをみれば、ちびだって黙るしかないはずでありんすよねえ?」

 

服の隙間から取り出したのは一通の手紙、

 

「ふん、そんな紙切れ1枚がなんだっていうのよ」

 

悪魔で強気な態度を崩さないアウラにシャルティアは切り札をきる

 

「この手紙の主はペロロンチーノ様でありんす」

 

「な!」「え!」「何だと!」

 

三者三葉の驚き、特にモモンガも無視できないものであったかつての友の一人が残した手紙となれば、気になるというもの。その様を見て、満足したのかシャルティアは更なる爆弾発言を繰り出す

 

「この手紙の内容によれば、わたしはすぐにモモンガ様に嫁ぐべきであると、分かる?そう結婚しろと!いうことなのでありんすよ?」

 

「むぅ」「・・・・・」(どういうこと?)

 

再び三者三葉の反応、アウラは少し頬を膨らませ、マーレは無口、無表情となってしまい当のモモンガは今日何度目になるかわからない思考停止状態であった。ひとまず行動を起こさねば

 

「ひとまずその手紙を見せてはくれないか、シャルティア?」

 

「ええ、構いませんとも」

 

かつての友が残した手紙いったい何が書かれているだろうかと期待を込めて開く

 

 

拝啓ーモモンガさんへ

 

俺もついにYGGDRASIL(ユグドラシル)引退でーす。つきましては、シャルティアのことおれの装備のことお願いしますよ。シャルティアは設定上絶対モモンガさんに惚れますんで、もう好きにしちゃっていいですよ。

普通に✖✖✖✖するのも、ちょっと趣向を凝らして✖✖✖✖✖✖✖するのも、なんだったら✖✖✖✖✖✖✖してくれてもいいですよ。まあ骨だけのモモンガさんだったらできないかもしれませんが、それでは

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

沈黙

 

 

そして、

 

 

 

ぺロロンチーノ!!(あのエロゲバカ!!))

 

 

 

 

シャルティアには申し訳ないが、それがモモンガの感想である。どこまでもぶれないエロゲソムリエはやはり最後の挨拶もそんななのかと、それより気になることもあるし

 

 

「これのどこをどう解釈すれば、私とお前が結婚するという話につながるんだ?」

 

突っ込みどころしかない、アウラたちは「何て書いてあったんですか?」と好奇心旺盛に聞いてくるもののとても見せられる内容ではないアイツ本当に姉に絞めてもらったほうがいいのではないのだろうか、

 

「それはもうわたしとモモンガ様でそのような事をするべきと書いてあるので。確かにわたしとモモンガ様では子は作れない、しかしそれでも愛し合うことはできるでありんす。故に、でありんす」

 

設定でつけられた間違いだらけの廓言葉をなんとか織り交ぜながら会話に応じるシャルティア

 

「いや待て、これは必ずしもそうしろという内容ではないだろう」

 

何とか落ち着いて話をつけようとするモモンガと

 

「いえいえ、わたしのモモンガ様に対する想いは本物でありんす」

 

となかば強引に既成事実を作ろうとするシャルティア、理論も答弁もなにもないただお互いの要望を押し付け合うだけの不毛なやり取りをとめたのは、

 

 

 

 

「確かにこの内容ですと君の解釈には無理があるというものだよシャルティア」

 

現れたのは、スーツを身にまとった男性であった。

オールドバックにした髪型と丸眼鏡が特徴的でこれまで第6階層であった者たちでは1番人間に近い姿をしているが、やはりというべきか、腰のあたりから伸びた巨大な尾が彼もまたここのNPCなのだということを主張していた。

 

「デミウルゴス」

 

ナザリック地下大墳墓第7階層守護者にして拠点防衛時は指揮を任せられる存在だ。彼を作った人物が少しばかり癖の強い人物であったためにモモンガとしてもその設定と能力は把握していた。はっきり言って、自分よりずっとここのトップにふさわしいと思っている。

 

「デミウルゴス、どういう意味でありんすか?」

 

当然、シャルティアの不満と殺意を込めた視線が彼を射抜くが、当の本人は全くもって気にしていないように肩をすくめてみせる。やる奴がやるとやはり絵になるものだな。

 

「何、簡単な話だよその手紙はあくまでぺロロンチーノ様がモモンガ様に君の事を自由にしていいとそれだけだからね、恐らくは君のことをモモンガ様に託すにあたり、かのお方なりのジョークということなのだろう」

 

すくなくともエロゲバカ(あの男)は本気だったろうに違いないが、彼が本当にあのバカをそういう風にみているのか、この場を治めるための方便かはわからないが、ここは乗ることにしよう

 

「そうだ、シャルティア、それにそのような事をしなくてもお前たちは私にとって大切な存在には変わりないのだからな」

 

「おお、我ら如きの者どもになんと寛大なお言葉を、ありがたき幸せ」

 

「ああ、わたしを大切な存在とおっしゃっていただけるなんて」

 

「えへへ、ありがとうございます。モモンガ様」

 

「ボ、ボクもうれしいです。モモンガ様」

 

モモンガにしてみれば、何ということない言葉なのに守護者たちにはそれ以上の意味合いを持ち合わせているらしくその都度跪こうとしてくるのをやめさせるのは一苦労だ。

 

「いい、わざわざそんな事をしなくてもお前たちの私に対する忠義を疑うはずはずもない、時にデミウルゴス」

 

「はぁ!何でしょうモモンガ様?」

 

モモンガは再び自身のないはずの心臓が締め付けられる感覚を覚えながらも、なんとか言葉をひねり出す。

 

「お前は、以前ここに攻め込んできたというプレイヤーたちを覚えているか?」

 

「ええ、もちろんですとも。あの時は無様な姿をさらしてしまい申し訳ございませんでした」

 

可能であれば、今すぐ腹を切りますと言わんばかりの謝罪をこなすデミウルゴスを慌ててとめつつも、罪悪感がさらに増してくるのを感じていた。

 

(この調子だとアイツも覚えているのだろうな)

 

脳裏に浮かぶのは、「どうせならみんなで馬鹿をやろうぜ」と豪語していたかつての仲間と彼によって作られた守護者の姿

 

「オマタセイタシマシタ」

 

そう蟻と蟷螂を掛け合わせたような姿と4本あるすべての腕に異なる武器をもった階層守護者

 

「よく来てくれたなコキュートス」

 

「御方ノオ呼ビトアラバ、ドノヨウナ時デモソクザニ」

 

ここまではほかの守護者たちと変わらない。そしてやはりこれは聞いておかなければならない。

 

「コキュートス、お前は以前」

 

武人としての直感なのだろうか途端にコキュートスから冷気があふれ出す。この場にいるものたちは何ともないが、常人であれば、間違いなく氷漬けになっている。

 

「アノ戦ハ我ガ最大ノ屈辱デアリ、失態デゴザイマス」

 

「そうか」

 

「アレヨリ私ハヨリイッソウノタンレン二励ンデオリマス」

 

「ああ、よく理解したとも」

 

 

その後はほかの者たちが来るまで多少は時間があったので魔法に特殊技能(スキル)同士討ち(フレンドリーファイア)の解禁状態など調べることになり、この異変の前後で変わったこと、変わっていない事などを守護者たちのちからを借りながら一つ一つ検証していった。

 

そして

 

 

 

「んん!大変お待たせいたしました!我が創造主たるモモンガ様!」

 

どこまでも場違いなテンションを維持しているパンドラズ・アクターとその様子にややひきながらも行動を共にしているアルベドとセバスの姿もあった。その光景はモモンガのガラス細工程度に脆い心を砕くには十分であった本来各階層守護者への連絡をおえた彼女がなぜ遅れたのかといえば、

 

「申し訳ございません。我が創造主たるモモンガ様!私のせいでございます」

 

聞けば、このナザリックで自分以外の者たちに会うのは彼にとってまさに生涯初めての経験だったらしくあまりの嬉しさについつい話しかけてしまいそれを見かねたアルベドがなんとかつれ来たということであった。確かにこちらが指定した時間を守っているわけだしある程度自由にふるまってくれるのであればナザリックのこれからの事を考えれば好ましい、しかし、それにしても

 

(何だろうな?)

 

傍目に見ればやたらオーバーアクションで自由奔放な社長の息子を社長秘書が律義に面倒を見たというところだろうか、なんというか

 

(絵面が酷すぎる)

 

これが現実であれば、間違いなく社員たちの信用を失う。いやそれは今の状況でも同じことが言えるかもしれないが、

 

(いや大丈夫だ、もうすぐ終わるのだから)

 

その後、セバスの報告と主観による今回の異変の事を守護者たちに説明する。誰もが驚いたような顔をしているの見て、もうここは自分の常識が通じない世界だと認識するしかなかった。すぐに対策をすることになり、その第1段階としてデミウルゴス、アルベドを中心とした情報共有システムの構築、マーレにはナザリックの隠蔽工作、そしてそれにともない周囲にダミー丘の製作、そしてアウラには偽のナザリック製作を命じ、ひとまずはここまでとする。さてここからが、本題だ

 

「最後にお前たちに聞きたいことがある。まずはシャルティア、お前にとって私とはどのような人物だ」

 

「美の結晶。まさにこの世界で最も美しいお方であります。その白きお体と比べれば、宝石すら見劣りしてしまいます」

 

それは彼女にしてみれば本当にそう思ってのことだろうが、素直に受け取ることはできない

 

(とてもそんなじゃないんだよな)

 

「コキュートス」

 

「守護者各員ヨリモ強者デアリ、マサニナザリック地下大墳墓ノ絶対ナル支配者二相応シキ方カト」

 

それはあくまでゲームであった以前の話だ果たしてそれが現実となった今ではどうなのだろうか、強さとは単純に力があればいいというものではないのはモモンガでも知っている。

 

「アウラ、マーレ」

 

「慈悲深く、深い配慮に優れたお方です」

 

「す、すごく優しい方だと思います」

 

慈悲深い?優しい?とんでもないむしろ・・・・・・・

 

「デミウルゴス」

 

「賢明な判断力と瞬時に実行される行動力も有された方。まさに端倪すべからざる、という言葉が相応しきお方です」

 

それこそ間違い以外のなにものでもない、実際は小卒程の学歴しか持ち合わせていないのだから。ここに至ることだって、かつての仲間たちの知恵を借りたに過ぎない。

 

「セバス」

 

「至高の方々の総括に就任されていた方。そして最後まで私たちを見放さず残っていただけた慈悲深き方です」

 

ここに残っていたのはここしかなかったわけであり、彼らを思っていたわけではない。

 

「パンドラズ・アクター」

 

「我が偉大なる創造主にして絶対の存在!あなた様の息子であることが私の何よりの誇りでございます」

 

なんでだろう特に何も感じない

 

「最後になったが、アルベド」

 

「至高の方々の最高責任者であり、私どもの最高の主人であります。そして私にとっては最愛のお方でもあります」

 

「そうか」

 

守護者たちからの絶賛を聞きながらモモンガが抱いていたのは、罪悪感と後悔であった。

 

「それでは私は先に失礼する。各員行動に移れ」

 

「「「「「「「「はぁ!」」」」」」」」

 

ギルドアイテムの力でその場を後にする

 

 

 

通路を歩きながら思い出すのはかつての戦い、あの時彼らは懸命に戦ってくれた、だというのに自分たちはどうだったろうか、ゲームだったからというのは言い訳にしかならないだろう。

 

(笑ってたんだよなあ)

 

あの時は本当に遊びの延長でしかなかった、それでも先ほどの双子を思うと

 

(最低だったな、俺も・・・・・・・・俺たちも)

 

これで自分の気持ちは決まった。それは自殺願望にも似た決意であるが、モモンガはもうそれしかないと疑いすらしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




予定だと次で序章終了です。

10/18ご指摘ありがとうございます加筆修正しました。







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