ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ナザリック地下大墳墓 第九階層 アインズ執務室──ありんすちゃんはアインズの膝の上に座ってお絵かきに夢中です。
フンフンフンと鼻唄を歌いながら上機嫌のありんすちゃんですが、隣のアルベドの顔が鬼のようです。
「こりは恐怖公でありんちゅ」
得意そうに振り返るありんすちゃんにアインズは思わず破顔します。
「……うむ。なるほど。良く描けているな」
「──アインズ様。わたくし、少し外の空気を吸ってきます」
アルベドは一般メイドが扉を開けようとするのを制して自ら扉を開けて部屋を出ていきました。
「……ちょういえば恐怖公は拠点最悪でありんちゅね。しょれからガチョクコチュオは生態最悪、ニュロシュトは役職最悪でありんちた。エロ最悪ってどんなでありんちゅ?」
「──わたくしも是非知りたく存じます」
いつの間にか戻っていたアルベドも興味深い様子で身を乗り出します。アインズは重たい口を開きました。
「……うむ。エロ最悪か……なかなか説明が難しいな……」
アインズはかつてのギルドメンバーとのやり取りを思い返すのでした。
※ ※ ※
「うわ! えげつない!」
「いやぁいくらなんでもGはまずいっしょ? まんまじゃないすか」
「ギルド長、どうします?」
恐怖公が作成された時、かなり批判的な声が他のメンバーから上がりました。
製作者のるし☆ふぁーさんはまさにこの混乱した状況を狙っていたかのようにほくそ笑んでいます。否定的な意見に皆が傾きかけた時にぷにっと萌えさんが発言しました。
「いや、これはこれで有りだよ。いっそゴキブリの姿のPOPモンスターだらけのトラップを作ったら面白そうだよね。これは最悪だ」
「なるほど。確かに対敵に考えたら精神的にも強烈な一撃がありますね。皆さん、どうでしょう? 異存がなければナザリック地下大墳墓に恐怖公の管轄する対人トラップを加える、という事で」
モモンガの呼掛けに皆が応じて正式に拠点最悪がナザリックに加わる事になりました。
その後もメンバーの悪のりが続き、次々と様々な最悪──五大最悪──が作られる事になりました。
エロ最悪はローバーをベースに様々な触手攻撃や女性プレイヤーの装備を溶かす体液等の攻撃、様々な性的な嗜好をテキストに盛り込んでみたのですが、ユグドラシルでの禁止項目との兼ね合いでなかなかうまくいきません。
そんな時にペロロンチーノがやって来たのでした。
「モモンガさん、なんか皆で面白い事しているんですって?」
ペロロンチーノはエロゲ大王との異名がある人物なだけあって、その変態的嗜好に関する造詣は他人の追随を許さない程に深いものでした。
エロ最悪の制作はとあるペロロンチーノが発した一言で終わりを迎えました。
「……あれ? これならシャルティアの設定の方が…………」
結局エロ最悪はシャルティア・ブラッドフォールンを越える事は出来ませんでした。そしてシャルティアこそが『真のエロ最悪』である、というのがギルドメンバー間の暗黙の了解となったのでした。
※ ※ ※
アインズはふと我に返ると、ずっと見つめ続けているありんすちゃんに気がつきました。
(まずいな。かつての姿とはいえこんな小さな子供に『お前こそが真のエロ最悪だ』なんて言えないぞ。どうしたものか……)
アインズの言葉を待ち続けるありんすちゃんとアルベドに対して「近い内にエロ最悪を紹介する」と約束して、アインズはようやくその場を逃れる事にしました。
※ ※ ※
それから数日が経ち、アルベドとありんすちゃんはアインズと共に宝物殿にやって来ました。そこにはパンドラズ・アクターが待ち受けていて、一人の至高の方に姿を変えました。
「私がエロ最悪だ」
黄金に輝くバードマンを見てアルベドもありんすちゃんも納得したようでした。
※ ※ ※
翌日、いつものようにアインズがナザリック内で集めた投書を清書していると、全てひらがなで書かれた一枚がありました。
それには「えろさいあくになりたい」と書いてありました。仕方ありませんよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。