ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ナザリック地下大墳墓 第二階層〈屍蝋玄室〉では今まさにありんすちゃんがおやつを食べている最中でした。今日のおやつはなめらかなこし餡をたっぷりのせたみつ豆です。
ありんすちゃんはあんみつだけでなくフルーツみつ豆も大好きです。こし餡を少し溶かして寒天と一緒にスプーンですくってほお張ります。完全に溶かさずに少し残した状態がありんすちゃんのこだわりです。
目を閉じてうっとりとした表情はとても幸せそうですね。
おや、ありんすちゃんが何やら器の中を睨んでいます。なにかあったのでしょうか?
ありんすちゃんに給仕をしていたヴァンパイア・ブライド達が表情を硬くします。ありんすちゃんはじっと器から視線を動かしません。どうやらありんすちゃんが睨んでいたのは小さな黒豆のようです。
「この豆はいらないでありんちゅ。美味しくないでありんちゅ」
どうやらありんすちゃんは黒豆が嫌いなようですね。
「黒豆、入れちゃダメって、ありんちゅちゃ、言ったでありんちゅよね?」
ありんすちゃんが鋭い視線をヴァンパイア・ブライドの一人に向けました。ヴァンパイア・ブライドはおろおろしながら答えました。
「……それがその……副料理長が言うには『みつ豆から豆を抜いたらみつ豆とは言えません』と……」
ありんすちゃんは思いもしない答えにしばらくポカンと口を開けたままでいました。
ありんすちゃん、これは副料理長の方が正しいと思いますよ。とはいえ、私もみつ豆の黒豆はいらないと思いますが……
ありんすちゃんはヴァンパイア・ブライドから器の中の黒豆に視線を戻しました。じっと黒豆を睨んでいます。どうやら頭の中でどうにかして黒豆を懲らしめてやろう、とでも考えているのでしょうか?
しばらく黒豆を腕組みしながら見詰めていたありんすちゃんは何か閃いたらしく、笑いだしました。
「この黒豆はこうちてやるでありんちゅ」
ありんすちゃんは黒豆をつまみ上げると自分の鼻の穴に詰めました。そしてフンスと鼻息の吹くとまるで弾丸のように黒豆が飛び出してヴァンパイア・ブライドの額にくっつきました。
ありんすちゃんは大喜びです。今度は左右の鼻の穴に黒豆を詰めます。
「フンス! フンス!」
的はまたしても哀れなヴァンパイア・ブライドです。
「おもちろいでありんちゅ! もっとやるでありんちゅ!」
今度は片方の鼻の穴に黒豆を二個詰めてみました。さて、どんな飛び方をするでしょうか?ありんすちゃんはワクワクしながら反対側の鼻の穴をふさぎ──
「!!!」
フスー……ありんすちゃんは力一杯鼻息を出そうとしますが黒豆は出てきません。鼻に指を差し込んでみましたが、黒豆はさらに奥にいって取れません。大変です!
「おやおや? 大変っすね。そのうち黒豆から芽が出てきてありんすちゃんの顔にニョキニョキ豆の木が生えてくるっすよ」
ありんすちゃんが見るといつの間にか姿を現したルプスレギナがニヤニヤしていました。
ルプスレギナの言葉にありんすちゃんは真っ青です。いやいや、みつ豆に入っていた黒豆は発芽しないと思いますよ?
※ ※ ※
大騒ぎの末、結局ニューロストが持っている道具でありんすちゃんの鼻の穴の黒豆は無事に吸い出されました。やはり、食べ物で遊んではいけませんよね。
翌日の昼食はチャーハンでした。ありんすちゃんは早速ペロリと平らげます。あれ? お皿の上には綺麗な緑色のグリーンピースが四つ残っていますね。
ありんすちゃんは腕組みをして皿の上のグリーンピースを睨みます。うーん……もしかしたらありんすちゃんはグリーンピースが嫌いなのでしょうか?
しばらく睨んでいたありんすちゃんはいきなりグリーンピースをつかむとまたしても鼻の穴に……うーん……懲りませんね。
かくして鼻からグリーンピースが取れなくなったありんすちゃんは、またもや大騒ぎするのでした。
仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。