ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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「……全く……結局二度手間だったな」
魔導国の首都エ・ランテルに再びローブル聖王国聖騎士団長主従が訪れていました。
「……最初からあんな得たいのしれない少女の力を借りずにモモン殿に助勢を請えば良かったのだ」
団長レメディオスの言葉にネイアは(いや、ありんすちゃん様に助けを求めたのは貴女ではないですか)と心の中で突っ込みをいれます。
「団長、今もヤルダバオトに苦しめられ続けている民の為、我慢して下さい」
副団長のグスターボがレメディオスに言い聞かせます。やがて主従は門にやって来ました。
「ようこそ、魔導国都市エ・ランテルへ。聖騎士様方は初めていらっしゃいましたか?」
門番とおぼしき衛兵に声を掛けられて主従は顔を見合わせました。前回は門の所でありんすちゃんと出会った為、今回が初めてになりそうです。
レメディオスの代わりにグスターボが頷くと衛兵は皆に馬から降りるよう言い、片隅にある部屋に案内されました。
衛兵の説明では入国にあたって簡単なレクチャーを受ける決まりだそうです。
「ようこちょ、魔導国へ。わたちが説明しるでありんちゅ」
部屋の中にはどこかで会った事がある少女が待ち受けていました。
※ ※ ※
「……なんなんだ? なんでこうなるのだ?」
ローブル聖王国に戻る馬車の中でレメディオスはグスターボに不満をぶつけます。
「団長、落ち着いて下さい。こうなっては今度こそありんすちゃん様にヤルダバオトを倒してもらいましょう。……幸いな事に当人はやる気みたいですし、報酬をもっと吊り上げればきっと上手くいきますよ」
レメディオスはグスターボを睨みました。
「……ふん。子供のやる気等あてになるものか? 今度も好き放題に転がしおって……いいか? もしヤルダバオトを倒せなかったら貴様が責任を取るのだぞ?」
レメディオスは腫れ上がった頬にハンカチをあてがいながら文句を言います。
無理もありません。
再びエ・ランテルを訪れて今度こそ“漆黒”のモモンの助勢を得る筈が、またしてもありんすちゃんと一緒に聖王国に戻る事になってしまったのです。
「ありんちゅちゃが行ってあげるでありんちゅ」
そうありんすちゃんが言い出した時、レメディオスは即座に「だが断る!」と叫びましたが、その後ありんすちゃんにまたしても殴られて転がされ、やむ無く改めて助けを乞う事になってしまったのでした。
「……結局またもや魔導国の中には入れませんでしたね……」
グスターボはため息混じりに呟きました。
「……ふん。アンデッドが支配する国など入らずともわかる。恐怖で民衆を押さえ付けているのだ」
「……そうでしょうか? ……いや、なんでもありません」
グスターボはレメディオスの鋭い視線に口を閉ざしました。でも──門から見えた風景はごく普通だったがな──と思うのでした。
※ ※ ※
ネイアはありんすちゃんと同じ馬車の中で緊張していました。今回のネイアの任務は重大です。なんとしてもありんすちゃんをローブル聖王国まで連れて行かなくてはなりません。
「──あ、あの、ありんすちゃん様。この間はありがとうございました」
ネイアは以前にありんすちゃんからアイマスクを貰ったお礼を言います。
「ありんちゅちゃはまだまだ持ってありんちゅ」
ありんすちゃんは空間からアイマスクを取り出しました。
「…………えっと。ルーン! こりはしゅごいルーンでありんちゅ!」
ネイアも自分が預かっていたアイマスクを取り出してしみじみと眺めました。
(改めて見るとこれは凄いマジックアイテムに違いない。何か見たことがない記号が……これがルーン?)
「……あ、あの…………」
ネイアがありんすちゃんに訊ねようと顔を上げるてありんすちゃんはアイマスクをかけてぐっすり眠っていました。
※ ※ ※
「くっ! 全員後ろに下がれ!」
海辺の捕虜収容所を解放する為に亜人のバフォルクと対していた解放軍の聖騎士団長レメディオスは叫びました。
「もっとだ! もっと下がれ! さもなくば人質の命は無い!」
バフォルクの強者は捕虜の少女の喉元に剣を突きつけています。
──豪王バザーだ!
聖騎士の中で彼を知る者が小さく呟きました。
「ええい! 下がれ! 下がるのだ!」
レメディオスはバザーを睨みながら聖騎士達を更に下げます。バザーは勝ち誇ったように人質を示しながら進みます。と、バザーの足が止まりました。
「あ! ありんすちゃん様!」
バザーが足もとを見下ろすとそこにはアイマスクをしてスヤスヤと眠る少女がいたのでした。
退屈のあまり眠たくなっていたありんすちゃんは解放軍の後方で昼寝をしていたのですが、軍が後退した為に取り残されてしまったのでした。
「…………」
ムクリと起き上がったありんすちゃんはアイマスクをずり上げるとバザーの顔をボンヤリ見つめました。そして何事もなかったかのようにまたアイマスクをすると横になりました。
「──なんだこの子供は! 一口で喰ってやる! ──グハァ!」
バザーを自分の身に何が起こったのがわからないまま絶命してしまいました。
せっかくの昼寝を邪魔されたありんすちゃんにより、ペッチャンコにされてしまったのです。
あまりの出来事に解放軍はそっとありんすちゃんの眠りを妨げないように遠巻きに見守るのでした。
※ ※ ※
二時間程経ってありんすちゃんはムクリと起き上がりました。
「ありんすちゃんよ。豪王バザーを見事に打ち倒してくれた」
聖騎士団長レメディオスが歩み寄り手を差し出しました。その手を掻い潜りありんすちゃんは走って行きます。
「…………おちっこ」
仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。