ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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今日もありんすちゃんは自分の階層の見廻りを早々と終えてお風呂でくつろいでいます。浴槽に泡を満たして、お気に入りのアヒルを泳がせながら思いました。
大好きなお風呂をずっと楽しむ事が出来たらとても素晴らしいのに、と。そしてありんすちゃんは閃きました。そうです。いっそのことお風呂で生活したら良いのではないでしょうか?
思い付いたら即実行です。シモベ達を浴槽の周りに集めてありんすちゃんは宣言するのでした。
「これからありんちゅちゃは、お風呂から出ないでありんちゅ」
シモベ達は大混乱です。いつものありんすちゃんの気まぐれだとは思いましたが、いろいろと問題がありそうでしたから。
「あ、あの……巡回はどうなさるのでしょう?」
おずおずと遠慮がちにヴァンパイア・ブライドが尋ねました。
「やめるでありんちゅね」
ありんすちゃんは即答しました。それを聞いてシモベ達は真っ青になりました。階層の巡回は至高のお方から命じられた仕事です。それを簡単に放棄するとなればただでは済みません。なんとかありんすちゃんを宥めないと大変な事になってしまうでしょう。
「では、あの……湯船に入ったまま巡回するのは如何でしょう? ソウルイーターに馬車を着けてそこに浴槽を乗せればお風呂に入りながら巡回出来ます」
ありんすちゃんは悩んでいるみたいでした。シモベ達は必死です。なんとしても主であるありんすちゃんを言いくるめなくてはなりません。
「それでは馬車を花で飾りましょう。湯船にも花びらをたくさん浮かべましょう。きっと素敵だと思いますよ」
ヴァンパイア・ブライド達は交互にありんすちゃんを説得しました。そのうちにありんすちゃんもその気になってきたみたいです。
「それはなかなか良さそうでありんちゅね。わかったでありんちゅ」
シモベ達は皆、ホッと胸をなでおろしました。とりあえずなんとか巡回はこれからも続けてくれる事になりました。
ありんすちゃんがお風呂で暮らし始めてすぐに一つの問題が起きました。それはお風呂の温度を保つ事でした。最初は第七階層から溶岩を運んでいましたが、思いの外の重労働なのと、運ぶ際に床を焦がしたり、火傷をするシモベが続出したりでうまくいきません。
最終的には釜を作り、そこにエルダーリッチが並んでファイヤーボールを撃ち込む事でなんとか解決しました。
さらに大変だったのはありんすちゃんがお風呂で寝ると言い出した時でした。さすがにお湯に浸かったままで寝る事は思いとどまってもらい、お湯を抜いた浴槽に布団を敷いて寝る事になりました。
やがて、ありんすちゃんがお風呂で暮らすと宣言して一週間が経ち──ありんすちゃんは結局元のように屍蝋玄室に戻っていました。なんでもお風呂でアイスクリームを食べていたらうっかり湯船に落としちゃったからやめたんですって。
仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子ですから。