ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫
<< 前の話 次の話 >>

119 / 133
119ありんすちゃんVSヤルダバオト

 ネイア・バラハはアイマスクの奧の瞳を閉じて周囲に神経を研ぎ澄ませました。そしてボンヤリと脳裏に浮かぶ的に弓を引き絞ります。

 

 数日前の事です。ネイアの顔をマジマジと覗き込んだありんすちゃんは言いました。

 

「ちゅよくなりたいならこのルーンのアイマスク、いつもちゅけているでありんちゅ」

 

 最初はアイマスクをつけると前が全く見えなくなり戸惑いましたが、数日間着け続けている内にありんすちゃんの意図がネイアにも理解する事が出来たそうです。

 

(……成る程。こうして視界を遮る事で感覚を研ぎ澄まし、矢の威力を高めるマジックアイテムなのだ。……それにルーンか……凄い)

 

 うーん……ありんすちゃんは単にネイアの目付きが悪いからアイマスクを渡したのかと……それにルーンはありんすちゃんがサインペンで書いたものですが……

 

 何はさておきネイアは一心不乱に練習した為、アイマスクをつけたままで的を正確に射る事が出来るようになりました。

 

 と、建物のどこかでドガッシャーンと大きな音がしました。ネイアは急いで音の方へ向かいました。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「──私を出迎えてくれた事に感謝しよう」

 

 解放軍の執務室にいた皆は突如壁を壊して現れた悪魔の姿に息を呑みました。最近収容所から救出されて指揮をとっている王兄カスポンドは真っ青な顔になっています。

 

「……ヤ、ヤルダバオト!」

 

 その瞬間、レメディオスが動きました。

 

「キエエエエィ!」

 

 レメディオスが手にした聖剣が神聖な光を帯び聖なる波動をヤルダバオトに叩きつけます。しかし──

 

「……ん? 眩しいな。なんだ? 邪魔だ」

 

 ヤルダバオトは何事もなかったかのようにレメディオスを壁に突き飛ばすとカスポンドらに向き直りました。

 

「……何故だ! 邪悪なる存在に何故攻撃が効かぬ!」

 

 レメディオスはうずくまって茫然としています。

 

「──ヤルダバト! ちょこまででありんちゅ!」

 

 そこにありんすちゃんとネイアが駆けつけてきました。ヤルダバオトは驚愕します。

 

「そのアイマスク……まさか失われたルーンの──」

 

 ヤルダバオトの言葉はネイアの弓に消されます。ネイアが放った矢はヤルダバオトが避けた手に刺さります。

 

「ううむ。流石はルーンが宿るアイマスクの力。これならば私を倒せるかもしれないな」

 

 ヤルダバオトはそう言うと隠し持っていた武器──聖王女カルカを構えます。

 

「──カルカ様! 従者ネイア、貸せ! こ、これさえあれば!」

 

 レメディオスはネイアからアイマスクを奪うと自ら装着しました。

 

「カルカ様を返せ!」

 

 アイマスクをつけて視界を自ら遮ったレメディオスが放った幾つもの漸撃は尽くカルカに命中し…………

 

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「……やっちゃったね」

 

「……やってしまいましたね」

 

「……それでは私はこの先の広場で待っていますので……そこで決戦しましょう」

 

「……わかったでありんちゅ」

 

 皆が去っていきました。ネイアは呆然自失するレメディオスからアイマスクを取り返すと皆に続きます。

 

 後には微動ともしないレメディオスと変わり果てた聖王女の成れの果てが残されました。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 傷心のレメディオスが広場にやって来るとそこではありんすちゃんとヤルダバオトが激しく戦っていました。

 

「聖騎士サビカス! 聖騎士エステバン!」

 

 ヤルダバオトはまるで二本の刀を構えるように二人の聖騎士を手にしています。

 

「聖騎士フランコに聖騎士ガルバン! 思い出した! お前はあの時の──!」

 

 同じように二人の聖騎士を振り回すありんすちゃんを見てレメディオスは思い出しました。以前、ヤルダバオトと対峙した時に現れた少女──それがありんすちゃんだったのです。

 

 ありんすちゃんは二人の聖騎士を放り捨てるとレメディオスとネイアを掴みます。そしてそのままヤルダバオトに打ちかかりました。

 

「……なんと! さすがはルーンの力! この従者の硬さには歯が立ちそうにない!」

 

 確かにレメディオスがすぐにボロボロになっているのに対してネイアの緑の鎧には傷ひとつありません。

 

(……いや、アイマスクのおかげというよりありんすちゃん様に頂いた豪王バザーの鎧が丈夫だからなのだと思うけれど……)

 

 ネイアはバッチンバッチンと打ち付けられながら思いますが黙っていました。

 

 既に日没になろうとした頃、ヤルダバオトが口を開きました。

 

「そこの少女よ。このままでは勝負が着かぬ。ここは一旦互いに矛を納めるとしよう」

 

「わかったでありんちゅ」

 

 二人は互いの武器を捨てました。

 

「……ま、まて…………」

 

 虫の息になったレメディオスは聖剣を構えようとして気を失なってしまいました。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 ベッドで目覚めたレメディオスは起き上がるなり激しい痛みに気が遠くなりかけます。

 

「──誰か! ヤルダバオトはどうした!」

 

 すると天幕の後ろからひょっこりありんすちゃんが顔を出しました。

 

「目が覚めちゃでありんちゅか? 丁度良かったでありんちゅ。カルカ、強力ボンドでなおちたでありんちゅ」

 

 レメディオスが見るとボンドだらけのありんすちゃんの足もとに聖王女カルカの変わり果てた姿がありました。

 

 レメディオスによってバラバラになったカルカの身体はバフォルク等の様々のパーツと合わさりまさに異形と呼べるおぞましい姿になってしまっていました。

 

 仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

【挿絵表示】

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。