すでに述べたが、BTSの楽曲は、いわゆる英語の曲ではない。それにもかかわらず、全米でランキングトップになったのは偉業だと言える。米国では国内で使用者の多いスペイン語の曲がランキングに入ることは少なくないが、その場合、もちろん購入者の多くがスペイン語を話す人たちである。つまり、米国の純粋な白人はほとんどがスペイン語の曲を買わないのと同様に、英語の曲ではない韓国人男性アイドルグループのアルバムを買うことはあまりないと言っていい。
実は、BTSは10月25日に初めて英語の曲を米国で発売した。だが残念ながら売り上げはパッとせず、全米シングルチャート「ビルボード100」ランキングでは、現時点で最高89位にとどまっている。どうもBTSやK-POPが米国で旋風を巻き起こしているというのは言い過ぎのように感じる。
もっと言えば、アーティストとしての評判は米英の評価を見ている限り芳しくないようだ。英ガーディアン紙の評価は「あまりにありふれた作品」と特に辛辣(しんらつ)で、「曲を聞いたすぐ後でも何も記憶に残らない。右から入った音楽がそのまま左の耳から出ていってしまい、何の印象もない」と書き、「ソーシャルメディアのファンの力による口コミをここまでうまく生かしたものはなかった」と皮肉っている。
ただこの「ファンの力」という指摘は一理ある。BTSがビルボードでナンバーワンになったのは、熱狂的なアーミーを中心としたファンの力が大きい。とはいえ、アーミーらのサポートは常軌を逸したものだと言える。
例えば、アーミーらはかなりの身銭を切って支援をする。あるファンは、世界的にも有名なニューヨークのタイムズ・スクエアにあるデジタル画面の広告枠を自腹で購入し、BTSメンバーの写真を掲載している。17年からファンらが広告を買うようになり、広告代理店によれば、同年は30件ほどのK-POPがらみの有料広告が掲載された。K-POPの中でもBTSの広告が一番多い。1週間3万ドル(約340万円)ほどで利用できる。
しかもそれを国を挙げてプロモートしている感があり、タイムズ・スクエアの広告は在米の韓国大使館が公式にツイートするなどして拡散の手助けをしている。文在寅大統領も夫人と外遊中のフランスでコンサートに訪れてBTSと一緒に写真撮影をし、ビルボード1位が報じられた際には、大統領の公式アカウントで「7人の少年とアーミーにお祝いのあいさつをします」とツイートしている。
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