オーバーロード 骨の親子の旅路   作:エクレア・エクレール・エイクレアー
<< 前の話 次の話 >>

2 / 4
さっそく評価や感想ありがとうございました。


更新できるタイミングでやっていきます。


2 異変

 

 

 楽しかったんだ―――――。

 

 

 

 

 

 

 DMMO-RPG“ユグドラシル”。それが十二年の月日をもって終了する。

 最後だからとギルドメンバーにメールを送り、最後にこのナザリックで過ごしませんかと連絡したところ集まったのは両手で数えられるほど。

 もちろん彼らにも現実の生活がある。だから来られないことに文句を言うつもりはなかった。最後までいられないことだって、仕方がない部分もある。

 

 それでもギルドマスターとしていつか帰ってくるかもしれない誰かのために、このナザリックを維持してきた。その維持が大変だったとは思わない。ギルドマスターとしてやることをやってきただけだ。

 だから正直な話、数人でも最後に会えて良かったと思えている。

 

 現実は環境汚染が進みすぎて、弱肉強食が横行し、まともな教育すら受けられない。人間を消費して使い潰すものと考えている会社や国のせいで生活は困窮。そんな中での娯楽となったのがゲームであるユグドラシルだった。

 鈴木悟はHNでモモンガを名乗り、ギルドランク9位の「アインズ・ウール・ゴウン」を率いるギルドマスターになった。

 

 この十二年間は、鈴木悟にとって代えがたい青春であった。現実が辛いからこそ、ゲームにのめり込んだとも言える。

 そんなユグドラシルもあと二時間程度でサービスを終了する。さっきブラック企業に勤めているヘロヘロも明日が早いからとログアウトしたところだ。

 

「これ以上来ないかもな……」

 

 とはいえ、来てくれることを期待してログだけはスクリーンに出しておく。誰かが来てもすぐわかるようにだ。

 円卓の間を出て、あと二時間で終わるナザリックを見ておこうと思い、指にはめたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動して第一階層から順に見ていった。主な目的は各階層の主要な部屋とギルドメンバーが自作したNPCの姿を見るため。

 

 階層守護者や領域守護者などを一瞥していき、設定などが思い出せない時は表示して確認したりした。そこで初めて知る設定だったり、昔の思い出が刺激されて有意義な時間にはなった。

 第八階層というギルドマスターのモモンガにとっても危険な場所の巡回も終えて九階層に行こうとしたが、九階層はさっきまでいたことや、最後は十階層の玉座の間で過ごそうと思っていたので九階層は素通りすることに。九階層のNPCは用事が多いために見る機会も多かったためだ。

 

 そしてリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを用いなければ基本的に会えないNPCを一体思い出した。

 

 それはモモンガが若かりし頃に創った領域守護者。そして宝物殿というナザリックで最も重要な場所を守るために創った特別なNPCだ。しかもナザリックが全盛期を過ぎた頃には別の意味もあって重要なNPCだった。

 そのNPCにも一目会ってから玉座の間へ向かうことにする。それに宝物殿にもかなりの思い出が残っているのだ。皆で集めた戦利品などが山のように保管されている。時間だけ気にすればいいと思い、モモンガは宝物殿へ転移する。

 

 宝物殿はユグドラシル金貨が山のようにあった。その山を通り過ぎてその奥、霊廟へ向かう。そこには何故かいつものピンク色の埴輪の顔をしたNPCではなくギルメンのタブラ・スマラグディナの姿をしたモモンガの息子とも呼ぶべき存在だった。

 

「何でタブラさんの格好を……。もしかしてタブラさんがそう指示したのか?」

 

 タブラも今日来た内の一人だったために不思議ではない。奥の霊廟さえ見られていなければ何でもいい。大方、宝物殿にあるアイテムを回収しにきたのだろう。最終日なのだからモモンガは特に気にしなかった。

 ただ、NPCに会いに来たのでタブラの格好のまま最期を迎えるのはいかがなものかと思い指示を出す。

 

「元に戻れ」

 

 コンソールをいじってそう命令すると、NPCの元々の姿であるツルリとした卵のようなハリをしたピンク色の茹で卵のような頭に三つの黒い穴、目と口の部分だけがくっつき、アインズ・ウール・ゴウンのギルドサインが入った帽子を被って、欧州アコロジー戦争で話題になったネオナチ親衛隊の黄色い制服を着たドッペルゲンガーに変わる。

 中二病を患っていた時に創ったNPCだったために痛い設定が数々あるが、それも懐かしいと思い、そして思い出の一部だと思って変えようとも思わなかった。それに、設定を書き換えるギルド武器であるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは円卓の間に置いてきてしまった。

 

「まあ、いいか。見た目だけなら今でも格好良いし」

 

 結局ここまで攻め入られたこともない。能力だけで言ったら階層守護者にも勝る存在だが、その能力は結局モモンガの慰みにしか用いられなかった。1500人に及ぶ襲撃者の後にこのナザリックに攻め入ってきた者たちは数える程。それも奥深くまでたどり着くことはなかった。

 今日も最後の景気づけに攻め入ってくるプレイヤーがいるのではと思っていたが、そんな気配はなし。あと一時間もあればユグドラシルのサービスは終わる。

 

 最後くらい、このNPCも連れていって玉座の間で終わりを迎えよう。そう考えていたのだが。

 突如としてスクリーンから様々な物が消える。ログや時計、ミニマップやHP・MPゲージなど。まさか最後の一時間でバグが発生するとは。

 

「はぁ……。糞運営め。せめてサービス終了までは保たせろよ……」

 

 頭を抱えて出るはずもないため息をついていた。最後ぐらい綺麗に終わってみたかったのにこれでは気持ちが急降下だ。苛立ちが募る。

 

「こういうミスはなかったんだけどな。他の部分はクソなことも多々あったけど。世界級を用いた嫌がらせ?いやでも俺は世界級を装備してるし……。まさか最後だからって二十を使ったバカがいるとか?やめてくれよ……。しかし、時間が確認できないのは地味に効くな。そんな世界級あったか……?」

 

 原因を考えていくが、正直お手上げだった。もしワールドアイテムの中でも二十という使い切りで破格の性能をもったアイテムを使われたのならモモンガとしてもお手上げだ。運営非公認ラスボスとして名高いモモンガであり、存在する七百を超える魔法全てを覚えて、さらに重要なアイテムのほとんどを知っているとしても、さすがに二十まではわからなかった。

 

 使われてしまったら最後、確認する手段がないからだ。運営もどういう効果のアイテムなのか発表する時としない時があり、それも糞運営たる所以だった。

 あの時も、この時もと思い浮かべていくうちに運営への怒りを募らせていったが、突如としてその苛立ちが収まる。まるで内側から感情が抑制されたかのようだった。

 

「は?何だこの感覚は……?」

 

「どうかなさいましたか?モモォンガッ様!」

 

「あ?」

 

 この場には自分しかいないはず。そう思っていたのに背後から声がかけられた。振り返ると、敬礼をした自作のNPCが。

 

「あれ?命令してないのに敬礼してる……?」

 

「はっ。異常事態とは思われますが我が主がお困りのようでありましたので!そぉして!傅くのではなくこれが一番の敬意の現れと思いまして敬礼いたしました!」

 

「は?はああああぁぁぁぁ!?NPCがシャベッタアアアアアアアッ!?」

 

 その驚愕の叫びも身体が光るようにして抑制されていった。今の現状がわからないこと、NPCが勝手に動いていること、そしてこの抑制されていく感情への不快感からモモンガは光りっぱなしだった。

 

 

 




妖怪てけてけじゃないけど、動かないものが動いてたらビビるよね。

付喪神とか。


特に自分が作ったものが自律行動するとか恐怖でしょう。プラモデルとかが動いたらねえ?カッコいいかもしれないけど。







感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。