低く鋭い立ち合いの貴景勝が俊敏ないなしで御嶽海を土俵際に追い込み、重い突き押しでのけ反らせた。最後ははたき込まれて初黒星を喫したが、攻めて全力を出し切ったからこそ潔かった。
「遠からず、こういう日が来ると思っていた。一生懸命やったので、ああしたほうが良かったとかはない」
切り替えの早さも大きな武器だ。土俵下で見守った阿武松審判部長(元関脇益荒雄)が「見応えのある良い相撲。貴景勝も最高の相撲をした」と手放しで絶賛した一番。物言いが付いたまげについても「分かんないっす」と決して振り返ることはなかった。
年齢の近い阿武咲、大栄翔と1敗で並び、折り返しの中日を迎える。世代交代の風を感じる混戦への意気込みを問われても、表情は全く変わらなかった。
「相撲は後半戦。前半をクリーンに何もなかったことにして、残り8日間をどういうふうに戦うか。それだけ」。敗れてなお、幕内最年少の22歳とは思えない落ち着きが際立った。 (志村拓)