【大相撲】稀勢の里、休場濃厚 横綱87年ぶり初日から4連敗2018年11月15日 紙面から
◇九州場所<4日目>(14日・福岡国際センター) 不振の一人横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=が、平幕栃煌山に行司軍配差し違えの末、すくい投げで逆転負けし、初日からの4連敗を喫した。3日連続の金星配給。稀勢の里は5日目から休場し、来場所以降に再起を図ることが濃厚になった。不戦敗を除いて横綱の初日からの4連敗は、11日制だった1931年春場所の宮城山以来87年ぶり。1場所15日制が定着した49年夏場所以降では初の事態となった。栃煌山は4連勝で5個目の金星を獲得した。 覚めたかに見えた悪夢は、まだ終わっていなかった。左四つに組み合った土俵際、稀勢の里が捨て身の小手投げからあおむけに倒れ、すくい投げを打った栃煌山は土俵下へ転げ落ちていった。軍配は横綱に上がったが、即座に物言い。場内の歓声が波のように引いて静まり返った。 稀勢の里の初白星を願うような拍手に続き、土俵上の勝負審判の輪が解けて阿武松審判部長(元関脇益荒雄)がマイクを手に取る。「協議した結果、稀勢の里の肩が早く」。固唾(かたず)をのんでいた観衆が、一瞬の間で結末を察してざわめいた。 「行司軍配差し違えで、栃煌山の勝ちと決定致しました」。悲鳴に包まれた無情の説明の末、屈辱にまみれた初日からの4連敗が、刻まれてしまった。
横綱の4連敗スタートは、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降で史上初。3日連続の金星配給にもなり、3度目と千代の山と並び、ワーストタイという不名誉な記録もついてきた。 8場所連続休場明けで10勝を挙げ、下火になったように思えた進退問題が、再燃するのは避けられない重い重い4つの黒星。失意のどん底の支度部屋では目を伏せ、5日目の出場の確認を含むすべての質問に口を閉ざしたままだった。 稀勢の里と同様、88年秋場所に3連敗スタートし、最終的には8勝7敗とギリギリで踏ん張った元大乃国の芝田山親方は、取組前に「まだやりきってないでしょ」と同じ二所ノ関一門で、横綱土俵入りの所作を指導した後輩にハッパのひと言。「8番でいいじゃない」と自虐風に立て直しの願いを込めたが…。 場所前には「体をつくってきた」と繰り返して重視した足腰の粘りが、まるで発揮できていない現実が横たわる。出待ちのファンからは「自信持っていけ」と、横綱ながら心配される相撲人生の崖っぷち。休場、そして来年初場所で再起を懸ける選択が色濃くなった。 (志村拓)
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