ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ナザリック地下大墳墓 第十階層玉座の間──玉座のアインズの前に各階層守護者が揃いました。
「アインズ様、守護者統括アルベド以下各階層守護者、ガルガンチュア及びヴィクティムを除き御身の前に揃いまして御座います」
「うむ。ご苦労。……さて、皆に集まって貰ったのは、実は明日が七夕でな。たまには皆で七夕祭りをするのも悪くないと思ってな」
「たなばた……ですか?アインズ様、それは一体どの様な?」
アルベド以下階層守護者達は七夕について初耳だったようでした。ただ、一人を除いて──ありんすちゃんは鼻からフンスと息を吐き出しながらアインズの前に進み出ました。
「アルベドはちらないでありんちゅか?『たなばた』とはぼた餅が降ってくるでありんちゅ」
ありんすちゃんは昨日ルプスレギナから教わった知識を早速披露しました。残念ながらそれは七夕ではなくてタナぼたでしたが……もしかしたらルプスレギナはわざと間違った情報を与えたのかもしれません。
「ゴホン……七夕とは毎年七月七日の一日だけ、天の川を隔てて離ればなれになっていた恋人が会えるという言い伝えがあってな、笹の葉に願い事を書いた短冊を吊るすと叶えてくれる、という風習なのだ」
「それはなかなか風情がありますな。では、早速準備するとしましょう。さいわい、短冊には私の所の羊皮紙が使えると思います。笹という植物は……」
デミウルゴスが思案しているとアウラが意見を出しました。
「あたしの階層のザイトルクワエを使ったらいいんじゃないかな?最近また枝が伸びてきたから短冊を沢山ぶら下げるのに丁度いいと思います」
「それは丁度良いわね。そうだわ。せっかくだから、短冊もカラフルにしましょう。メイド達には飾りを作らせて……主だったシモベ達にも短冊に願い事を書かせても良いわね?」
アルベドの意見にデミウルゴスも頷きました。
「では、カラフルな短冊の準備と配布は私、ザイトルクワエの飾り作りと飾り付けはアルベドとアウラに任せて、他の者はシモベ達に知らせたり、準備をするという事で良いかな?」
「おっけー。任せておいて。……では、アインズ様、失礼します」
「了解シタ……全テハ御方ノ思シ召シノタメニ……」
各階層守護者達は忙しそうにそれぞれアインズに挨拶をすると準備に向かいました。後に残っていたデミウルゴスはアインズにお辞儀をすると言いました。
「……今回の一件、アインズ様の意図は理解して御座います。さすがはアインズ様」
(え?……なんの事?……いやぁ、ただ、七夕祭りをしたいと思っただけで別に……)
「……うむ。さすがはデミウルゴス。お前には見抜かれてしまったか」
デミウルゴスは言葉を続けました。
「今回、願い事を短冊に書かせる事で配下の欲求や不満をいち早く発見しようとするアインズ様の真意には誠に畏れ入ります」
(……成程。確かに短冊を見れば階層守護者達やシモベ達の望みがわかるな)
「うむ。まあ、そんな所だ。ではデミウルゴス、頼んだぞ」
「はっ。お任せ下さい」
※ ※ ※
ナザリック地下大墳墓第六階層のザイトルクワエには色紙を鎖状に繋げた飾りやカラフルな短冊が沢山付けられていました。
アインズはコッソリ短冊を見て回ります。
『世界征服 デミウルゴス』
『日々コレ鍛練アルノミ コキュートス』
『ロロロが欲しい アウラ』
それぞれの階層守護者が書いた短冊を見ながらアインズは心暖まる気持ちになりました。
『アインズ様のお嫁さん マーレ』
「──ん?」
マーレの短冊を見たアインズは一瞬、硬直してしまいました。そして──
『アインズ様の赤ちゃんを授かりますように アルベド』
(──こ、これは……)
茫然としたアインズはしばらくしてようやく我に返りました。と、ある事に気がつきました。
セバス、プレイアデス、領域守護者から一般メイドまで短冊を吊るしていましたが、階層守護者のありんすちゃんの短冊がありませんでした。
アインズは第二階層の屍蝋玄室の様子を見に行く事にしました。
※ ※ ※
屍蝋玄室ではありんすちゃんが居眠りしていました。どうやら沢山の短冊に願い事を書いている内に眠ってしまったようでした。
アインズはありんすちゃんの周りに落ちている短冊を拾い上げました。
『おおきくなりたい』
『いなりずし』
『しょーとけーき』
(……子供らしい願い事じゃないか。七夕らしくて良いな)
『きんののべぼう』
『うちゅうろけっと』
(……子供らしく夢があって良いな)
『とろろいも』
『もんぶらん』
(……食べ物が多いみたいだな?)
そして、最後の書きかけの短冊を拾い上げたアインズは悩みました。
『んこ』
(……?……ウンコ……?……)
ありんすちゃんは願い事を短冊に書いている内に『しりとり』に夢中になっちゃったみたいですね。
仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。