日米のアジア支配に反対し、アジア民衆の連帯を推進する

日本連絡会議ニュース

 

 

釣魚諸島事態に関する声明

■釣魚諸島事態を軍事利用しようとする日本政府を弾劾する

 2010年9月7日、日本で「尖閣諸島」と呼ばれる釣魚諸島付近の海域で中国の漁船と日本の海上保安庁の巡視艇が衝突した。海上保安庁は漁船の乗組員全員を拘束し、そのうち船長を公務執行妨害と外国人漁業規制法違反の容疑で逮捕した。二度にわたる拘置延長ののち、同24日船長は処分保留で釈放された。事件直後から日本政府は、「そもそも尖閣諸島問題では領土問題は存在しない」「『尖閣諸島』は日本の領土」と主張し続けている。社民党および日本共産党を含む全議会政党とマスコミも基本的に同じ内容の主張を繰り返している。右翼勢力は在日中国人に対して学校への脅迫電話をかけ、器物破損など不当な暴力を行使し、中国を攻撃する集会・デモを繰り返している。

 日本政府は、この海域での中国漁船の操業が「領海侵犯」と「違法操業」にあたり、したがって日本の国内法による司法手続きを行うとした。そして船舶同士の衝突事故に対してはきわめて異例の「公務執行妨害」容疑での逮捕を行ったのである。この海域で中国漁船の操業に対する初めての逮捕であり立件でもある。このような事態を前に、中国政府は日本政府への抗議を次第にエスカレートさせ、対立が増幅して現在に至っている。こうした事態に立ち至った原因は、実際に存在している中国の同諸島の領有権主張を無視し、「尖閣諸島には領土問題はない」「尖閣諸島は日本の領土」と強弁し続けて、日本の司法手続きで今回の事件を処理しようとした日本政府の姿勢と態度にあることは明らかだ。

 さらに、日中間の対立をあえて作り出した日本政府の邪悪な意図も指摘されなくてはならない。それは、昨年5月28日の日米共同声明を転換点として、民主党政権が米軍再編と日本の戦争国家化を推し進めようとしていることと結びついている。菅政権は、今回の衝突事件を最大限に利用し、沖縄への自衛隊の大増派と宮古・八重山諸島への自衛隊の配備という措置をとろうとしている。そして、「中国脅威論」や排外主義的ナショナリズムを煽りたてることによって「日米同盟」強化路線への国民的合意を取り付けようとしている。「米軍の抑止力の維持」を理由として、辺野古新基地建設をはじめとした米軍再編計画の一挙的進展をもくろんでいる。もって、沖縄や「本土」での反戦反基地運動をおしつぶしていこうとしているのだ。

 私たちは、今回の事態を軍事的に利用しようとする日本政府の意図を見抜き弾劾しなくてはならない。

■釣魚諸島は日本が侵略戦争の過程で略奪した

 ところで、今回の事態において日本政府がとった態度の土台をなす「領土問題は存在しない」「尖閣諸島は日本の領土」という主張は虚偽であり、領土と資源を強奪し、これを居直る帝国主義の論理に満ちたものである。「尖閣諸島」をめぐって領土問題が現実的に存在し続けていること、そして釣魚諸島は日本の領土ではないことをはっきりとさせなくてはならない。 16世紀以降日清戦争時にいたるまで、中国も沖縄(琉球)も日本も釣魚諸島が中国の領土であるとの認識を共通して持っていたことは数々の歴史史料が示している。 ところが明治政府は日清戦争の只中で、戦勝必至と見る中で釣魚諸島をひそかに日本の領土として略取したのである。しかもその態様は、当時の国際法の基準すら満たしていないずさんな手続きによるものでもあった。 そのように略取した釣魚諸島であるにもかかわらず、日本政府は「無地主先占」の国際法理にかなった領土獲得だったから「正当」で「合法」かつ「有効」だというのである。 明治維新直後から日本政府は植民地獲得に力を入れながら帝国主義への道を突き進んだ。1875年には朝鮮の領海に軍艦を侵入させ、翌年には朝鮮との間に不平等条約を結んだ。1894年には日清戦争が勃発し、翌年にはそれに勝利して下関条約により台湾などを略奪し植民地化した。1902年にはイギリス帝国主義と軍事同盟を結び、1905年にはアメリカ帝国主義と桂・タフト協定を結び、日本が大韓帝国を支配し米国がフィリピンを支配することを確認した。英・米帝国主義国と結んだ軍事同盟や密約を後ろ盾にしてアジア侵略を進めていった。同年には大韓帝国の軍隊を解散させ、外交権を奪った。1910年には韓国を強制併合して国家主権を剥奪し、36年間に及ぶ植民地支配が始まった。1914-18年の第一次世界大戦の間に重工業を発展させて帝国主義として自らを確立し、中国本土への侵略策動を開始。1930年代に中国侵略戦争に全面的に突入し、同時に侵略策動を東南アジア全域に拡大。アジアでの権益をめぐって他帝国主義国との緊張感が急速に高まり、1941年にはアメリカ・イギリスなどとの戦争に突入した。そして、1945年にこのようなアジア太平洋戦争において日本は全面的に敗北したのだ。

 このように日本が帝国主義として自らを確立していく過程で、日清戦争の末期に自らの勝利が決定的になってから日本政府が中国から奪い取ったのが釣魚諸島なのだ。不当な帝国主義的略奪なのだ。絶対に認めることはできない。そして、日本政府が今に至るも同諸島の領有権主張の法的根拠として言い張っている「無主地先占の法理」なるものは、このような欧米帝国主義列強の間だけで都合よく植民地獲得を行うために作り出された法理論にすぎないのである。これを日本は朝鮮や中国を踏み台にし、犠牲にして帝国主義の一員となるために利用したのである。そして、このような「無主地先占の法理」からしても、そもそも釣魚諸島は「無主地」ではなかったのだ。

■日本の労働者民衆がとるべき態度

 今回の釣魚諸島事態に際しての領土問題について日本の労働者民衆がとるべき態度は次の三つにある。

 第一に、釣魚諸島が断じて日本の領土ではないことをはっきりと確認し、日本政府に対して領有権の放棄を要求してたたかうことである。日本帝国主義がかつて犯した罪悪は完全に清算されなくてはならない。釣魚諸島問題は、元日本軍性奴隷をはじめとする侵略戦争と植民地支配で被害を受けたアジアの人々への謝罪と補償の問題と同じように、日本政府をして戦争責任・戦後責任を果たさせるべき歴史問題なのだ。

 第二には、今回の事態をとらえて増幅する民族排外主義と対決することだ。「中国脅威論」をテコとした日本の戦争国家化・日米同盟強化の攻撃と徹底してたたかうことだ。民族排外主義右翼勢力がこの機に乗じて大々的に反中国、民族排外主義を煽り立てている。右翼は領土問題に必ず飛びついて利用する。今回の釣魚諸島事態を受けた菅政権のもとで中国脅威論もあおられている。日本の労働者民衆をおおう生活不安や貧困の増大という不満や閉塞感が、こうした排外主義や反中国宣伝と結びつきやすい状況も生み出されている。このような時こそ、冷静に事態をとらえ、誰が真の敵なのかということをつかみ矛盾の根源とたたかうことが決定的に重要なのだ。

 したがって第三には、釣魚諸島などの領土問題をはじめとする戦争責任・戦後責任を果たし、民族排外主義と対決してこれを打ち破り、そのことを通して中国の労働者民衆と国境を越えて結びつくことだ。中国・アジア民衆にとって、釣魚諸島問題は独島問題とともに、日本がかつての植民地支配と侵略戦争の歴史を歪曲・正当化していることの象徴としてある。日本政府が釣魚諸島問題と独島問題について謝罪し、領有権がないことを確認することを私たちは要求しなくてはならない。そして「中国脅威論」があおられる中で進められようとしている日米同盟強化に徹底して反対しなくてはならない。「米軍再編」計画による沖縄や岩国などの米軍基地強化と日米軍事一体化は、このもとでいっそうおし進められようとしている。これを許してはならない。自衛隊の沖縄への大増派や日米合同軍事演習に断固反対しよう。自衛隊の沖縄への大増派は中国との軍事的緊張を高めるであろうことはもちろん、米軍と自衛隊の双方から沖縄の民衆が踏みにじられ、沖縄を出撃拠点として米軍と自衛隊がアジア-全世界に出撃していくというまったく新しい局面をもたらすことになる。沖縄民衆への連帯、アジア-全世界の民衆への連帯にかけて、この沖縄への自衛隊の大増派を阻止する。そして、世界の労働者人民が主人公になる世界を打ち立てることをめざして、中国・アジアの労働者民衆との間で国際主義的連帯を作り上げ、強めていくことこそ日本の労働者民衆のとるべき態度にほかならない。

 私たちは、このような原則的立場にもとづき、日中両国政府に対して当面の措置として以下のことを要求する。まず、菅政権が「尖閣諸島をめぐって領土問題は存在しない」という問答無用というべき態度を撤回し、釣魚諸島の領有権問題をたな上げにした日中国交正常化時の合意に立ちもどることである。そして、釣魚諸島をめぐって日中両国政府が武力の行使や武力による威嚇を行わないことを表明し、対話による解決に努力すること、とりわけ日本政府が「離島奪還演習」などの軍事演習や沖縄への自衛隊の大増派を中止することである。また、日中両国政府が釣魚諸島周辺での中国・台湾・沖縄の漁民の自由で安全な操業を保障すること、とりわけ現在釣魚諸島を実効支配する日本政府がこれを実行することである。

2011年2月5日
アジア共同行動日本連絡会議

 

 

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