中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、第三者でつくる検証委員会が報告書をまとめた。「意図的な不正ではなかった」と判断したが、素直にうなずける人は少ないのではないか。
法定雇用率をともかく達成すればよいという「数合わせ」意識が水増しを生んだ。それが各官庁で大規模にさまざまな手口で長年にわたり続けられてきた。
ならば不正は故意に行われていた-そう考えるのが自然だ。
だが、検証委の報告書は「法定雇用率を充足するため、恣意(しい)的な障害者区分に当てはめるなどしてきた」と、過失による計上と結論づけた。「意図的」を否定する省庁側の言い分を追認した形だ。
しかし、考えてみてほしい。三十三の行政機関のうち二十八機関で計三千七百人の不適切計上があった。水増しが始まった時期は明記しなかったが、長年のことだ。
刑務官や入国警備官を障害者雇用率の計算から除外することになっていると認識しながら計上した法務省や、既に退職した人を含めた国土交通省の手口は、故意としか言いようがないのではないか。
松井巌委員長は会見で「意図的ではないとする(省庁の)主張を覆す証拠がない」と説明した。検証委の報告は、最も知りたいことに応えていない。全容解明したとは言い難い。
とはいえ制度の正確な理解と実践を怠った各省庁と、対応を各省庁に「丸投げ」して制度の周知や監督に積極的に取り組まなかった厚生労働省の責任は指摘した。
「数合わせ」ありきの対応は、障害者雇用への無関心が背景にあるのではないか。障害者を働く仲間と認識していなかったから、「人」ではなく「数」として扱っていた。だとしたら深刻な事態で政府は重大性を痛感すべきだ。
政府の改善策にも懸念がある。政府は障害者雇用に別枠の定員を設け、来年二月に採用試験を実施する。これと別に非常勤職員も募集する。働きたい障害者の願いをかなえるには短期間で採用を増やさねばならない。
だが、単に雇用率を上げることが目標になっては困る。それに国家公務員の定数が採用増で水膨れする心配はないのか。
障害者がやりがいを持って働くには定着のための職場環境の整備が不可欠だ。どうしたら能力を発揮してもらえるか。業務内容や進め方、柔軟な勤務制度などの改善がなければ急場しのぎで終わる。
この記事を印刷する