ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫
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117ありんすちゃんふたたびせいおうこくにいく

 今日のありんすちゃんは魔導国の首都、エ・ランテルの街中を散歩しています。

 

 門の近くまでやって来ると、何やら物々しい鎧姿の一団がいました。

 

「何をちているでありんちゅ?」

 

 ありんすちゃんが門番に訊ねると代わりに白銀の鎧に白のサーコートを纏った女聖騎士が答えました。

 

「子供には関係ない。さっさと母親のもとに帰れ」

 

 たちまち門番の顔は真っ青になりました。反対にありんすちゃんの顔は真っ赤に染まっていきます。

 

 ドガッシャーン! ガラガラドガッシャーン!

 

 ありんすちゃんが女聖騎士を叩くと女聖騎士は馬に跨がったまま、ゴロゴロと転げていき、巨大なアインズ像にぶつかって停まりました。

 

「だ、団長!」

 

 副団長のグスターボが慌てて駆け寄りレメディオスを抱き起こしました。

 

「な、何が起きた? 雷でも落ちたか?」

 

 レメディオスがヨロヨロと起き上がり周りを見回すと他の聖騎士達は言葉を失い震える指で小さな女の子を指しています。

 

「……あの……団長を殴ったのは……その少女です」

 

「馬鹿な。そんな事あるわけ無かろう。こんな子供が──ングワっ!」

 

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロドガッシャーン!

 

 またしてもレメディオスはありんすちゃんに殴られて転がっていきました。

 

「……馬鹿な! いや、まてよ? もしかしてその者は以前に会った事は無いか?」

 

「ちらないでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんはまたもや拳を握ります。レメディオスの転げかたが面白くて病みつきになってきたみたいですね。

 

「──ま、待て。待ってくれ。そう何度も殴らないでくれ。私は別に敵対するつもりは──ングワっ!」

 

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロドガッシャーン!

 

「ありんちゅちゃはあちょんでるだけでありんちゅ」

 

「……待て待て!……グスターボ! 従者! なんとかしないか!」

 

 ついっとありんすちゃんの前に目付きの悪い少女が立ちます。

 

「……あの……飴あげますから、団長を許して下さい」

 

 ありんすちゃんは飴玉を二個貰うと左右の頬っぺたでモゴモゴ舐め始めました。

 

「……従者ネイア、なんだその言い方は? まるで私に非があるかのようではないか?」

 

「……すみませんでした」

 

 飴玉を舐めているありんすちゃんの後ろでは何やら険悪な雰囲気です。ありんすちゃんは腕をグルグル回しました。

 

「……ちょっ、まあ待て! ……そんなに誰かを殴りたいなら……そうだ! 私の国に来てヤルダバオトを殴ってくれないか? うん。それは実に名案だ!」

 

「──団長! まだ幼い少女になにをい──」

 

「うるさい! もう私は決めたぞ! 私をこれだけ殴れる強さがあるのだ。この少女にヤルダバオトを討伐して貰うぞ!」

 

 かくてありんすちゃんは飴玉四個と引き替えにローブル聖王国へ行き、魔皇ヤルダバオトを討伐する事になりました。

 

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓 第九階層玉座の間──そこにはひたすらローブル聖王国からの使者の訪れを待つ、アインズとアルベドの姿がありました。

 

「……アインズ様……レメディオス団長主従はリ・エスティーゼ王国からエ・ランテルに向かったとの報告は入っておりますが……その……魔導国に入国したという報告はまだありません」

 

「……うむ。そのようだな。……まあ、待つより仕方あるまい」

 

 結局、ローブル聖王国の聖騎士団主従はやって来ませんでした。

 

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 聖王国へ向かう馬車ではありんすちゃんの従者としてネイアが同席となりました。

 

「……睨んでもありんちゅちゃの飴玉、あげないでありんちゅ」

 

「……いや、ありんすちゃん様、私は生まれつきこの様な目付きでして……その……」

 

 ネイアは目尻を指で押さえ、グリグリと動かしました。

 

「……ふーん。ちょうでありんちゅか。……ちょうだ……」

 

 ありんすちゃんはかわいいウサギが付いたお出掛け用のリュックサックの中をゴソゴソ探します。

 

「あったでありんちゅ! 」

 

 ありんすちゃんはおやすみ用のアイマスクを取り出すとネイアに渡しました。

 

「……ありんすちゃん様、これを私に?」

 

「……ただ、ちょっとだけ貸すだけでありんちゅ」

 

 ネイアはこんな幼い少女までが慈しみの心を持っている魔導国の素晴しさに感動するのでした。

 

 道中は何事もなく、聖騎士団の馬車は無事に解放軍のアジトに到着しました。聖騎士団が整列し、レメディオス団長自らが馬車の扉を開きます。

 

 

 ──しかし中にありんすちゃんの姿はありませんでした。

 

「……これはどういう事だ? 従者ネイア・バラハ!」

 

「……それがその……三時になりますとありんすちゃん様は『おやつの時間でありんちゅ』とおっしゃって、〈ゲート〉の魔法を発動させると中に入って消えてしまいました」

 

「な──」

 

 い並ぶ聖騎士達は皆、茫然と立ち尽くすのでした。仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

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