ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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「えー、であるからして我々は王都をヤルダバオトから取り戻す。その為にはヤルダバオトに反逆する亜人と手を結ぼうと思う」
王兄カスポンドの発言に皆の間にざわめきが起こりました。カスポンドの意をくんで副団長のグスターボが話を続けます。
「そこでまず我々はカリンシャを解放しようと思う。カリンシャにはゼルンの王子が囚われていて、王子を救出するならゼルンが一族をあげて我々に協力してくれるという手筈になっている」
そこでグスターボは言葉を切り、チラリと団長の様子を窺います。口の中でブツブツ呟き続けているレメディオスの様子に小さくため息をつくと、また話を続けました。
「……そこでカリンシャにありんすちゃん様と従者ネイアの二人に潜入してもらい、ゼルンの王子を救出してもらいたいと思う」
「──いや、それは困──」
「──まかちぇるでありんちゅ!」
即座に断ろうとしたネイアの言葉はありんすちゃんに遮られてしまいました。ありんすちゃんはふんぞり返るようにしてムハーと荒く鼻息を吐き出しました。
「…………妹さえ生きていればカルカ様を復活……妹さえ……ケラルトならカルカ様をきっと……」
相変わらずブツブツ呟き続けているレメディオスに目をやり、小さく首を振るとグスターボはありんすちゃんとネイアに向き直りました。
「……従者ネイアよ。本来ならば団長がありんすちゃんと共に潜入すべきなのだろうが……」グスターボは言葉を切るとレメディオスを顎で指す。「……いかんせん団長はあれからあの調子なのでお願いする……」
「……従者ネイア・バラハよ。私からも頼む」
王兄カスポンドからも頼まれてしまってはネイアに断る事など出来ません。かくてありんすちゃんとネイアは手引きする役のゼルンと共にカリンシャに潜入する事になりました。
※ ※ ※
首尾よくカリンシャに潜入したありんすちゃん達三人は無事にゼルンの王子のビービーゼーを無事救出します。
「……勇者よ。しかしこのカリンシャにはヤルダバオトの大幹部、枯れ木のような身体をして頭部に人間の頭を飾った大悪魔──サークレットがいる。あれにはまず勝てない」
サークレットという悪魔は頭部に二つまで首を飾り、その首が持つ魔法を最高で六位階まで使える強敵です。ビービーゼーが躊躇するのは当然でした。しかしありんすちゃんはそんな事お構い無し、です。
「ありんちゅちゃがやっちゅけるでありんちゅ!」
ありんすちゃんはいつの間にか真紅のフルアーマーに巨大なランスを持った姿に変わるとトコトコと歩き出しました。
やがて、広間にたどり着いた一行に大悪魔サークレットが姿を見せます。
「!……ケラルト様!」
サークレットの頭部に飾られた生首を見てネイアは思わず叫びました。間違いありません。ローブル聖王国で最高司祭である神官団団長ケラルト・カストディオその人のものだったのです。
スポイトランスを構え、既に臨戦態勢だったありんすちゃんはネイアを振り返りました。
「……ありがケラルトでありんちゅか? ありんちゅちゃにまかちぇるでありんちゅ!」
そう叫ぶとありんすちゃんは突進します。
「〈ブラインドネス!〉」
サークレットの頭部のケラルトが呪文を唱えるとたちまちネイアの視界が真っ暗になりました。しかしネイアは慌てずにアイマスクをかけます。そう、これまでの修行の成果で暗闇に神経を研ぎ澄ませます。
「……見える! 私にも敵が見える! ……え? ……ありんすちゃん様?」
大悪魔サークレットとの戦いは呆気なく終わりました。
※ ※ ※
ゼルン達の協力もあり、解放軍は大した被害も無くカリンシャを奪還する事が出来ました。
ありんすちゃん達は揃ってレメディオスの元を訪れました。
「レメデオ、喜ぶでありんちゅ。妹ケラルを見ちゅけてきたでありんちゅ」
「──な!」
変わり果てた妹の姿を見て、力無く崩れ落ちるレメディオスにサークレットが自己紹介しました。
「──我が名は大悪魔サークレット。今後ともよろしく」
サークレットの頭部に飾られたケラルトの生首がレメディオスにウインクしました。
サークレットと対峙したありんすちゃんはどうやらサークレットがケラルトだと勘違いしたようでした。あの時、ありんすちゃんはサークレットの手を掴み「たちゅけてあげるでありんちゅ」といきなり走り出したので戦闘そのものが起きなかったのでした。
あまりの出来事に立ち竦むレメディオスとは対称的に、ありんすちゃんは姉妹の再会を演出出来て得意満面です。
仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。