ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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守護者統括アルベドはいささか緊張していました。ナザリックの繁栄の為のある計画の為、アインズ様とデミウルゴスが当分不在となっていたからです。
「アインズ様の留守をしっかり守らなくては……ナザリックはいわば家族。まるで家族の長たるアインズ様の留守を守る新妻の気分ね。そうね、新妻。……ああ……アインズ様……」
アルベドがありんすちゃんを訪ねて第二階層にやって来ると屍蝋玄室の周りにシモベ達が集まっていました。
「……これはなんの騒ぎ? シャルティア……ありんすちゃんはいるかしら?」
「……アルベド様。その……ありんす様はいらっしゃるのですが……その……」
シモベのヴァンパイア・プライドが言いにくそうに答えました。代わりに他のアンデッドのシモベが答えました。
「……恐れながら……ありんす様は自室にこもって出てこないのでして……至高の御方から与えられた仕事もせずこうして籠っておられます」
アルベドは金色の瞳を細くしました。これは至高の御方への反逆にも等しい行為、まさかまたしてもありんすちゃんが反逆したという事なのでは──が、しかし──アルベドは思い直しました。いまのシャルティアはシャルティアではなくありんすちゃん。所詮は幼児、大それた考えなしに仕事をサボっただけかもしれません。
ましてやアインズ様が不在の最中に最悪な事件──シャルティアが再び反逆する──などあってはならないのです。
「わかったわ。この件は私がなんとかします。あなた達はありんすちゃんの代わりに階層の巡回と警戒をしっかりしておきなさい」
(……さて……アインズ様の留守にこの問題を片付けてしまわなくては……)
※ ※ ※
アルベドの命を受けてアウラが屍蝋玄室の前にやって来ました。アウラはまず室内の様子を窺います。どうやらありんすちゃんは誰かと会話をしているようでした。
『……………………』
『ちょうでありんちゅか。やっぱりちょうでありんちゅよね』
『…………………………』
『もっと言うでありんちゅ』
アウラは扉をノックしてみました。
「ありんすちゃん? いるんでしょ?あたしだけど、開けて」
途端に室内がシーンと静まり返りました。どうやらありんすちゃんは息を殺して居留守を使っているようです。
「ありんすちゃん? いないの?」
アウラはなにやら閃いたみたいです。
「ありんすちゃんいないのかな? いないのなら『いない』って返事をしたら諦めるけど?」
「ありんちゅちゃいないでありんちゅ!」
ありんすちゃんはついつい返事をしてしまいました。すぐに騙された事に気がつきましたが後の祭りです。仕方なくしぶしぶとアウラを招き入れました。
アウラが中に入るとありんすちゃんは死の宝珠の言葉に聞き入っているところでした。
「なんと美しい、なんと賢い、誠に素晴らしいありんす様……」
「当然でありんちゅ」
「世界中で最も凛々しく賢く美しいありんす様は正に我が全てを捧げるに相応しい」
「もっと言うでありんちゅ」
アウラは何も言わずに死の宝珠を掴むと持って来た袋に押し込んでしまいました。ありんすちゃんは口を尖らせて抗議をしましたが、アウラは黙って首を振るのでした。
「ところでありんすちゃん。この宝珠、何処で拾ったの?」
ありんすちゃんはなかなか答えようとしません。アウラは肩をすくめて言いました。
「これはアインズ様がハムスケに預けた宝珠じゃん。どうせハムスケが口から落としたのを拾ったんじゃないの? ……とりあえずこれはあたしがアルベドに渡すから」
ありんすちゃんはいやいやをしましたが、アウラは怒った顔で『仕事しろ』と睨むので諦めざるを得ませんでした。
泣きそうなありんすちゃんを少し可哀想に思ったアウラは優しく声をかけました。
「ま、この宝珠の言葉なんて単なるゴマすりだから、聞く必要ないんだよ。与えられた仕事を放ったらかしてこんなおべっかに喜ぶなんてアインズ様は望まないと思うよ」
※ ※ ※
それからしばらくたってエ・ランテルの町を用事で訪れたアウラはハムスケに声をかけられました。
「大変でござる。それがしが殿より預かった玉を何処かに落としたでござる。なんとか殿が帰ってくる前に見つけないと命が無いでござる」
アウラはハムスケをなだめ、その夜、ナザリック地下大墳墓第九階層のアルベドの私室の前にやって来ると……
部屋の中からアルベドが誰かと話しながらくっふっふと笑う声が聞こえてきたのでした。
仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の…………あれ? 失礼しました。