[PR]

 今国会最大の焦点である出入国管理法(入管法)改正案をめぐり、政府は16日、関連データである失踪外国人技能実習生への聞き取り調査結果に誤りがあったと明らかにし、修正した。野党側は強く反発し、審議を進めようとした衆院法務委員会の葉梨康弘委員長(自民)への解任決議案を提出。与党が16日に予定した実質審議入りは来週にずれ込むこととなった。

 政府が16日の同委理事懇談会で明らかにした誤りは、失踪した外国人技能実習生への2017年の聞き取り調査結果。7日の参院予算委で山下貴司法相は「より高い賃金を求めた失踪が約87%」と答弁していた。だが、法務省の実際の調査結果は「低賃金」による失踪が「約67%」で、山下氏の答弁は項目名も数値も違っていた。

 法務省は「人為的なミス」と説明したが、政府が入管法改正によって導入する新在留資格「特定技能」には技能実習生から50~60%が移行すると見込まれている。技能実習生の労働環境を示す調査結果の項目や数値が国会審議の後に変更されたため、野党側は「法案の根幹がひっくり返った」などと強く反発した。

 安倍晋三首相は訪問先の豪州での記者会見で、従来の説明の誤りについて問われたが、これには直接答えず、「来年4月から(新たな受け入れ)制度をスタートさせたい。政府としては緊張感をもって国会対応等に努めていく」と、今国会での成立を目指す考えを述べた。

 野党は、16日午後に衆院法務委で改正案の実質審議を始めようとした葉梨氏に反発。立憲民主党が委員長解任決議案を提出した。立憲の辻元清美国会対策委員長は「法務省は技能実習生の実態をねじ曲げるようなことを何年もやってきた可能性がある。今日の審議はあまりにも拙速だ」と述べた。

 これに対し、自民党森山裕国対委員長は「葉梨氏の議事運営には何ひとつ瑕疵(かし)はない」と述べ、20日の衆院本会議で決議案を否決し、改正案の審議を進める考えを示した。

 改正案に関して政府は16日、新在留資格での外国人労働者受け入れの試算根拠を同委理事懇談会に提示した。来年4月の制度導入から5年間の人手不足見込み数から、国内人材確保と生産性向上でも補えない分を外国人労働者受け入れで確保する、としている。

 政府が示したのは、新在留資格「特定技能」の対象14業種の受け入れ数の試算根拠。5年間で最大約35万人の外国人労働者受け入れを見込む。

政府が修正した外国人技能実習生の失踪理由

×「より高い賃金を求めて」86.9%

○「低賃金」67.2%

     【項目名も数値も違う】

「指導が厳しい」×5.4%

        ○12.6%

     【数値が違う】