融和から対決へ-。中国政策の転換を表明したペンス米副大統領が訪日し、安倍首相と会談した。日本は米中の覇権争いの板挟みになっている。バランス感覚を失わないかじ取りで外交を進めたい。
両氏は「自由で開かれたインド太平洋」を目指して連携していくことを確認した。ペンス氏は「インド太平洋に権威主義と侵略の場所はない」と述べ、中国への対抗姿勢をにじませた。
朝鮮半島の非核化でも、国連制裁決議の完全履行を求めて足並みをそろえた。
中国の膨張主義や北朝鮮の核・ミサイル開発という東アジア情勢をにらめば、日米双方は互いを必要としている。関係強化を図るのは当然である。
だが、トランプ大統領の対日貿易に関する一方的な発言は同盟関係を損なう。
年明けに始まる日米間の新たな貿易交渉についてペンス氏は「インド太平洋のモデルになる協定にしたい」と語ったが、米国が環太平洋連携協定(TPP)に復帰した方がよほど合理的だ。
しかもTPPは成長著しいアジア太平洋地域の経済ルールの主導権を握るという対中戦略の側面を持つ。トランプ氏の姿勢は相変わらず一貫していない。
一方の安倍政権も、新貿易交渉でTPPを超える譲歩をすれば、TPP加盟国との関係にも悪影響を及ぼすことを肝に銘じてほしい。
米国は中国の改革・開放路線を後押しする関与政策を続けてきた。自由で民主的な国に変貌し、米国主導の国際秩序の中で「責任あるステークホルダー(利害関係者)」になる、という期待からだった。
ところが、南シナ海の軍事拠点化が問題化したオバマ前政権末期以降、対中感情は悪化。経済的にも軍事的にも巨大化した中国は、米国に挑むライバルだという警戒感が党派を超えて広がった。
ペンス氏が十月に行った演説はこんな空気を反映している。関与政策を転換し中国と対抗していくことを表明。「新冷戦の布告」という評価すら出ている。
その判断はともかく、対中外交の中長期的な基本指針になるのは間違いない。米中の緊張関係が続くのは覚悟せざるを得ない。
それが実際の衝突にエスカレートしないよう日本は両国に自制を促したい。日本が米中の間でどんな立ち位置をとるかは、東アジアの未来そのものと言ってもいい。
この記事を印刷する