ざいにち発コリアン社会
コリアンとして生きる/
日本の大学に通う同胞学生たち
在日同胞のなかには、コリアンとしての自覚に目覚める機会に恵まれず、日本人社会のなかに埋もれて生活している人がいる。日本の大学、専門学校にもそういった同胞学生たちが少なくない。だが、そんな彼らが同胞と知り合い、互いの悩みや考えを話し合い、自己を見つけていく在日本朝鮮留学生同盟(留学同)のような場所がある。日本の高校出身で、留学同活動に参加している金堅太郎くん、朴重信くん、金涼子さん、姜尚美さんに語ってもらった。
| 朴重信くん (ぱく・じゅんしん) 大阪芸術大学デザイン学科3回生。大阪出身。近畿大学付属高校卒。21歳。趣味は映画観賞、読書。 | 金涼子さん (きむ・りゃんじゃ) 東京学芸大学教育学部4回生。神奈川出身。桐朋女子高校卒。21歳。趣味は音楽、映画観賞。 | 姜尚子さん (かん・さんみ) 立命館大学産業・社会学部2回生。大阪出身。大阪府立守口北高校卒。19歳。趣味は読書。 |
歴史知り本名に変えた/金、ともに学び語り合いたい/朴
「日本人の自分を」捨てる/金涼子、自覚持てる場作りを/姜
「金子」ではなくキム、「お父さん」でなくアボジ
―大学に進学した動機は。
重信 建築に興味があり深く学びたかったからです。
尚美 大学でやりたいことを見つけ、実現させるための知識などを備えて社会に出たかったからです。
涼子 私も同じです。
堅太郎 僕はちょっと違うな。クラスのみんなが進学を希望していたので、何となく。だけど大学に入るために猛勉強しましたよ。
―なぜ、留学同に?
重信 入学直後、大阪留学同委員長に誘われたんです。在日同胞としてどのように生きていくべきかを彼に問われ、自分は「誰なんだ」と考えさせられました。その答えを与えてくれる場が、留学同だと思いました。
涼子 2年前、朝鮮大学校で行われた留学同所属の学生と朝大生による学科別研究討論会に参加したのがきっかけです。朝大は私が通う大学に近かったので、何となく参加して見ました。情報は在日コリアンの生活情報誌「イオ」で得ました。それ以前は朝鮮人であることが嫌で嫌でたまりませんでしたが、その日を機に、在日という存在を受け入れて生きている同世代の人と、自分とを比べるようになりました。そして留学同に入れば何か得るものがあるのではと思いました。
尚美 高校時代から学生会活動に参加していたので、大学に進めば自然に留学同に入るものだと思っていました。
堅太郎 姉が大学時代に留学同活動に楽しそうに参加していたので、僕も何となく。最初は花見に参加したのですが、嵐山の河原でプルコギ(焼肉)を食べてチャンゴを叩いて、自分が朝鮮人であることを確認することができました。朝鮮人であることを隠さず、生きていくべきだと考えさせられました。
―実生活で変わったことは。
堅太郎 大学入学後、KOREA文化研究会に入ったのですが、そこで在日の歴史を学びました。その年の夏から、大学の登録名を通名の「金子」から本名の「金」に変えました。日本の植民地支配時代、同胞が創氏改名を強要された歴史を考えれば、本名を名乗るべきだと思ったのです。
涼子 留学同活動は朝鮮民族、在日コリアンとしてのアイデンティティを確立する契機になりました。それまでのお父さん、お母さんが、アボジ、オモニに変わりました。携帯電話には、同胞のトンムたちの名前、電話番号がびっしり登録されています。また、朝鮮は祖国で、日本が外国と思うようになりました。朝鮮人であることを自覚するには、日本人になりきろうとした自分を捨てることが必要です。その葛藤を乗り越えれば、本当の自分を探すことが出来ると思います。
―同胞社会は今後どうあるべきだと思いますか。
尚美 同胞社会とは距離を置き、日本人社会のなかにまぎれて生きていこうとする人たちの意識を変えていくべきだと思います。朝鮮人であるという自覚を持って暮らしている人はそれほど多くはありません。日本学校に通う子が圧倒的に多いと聞きます。例えば民族学級を増やすなどして、朝鮮人としての自覚を持てるようにすることも必要ではないでしょうか。
堅太郎 民族をキーワードに、在日の存在をもっとアピールしていくべきだと思います。民族が1つに団結して社会を築いていくという理念を1人1人が抱けば、必ずよりよい同胞社会を築けると思います。
涼子 日本社会の受け入れ体制ももっと整えられるべきだと思います。民族学級の問題もそうですが、例えば、在日同胞がなぜ存在し、現在どのような生活を送っているのかなどの内容が日本学校の教科書に盛り込まれてもよいのでは。日本人のなかには、在日コリアンが存在することすら分からない人もいますから。同時に朝鮮人を理解するために、私たちと実際に接する場が設けられれば、日本人の朝鮮人を見る目は変わるでしょう。
重信 これからは若い世代が先頭に立って、同胞社会を築いていく時期だと思います。そのための1つとして、留学同のメンバーを増やし、そこで学び、語り合う機会を積極的に活用していきたいと思います。
(羅基哲記者)