ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫
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092ありんすちゃんあこがれる

 今日もありんすちゃんは二人のヴァンパイア・ブライドと一緒にナザリック地下大墳墓の第一階層から第三階層の巡回をしています。

 

 おや? なんだかいつもと違いますね。いつもなら、すぐに飽きてしまったり抱っこをせがむのに今日のありんすちゃんはそんな様子がありません。顔つきもなんだか少し凛々しく見えます。

 

 第三階層まで巡回を終えると、ヴァンパイア・ブライドがありんすちゃんに向き直り、号令をかけます。

 

「Achtvng! Heil Alince-chan!」

 

 号令、そしてありんすちゃんに対して敬礼をします。

 

「じーくなじゃりっく、でありんちゅ」

 

 うーん……なんだかイヤな予感がしますが……

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 アインズは暫くぶりにエ・ランテルの街のモモンの住居を訪れていました。

 

「……うん? アンデッド反応があるな。……二つ?」

 

 一つはハムスケが抱き枕がわりにしているデスナイトでした。そしてもう一つは……どうやら建物内から反応しているようです。

 

(モモン、いや、パンドラズ・アクターにアンデッドの来客か? ……それともズーラーノンの関係者か?)

 

 アインズは〈完全不可視化〉を発動すると建物の中に入り、様子を伺いました。見ると居間でパンドラズ・アクターと一緒に小さな人影がありました。

 

「では、次のカッコいいセリフですが、愛していますという意味の言葉です。では、『Riebt!』はい!」

 

「りーべ! ……でありんちゅ」

 

「うーん……もっと情熱的に感情を、そう、溢れる愛を込めて下さい」

 

「りぃーべ! ……でありんちゅ」

 

 なんとパンドラズ・アクターと一緒にいるのはありんすちゃんでした。ありんすちゃんはキラキラとした瞳でパンドラズ・アクターの大げさなジェスチャーに見とれています。

 

「…………」

 

 アインズはそんな二人の様子にため息をつくと、静かに扉を閉めて立ち去って行きました。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 それから暫くしたある日、ありんすちゃんの姿がナザリック地下大墳墓の第九階層にあるアインズの執務室にありました。

 

「うむ。……その、だな。最近、シモベ達に敬礼をさせているそうだが?……」

 

 アインズの問いかけにありんすちゃんは瞳をキラキラさせて答えました。

 

「カッコいいでありんちゅ」

 

「……ゴホン……そうか。格好が良いのか……うーむ」

 

 ありんすちゃんは興奮しながら更に言葉を続けました。

 

「パンドラジュ・アクターカッコいいでありんちゅ。ありんちゅちゃもカッコいくなりたいでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは大袈裟な手振りを交えながらパンドラズ・アクターの格好の良さを力説します。そんな有り様を前にしたアインズは力が抜けていくのを感じました。

 

(まさに黒歴史だ。こんな形で胃の痛くなる様な思いをするとは思わなかったな……)

 

「……そ、そうか……わかった。戻ってよろしい」

 

 ありんすちゃんはアインズに向かい気を付けの姿勢を取ると──

 

「はいる、アインジュちゃま、でありんちゅ」

 

 ──敬礼をし、踵を打ち鳴らして退出していきました。

 

「──パンドラズ・アクターを。パンドラズ・アクターにすぐ来るよう伝えよ」

 

 ありんすちゃんが居なくなるとすぐにアインズは控えていた一般メイドに命じるのでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「──なんですと! それではアインズ様はこのわたくしめにありんすちゃんが憧れるのを辞めさせよと? ……それはアインズ様の本心なので御座いましょうか?」

 

 目の前で仰々しい身振りで話すパンドラズ・アクターを眺めながら、アインズは喉元に酸っぱいものがこみ上げてくるような感覚に苦しめられていました。

 

(まさに黒歴史だ。でもさ、格好が良いって思っていたんだよな。若気の至りみたいなのなんだろうけどさ……)

 

「ふむ。しかしな、パンドラズ・アクターよ。貴様がその身振りやドイツ語の言い回しをする様に設定したのはこの私だ。そして私はお前以外のものがそれらを真似る事は許すべきではないと思うのだ」

 

 アインズの言葉にパンドラズ・アクターはいたく感銘を受けたみたいでした。

 

「畏まりました。アインズ様。では私に一つ考えが御座います。それならありんすちゃんが私の真似を諦めてくれる事でしょう」

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

「ちゅまり、ありんちゅちゃがありんちゅと言ってはいけない、でありんちゅか?」

 

 翌日、第二階層の屍蝋玄室に訪れたパンドラズ・アクターの言葉にありんすちゃんは目を真ん丸くしました。

 

「実は私の話すドイツ語は完成された言語でして、『ありんす』等の形容詞や助動詞は加える事は赦されないのです」

 

 つまり、ありんすちゃんがパンドラズ・アクターの真似をするには『ありんす禁止』だと言うのです。ありんすちゃんはじっと考え込みました。

 

 でも、答えは一つに決まっていますよね。もし、ありんすちゃんが『ありんす禁止』になったら、この物語は『ふしぎのくにの?ちゃん』になってしまいますから。

 

 目をつぶって考え込んでいたありんすちゃんがパッチリと目を開きました。

 

「決めたでありんちゅ。ありんちゅ封印、するでありんちゅ」

 

「えー?」

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 パンドラズ・アクターからの〈メッセージ〉を受けたアインズは酷く動揺しました。

 

〈アインズ様、かくなる上はいっそドイツ語をナザリックで流行らすのは──〉

 

 アインズにとって幸いな事にありんすちゃんのお熱はすぐに醒めて、翌日にはいつものありんすちゃんに戻っていたそうです。可哀相だったのはパンドラズ・アクターで、あれだけファンだったありんすちゃんから『キモいでありんちゅ』と言われてショックだったみたいです。

 

 仕方ありませんよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。




ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました
【挿絵表示】







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