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ゆるキャラグランプリ“大量組織票”は当たり前? 過熱するネット投票活動

更新:2018/11/13 19:09

 7年前に始まった「ゆるキャラグランプリ」。これまで初代王者の「くまモン」など“スターゆるキャラ”が次々と輩出してきました。今年は今月18日、東大阪市でグランプリが決まりますが、事前のネット投票で一部の自治体が職員を動員して組織票を投じていた疑いが出ているのです。

 11月1日時点で暫定1位の三重県四日市市のマスコットキャラクターの「こにゅうどうくん」。市は複数のメールアドレスを使って投票の権利を得て、それを各部署に割り振って、投票させているといいます。

 「言いづらいですけど、相当やっています。あらゆるメールアカウントを駆使して」(三重県四日市市 森智広市長)

 そもそも「ゆるキャラグランプリ」は、インターネット投票とイベント会場での決選投票で順位が決まります。インターネット投票は「ゆるキャラグランプリ」の公式サイト上でメールアドレスでIDを取得し、そのIDを使って1人1日1回投票ができるルールになっています。四日市市では無料のメールアドレスを使って、1万以上のIDを取得して職員に配布し、1人が何人分もの投票を行っているのです。

 四日市市は「職員に投票を強制しているわけではない」としていますが、去年は4位だった順位が今年は暫定トップに。市は市民の後押しも大きいと説明していますが、正しい人気投票の形とといえるのでしょうか。

 こうした方法は、大阪府内の自治体でも行われていることがMBSの取材でわかりました。

 「毎日1人1票の投票を必ず行ってくださいと、秘書広報課長から文書が出ている」(松原市職員)

 大阪府松原市の「マッキー」。今年は去年の19位から暫定8位となりましたが、その躍進の陰には役所をあげての投票活動がありました。今年8月の投票開始3日後に職員に配られたという“投票マニュアル”。秘書広報課長名で「マッキー」への投票が促されています。

 『3日目で900票ほどしか入っておらず、全職員の投票数を下回っております。毎日一人一票の投票を必ず行ってください』(松原市が作ったマニュアル)

 「職員1人1人に業務用にメールアドレスが与えられています。まずそのメールアドレスを使って投票しなさいと」(松原市職員)

 まず促されたのは業務用の個人メールアドレスを使っての投票。そして…

 「マッキーを上位入賞させるためにフリーメールアドレスでIDを取得したので、各部に割り当てるという話があった」(松原市職員)

 この職員によると、松原市でも四日市市と同様に大量のIDを取得し、各部に400〜500のIDを配布していたといいます。つまり1人が複数のIDを持ち、票数を稼いでいたことになります。

 「IDを何百かもらったので、手伝えるなら手伝ってほしいと。なにがなんでもとりあえず上位入賞というのが最初にあるので、職員のなかでは『どうなのかな』と」(松原市職員)

 実際、マニュアルの中には複数のIDを切り替えて投票する方法も細かく説明されていました。松原市は取材に対し「マニュアルは作成したが、投票を強制したつもりはない。市が複数のIDを取得した、というような事実は知らない」としています。

 さらに、暫定3位の「イヌナキン」を擁する大阪府の泉佐野市でも、IDの大量取得が行われていました。泉佐野市では約5000のフリーメールアドレスを作ってIDを取得し、希望する職員に渡していたことを認めています。

 「職員からそういったIDを作ってほしいと要望がありましたら、こちらの方で一旦作成をいたしまして、それをお渡ししたうえで、投票していただいていたというような状況でございます」(泉佐野市の担当者)

 自治体の職員自らがIDを大量取得しての投票について、泉佐野市民はどう思っているのでしょうか。

 「そんなことして泉佐野のキャラクターを上げるんやったら、なんかもっと違う方向でやった方が良いんじゃないかなと思う」(女性)
 「いいんじゃないですか。いい感じのキャラクターやし、全然良いと思います」(男性)

 しかしMBSが20人に聞いたところ、誰も投票はしていませんでした。一方、「ゆるキャラグランプリ」の実行委員会は…

 「IDを登録する理由は何かというと、1人で何回でも投票してしまうのを防ぐためにやっています。身代わり投票、なりすまし投票はしないでくださいとお願いしています」(ゆるキャラグランプリ実行委員会 西秀一郎会長)

 ゆるキャラブームに陰りが出始めたとも言われる中、過熱した投票活動が明るみに出たことで町おこしイベントは今、正念場を迎えています。


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