ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫
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〈最終話〉アリンス・ウール・ゴウンよえいえんに

 ──ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間──

 

 ナザリック地下大墳墓の栄光が具現化したかのような広大な大広間には埋め尽くさんばかりに、主だったシモベ達が集められていました。彼らの静かな熱気は徐々に高まっていき、やがて現れたアインズとありんすちゃんを迎える際にはシモベ達のボルテージは頂点に達しようとしていました。

 

 二つ並べられた玉座のそれぞれに荘厳な衣装を纏い、ギルドの象徴でもあるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手にしたアインズと、同じく荘厳な正装を身に纏ったありんすちゃんが座ります。アインズは軽く右手を振り合図をすると、途端にシモベ達が静まりかえりました。

 

 静寂の中、静かにアインズが立ちあがりました。玉座の横に並んだ各階層守護者はみな、真剣な眼差しを向けながら、アインズの言葉を待ちます。

 

「お集まりの我が同胞諸君、ナザリック地下大墳墓を拠点とする我らアインズ・ウール・ゴウンの名声は今や全世界の知る所となった。これもひとえに諸君らの絶え間なき努力の賜物である。まずはアインズ・ウール・ゴウン魔導国の代表として礼を述べたい」

 

 シモベ達の拍手が津波の様に大広間を揺るがします。アインズはゆっくりとシモベ達を見渡すと満足そうに頷き、静かに右手を挙げました。途端にシモベ達は静かになります。アインズはさらに言葉を続けました。

 

「さて、この輝かしい日に、私は一つの決断をした。私は後継者にこれからの魔導国を任せる事にした。ありんすちゃん、改め『アリンス・ウール・ゴウン』、前に」

 

 アインズの紹介を受けてありんすちゃんが立ちあがりました。そして、ドレスの裾をつまみ優雅に挨拶をしました。

 

「ここにいる者達は誰もが彼女を知っている事だろう。そして彼女がこの世界を我々の支配下にするにあたり、多大な貢献があった事も皆が知る所であろう。スレイン法国最高執行機関が無条件降伏を申し出てきたのはひとえに彼女の力によるものである。これ等の功績の大きさは、単に階層守護者に留まるべきでは無いであろう」

 

 アインズはゆっくりとスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをありんすちゃんに渡しました。

 

「これよりありんすちゃん改め『アリンス・ウール・ゴウン』に魔導王を譲位し、私はかつての名前、モモンガに戻り、彼女の後見をするものとする」

 

 大広間にシモベ達の熱狂的な歓声が響き渡りました。守護者統轄のアルベドが目を潤ませながらアインズ、いや、モモンガに抱きつきました。シモベ達の歓声はいつしか『アーリンスー! アーリンスー!』とありんすちゃんを讃えるものに変わっていきます。ありんすちゃんは左手のスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを高く掲げました。

 

「──アリンチュ・ウール・ゴウンに栄光あれんちゅ!」

 

 ……ちょっとだけ噛んでしまいました。

 

 各階層守護者達もありんすちゃんを祝福してくれます。

 

「……よく似合っているわ。モモンガ様の事は私に任せなさい。私もまた、いとおしい方をいとおしい名前で呼べて嬉しいわ」

 

「おめでとう。かつてのシャルティア復活から今日に至るまでが、全てアインズ様の計画だったとはね……さすがは至高の方々のまとめ役、私など及ぶべくもありませんね。……さて、アリンス、これからも共に協力していきたいものだね。よろしく頼む」

 

「……コノ小サナ体デ責任アル立場ニタツトハ凄イ事ダ……コノヨウナ日ニ立チ会エルトハ実ニ素晴シイ……」

 

「ありんすちゃん、おめでとう。あたしはそういうの、柄じゃないからねー。うん、うん。良かった、良かった。ペロロンチーノ様に見せてあげたかったね」

 

「あ、あの……おめでとうございます。ボ、僕もありんすちゃんが適任だと思います」

 

 シモベ達のアーリンスーコールはいつまでも続くのでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「それにしても……流石はアインズ様、いえ、モモンガ様。シャルティア復活の際に幼児化したのも全てこの時の為だったとは……このデミウルゴス、まさに脱帽という他ございません」

 

「確かに幼児の姿だからこそ、スレイン法国も竜王国も、更には評議国までが簡単に傘下に入ったと言えるわね。流石はモモンガ様」

 

 ナザリック地下大墳墓を代表する智者、デミウルゴスとアルベドがモモンガの知謀を絶賛します。

 

「……しかし、ありんすちゃんのティアラにはどうして『め』と書かれているのかしら?」

 

 ありんすちゃん改めアリンス・ウール・ゴウンの額を飾るプラチナのティアラには確かに金の文字で『め』とありました。

 

「あれは、二次小説界最強のオリジナル主人公の証しなのさ。これもモモンガ様の深慮遠謀かと……」

 

 アルベドは小さな声で呟いてみました。『め・ありんす』『めありんすー』『めありーすー』

 

「あっ! メアリースー!」

 

 そうです。かつてスタートレックの二次小説で登場した伝説のオリジナル主人公キャラクター……その為にはシャルティアが『ありんすちゃん』にならなくては到達出来なかったのでした。

 

 まだやむ気配の無い『アリンスー』コールはいつしか『メアリースー』コールに変わっていきました。ありんすちゃんは頬を上気させていつまでもいつまでも手を振って応えるのでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

「──さま! ありんすちゃん様!」

 

 ありんすちゃんはヴァンパイア・プライドに揺さぶられて目が覚めました。あたりを見回すといつもの屍蝋玄室の自分のベッドです。

 

 ありんすちゃんは何だか凄く素敵な夢を見ていた様でしたが、目が覚めた途端に全て忘れてしまい、何も覚えていませんでした。

 

 仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

 








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