自己責任と言われようが、紛争地の現実を伝える報道の意義は大きい。ただ、身の安全確保、周到な準備は絶対におろそかにしてはならない。今回、起きたことからは、よく教訓をくみ取りたい。
フリージャーナリストの安田純平さん(44)は二〇一五年、内戦下のシリアに入国後拘束され、先月下旬、三年四カ月ぶりに解放された。直後からネット上には「自己責任」を問う声が飛び交った。
二日、日本記者クラブで会見した安田さんは解放に尽力した関係者に感謝し、「私の行動で日本政府が当事者になり、大変申し訳ない」と述べ、頭を下げた。
長期間拘束され疲弊した人をこれ以上、バッシングする意味はない。ただ、安田さん自身も認めているように、行動の適否を検証する必要はあるだろう。
過激派組織「イスラム国」(IS)の実態取材が目的で、「外国人義勇兵の心情、理想や出身国の問題を知ることが、これからの世界を見る上で参考になるのではないか」と説明した。
安田さんのようなジャーナリストがいなければ、紛争地の悲惨や真実は伝わらないことは確かだ。
ISに殺害されたとみられるジャーナリスト後藤健二さんのガイドらの仲介で、トルコから深夜、シリアに徒歩で入国する際、予定とは別の人物について行ってしまい、拘束されたという。「完全に私の凡ミス」と反省を口にした。
紛争地に入るなら、徹底的に準備をし、慎重な上にも慎重に行動するべきだろう。信用できる護衛、身代金保険、複数者での入境といったことも考えられる。
本人が放っておいてくれといっても家族や友人らは救出に動く。
今回、日本政府がトルコやカタールに働きかけ、解放を実現させたことを評価したい。
安田さんは拘束の二カ月後、グループから「日本側から金を払う用意はあるが、武器の提供は無理」と聞いたという。シリアの人権監視団体は、カタールが金を払ったとしている。
日本政府は、身代金支払いを否定している。国連安全保障理事会は二〇一四年、身代金が新たなテロの資金源につながりかねないとして、支払いに応じないよう、各国政府に求める決議を採択している。
どんなに準備しても、警戒しても、トラブルに巻き込まれる可能性はゼロではない。ケース・バイ・ケースではあろうが、詳細な検証はなお、欠かせないだろう。
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