WikipediaのCCライセンス侵犯
先ほど、衝撃の朗報が舞い込みました。
これまで本ブログでは、百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)において、夥しいWikipediaからのコピペ編集が確認される点を指摘してきました。
これほど夥しい数の一致は、『日本国紀』がWikipediaをコピペしていることを雄弁に物語っています。したがって、これらの一致箇所について、それが全て百田尚樹氏のオリジナルであると合理的に主張することは極めて困難でしょう。
CC BY-SA 3.0の感染性
ところでWikipediaの記事は「CC BY-SA 3.0」というライセンスによって保護されています。この規約の要旨には次のようにあります。
表示 — あなたは 適切なクレジットを表示し、ライセンスへのリンクを提供し、変更があったらその旨を示さなければなりません。あなたはこれらを合理的などのような方法で行っても構いませんが、許諾者があなたやあなたの利用行為を支持していると示唆するような方法は除きます。
Creative Commons
継承 — もしあなたがこの資料をリミックスしたり、改変したり、加工した場合には、あなたはあなたの貢献部分を元の作品と同じライセンスの下に頒布しなければなりません。
つまり、Wikipediaから引用する場合には「適切なクレジット」と「ライセンスへのリンク」を表示し、かつ「変更があったらその旨を示す」必要があります。さらにコピペしてかてかつその内容を改変した場合には「あなたはあなたの貢献部分を元の作品と同じライセンスの下に頒布しなければなりません」とのことです。
『日本国紀』は著作権フリー状態に?
翻って『日本国紀』を検討してみますと、「ライセンスへのリンク」は確認されません。にもかかわらずWikipediaを元にしたコピペが大量に確認されます。そしてそのコピペのいずれにも「適切なクレジット」は表示されておらず、加えて「変更があったらその旨を示す」こともされていません。よって現状の『日本国紀』はCCライセンス違反の状態にあると考えられます。
また今後、百田氏がWikipediaからのコピペと改変を認め、「CC BY-SA 3.0」のライセンスに同意した場合には、その場合に課せられる「あなたはあなたの貢献部分を元の作品と同じライセンスの下に頒布しなければな」らない状態にある、つまり『日本国史』はWikipediaと同じく「配布可能状態」にあると解釈することも可能になってしまいます。
このような場合には、『日本国紀』をスキャンしてネットにアップロードしても、コピーして無料配布しても、著作権法上の問題が生じないことになります。Wikipediaからコピペ編集し本をつくり、あまつさえ参考文献を載せなかった代償は安くはないようです。
【追記】誤解を生んでいる恐れがありますので追加の説明をします。この場合の「著作権フリー」とは、「著作権が放棄されている状態(パブリックドメイン)、または著作物の二次利用に際して一切の条件が付されない状態」(Wikipediaより引用)でなく、「日本国紀はCC BY-SA 3.0のライセンス規約に従って配布・二次利用が可能」という意味です。また、現時点では、百田尚樹氏がWikipediaをライセンスに同意して引用したのか、それとも無視して(つまり著作権法に基づいて)引用したのかさえ不明です。もしこのCCラインセンスに同意したとなれば「著作権フリー」状態になるとも解釈できます。CC BY-SA 3.0の文章は難解なため、もし専門家がおられましたらご教示いただければ幸甚です。
表示と継承は両方満たすべき条件なので、たとえ表示をしていても、ライセンス継承もする必要があります。
少なくとも、氏の本は編集著作物にはあたります。編集した素材を著作権侵害してるかどうかは、編集著作物性の判断には影響しません。勿論、権利行使使用とした際に障害になること、例えば権利濫用の反論は受ける可能性はありますが、少なくとも、氏の本は独自の著作物ではあります。
編集著作物とは、名前のように、編集にその人の創作性が認められる編集物です。
A、B、Cといった素材があってそれを組み合わせて、その組み合わせに創作性が有れば、保護対象になります。
wikiでいえば、記事A、B、Cを組み合わせて、創作的な何かを作れば、一応は個別の著作物になります。
まるごと記事Aだけでは、NGでしょうが、複数の記事を組み合わせて、オリジナルの編集になっていれば、その本は一応は保護対象です。
そもそも、wiki記事A、B、Cを組み合わせて、大日本帝国万歳\(^-^)/というのは、氏のオリジナルでしょう。
一部にライセンス違反があったからと言って直ちに、本全体が著作権フリーになるとは言いがたいと思います。
勿論、大日本帝国賞賛普及の為に無償配布するというのであれば、氏も著作財産権は放棄するかも知れませんが…
ありがとうございます。「あなたはあなたの貢献部分を元の作品と同じライセンスの下に頒布しなければなりません」という規約がどの程度の範囲に適用されるのかが問題になると思います。